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夢見た自由は遠すぎて  作者: 沢木キョウ
第一章 花梗高等学校
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第四十三話 クラス代表とは

前回は、図書館でした

今回は、場面ががらりです


――――――――――入学式前のある日


「ねえねえ、『クラス代表を指名』ってなに?」


「なにって……『クラス代表を指名する』という、そのままの意味なのだが……」


「そうじゃなくて! なんでわざわざ『クラス代表』っていう地位をつくるの? 普通の学校みたく『委員長』じゃだめなの?」


「ふむ、たしかにそうだな……しかし、我々が欲しているのは『委員長』ではないのだ」


「どういうこと?」


「『委員長』というのは、クラスのリーダー的存在として、その地位を設けられている。しかし、実際は教師や生徒会の指示をクラスメイトに伝達するだけの、ただの奴隷だ。要するに、『委員長』というのは『リーダーごっこ』を体現した、おままごとの延長の存在でしかないのだ」


「そんなこと……」


「では聞こう。もしクラス単位で、なにかミスを犯してしまった場合、だれが責任を取る? 委員長か? 副委員長か? それとも、ただのクラスメイトか?」


「学生が犯したミスなら、その責任を取るのは…教師…とか?」


「まあ、そうなるだろうな。しかしどうだろう……それは実社会に通用するだろうか?」


「それは……」


「もちろん、ミスの原因が教師にあれば別だが、原因が生徒にある場合、その未成年たちはだれも裁かれないのだ。精々、上面の言葉で、互いの傷を舐め合うくらいだろうな」


「じゃあ、もし裁くってことになったら……罰金でも科すの? それとも、退学とかさせるの? そんなの絶対……楽しくないよ…」


「楽しくない、か……そう思う人がいるのも重々承知している。だから指名するのではないか。すべての責任を負うと同時に、それ相応の力を振るう権利を持つ存在を…」


「それが、『クラス代表』ってこと?」


「そうだ。葉流乃(はるの)が言ったとおり、責任を負い、だれかを裁かなければならないことを『楽しくない』と思う人もいるだろう。もしかしたら高校生、いや人類のほとんどが、葉流乃(はるの)の言葉どおりの考えをしているかもしれない」


「じゃあどうして……」


「私は……見たいのだ……――が話していた『ホンモノ』というやつを。この指名によって、クラス代表が『楽しい』という感情を欠落させることになってもな。まあ、そもそもリーダーに感情が必要なのか、いささか疑問ではあるが」


「なんかよくわからない……」


「それでいい。学校が始まったら葉流乃(はるの)たちも()()にできるだろうから、そのときにまた考えてみるといいさ」


「わかった……ところでさ、もうクラス代表と副代表をだれにするかは決めたの? 面接は終わったんでしょ?」


「まあ、面接は終わっているが、指名はこれからだ。なんていったって、これを決めるのは、『生徒会』なんだからな」


「ってことは……もしかして、全員分の面接の内容を確認しなきゃいけない……?」


「そうだ」


「ぐぐぐぐ……」


「百二十人の中から、クラス代表、副代表に推薦したい人を一人ずつ選んでくれ」


「え、百二十人ってことはさ、生徒会メンバーを指定するのもありなの?」


「もちろんだ。生徒会もこの学校の生徒には変わりないからな」


「ふーん……」


「まっ、そこらへんは()()にやってくれ。ただし、一つルールが設けられている」


「ルール?」


「そうだ、それは…『だれを推薦するかの相談を禁止する。またそれぞれが、だれを推薦したかは生徒会メンバー間では秘密とする』というものだ」


「えーなんでー!!」


「――からの指示だ。素直に従ったほうがいい。もし、推薦対象が被ってしまった場合は、『――が余った枠を指名する』とのことだ」


「んー……まあ、わかった」


「だれがクラス代表、副代表になるか、最終結果が決まり次第、生徒会メンバー全員に報告する。では、失礼」


 …………


 はあぁーーーー。

 これから百二十人分、全員の面接内容を確認しないといけないのかー……。

 その中から代表候補を……はぁ。


 それにしても、さっき――さんが言ってたこと、私には理解できなかったなー。


 高校生はまず、楽しまなきゃいけないと思うんですよね。

 もちろん、勉強とか部活とか、いろいろありますけど、その全部を楽しむべきです。はい。

 それでクラスのリーダーが「リーダーごっこ』になったとしても、別に良いんですよ。楽しければね。

 なのに、あんなことを言うなんて。

 ――さんは「リーダー」というものに対して思うところがあるようだし、人生経験が違いすぎて、それを真っ向から否定できないなー。

 

 私も、リーダーについて考える機会が増えたら、――さんみたいな考えになっていくのかな。

 感情は必要ない! リーダーに楽しさはいらない! ってな感じで。


 こんなことを考える私は、優柔不断すぎてきっとリーダーに向いていないんだろうな。

 そもそも生徒会の中で一番能力の低い私が選ばれることなんてあるわけないし、ごめんなんだけど、私は、私の目的のために行動させてもらうよ!


 なにが生徒会だ! なにがクラス代表だ!


 私は、友達をたくさんつくりたい、ただの高校生だ!!


――――――――――


すべての責任を負うと同時に、それ相応の力を振るう権利を持つ存在

私は……見たいのだ……――が話していた『ホンモノ』というやつを

まあ、そもそもリーダーに感情が必要なのか、いささか疑問ではあるが

高校生はまず、楽しまなきゃいけないと思うんですよね


リーダーに必要なのは、圧倒的な能力か、人間的な感情か


次回は、その日です


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