22.夕木春央『サーカスから来た執達吏』(2022)
超絶ご無沙汰しております。
たまったま手にとった本作が、どちゃくそ面白かったので、緊急更新なのです。
例によって乱文お許しくださいませ…
時は大正14年。関東大震災後の立て直しをしくじり、借金に苦しむ樺谷子爵家に、大口債権者である晴海商事から、取り立て人として、不思議な民族服を着た少女、ユリ子が送り込まれてきます。
ユリ子の第一声がコレ。
「こんにちは! おかね返してもらいに来ました!」
ちょおおおお!?ってなりますが、サーカス出身だというユリ子は、大震災で一家全滅してしまい、偏執狂じみた当主がどこかに隠したまま失われてしまった絹川子爵家の財宝(推定100万円:現在の貨幣価値で言うと数十億円くらい)をめっければ借金はヘーキヘーキと言い出します。
そして、樺谷子爵が黙って担保を売りやがったんで、代わりに担保にしまーす!謎解きも手伝ってもらいまーす!と、女子学習院を出たばかりの三女の鞠子(語り手)を連れ出してしまう斜め上展開。
鞠子の方は、漠然と小説家になりたいという夢を持ちつつも、そんなん無理ゲーだし、長姉のように華族のご令嬢→奥様コースを演じきる覚悟もなく、世間との間に入ってくれていた次姉は震災で亡くなってしまい…で、ふわふわしていた18歳のご令嬢。
内心、家に抗いたいという気持ちもあるにはあるんですが、なにせガチのご令嬢なので、立ち居振る舞いがいちいち上品で、ユリ子との対比が楽しいです。
というか、この二人の会話がめちゃいい。
一部引用させていただきますと……
「ユリ子さん、わたし、あなたとはちがって、何にもできないの。何の芸もなければ信念もないの。あるのは家柄の誇りだけ。本当にみっともない誇り! 知らないうちに、それにすがらないと生きていけなくなっていたんです。それをなくしたら、どうしていいかわからなくなってしまうの」
「あたしも鞠子ちゃんが文字をよむほかになにができるかしらないけど、どうせ、自分になにができるかなんて、自分できめることじゃないわ。いくら自分で曲芸ができているつもりだったって、舞台に立つかどうかは座長のひとが考えるの」
※講談社文庫版 pp.190-191
あれ……書き写してて気が付きましたが、ユリ子のセリフの方が漢字を多めに開いてますね。
「何」は鞠子のセリフでは漢字ですが、ユリ子では「なに」になってるとか。
こういう積み重ねええええ!大事いいいいいい!!!
とりま、凸凹少女バディで財宝めっけるしか…となるのですが、この絹川子爵家の財宝、14年前に、泥棒に入った人物の眼の前で謎に消失していたというおまけつきで、財宝を巡って、長谷部子爵家やら箕島伯爵家やらそのほかも動いており〜で、どんどんどえらいことになってゆくのです……
ユリ子と鞠子のバディっぷり、ユリ子がサーカスから連れて逃げた巨大な黒馬「かつよさん」(メス)、なろう異世界恋愛にもわりとよくいる感じのダメダメ鞠子パパなど諸々のキャラクターの魅力が大炸裂!なのですが、推理物としても大変よろしくて、伏線回収の飽和攻撃か!?てなる、怒涛の解決編、久々にめちゃくちゃ脳汁出ました。
バレがアレなので、詳細はもにゃもにゃですが。
同じく大正時代を舞台にしたデビュー作の『絞首商會』(一部の登場人物が共通)も良かったんですが、凸凹少女バディ!おりこうなつよつよ黒馬!最高やん!!
『絞首商會』の方は続編というか前日譚あるっぽいので、ユリ子&鞠子の話〜…できたらまた長編で書いてくれへんかな〜…と謎の毒電波を全力で放出しています。
いやー、久々におもろいミステリ読んだわ〜(しみじみ)
<こんな方にオススメしたい>
・異世界恋愛ミステリが好き!(大正時代の華族なんて、ほぼ異世界だし…)
・少女バディ物とか最高やんーーー!勢
・馬が活躍する作品が好き
・お宝の暗号とか最高やんーーー!勢
・チェスタトンが好き!(『絞首商會』の方がチェスタトン味が強いですが)
そんなかんじで、またよろしくお願いします!




