第三十八話 最後の平穏 (一)
今回で、総文字数100000字行きました
ありがとうございます
前回は、勝負でした
今回は、マジメです
生徒会則が出て七日目。
ついに生徒全員が学食を利用しなければならない期間の最終日だ。
昨日はノリで、佐藤君と中間テストの合計点で勝負する約束をしてしまったが、オレはやるからには本気で行こうと思う。
どうせなら勝った方が気持ちいいだろうし。
たかが口約束上での勝負だとしても手は抜かない。
それで空気の読めないやつだというレッテルを貼られたとしても、だ。
さて、今受けている数学の授業の内容もおそらくテスト範囲だろうから、マジメに向き合ってみよう。
四ノ宮先生が話した言葉を、最初にもらった資料と照らし合わせてみる。
「この方程式を因数分解することで、ワイがゼロのときのエックスの値を求めることができるが、頂点の座標を求めたいときは別だ。このときは因数分解をする必要はなく、代わりに平方完成というものを行う。平方完成のやり方は資料のとおりだ・・・」
どうやら今やっているのは二次関数についてらしい。
資料のページ数的に、中間テストではこの範囲がメインになりそうな気がする。
オレは、四ノ宮先生の話を聞きながら、資料に書いてある内容に目を通した。
…このくらいの難易度であれば問題ないな。
強いて言うなら計算ミスが怖いくらいか。
個人的な感覚では、もっと授業が進んでいるような気になっていたが、そういえばまだ二週間くらいしか経っていなかった。
この量だと、最初の中間テストは、さすがに難易度は高くないだろうな。
…どうせなら、満点とか狙ってみるか。面白そうだし。
オレはこの後の話もマジメに聞き、その後の現代文、物理基礎、英語の授業を受けて昼休みになった。
「伊波さん、学食行くか」
「うん!」
「ちょっとまったー!!」
伊波さんとオレが学食に行こうとして席を立ったときに、後ろからオレたちを呼び止める声が聞こえてきた。
後ろに振り返ってみると、そこにいたのは佐藤君と鈴木君だ。
やべっ。二人の存在をすっかり忘れてた。
授業のことで頭がいっぱいで、オレの脳内から二人の存在を勝手に消してしまっていた。
すまん。数少ない伊波さんと話すことができる機会を放棄してしまうところだった。
「(忘れてた! ごめんよ)あっ…四人で行くか」
オレは心のなかでだけ謝って、自然な流れで二人を誘って学食に行くことにした。
後ろの二人は、みんなに見える位置で盛大なガッツポーズをして、また変な言葉を叫んでいた。表現の仕方が難しいけど、ちょっと自我が出すぎなゾンビって感じの、そんな声。
「今日もか…」
横にいた伊波さんは、小さな声でそう言って、斜め下を向いて残念そうな顔をしている。
これは佐藤君たちと一緒に学食に行くことになったことに対してだろう。
このまま、あの二人のアオを引きずってしまうと、伊波さんにかかる負担が増えてしまうような気がする。
興味のない人から向けられる恋愛感情は、どちらかというと伊波さん側が気を使わないといけない。
だからこそ、どこかで区切りをつけてあげるべきだな。
「まあ……行こうか」
「うん…」
今日は事前に話をしていたというわけではないので、夢乃君と小芽生さんはいない。
つまり、会話を盛り上げる人が少ないため、昨日よりもオレは話さなければならないタイミングが多いということだ。
どうしようかなー。会話をしないための良い逃げ道はないかなー。
そう思って、オレは教室全体を見渡してみた。
教室の中で目を引いたのは、やはり夢乃君たちのグループだが、あの中から夢乃君と小芽生さんを引き抜くのは無理だ。
さらに全体を見渡してみると、目に映ったのは、自分の読んでいる本と、オレたちとを視線で行き来している椿さんだ。
本人はきっと無表情を貫いているつもりだろうが、視線がすべてを物語っている。
その目からは、どう話しかければいいのか迷っているのが伝わってくる。
会話が得意なタイプではないと思われるが、どうせなら誘ってみるか。
この前、一緒に学食を利用したときは、伊波さんとの相性が良かったように見えたし。
彼女がいるだけで、伊波さんが楽しい昼休みを過ごすことができるのであれば、誘い得ってもんだ。
「伊波さん、どうせなら椿さんも誘うか」
「えっ! いいの? じゃあ、私が誘ってくるね!!」
オレが提案すると、伊波さんは椿さんの席まで向かって、お尻を振りながら笑顔で誘っていた。
椿さんの方も、満更ではないようで、会話のキャッチボールを二回ほどすると、しおりを挟まずに本を閉じて笑顔で席を立ちあがってこちらに歩いてきた。
「連れてきたよ!」
「お久しぶりです! また、ご一緒出来て嬉しいです…」
「いや、こちらこそありがとう。佐藤君と鈴木君も一緒だけど、大丈夫?」
「あー…はい! カエデさんと伊波さんと話せるなら、大丈夫です」
「なるほど…」
椿さんは視線を泳がせてから、下手な笑顔で答えた。
今の反応からして、どうやら椿さんも、佐藤君と鈴木君のことをあまりよく思っていないようだ。
やはり、最初についてしまった印象はそう簡単には変えられないということだろう。
自業自得だから仕方ないが。
(ぐぅーー)
おっと? 今の音、お腹の音がすぐ近くから聞こえてきたような…。
そして目の前には顔を赤くして視線を下に向けている椿さんが…。
そうだった。椿さんは結構食べる系の、かわいい? 女子だった。
もう学食に行ったほうが椿さんは恥をかかなくて済むだろう。
「オレ、今日はちゃんと授業受けたから、いつもより腹減ったな……行くか」
「私もお腹空いたー!」
「ワタクシも……お腹が減って…//」
「椿さんの照れてる顔もかわいい!!」
「えっ! 伊波さん気づいていらっしゃったんですか…」
「あははっ…さあ行こう!!」
「ちょっとどっちなんですかー!!」
伊波さんが先に学食に向かって歩き始め、その後ろを追いかけるように、椿さんも学食に向かい始めた。
伊波さんは椿さんといるときが一番いい笑顔になれている気がする。
あとヒカリさんといるときも…。
小芽生さんとか、夢乃君といるときは決して見せないような表情だ。
二人はなにか共通点でもあるのだろうか…。
そういえば、オレと二人でいるときも、満面の笑みでいることが多いような…。
まあ、気のせいか。
「おい、いつまでガッツポーズをしてるんだ。行くぞ」
今の今まで、ずっとガッツポーズをしていた佐藤君と鈴木君を誘って、オレも伊波さんたちを追いかけるように歩み始めた。
なんか、最近何もなくてつまらないなー。
授業に行って、学食に行って、帰って寝るだけのループ。
最初は面白そうな学校だなって思っていたけど、自由もなく、勉強も辛い。
学校に来なくてもいいと言われても、行かないと人間関係に問題が起きるし、なぜかオレがクラス代表になっちゃうし。
急に刺激的な生徒会則とか出ないかなー。
…どうせなら、満点とか狙ってみるか。面白そうだし
オレの脳内から二人の存在を勝手に消してしまっていた
どこかで区切りをつけてあげるべきだな
二人はなにか共通点でもあるのだろうか
急に刺激的な生徒会則とか出ないかなー
学校が始まって二週間で二次関数ってことは、集合と命題はもう終わってて、因数分解も終わってます
次回は、呼び出しです




