第二十三話 七日前 (三)
総PV600超えました
ありがとうございます
前回は、食べました
今回は、なくします
改稿 6/6
椿さん、伊波さん、オレの三人は昼食を取り終えて教室に戻った。
オレたちよりも早く昼食を取り終わって教室に戻っていたクラスメイトから、明らかに冷たい視線を感じた。
みんな、直接は言ってこないものの、なにを言いたいかは推測できる。
「なんで今日は、伊波さんだけじゃなくて、椿さんも一緒だったんだよ!!」
「お前如きが、あの二人に関わるな!!」
大体こんなところだろう。
今後はさらに、オレへの悪評の拡散が加速していくこと間違いなしだな。
それでも、少なくとも一週間は、彼女らが嫌でなければ今日のように椿さんと伊波さんと一緒に昼食を取るつもりだ。
オレが自分の席について、数分ほどで昼休み終了のチャイムが鳴り、午後の授業が始まった。
昼食後の授業は、内容が理解できるか否かではなく、それよりも大事なことがある。
そう、睡魔である。
学校が始まって一週間と少し。
体が順応できるわけもなく今も寝ている人が多い。
そういえば椿さんは、とんでもない昼食を取っていたが、さすがにあれだけ食べれば眠くなるはずだ。
そう思って椿さんの方をチラ見すると、そこには背筋をまっすぐ伸ばして授業を受けている椿さんの姿があった。
その顔はクラスのだれよりも真剣で、その目にはクラスのだれよりも多くの熱量が内包されていた。
椿さん然り、伊波さん然り、他人に愛される人間にはそれに相応しい能力があることをオレは理解した。
格の違いを思い知らされつつ、午後の授業を乗り越えた。
「カエデ君、帰ろう!」
「うん」
今日も、伊波さんに誘われた。
この一週間は、毎日二人で帰っている。
なんかもう学校にいる間はほとんど伊波さんと一緒に過ごしている気がする。
どうせなら、椿さんも一緒に帰ろうと誘いたかったが、気づいたときには、教室にもうその姿はなかった。
オレは帰る準備を済ませ、伊波さんと一緒に教室を後にしようとしたが、いつもはオレと同じくらいに準備が完了する伊波さんの準備が遅れているようだった。
「伊波さん、大丈夫?」
「カエデ君、ごめん、スマホなくしちゃった……」
オレが心配の言葉をかけると、伊波さんは青ざめた笑顔で、口元を震わせながら答えた。
どうやらスマホをなくしてしまったらしい。
常に携帯しているスマホが、どこにあるかをピンポイントで探し出すのは高難易度だといえる。
一人で探すのは大変だろうし、オレも一緒に探すことにしよう。
「ポケットとか、カバンには入ってない?」
「ない……」
「机の中は?」
「ない……」
伊波さんは、ポケットの中身を捲っても、カバンを逆さまにしても、机の中に手を突っ込んでも、スマホは見つからないようだ。
候補を絞っていくほど、伊波さんの顔色は悪くなってきている。
「じゃあ、オレが電話してみる」
スマホを探すときの定番、「電話をかけてみる」を試してみよう。
もし教室のどこかにあれば近くから着信音が聞こえてくるはずだ。
「ごめんね、カエデ君。私の問題に付き合ってもらっちゃって……」
「今度、デザート奢って」
「なんでも奢ります…」
実はこういうとき、見返りを要求した方がいいときもあると思う。
無償で協力してしまうと、相手に残るのは罪悪感だけだからだ。
こっちの方が後々、お互いに心が楽になるだろう。
オレは伊波さんのスマホに電話をするため、学校オリジナルアプリから、伊波さんの学籍番号00003039を入力した。
このアプリは学籍番号を知っていれば、電話もできてしまう優れものなのだ。
「じゃあ、かけてみる。耳を良く凝らしといて」
「おっけー!!」
オレは伊波さんのスマホに電話をかけた。
「(……………)」
「聞こえる?」
「……いや」
クラスメイトの会話が飛び交っているため、スマホの着信音が確実に鳴っていないと言いきることはできないが、近くにはないように思える。
「聞こえないな」
「そうだね……」
伊波さんが溜息交じりに答えた。
オレの作戦が失敗だったため、次の行動を考えているとオレのスマホから声が聞こえた。
「はいぃ……」
予想外の展開に、オレと伊波さんは無言で顔を合わせた。
だれかが伊波さんのスマホから話しているということは、だれかがスマホを見つけてくれたということだ。
オレは、この電話に出てもいいのか聞くため、伊波さんとアイコンタクトを取り、無言で頷いた。
すると伊波さんから無言の返事が来たので、オレはワクワクしながら電話に出た。
「あの……そのスマホ…の、持ち主なんですけど……」
電話で人と話すのは、人生で初めてレベルだ。
直接会って話すときと比べて、電話越しだと相手の顔が見えていない分、言葉遣いに気を付けなければならないため、慣れていないのも合わさって、ワクワクと同時に緊張もしている。
自分の服で手汗を拭いながら、電話での会話を続けた。
「あぁ、そうなんだぁ」
「そうなんですよ……あの…スマホを回収したいんですけど、どこにいらっしゃいますか?」
「そっかぁ、返さないといけないもんねぇ……ここはぁ……学食……むにゃむにゃ……」
「学食ですね、今向かいます」
「(スゥースゥースゥー……)」
オレは電話を切って、緊張から解放された安堵による深呼吸をした。
スマホの行方が判明した。
今話していた相手によると、どうやら学食にあるらしい。
それにしても今話していた、おそらく女子と思われる声をしていた子………話し方がかなりゆっくりで、最後には寝てしまうくらい眠そうだったな。
学食で、寝息を立てるって……どこかの菜々実さんと一緒だ。
伊波さんに場所を伝えて、一緒にスマホをもらいに行くとしよう。
「伊波さん、学食にスマホあるって」
「ほんとっ!? カエデ君、いろいろありがとう!」
「気にすんな。よし、一緒に行くか」
「そんな! 大丈夫だよ!」
「オレも相手にお礼が言いたいしな」
「……わかった、デザートたくさん奢る…」
伊波さんとオレは、放課後の学食に行くことにした。
――――――――――
「だれも価値がわかっていない。そう……わかっているのは――――くらいか。さすがは―――といったところです……。さて、彼のお方がいつ目覚めるのか、楽しみで仕方ありませんね」
その顔はクラスの誰よりも真剣で、その目にはクラスの誰よりも多くの熱量が内包されていた
他人に愛される人間には、それに相応しい能力があることを、オレは理解した
全然朝いかなかったです
現在の登場人物(もっと増えます)
カエデ、伊波サク、椿ミミ、夢乃望、小芽生もみじ、菜々実、サクラ、飛勝、佐藤茂舞、鈴木菖蒲、天賦才人、一ノ瀬アナト、ミヤコ、四ノ宮先生、西園寺先生、(さくら)
次回は、妹? です