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夢見た自由は遠すぎて  作者: 沢木キョウ
第二章 崩壊の後
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第九話 一年四組のイジメ

前回は、親友でした

今回は、メールです


「あらそう。私は伊波(いなみ)サク。よろしくラク」

「よろしくな! 伊波(いなみ)! えーっと……お前らって、付き合ってんの?」


 ラクは小馬鹿にするような顔でオレたちの方に歩きながら聞いてきた。


 なにを言っているんだ、この犬………間違えた……この野良犬は。

 オレと伊波(いなみ)さんが付き合っているわけがないだろ。

 どうしたらオレたちがそういう関係に見えるんだ。

 オレなんかと付き合っているように見えるって、伊波(いなみ)さんに失礼だぞ。


 ラクがオレたちと自然に会話できる距離まで来たのを確認し、オレは会話の続きを始めた。


「んなわけないだろ………なんでそう見えた?」


 別に期待はしていないが、一応聞いてみる。


「いやー、お前らお似合いだなーって思ってさ!!」

「お似合い? どこが?」

「どこって………今のやり取りだよ! 会話のやり方とか、超そっくりじゃん」

「それは勘違いだと思うぞ。伊波(いなみ)さんとオレはコミュニケーション能力も、社会性も、なにもかもレベルが違うんだ。な、伊波(いなみ)さん」

「そうだよー!! 私がカエデ君と釣り合うわけないじゃーん!! ラクの目は節穴だねー!!」

「あらー? おっかしいなー………俺、こういうの得意なんだけどなー………」


 別に期待はしていなかったですよ………。

 ちょっとだけしか………。


 伊波(いなみ)さんに、ラクがどういうやつか知ってもらったところで、本題に入ろう。


「すまん、伊波(いなみ)さん。こいつがどうしても一緒に帰りたいって聞かなくて、仕方なく連れてきてしまった」

「カエデ君がいいなら、私もいいよ! ()()はそんなに害がなさそうだし」


 伊波(いなみ)さんもラクの扱い方を心得てきたようだ。


「たしかにな」

「受け入れてくれるのは素直にうれしいけどさ、やっぱり俺の扱い雑じゃない? 一応、今日が初対面だよねー??」

「帰ろう! カエデ君! それと……ラグ!」

「おーい! ちょっとだけ名前間違えてるぞー!! たしかに文字にしたときの見た目はほぼ一緒だけどー、意味が全然変わってきちゃうからー!! オレの名前は『ラク』な『ラ・ク』!!」

「カエデ君、忘れ物ない?」

「うん」

「おい! 聞こえてるー? 俺の声聞こえてるー??」

「あーおっけー! 名前間違えちゃってごめんね! ポチ!」

「もしかして今、オレの一個前の発言に返答したのか!? え、なに、俺とお前ってラグいの? さっきのってそういうボケなん? っていうかオレはポチじゃなーい! さすがにわざとじゃないよね!?!?」

「さっきからずっとなに言っているんだ。早く行くぞ。カム」

「ペットに命令するみたいに言うな―! まあ取って来るけどさー、お前らといるとツッコミで疲れるわ………」


――――――――――


 伊波(いなみ)さんとオレで帰るつもりだったところにラクが参戦し、三人で帰っていた。


 一緒に話していて気づいたが、ラクは相当コミュニケーションを取るのがうまい。

 会話にしこりがなく、常にスムーズなやり取りができる潤滑油のような存在だ。

 それでいて、適度に変だし、いじりやすい。

 こいつとなら親友と言われても悪い気分にはならない。


 その証拠に伊波(いなみ)さんも積極的に会話している。

 彼女は、クラスメイトから話しかけられる機会が多かったが、実は自分から話しかけることはほとんどない。

 自分から行くとしたら、椿(つばき)さんとオレくらいな気がする。

 夢乃(ゆめの)君や小芽生(こがやおい)さんと話すこともあるが、どちらかというと受け身気味だ。

 そんな伊波(いなみ)さんでも素で話すことができているのは、よりラクのすごさを感じさせる。


「ラクってカエデのこと、どう思ってる?」

「ガチで面白いやつだと思うわ! 伊波(いなみ)にも見せてやりたかったぜー、佐倉(さくら)と話してるときのカエデをよー!」

「えー! 聞きたい! 動画とか撮ってないの!?」

「さすがにねーよ! それって盗撮じゃん! 俺、そういうのにはうるせーからな! ダッハハハハハー!!」

「え、使えな………」

「やっぱ辛辣ぅぅぅぅ!」

「オレは普通に佐倉(さくら)と話していただけだぞ」

「よく言うぜ。佐倉(さくら)と普通に話して生きて帰れるやつが何人いるんだよって話!」

「そんな、いくらでも………」

「そう言えるだけですげーんだよ!! お前らさ、三組に移籍して来いよ! もっと一緒に遊ぼーぜ!」

「カエデ君が行くなら、私もついていくよ!!」

「いや行かないぞ。というか他のクラスに移籍できるのか?」

「………………知らん!!!!!!!」

「こいつ………」


「(ピロン………)」


 三人で話していると、スマホの音が鳴った。

 その音はオレだけでなく、だれかのポケットからも聞こえた。

 複数人から聞こえたということは、また生徒会だよりなのだろうか。

 しかし、少し違和感があったような………。


「私のスマホかも、確認してみるね」

「オレも多分鳴った」

「生徒会から来たときと似てるな。じゃあ俺も一応確認してみるわ」


 オレたち三人は、それぞれスマホを開き、メールの内容を確認した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 一年四組へ


――――――――――


 このクラスにはイジメがある。

 しかし無能なクラス代表はそれを放置した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 届いていたメールは生徒会だよりではなかった。


 生徒会則に関するものではないが、それと同じくらい不穏な内容だ。

 『このクラス』ということは、おそらく一年四組のことだろう。

 そして、その四組にはイジメがあり、クラス代表、つまりオレがイジメを放置したと書いてある。


 どちらかというと、オレがイジメられている側のような………。

 あれ以来、なにも起きていないから、今はイジメられているとは言わないのか?

 判断が難しいところだが、このメールはどうせ面倒事に繋がるに違いない。


 オレは大きく溜息を吐いた。


私は伊波サク。よろしくラク

↑リズム良いですね


次回は、イジメです

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