第三十五話 二日前 (二)
前回は、モブたちが来ました
今回は、モブたちと朝です
※すこーしだけ、第一章の終わりに向けて整理しますので、数日投稿ないです申し訳ございません
「俺の気のせいじゃなければいいんだけど…あの二人、変だよ」
夢乃君はパっとしない顔で言った。
「変って、どういうこと?」
伊波さんは夢乃君の目を見て言った。
「どう表現すればいいか悩むところだけど…二人って、あんなに純粋だったっけ? って思ってさ」
「純粋?」
「そう。彼らを悪く言うつもりはないんだけど、最初のころは、もっと問題生徒っていう感じだったような気がする……。それが今では別人みたいにキレイに見えるんだよな」
「それは……いいことなんじゃないの?」
「そうだけどさ……短期間で変わりすぎじゃないか?」
「気のせいじゃない?」
「そう、なのかな…」
夢乃君は佐藤君たちに対する違和感を述べた。
彼らが純粋に見える理由は、おそらくアオによるものだろうけど、そのことを知らない夢乃君からすると、急に性格が変わったように見えるんだろうな。
それにしても、恋愛って面白い。
好きな人がいるというだけで、行動や考え方、性格までもが影響されてしまう。
言い方を変えてしまえば、もはや一種の洗脳といえるかもしれない。
洗脳と聞くと悪いイメージを抱くかもしれないが、それが自分の理想に近づくための再設定なら、むしろ良いと思う。
だから、夢乃君の心配は杞憂に終わるだろう。
「彼らがクラスに馴染めるのなら、それに越したことはないんじゃないか? だから夢乃君は心配する必要ないと思う。どうせなら夢乃君も、後ろで話してる集団に入ったらどう? 実際に彼らと話したら、本当はいいやつだったってこともありえるだろうし」
「いろいろとありがとう、カエデ。じゃあ、お言葉に甘えて、俺も彼らと話してみることにするよ!!」
夢乃君は、オレの提案に乗って、陽キャグループの集団に入っていった。
それを見て伊波さんは、自分の席に座って、また後ろの集団を眺めていた。
オレはその姿を見て、話しかけることはなく、体を正面に向きなおして静かにホームルームを待つことにした。
それから程なくして、教室の前のドアが開いた。
「席につけ、ホームルームを始める」
教室に入ってきたのは四ノ宮先生だ。
先生はいつもと変わらず、感情のない顔で教卓まで歩いた。
それと同時に教室の後ろで話していた集団も、それぞれの自分の席へ戻っていった。
普段より、二人ほど多くなった教室に、あの鉄面皮先生が、なにかリアクションをするかもしれない。
あの人は、入学式の日以外は、同じようなことしか話していないからこそ、プログラム外のことを言うかもしれないと、小さく期待しているのだ。
「今日の予定についてだが……」
入りはいつもと同じだ。
表情も変わらず、その目もオレたちを見ているようで見ていなかった。
その後も淡々とホームルームは進んでいった。
なんだ……いつもどおりか。
たかが佐藤君たち如きでは先生はなにも思わないんですか。
いや、まだわからないぞ。
もしかすると、ホームルームの最後になにかを言ってくれるかもしれない。
「……これで、朝のホームルームを終わる」
四ノ宮先生は結局、普段と同じホームルームを終えて教室を後にした。
だー! くそー! この先生をバグらせる方法はないのかよー!
佐藤君たちのこと、見向きもしなかったな。
せっかく勇気を出して学校に来ただろうに、かわいそうだと思わないんですか?
ほら! 佐藤君たちを見てみなさい! 彼らの目にも涙が……、
「伊波さん! ありがとう!」
あれ?
「伊波さんのおかげで、俺たち、学校に来る決心がついたんです!」
晴れた表情で伊波さんの席の左右に立って、彼女にお礼を言っている……。
なるほど、彼らはこの学校に来て授業を受けたいとかではなくて、ただ単純に、伊波さんに会いたくて来てるのか。
だけど、手ごたえは全然なさそうに見える。
「あ、うん。よかったね」
伊波さんは、やはりこの二人と話すときはつまらなさそうな笑顔を作っている。
それに、佐藤君たちに左右に立たれて迷惑しているようにさえ見える。
恋は盲目というが、盲目すぎて迷惑をかけてしまうなら、もはや本末転倒では?
「そうだ! 伊波さん! 今日、一緒に昼食べませんか? 俺たちがいなかった数日で、変わったこととかがあれば、教えてほしいなって…」
自分が今、迷惑をかけていることを自覚しないまま昼食に誘うとは…なかなか度胸はあるようだな。
「いいよ。カエデ君も一緒だけど、大丈夫?」
またオレを巻き込むのか!?
「もちろん! カエデもいいやつだし、もっと話してみたいと思ってたところなんです!」
「もしかして伊波さんは、僕たちがカエデとも仲良くしたいということを察して提案してくれたんですか!?」
「うん。そうだねー」
この二人、伊波さんの言葉を勝手に解釈してるな。
あー怖い怖い。
「カエデもこれからよろしくな!」
オレが三人の会話に聞き耳を立てていると、佐藤君たちがオレのほうを向いて言ってきた。
オレの意思とは関係なく物語が進んでいることに、多少の憤りを感じてはいるが、ここで断ると、陽キャたちにも顔向けできないし、適当に返事をしておくとしよう。
「よろしく」
どうせなら、この場に会話回し担当の夢乃君と小芽生さんを呼びたいな。
そしたらオレの話さなきゃいけない回数が減るだろうし。
「伊波さん、夢乃君と小芽生さんも一緒に食べるのはどう?」
オレは二人越しに伊波さんに聞いた。
もちろん彼らに選択の機会は与えずに。
「カエデ君がいいなら、いいよ!!」
伊波さんは笑顔で答えてくれた。
「というわけだけど、佐藤君たちもいいよね?」
少しずるいかもしれないが、先に伊波さんの言質を得たら、この二人は断ることができないだろう。
そのアオ、利用させてもらうぜ。悪く思うな。
「もちろん!!」
「伊波さんとカエデがいいなら僕もいいよ!」
短期間で変わりすぎじゃないか?
伊波さんは、自分の席に座って、また後ろの集団を眺めていた
オレの意思とは関係なく物語が進んでいることに、多少の憤りを感じてはいる
四ノ宮先生は一応人間ではあります
※すこーしだけ、第一章の終わりに向けて整理しますので、数日投稿ないです申し訳ございません




