第三十話 四日前 (二)
このエピソードで、本編第三十話です
そういえば、この作品の投稿を初めて一か月くらい経ちました
連続投稿は二十日くらい続いています
ありがとうございます
前回は、待ち合わせでした
今回は、喧嘩です
改稿 4/21 第一話~第三話
※ストーリーの変更はないです
オレは伊波さんと学食に行くために、待ち合わせ場所として公園に来ていた。
ここは、遊具が多いわけではなく、ブランコ、砂場、変な形の遊具しかない小さな公園だ。
彼女はまだ来ていないから、ここにある数少ない遊具の一つであるブランコに乗ってその時間が来るまで待つことにした。
「てめぇ、調子乗ってんじゃねーぞ」
「ず、ずびばぜん!!」
すでに痣だらけの鈴木君は地面に倒れ、その体をイジメサイドの椅子代わりにされており、腹がだらしなく出ているが身長も高い男子生徒に胸ぐらを掴まれて目を赤く腫らしている佐藤君は、大泣きしながら謝っていた。
イジメサイドの三人中、青髪は鈴木君の上に座って、赤髪は佐藤君の胸ぐらを掴み、緑君はオレの隣でブランコに乗ってスマホでイジメの現場を笑顔で撮影している。
制服は着崩して、髪色もそれぞれ青、赤、緑で、見るからに不良という外見をしている男子たちだ。
しかしまあ、泣日にも関わらず、元気なじゃれあいを繰り広げていますねー。
……って隣になんかおるやんけ!
って言いそうになったが、ここで声を出して驚くと、向こうで楽しそうに騒いでいる二人にバレてしまうと思ったから、必死に声を押し殺した。
どうしよう。めっちゃ気まずい。
ブランコに座って、イジメの現場を撮影してて、気づいたら隣に全く関係のない知らない人が座ってましたーって、ギャグにもほどがあるだろ。
でもなー……うーん……そうだなー……まあ……いいや。
オレは思考を放棄してその場で何もせずに伊波さんを待つことにした。
静かすぎる公園は物寂しいだろうから、あの四人のじゃれあいをBGM代わりにするのも悪くないかもしれない。
伊波さんが来たら何を話そうかなー。
平日はほとんど一緒に居すぎて、話すネタがほとんどなくなってきている。
「今日の天気、すごくいいね!」は話が盛り上がらなさそうだし、「この前の授業で扱った試薬なんだけどさ……」は泣日なのに学校の話をするのはちょっと……って感じだし、どうしたものか……。
オレはブランコを前後に小さく動かして、地面の砂を両靴の裏で擦りながら考えた。
しかし、BGMが邪魔でうまく思考がまとまらない。
はぁ……やっぱり何かを考えるときは静かな場所に限るな……。
「ガッハッハー……てめぇら弁償しろよ」
「ヒィー! ごべんだざいー!!」
話のネタ、そこらへんに転がってないかなー。
早く考えないと、また伊波さんに話を回す役目をさせてしまう。
「ほんっとうにザコだなー! あーあ、そこの地面のやつの顔面変えちゃおっかなー」
「ゆぐじでぐだざいー」
話のネタ……話のネタ……。
「そんな簡単に許すわけないだろーが…よっ!!」
「いだい! いだいでずー」
あーもう、このBGM鬱陶しくなってきたなー。
……
あっ! 目の前に話のネタがあるじゃん!
よし! この光景をスマホに収めよう! 後で二人を助ける証拠にも使えるだろうし。
オレは急いでポケットからスマホを取り出して、隣に座って動画を撮っている男子の真似をしてスマホで撮り始めた。
二人の男子が二人の男子に暴力を振るっていて、二人の男子がブランコに座ってそれを撮っている。
外から見ると、違和感を感じる光景だろうけど、これは、話のネタになるぞー……。あと人助け。
動画を取り始めると、まずは声が入った。
「何してるのー?」
声の方角は公園の入り口からで、それは明らかに、この公園にいた誰とも違う楽観的な女子の声だった。
その声で、暴力を振るっていた男子たちの手が止まって公園の入り口の方を向き、オレと、隣に座っていた男子の撮影の対象が、男子たちから声の主の方向へ変わった。
すごいタイミングだ……。
オレはスマホの画面越しにその女子を見ると、それはオレが合流する相手の伊波さんだった。
もう少し、このじゃれあいの展開を見ていきたい気持ちがありつつも、本来の目的である伊波さんとの待ち合わせが完了したから、オレはスマホをポケットにしまって静かにブランコから立って、伊波さんの元まで行こうとした。
「はっ! お前、いつから……」
隣に座っていた男子がスマホで撮影することを忘れ、オレのことを見て目を丸くしていた。
その熱い視線を受けて、オレも歩きながらではあるが、お返しに、その人の目を二秒ほど見つめた。
ファンサービスというやつだ。
「あ、あっ、あっ……」
どうやら、その男子はオレのファンサに感動したようで、全身が麻痺して変な呻き声を上げる廃人のようになっていた。
そんなに喜んでもらえるなんて、今からアイドルでも目指しちゃおっかな。
ありもしない夢を想像しながら、伊波さんの元まで歩いていく。
「おい……」
佐藤君のことをタコ殴りにしていた男子の一メートルほど横を通り過ぎそうになったとき、オレを威嚇するかのような野太い声が聞こえた。
この声は、もしやイケボか?
なるほど、低めの声を出すとイケボっぽく聞こえるのか。
オレも今度試してみよっと。
っと危ない。
イケボに感心するばかりで、呼びかけを無視してしまうところだった。
オレは足を止めて、その男子の顔を見た。
近くで見るとわかるが、体が大きく威圧感がある。
鼻息がうるさく、体からは熱気が溢れている。体内に蒸気機関でもあるのか? 顔も赤いし。
「てめぇ、なにしてた?」
威圧しながら、そんなことを聞かれても、オレは待ち合わせをしてただけなんだよな。
「待ち合わせ」
オレはつまらない男だから、なんの捻りもなく素直に伝えた。
すると、蒸気機関人は佐藤君を地面に投げ飛ばして、手の骨をパキパキとならしながら、オレの目の前まで近づいて言った。
「そうかぁ……てめぇの待ち合わせ場所はここよりも……天国がお似合いだぜぇ!!」
そう言いながら、蒸気機関人はオレに向けて拳を振り上げた。
なんでオレは殴られそうになっているのかが謎だけど、癇に障るようなことをしてしまったのだろうか。
すぐ隣を通りすぎたから怒ったのか?
この人たちのテリトリー? に勝手に入ったから怒られたのか?
「ま、まて!!」
ブランコの方向から声がしたが、それを無視する勢いで、その拳をオレの顔面目掛けて飛ばしてきた。
ここでオレには選択肢がある。
一、普通に殴られる。
これは素直な選択肢ではあるが、実はできない。オレの本能には、攻撃が当たりそうになったら自動で反撃してしまう面倒なシステムが構築されている。
この選択肢を選ぶと、相手をケガさせてしまうリスクがあるのだ。
二、ギリギリで躱す。
これは簡単にできるが、一撃で終わってくれないのが面倒だ。タイムパフォーマンスが悪く、伊波さんが折角誘ってくれたのに、彼女の時間を奪ってしまう可能性がある。
三、受け止める。
これも簡単にできるが、手癖で反撃してしまう可能性がある。
一つ目の選択肢と同じく、相手がケガしてしまうリスクがある。
さてどれを選ぼうか。
今日会ったばかりの知らない人のことを考えても仕方ないし、伊波さんの時間を奪わないことを最優先にするべきな気がするな。
となると、オレが選ぶべきは、一つ目か三つ目になるわけだが、どっちを選んでもケガさせてしまう可能性が……。
「死ねええぇぇぇぇ!!」
蒸気機関人は顔面を真っ赤にして叫びながら攻撃してきた。
オレが蒸気機関人の体のことを心配しているというのに、選択しきる前に攻撃が飛んできてしまった。
もう……いいや。
オレは何も考えず、未来の自分に全てを託すことにした。
(バンッ!!)
あれ? 音がしたけど、オレには何も起きてないし、攻撃の気配が消えた……。
確かに、あの勢いのまま来たら攻撃を途中でやめることはできないはずだ。
一体なにが……。
オレは、この奇妙な現象の結末を知るために拳の行方を探した。
「ちょっとーやめてよー」
その拳は、オレの目の前で、手の平で誰かに受け止められていた。
そして、その手の近くからは女子の声がした。
そう、伊波さんだ。
ここでオレには選択肢がある
なぜか強い伊波サク
伊波さんが強いのにも理由があります
今はわからないけど
次回は、佐藤と鈴木です




