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走馬灯編集部  作者: 緑玉
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「おーいシン、できたか?」

「今完成した。」

そう言ってシンは出来上がった走馬灯のDVDのようなものをマツに渡す。

そのケースの表面には"再生課宛"と書かれていた。


「さっすが!いやーもう最近"転生課"が多くて、久しぶりの"再生課"だからな。面子変わってるかな〜」

「どうだかな。さっさと行け。」

「冷たいな〜最高!」

そう言って彼は納品しに編集部を後にした。

シンが自分の席に戻ろうとすると、同じ部署のリノが話しかけてきた。

「再生の方だったんだ〜編集難しかった?」

「別に。構成は同じだし。あとは本人次第で俺には関係ない。」

「うわぁ。」

シンは自分の机からカップを取ると、冷め切ったコーヒーを淹れ直すために奥の給湯室へ向かった。


♢♢♢


ゅ、ぁゆ、あゆ!!!!

「亜由!!」

ゆっくり目を開けると、母がベットの脇にいた。

どうやらここは病院のようだ。助かったみたいだ。

それだけ認識するとまた意識を手放した。

暫くして今度はしっかりと目が覚めて周囲を見渡す。

すると飲み物を買ってきたのか、手にお茶のペットボトルを持ちながら母が病室の扉を開けて入ってきた。

目を開けている私に気づいて慌ててナースコールを押された。

「亜由っ良かった…。もう大丈夫だからね。」

「おか…さん」

「うんうん、もういいから、大丈夫。また回復してから喋ったらいいわ。」

優しい。ついさっき見た過去の記憶とは大違いだ。でもそうだ、母は私が成長するに連れて優しくなっていったのだ。だから大人になった今の私と母の関係は悪くない。でも少し複雑な気持ちだ…。


幸い私はあの事故で車に直撃する事は免れた。左腕を地面に擦ったことによる傷と、頭を少し打っただけで済んだ。気絶するほどの衝撃だったので、脳に何か影響があるかと心配されたが、検査の結果異常は見られず、数日の入院の後、無事に退院した。


♢♢♢


あれから月日は流れ、すっかり元の日常に戻っていた私。でも全く前と同じ、というわけではない。

ピロン

スマホの通知が鳴る。例の友達グループの1人からメッセージが来ている。

ー良かったらまた飲み会開くから、元気になったら次こそ参加してね!

「…ふっ…私今までこんなことに心を削っていたんだね…」

ーちょっと難しいかな。また連絡するね。

遠回しな断りの文句を返信しておく。事故にあった事は知っているから、そっとしといてくれるだろう。もししつこいようなら、はっきり拒絶しよう。

ーーそうだ。

私はタタタ、と素早く誰かにメールを送った。

最近会ってなかった美羽だ。事故のことを伝えた時は驚いて心配してくれて、遠いのに見舞いにこようとしてくれた。大丈夫だからと断ったら、また落ち着いたら連絡まってるね、と。

この差だ。大切なのはどちらか、明白だった。


仕事でも事故後復帰したての頃は皆、さすがに気遣って仕事を振ってくることはなかったが、最近は元通りだ。でも私も、何でもかんでも仕事を受けているわけではない。明日でもいいもの、そもそも私がやらなくていい案件は断るようにしている。随分と成長したもんだと、自分で自分を褒め称えている。


ちなみに彼氏とは自然消滅した。私が連絡をしなければ、向こうから連絡が来ることはなかった。

こちらは始めから終わっていたのだろう。

と思っていたら、転勤していた佐藤先輩が、私の勤める支店の近くの本社に戻ってくるという。どこまでも出世コースを行く人だ。まあ、私には関係ないかな?


母親とのことは何も変わってない。でもこれからだ。今更反抗期もどきなんてしたくないし、少しずつ、自分の意思で人生を決めて歩んでいきたい。


私の記憶ーー。過去の記憶を垣間見たことで私は少しずつ変わろうとしている。

強い風が吹いて髪がなびく。私は空を見上げて深く息を吸いこんだ。息を吐いて前を見て進み出した私の瞳は、強い光を宿し輝いている。


ー終ー

他のエピソードも書いていくつもりなので、もし続きも読みたい!と思ってくださった方は、是非ブックマーク&いいね評価お願いします!励みになります!よろしくお願いします!

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