23話 神格存在
水龍を撃破した。
おそらくこの世界で龍を二体倒したのは僕だけだろう。
『次の龍は何属性だろうなぁ~。何属性でも倒すけど』
『おーい、そこの小僧、ちょっと待て』
次の頂上にいる龍のことを考えていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
例の脳内アナウンスのような無機質な声ではなく、お爺さんのような声だった。
『龍たちを倒すのを止めろ。小僧』
『龍を倒すのをやめろ? なぜ倒してはいけない。僕は倒さないといけない』
『いいから倒すな』
そんなことは関係ない。次の龍もその次も倒す。
『はぁ~。しかたないのぉ』
そう言われたあと周りの景色が変わる。
さっきまでいた山の山頂から地獄と形容できる場所になった。
奇妙な形の岩や溶岩の池があたりに点在している。
そして目の前には巨大な龍がたたずんでいる。
「よし、小僧、はじめまして」
「あんた誰だ? 次の相手か?」
僕は戦闘体制に入った。
「あぁ~、やはりもろに影響を受けとるの~」
こいつは何を言っているんだ。
「は~、しかたないの~」
巨大な龍はあきれたように言った後、何かをぼそぼそとつぶやいた。
「これでよし、どうじゃ小僧? 目が覚めたか?」
僕の耳に声が入ってくる。
『なんで僕は龍を倒すことに執着していた?』
「答えてやってもいいぞ?」
龍が返事をする。
僕は心の中で言ったことがなぜ分かったんだ?
「何で考えてることが分かった? スキルか?」
「そういうスキルじゃ」
僕はスキルだということで納得し、次の質問に移る。
「さっきの質問の答えは何だ? なぜ僕は龍を倒すことに執着した」
おかしいのだ。最初の目的はドラゴンスパイラルを越えることだった。
なのに地龍を倒したところから目的が龍を倒すことにすり替わってしまっていた。
「理由は簡単じゃ、この世界のドラゴン、そして龍は好戦的な種族になっとるんじゃ」
「なるほど、教えていただきありがとうございます。ところでどなたですか?」
龍なのは見れば分かるが地龍や水龍と違い、意思疎通できてる。
「わしか? わしは神格存在、龍種ハザデスと言う」
ハザデスさんか、僕はこの世界に生まれて初めて名前を持つ者に会った。
そういえば神格存在というのはどこかで聞いたような気がする。
「それは地龍等が持っとった、ユニークスキル【龍神の加護】で見たことじゃろ」
そうだ、確かに機能の中で神格存在という言葉が出てきていた。
「ちなみに神格存在というのは、簡単に言えば神様ということじゃ」
心の中で疑問が生まれる前に答えられた。
「って、え? 神様なんですか?」
「あぁ正真正銘、この世界の神様じゃ。今は’’元’’神様になったがな」
どうやら僕はとんでもない大物に会ってしまったようだ。
「ん? ’’元’’ってことは今は違うのか? そうだとしたら今は誰が神様なんですか?」
「誰かって?それはな…………」
ハザデスは少し溜めた後に言った。
「それはな小僧、おぬしじゃよ」
『は?』
「ついさっき、神の座をおぬしに譲渡した」
ということは今日から僕が神?
「その通りじゃ、今日から小僧がはれて二代目龍神じゃ」
よく分からないまま僕は神様になった。




