第四話 クラスが暗い理由
前回は、ヒロインではなかったです
今回は、呼び出されます
ヒカリさんを二組まで送り届けた日。
その日は昨日までの重い空気が抜けていないようで、午前の授業合間の休み時間は、いつもよりも静かな教室になることは疑いようもなかった。
その空気をなんとかしようと、天賦君はリーダーシップを発揮しようとしているがそれもうまくいっていない。
なぜなら、みんなはもうオレと天賦君には期待していないからだ。
「もう夢乃がクラス代表になってくれよ」
「カエデ君も天賦君も使えないから、望君に代表やってほしーなー」
「いやー、どうかな………」
カーストトップグループを中心に、夢乃君をクラス代表として扱おうとする風潮が広まりつつあるのだ。
本人はあまりやりたくはなさそうだが、周囲が彼を推していて勝手にクラス代表になってしまいそうな勢いだ。
しれっとオレを悪く言っているようなことが聞こえたような………。
その証拠に、クラス代表にも関わらずオレはクラスで完全に孤立しています。
「伊波さん、一緒にお昼食べよ?」
オレの隣では伊波さんを昼食に誘う女子たちがいる。
このタイミングで彼女を誘うということは、彼女をオレから避けようとしているのかもしれない。
オレとしても、絶賛クラスメイトに避けられまくりで、評判も地の底を突き抜けるくらいまで落ちているオレなんかと、伊波さんが一緒に居るべきではないと思う。
ここで女子たちの誘いをちゃんと受けて、オレとは関わらないようにする。
それが普通の高校生活をしたいのであれば最適解だろう。
しかし………
「誘ってくれてありがとう! でも……ごめんね? 私はカエデ君と椿さんと一緒に食べるから」
「そう……なにかあったら、いつでも言ってね! 私たちは伊波さんの味方だから!」
「うん! ありがとう!」
ここまできたら予想はできていたが、やはり伊波さんはオレたちと行動をともにするようだ。
せっかく誘ってくれたのに、すまんな女子たち。
なんで彼女がオレについてくるのか、オレでもわからないんだ。
だからどうしようもないんだよな。
「じゃあ、カエデ君、心霊スポットに行こっか!」
「うん」
伊波さんは幽霊の出る場所を心霊スポットと表現するようになったのか。
オレら、オカルト集団かなにかか?
オレたちは昨日と同様、椿さんを誘い、三人で心霊スポットに行って、椿さんがつくってくれた弁当を食べることになった。
「それにしても、今日のクラスは活気がないように見えましたけど、なんでですかね?」
「曇りだからじゃない?」
「天気だけであそこまで暗くはならないと思う」
「そうかなー?」
「というか、活気がないのは昨日のあれだろ」
「あれ?」
「そう、あの男子生徒を退学させたやつ」
「そんなこともありましたねー」
伊波さんと椿さんは食事を取りながら今日のクラスについて話していた。
しかし、クラスに活気がない理由を、ボケではないのであれば、わかっていないようだ。
まるで昨日、その場にいなかったかのような反応をしている。
それか本人たちにとっては取るに足らない程度のイベントでしかなかったのかもしれない。
「これからどうしよっかなー」
「なにを悩んでいるのですか?」
「そりゃあ……面白いことないかなーって」
「急だな」
「だって、昨日のことが忘れられないんだもん!!」
オレの予想は外れ、伊波さんにとって昨日の出来事は辛いものではなく、忘れられないくらいの面白いことだったらしい。
本人にとっては全く暗くなるようなイベントではなかったから、クラスの空気に疑問を持ったのか。
たしかに昨日、みんなが帰った後に伊波さんは「刺激的だった」と言っていたし、彼女の感覚的には面白い出来事だったのだろう。
こいつは異常だ。
「どうせまた変な生徒会則が出て、昨日みたいなことが起きるだろ」
「えー! 待てないよー!」
「気長に、な」
「くぅーん………」
昨日の感じ、生徒会則は思ったよりも気軽に出されるのかもしれない。
急に、番外編!!とか言って生徒会則が出てきたし、正規の手順を踏むというより、完全に生徒会の独断で決めているようだ。
もしオレが生徒会に入ったらどんな生徒会則を出すんだろう。
前回のように、学食利用の強制というベクトルでいくのも悪くないし………昼寝用の時間を設けるというのもいいかもしれない。
現代の高校生は寝不足だということを聞いたことがあるし、この学校で現代の教育問題解消の一端を担うのも良さそうだ。
伊波さんのような刺激を求める人に向けての生徒会則を出すとしたら………どんなイカれたルールを出してやろうか。
「(ピロン……)」
ありもしない自分が生徒会メンバーだったらという妄想をしていると、スマホの音が聞こえた。
これは………オレのスマホだけか?
なら生徒会だよりではないな。あれが来るときは必ず全員のスマホの音が同時に鳴るはずだ。
「カエデ君の?」
「うん」
オレはあまり期待せずにスマホの画面を開いた。
メールが届いていた。
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話がある
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放課後、屋上で待っている。
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必要最低限の情報だけで書かれたメールの内容は、放課後、オレを屋上に呼び出すものだった。
もうここまできたら、なにを話そうとしているのかわかりますよ。
どうせ昨日のことでしょ?
お前はクラス代表に向いてないとか、最低なやつだとか言われるんでしょ?
これを送ったのはクラスメイトのだれかか?
向こうはバレていないと思っているだろうけど、陰で散々、オレはクラス代表として終わってるとか、夢乃君ならなーって言ってたの気づいてますよ?
こうなれば、この呼び出してきたやつに、オレの方から一言物申してやる。
「メール来てた? だれから?」
「敵」
普通に考えてこんな状況で普通の顔して学校来てるのすごいですよね
次回は、屋上で話します