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重ねた嘘 800字

『いつまで嘘をつき続けるんだ?』

自分の中の何かが語りかけてくるようになったのはいつ頃からだっただろうか。


あの日、紅く染まった自分の手を見た日。


僕が嘘をつき始めた日。



錆びた鉄のような匂いと規則正しくも雑然とした雨音。

冷めていく思考。冷めていく自分の手。


そして…冷たくなった「彼」の手。


ただの物でしかなくなった「彼」の姿を前に、僕は嘘をつくことを決めた。


警察に対し、悲しむフリ。自分の感情を偽って警察を騙す。


自分に対して、言い聞かせる。仕方がなかった、どうしようもなかった、と。


大丈夫。こんな嘘は、みんなついてる。人間は都合が悪いことを他人から、そして自分から隠すために嘘をつく。




地上25階から見下ろす夜景は綺麗だった。このきれいな世界も、嘘を重ねてできている。



「もう、良いか…」

そう、思った。

そう、呟いた。


そうだ。嘘をつき続けたかったわけじゃない。


ずっと…


ずっと…………




ただ、謝りたかった。


ただ、後悔していた。


自分の犯した罪は。


自分の背負った業は。



「重すぎたんだ…」



『もう、嘘はやめたらどうだ』

一歩前に踏み出そうとする。その瞬間聞こえた、あの声。


何を言っているんだろう。だがもういい。

さらにもう一歩踏み出す。片足が半分、空中に出される。


『最期まで嘘をつき続けるのか』



何か、また聞こえた。だがもういいのだ。あと一歩踏み出して、それで終わり。汚れが落ちて世界がまた一つ、きれいになる。


『筋金入りだな。自分さえも完全に騙しきってさ』


何を言っているんだろう。自分に嘘をつくのは…仕方ない、なんて言い聞かせるのは…やめたのに。



『自分が自分に、騙されてることに気づかないなら教えてやろうか?』


教えるったって何を…



『お前は✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕』








僕は今日も嘘の中で生きていく。


自分に嘘をつかないために、他人に嘘をつく。


頭の中で、あの時の言葉がリフレインする。


『お前は自分の業に耐えられないふりをしているんだろ?』

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