第三十六話 二日前 (三)
お久しぶりです15日ぶりくらいです
この期間で
この生徒会則の着地点、主要キャラクターの過去や性格・目的などの整理、次の生徒会則について、第二章以降の展開などいろいろ考えてました
ここからは、問題がなければ第一章の終わりまで駆け抜けていきます
よろしくお願いします
前回は、提案しました
今回は、誘います
佐藤君と鈴木君が久しぶりに学校に来ても、いつもどおりの授業が行われ、昼休みになった。
「じゃあ、オレは夢乃君と、小芽生さんを誘ってくる」
「わかった! 待ってるね」
オレは朝の約束どおりに、夢乃君と小芽生さんを誘いに授業が終わって、まだ椅子に座っている伊波さんに一言だけ据え、彼らの席に向かった。
その席の周りには、すでに大勢の陽キャたちが集まっていて、その中に単騎特攻を仕掛けて、男女それぞれの代表格をオレたちのグループに引き抜くというのには勇気がいる。
それでもオレは、人を掻き分けて夢乃君と小芽生さんの元までたどり着いた。
オレが彼らの輪の中に入ると、それまで盛り上がっていた会話は急に途絶え、奇妙な静けさが襲ってきた。
案の定、オレに向けられている視線は決して良いものとはいえない。
学校が始まって間もないけど、夢乃君と小芽生さんとは結構話しているつもりだ。
なぜ、こんなにもみんなは怪訝そうな目でオレを見る……。もうそろそろ周りのみんなもオレの気持ち悪さに慣れて欲しい。
するとオレが話しかける前に、夢乃君は机に腰をかけたまま右手を上げて話しかけてきた。
「よっ! カエデ! 珍しいなー、カエデがこっちまで来るなんて」
コミュ強の反射神経はさすがだ。先手を取られてしまった。
そういえば、オレって夢乃君と結構関わっているつもりでも、オレのほうから彼を誘いに行くことは少なかったな。
だからみんなはオレが何かを企んでいると思って、そんな目を向けてくるのか。
そんなことはさておき、さっさと本題に入ろう。
この複数人に囲まれている状態は、精神衛生上よくない。
ボロが出る前に早くここから離れなければ。
「夢乃君、今日この後、伊波さんとオレと一緒に学食に行かないか? 佐藤君と鈴木君も一緒なんだ。小芽生さんも一緒にどう?」
オレは夢乃君だけでなく、同じ机に腰をかけて、夢乃君とは別の方向を向いてオレに気づいていなさそうな小芽生さんも一緒に誘った。
小芽生さんは、オレの言葉を聞くと、机から体を離して真っすぐ立った。
そのまま彼女は体を回し、手を後ろに組んでオレの方を見て、夢乃君と同時に笑顔で言った。
「もちろん!」「もちろん!」
あら、息ぴったりだこと。
この二人であれば断られることはないだろうと思いつつも、内心では一抹の不安が拭い切れていなかった。
「ありがとう、じゃあ行こう」
オレは二人の解答に若干の安心感を覚えつつも、それを決して表情に出すことはなく、あたかも当然かのように返事をした。
そのままオレは、集団から逃げるように背中を向けて、伊波さんのいる席まで足早に歩いていった。
そのときも、変な視線を向けられていたが、オレはそれに気づいていないフリをして歩みを進めた。
集団から脱出すると、そこから声が聞こえてきた。
「なあ、望、小芽生さん。伊波さんはともかく、あいつに関わるのはやめとけって。ただでさえ良い話を聞かないのに、あいつから話しかけに来るなんて怪しいぞ……」
「私も、あいつのこと嫌いかも。なんかキモくない? クラス代表だからって夢乃君と、もみじちゃんのことを誘おうだなんて……」
その声は、おそらくさっきまで静かにオレのことを見ていた、夢乃君と小芽生さんとよく一緒にいる生徒たちだ。
オレは誰かに批判されることに慣れているが、夢乃君と小芽生さんの返答は気になるところだ。
彼らに良い目をするために、便乗してオレのことを悪く言うのか。
それとも、他人の意見を気にせずに、本心を話すのか。
二人がオレを心の底から嫌っていたら話は別だけど……。
「カエデはいいやつだよ」
「うん! ウチもそう思う! カエデ君はみんなが思っている性格じゃないかもね! ウチらのことは気にしないで、みんなも学食に食べに行きなよ! 生徒会則もあるんだしさ!」
「二人がそう言うなら、これ以上はなにも言わないけど……気を付けてね」
「おう」「うん!」
二人はオレのことを悪く言わなかった。
その優しさはありがたいけど、同時に少し心が痛む。
オレは、オレがいいやつだとは思わないのに、二人は……。
後ろの会話に聞き耳を立てながら、オレは伊波さんの席まで着いた。
そこには、すでに佐藤君と鈴木君もいて、椅子に座っている伊波さんと話していた。
「伊波さんは、出身どこなんですか?」
「伊波さん! 音楽とか聴きますか?」
「ゲームは?」
「運動とか!」
「勉強は??」
「あーうん。んー……内緒ってことで!!」
「はぁぅ//」
伊波さんはまた質問攻めにあっていた。
返事をするのがめんどくさくなったのか、口角を上げて片目を閉じ、右手の人差し指を唇の前に添えて、適当に誤魔化していた。
二人は、その表情に完全にやられたようで、床に膝がついて顔は下を向き、口からは空気が抜けているような変な音が漏れていた。
傍から見たら、伊波さんは完全にサークルクラッシャーみたいになっている。
「おっ! カエデ君! どう? 二人は誘えた?」
「…もちろん」
オレが謎の光景に呆れていると、伊波さんは視線をすぐにオレに向けて席を立って話しかけてきた。
夢乃君もそうだったけど、コミュニケーションがうまい人は、話の切り出しが早い。
会話の一言目を発することで、その場の主導権を握っているみたいな、そんな感じだ。
オレが伊波さんに返事をすると、すぐに後ろから例の二人が来た。
「やっほー! サクちゃ…ん」
「俺たちも一緒に行ってもいいんだよ…な?」
二人は、佐藤君と鈴木君の床に膝を付けている状況に軽く困惑しているようだ。
「もちろん! ほらっ! みんなで行こ!」
「そう…だな」「ウチ、もう腹ペコだよー…」
伊波さんは、佐藤君たちに視線を向けることなく、学食に向かって小さくスキップをしながら、そのまま教室を出て行った。
夢乃君たちも困惑しているものの、伊波さんに付いて行き、教室を出て行った。
このままでは、佐藤君たちが主役のはずの昼食会が、佐藤君たち抜きになってしまう!
牛肉抜き牛丼くらい深刻だな……
……そんなことはさておき、
「ほら、二人とも。現実に戻ってこい。伊波さんたちはもう行ったぞ」
「はっ!! あれ、俺は今まで一体何を……」
「ここはだれ? 僕はどこ?」
「今まで意識失ってたんかい。というか、そんなに伊波さんの表情は刺激が強かったんですかねー。記憶までなくなっちゃうくらいだもんな。そんなこと言ってないで、早く行かないと、せっかくの話せる時間が減っちゃうんじゃないか?」
「そ、そうだ……俺はいかなきゃいけない。こんなところで…止まっては……いられないんだ!! 伊波さーーん! 今から行きまーーす!!」
「ぼ、ぼくも……前に…進まなければ……ならない!! 自分を……変えるために!! 伊波さん! 待っててくださーーい!!」
佐藤君と鈴木君は、覚醒する直前の主人公くらいの覇気を纏って教室を駆け出して行った。
この二人であれば断られることはないだろうと思いつつも、内心では一抹の不安が拭い切れていなかった
うん! ウチもそう思う! カエデ君はみんなが思っている性格じゃないかもね!
やっぱり、いいやつでした
次回は、楽しく食べます