記憶 1000字
気が付くと、そこは薄暗い部屋だった。今までの記憶は、ない。思い出せない。
天井の明かりを頼りに部屋を見てみると、死体が1つ。腹に大きな穴があいている。ショッキングな光景に怯えながら出口を探す。部屋の隅に、登り階段があるのを見つけ、登る。
扉を開けるとそこは、壁に大量の本棚があり、床に紙と本が散乱する研究室だった。扉を閉めようとしてふと気づく。研究室側から見ると、扉は本棚がとりつけられていた。隠し扉になっていることに気づき、恐怖を覚える。何者かー恐らくあの死体を作った犯人で、この建物の主がーこの建物に自分を閉じ込めたのだと考えられたからだ。逃げなければ。そう思い、机の上に目をやると、いくつかの魔法具が目についた。ひどく既視感を感じる。思い出そうとするが、記憶に霧がかかったかのように思い出せない。だが、魔法具を使って魔法を使えば、必ず「代償」がある。そのリスクは取りたくない。そのままその部屋を去る。
いつここの主が現れるか分からないため、慎重に建物内を探索する。部屋に入るたびに、強い既視感を感じる。キメラが大量の檻の中に入れられて放置されている部屋を抜け、小部屋に入ると、脱出用なのだろう、転送方陣が組まれていた。近くに置かれていたメモの乱雑な字をなんとか解読すると、宝石を4つ、エネルギー源として配置すれば起動することがわかった。宝石がないかと、部屋を見回してみると、天井の明かりに宝石が使われていることに気が付いた。取り外して方陣においてみると、複雑な文様を描く方陣の線1本1本が微かに青白く光り始めた。別の部屋の明かりにも宝石が使われていて、残り2つ。研究室の棚の小箱に入っていたのを見つけて残り1つ。探しても見つからず、しばし悩んだ後、最初の死体があった部屋を探してみることにした。
天井の明かりに宝石が使われているのを見つけて、取り外そうとすると、足に何かが当たった。拾い上げてみると、銃の形をした魔道具だった。妙に手になじむその魔道具を調べてみると、グリップに「Memory Breaker」と刻まれていた。
見覚えのある部屋。
見覚えのある魔道具。
見覚えのある文字。
そうだ、この魔道具の代償は「記憶喪失」
それをきっかけに今まで思い出せなかった記憶の、とても濃い霧がどんどんと晴れていく。
そうだ、道理で犯人が建物のどこにもいないわけだ。
この人を殺した犯人は…この建物の持ち主は…
俺だったのだ。
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