1話 転生したらドラゴン!
『何も見えない』
暗く、狭い空間でそう思った。
僕は日常的に普通でないことが起きて欲しいと願っていた。
そんな願いはある日、唐突に叶った。
教室でほとんど何もわからず気絶し気が付けばこの空間にいた。
普通の人であればこの状況で発狂してもおかしくはないが、こういうことが起こって欲しいと願っていたので少し興奮しながらもこの状況を楽しんでいた。
『一体ここはどこだ?』
僕は自身が閉じ込められている場所がどこなのか探ろうと壁に触れる。
壁には出入りができるような部分が無いこと、材質が分からないこと、形はおおよそ球体の形をしていることが分かった。
『壊せるかな?』
そう思い自分の手足を振り、壁に叩きつけ破壊を試みてみる。
何度も何度も叩くと、壁に亀裂ができた。外から僅かながら光が入ってくる。
僕は外に出たい一心で亀裂の部分を集中的に叩く。亀裂は広がっていき壁が壊れた。
『やった!外だ!』
僕は喜び、外に出る。外は屋外だった。全く見覚えがない岩山で下を見ると木々が青々と生い茂っている。
『視界が低いな』
僕は他のことよりもまずそんなことを考える。
視界は低く自身がはいながら出てきたのだと思い出し、立とうとするがどうしても立つことができない。
『ハハハ、痺れてるのかな?』
自分がさっきまで狭い場所にいたことで正座から立つときのように体が痺れているかもしれないと考え、自分の腕を見る。
『え?』
本来自分の腕があるはずの場所に翼があった。
その翼は鳥類のような羽ではなくファンタジーに登場するドラゴンのような翼だった。
理由を探すため、自分が今出てきた場所に目をやる。そこには巨大な卵が割れた状態で置いてあった。
『???』
僕は混乱した。
僕は自分が置かれている状況を心の中で整理する。
『僕は確かそう、いつも通り授業を受けていた。そしてノートに黒板に書かれたことを写してた。そしたら急に眩しくなってそこから……気が付いたら閉じ込められてた。出て腕を見ようとしたら腕が翼になってて、閉じ込められてた場所を見たらでかい卵だった』
龍生は少し考えてから思う。
『どういう状況?』
僕は自分が何になったのか触って確認する。
皮膚は少し硬い鱗のようなもので覆われている。
頭は犬のような形になっていて歯が鋭くなっている。
後ろを向けば尻尾もついている。龍生は自分が何になったのか理解した。
『これ、ドラゴンだ』
龍生はドラゴンになっていた。
『これって最近、流行ってるアニメのやつだよな。確か転生だ』
答えにたどり着いた僕は少しだけスッキリした気分になったと同時に、疑問が出てきた。
『俺いつ死んだ?』
転生したからにはあの時、死んだということなのだろうと考えた。
『転生したからには楽しもう♪』
死んだという事実は僕にとってあまり気にならなかった。
『さて、僕の親はいないのかな?』
僕は周囲を確認するが、自身の親らしきドラゴンどころか他の動物すら見当たらない。
『よし、待つかぁ~』
僕は親ドラゴンが帰ってくることを待つことに決めた。
前世の名前 月並 龍生
龍生の名前の由来
月並→月並み=普通という意味
龍生→ドラゴンとして生まれる