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走馬灯編集部  作者: 緑玉
3/4

3

暗い。

どこまでも世界は真っ黒で、でも意識はある。

私は鈴川亜由。うん分かる。でも今私はこの真っ暗な空間に浮いているだけ。何も見えない聞こえない。身体はふわふわして感覚が鈍い。

その時突然空間が真っ白に変わり、視界いっぱいに色んな自分が映し出された。

ーーこれは?

ひとつひとつをよく見てみると、どれもこれも私の過去の記憶映像のようだ。

小学生の時にやりたくもない中学受験を強要された時のものがある。クラスメートが放課後に校庭でボール遊びを楽しむのを見ながら1人トボトボ帰っている。

ーー懐かしいな、あの時は嫌だったけど、結局そのおかげで良い大学まで行けたのよね。

中学と高校の記憶はどれもパッとしない地味な映像だ。それだけ特に記憶に残らない青春時代だったのだろう。とある映像には自分の話しかしない友達に只管凄いねと褒めている自分がいる。

ーーこの子から私のことを褒めたり肯定したりする言葉、貰ったことないな…

社会人になり仕事をしている自分の顔は客観的にみるとこんなに無表情なのかと驚く。

ーーそういえば最近心から笑ってないな。

彼氏に連絡するも、既読スルーで2日たったときの映像まである。

ーーいらないわ、その記憶…

ザザザ、と映像が流れて目の前のずっと奥の方から幼い時の記憶が現れた。もう自分では覚えていない頃の記憶。

母にわがままを言っている。母は疲弊しきっている様子で、私は怒られ部屋に閉じ込められている。わんわん泣いて…。何か反抗する度に全否定されている。成長するに連れて次第に大人しくなっていく私。

ーーあれ、こんな感じだったの?もっと親子関係良好だと思ってた。でも思い返せば、親の希望する通りに行動すれば機嫌良くて、そうでない時は否定されてきた気がする。自分で自分の道を選んできたと思ってたけど、思い込んでただけだったのね…

それからも映像は続く。幸せな記憶もたくさんある。

「亜由ちゃん!」

そう呼ぶのは高校の頃に一度クラスが同じになって1年間よく遊んだ友達。大学生や社会人になっても、頻繁ではないものの年に何回かは連絡を取り合って会っていた。

ーー美羽…なんでか分からないけど、私に懐いてくれるのよね。私には何もないのに。

「鈴川、これは俺がやっとくから今日はもう帰りな。」

ーー佐藤先輩…

会社の先輩で仕事ができる人。私が他の人からのヘルプに追われて残業していた時によく助けてくれた。今は栄転して違う場所で働いている。

ーーこうして見ると、悪い事ばかりじゃなかったのね。気にかけてくれる人、ちゃんと居たんだ。


いつも周りの人に気を遣ってばかりだった。

自分の気持ちのままに行動したことあった?

そもそも自分の気持ちなんて持ってなかった。

和を乱さない事を基準にして生きてきた。

雑に扱われても反論したことなんてない。

そう、これからもずっと…

いいえ、もう終わり。

だって私死んだのよね。

これは走馬灯…。


悔しいっ!まだ私何もしていない。何もっ!もっと…自分に正直に生きれば良かったっ……ねぇ、もう一度人間に生まれ変わるなら、次こそは、きっと…




そこで意識は無くなったーーーーー




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