第十話 無能なクラス代表
今回で、総文字数170000字超えました
ありがとうございます
第二章はあっという間に十話です
前回は、メールが来ました
今回は、先にある景色です
伊波さんとラクとオレの三人で帰っているとメールが届いた。
「あれ? 俺にはなんも来てないぞ?」
「私のところにはメール来てる! 『一年四組へ』ってやつ」
どうやらメールが来ていたのは三人中、伊波さんとオレだけで、ラクの元には来ていないらしい。
書かれているとおり、一年四組の人たちにのみ送られているのだろう。
「伊波さんとオレのところには来たのか………」
「ということは、四組のみんなには同じメールが届いてて、ラグは三組だからメールが来てないってことか」
「おそらく」
「なるほどなー! おい、俺の名前はラクな!! んで、なんて書いてあるんだ??」
ラクはそう聞くと、オレのスマホの画面を許可なく覗いてきた。
ここで断ると、スマホになにか、やましいものがあると誤解されてしまいそうなので、そのまま受け入れた。
「『このクラスにはイジメがある。しかし無能なクラス代表はそれを放置した』………なんか面白そうなことになってね!?」
ラクは目を輝かせていた。
自分が当事者ではないからといって、そんな他人事みたいな言い草はないのでは?
ラク的には、オレは親友なんだろ?
なら少しは心配する素振りを見せてくれたっていいのに。
オレは溜息を吐きながら続ける。
「全く面白くないだろ。面倒事の匂いしかしない」
「それがいいじゃーん! お前って四組のクラス代表だったよな! ここに書いてあるとおりなら、カエデさんはイジメに気づいていて、それを放置したということになりますがー……そのへん、実際どうなんですか???」
ラクはにやけながら、左手に拳をつくり、それをオレの口の前に持ってきて、インタビューのマイク風に聞いてきた。
こいつはいつまでも楽観的だ。
………少し、脅かしてやるか。
オレは悪役のような目をつくって低めの声で言った。
「事実だ」
「おおー!! マジかー!! なんで?? なんでそんな人でなしみたいなことするんだ??」
これで少しは真剣になってくれるだろうと思ったが、全くそんなことはなく、むしろ喜んでいた。
この反応を見るに、やはりラクは伊波さんと似た、独特な感性を持っているに違いない。
そして、どうやらオレは普通の感性の持ち主には嫌われやすく、独特な感性を持っている変人には好かれやすいということが判明した。全くうれしくないが。
どう解釈すれば、ここで喜ぶことができるんだよ。
オレはイジメを放置する最低な人間かもしれないんだぞ。
ラクになんで喜んでいるのか、素直に聞いてみるか。
「おい、なんでそんなに笑ってるんだ?」
「え?」
「オレが本当にイジメを放置する最低な人間だと知って、なんでそんな風にしていられるんだ?」
ラクはオレから視線を外し、手を自分の顎の下に付け、曇り空を眺めながら考えていた。
数秒、空に向かって唸り声を上げながら考え、次は視線を落とし、数秒、目を瞑って眉間に皺を寄せた。
やっとラクのマジメな言葉というものを聞くことができるかもしれない。
そう思っていたのも束の間………。
ラクは考えがまとまったのか、再びニヤリと笑ってオレに視線を合わせて言った。
「ニヒヒ………わっかんねーぜー!! ガーッハハハハハ!!」
「………そうかよ」
「まあまあまあまあ、よくわかんねーけど………とにかく『面白そう」じゃない?」
「………」
またこれだ。
どの感情よりも、どの理論よりも、「面白そう」という思いを行動原理にしていることがわかる言い方だ。
しかし、オレにはラクのような考えを到底理解できない。
なぜならその「面白そう」の先にある景色をオレは期待していないからだ。
「そうか………ちなみにさっきの嘘。イジメ関連はよく知らん」
「なーんだ! まあカエデがそういうことをするやつじゃないってことはわかってるからさ!! グァハハハ!!」
「じゃあなんでさっきは信じてたんだよ」
「だってさ、イジメとか放置しなさそうなやつが、実は凶悪なやばいやつだったら一番面白いだろ??」
「たしかに………」
ラクが最後に言ったことはなんとなくわかる。
たしかに、見るからに優しそうな夢乃君が実は元ヤンキーだったら面白いし、見るからに清楚そうな椿さんがサイコパスだったときには、オレはもう椿さんの厄介ファンになるに違いない。
「たしかに………もしカエデ君みたいな人が天才だったら、めっちゃ面白いかも………」
伊波さんは口の横に人差し指の側面を当てて、想像しながら言った。
一見、オレのことを褒めているように聞こえたが、よくよく考えると、「オレが天才だったら」ということは、オレはその逆で、凡人か出来損ないと思われているということか。
間違いではないが、他人に言われると少し傷つく………。
「伊波さん、それはつまり、オレは出来損ないってことか?」
「えっ、うん。今はね」
「マジか」
伊波さんは表情を変えずに、悪びれる様子もなく言った。
こんなにストレートに言われるとは思わなかった。
もはや清々しいほどのキレだ。
「そんなことはいいじゃん! それでカエデ君、このメールの件、どうするつもり?」
オレにとっては全く「そんなこと」ではないやり取りだったと思うが、伊波さんの言うとおり、これからどうしていこうか。
オレがクラス代表でなければ、この一件には絶対に関わらなかっただろうが、メールの中でクラス代表を示唆されているため関わらずにはいられない。
さて、どんな風に立ち回ろうか………。
クラス代表として対処します
次回は、相談します




