19.アリスン・モントクレア『ロンドン謎解き結婚相談所』(2019)
またまたご無沙汰しております。異世界恋愛ミステリ普及委員会事務局の琥珀と申します。
前回、S・J・ベネット『エリザベス女王の事件簿』シリーズの紹介をした際、有理守先生より、
「女性バディもののミステリーですが、「ロンドン謎解き結婚相談所」シリーズもちょっと面白いです。癖ツヨ女子二人が結婚相談所を開いたのに、結婚相談より事件の解決に力を入れてしまうというありがちな展開(^_^)
第二次世界大戦直後辺りの話なのですが、第2巻「王女に捧ぐ身辺調査」は、エリザベス王女が思いを寄せるフィリップ王子の身辺調査に乗り出すというお話です!」
とご紹介いただいたものの、地元の図書館では貸出中…ということで、積みすぎた三津田信三の消化などに追われるままになっていたのですが、お盆時期をズラして帰省した折り、中学生の頃から行ってる古本屋を覗いてみたら、1巻がなんかあった!!
これはもう読めってことやろ…ということで、ゲットして帰りの飛行機で読み読みしたのです。
ロンドンも大空襲でヤラれまくって、ずたぼろの1946年。
日本みたいに飢えるレベルでは一応ないっぽいですが、衣料切符がないとストッキングも買えない時期。
ケンブリッジ大卒で、戦中は特務機関で色々やってたっぽいアイリスと、上流階級出身の戦争未亡人なグウェンが出会い、謎に意気投合して結婚相談所を開設します。
いうて、両側が爆撃で更地になってる、奇跡的に生き残ったオンボロビルにちっちゃなオフィスを構え、申込があったら大慌てで片付けないといけないスモールスタートっぷり。
なんでこんな商売を始めたかというと、アイリスはアイリスで人間観察に長け、グウェンも人の性格や感情を見抜くのが異様に巧いので、申込者と面談して、合いそうな相手がいればご紹介〜で商売になるんちゃうかということになったのです。
ようやっと男女ともに入会者100人くらいまで来たかなーというところで、仕立て屋で働いているけど、もっとマシな環境に移りたいんや…というちょい派手目な美人ティリーに、真面目な会計士ディッキーを紹介したら、ティリーが殺されてしまい、ディッキーが逮捕され。
そんでもって、デイリー・ミラー紙のいやーな記者に、「死の結婚紹介所」とか書き立てられてマジピンチ!
というかディッキーが殺人者とかマジでありえないんですけど??ということで、二人はティリーの周辺の捜査に乗り出し〜という流れです。
軽めのフーダニットで、わかる人はわかるかもなぁという気もせんでもないですが、面白かったです!
<異世界恋愛ミステリ民として良かったポイント>
(1)それぞれが個性的なアラサー女性2人のバディ
アイリスもグウェンもそれぞれ有能なんですが、(たぶん)いいとこのお嬢さんで、いいとこに嫁いだグウェンは圧倒的に世間知らず。
なのでアイリスがフォローしながら捜査を進めていくんですが、グウェンはグウェンでアイリスをサポートしたり、いい感じです。
やっぱりバディは共感でつながりつつ、性格や能力には凸凹必須。
その意味で、バランス良い感じでした。
ちなみに、アイリスは戦時中のあれやこれやなトラウマがあったりするっぽいですが、詳細は後の巻で明かされそうな予感。
(2)グウェンのご家庭事情
グウェンは最愛の夫がイタリア戦線で戦死してしまい、メルトダウン起こして精神病院に数ヶ月入院。幼い息子と一緒に、義父母のところで暮らしているんですが、精神的に不安定だからと親権的なものを義父母に取られてしまい、なんとか自立しないといけないところなのです。
執事とか侍女とか運転手とかにかしずかれている立場ではありますが、誰を信頼したらいいのかわからない環境で、最愛の一人息子を失ってアルコール依存気味になっている義母とのバチバチつら!
(3)世界観の見せ方
イギリスが空襲くらったのは一応知っていましたが、終戦直後の暮らしがどうなっていたのか全然知らない自分にもわりとイメージしやすい作品でした。
それこそ執事いたりするお屋敷は戦前とほぼ変わらない暮らしを送っていたりする一方で、闇屋が暗躍する半グレ的な世界もありーの、大きな戦争直後特有の殺伐感も残っていたりーのという雰囲気が良かったです。
自分は異世界恋愛ミステリでは「公爵令嬢カタリナの事件簿:悪女オランピアの肖像」以外、ほぼ庶民は出てこない作品ばっかり書いてるんですが、やっぱりお貴族様ワールド以外の話も出せると、立体感出ますよね…
って、そうでなくても無駄に長尺化しやすいので、庶民世界出したりしたら長編待ったなしですがががががが。
なにはともあれ、面白い作品をご紹介いただき、有理守先生、ありがとうございました!
2巻もはよなんとかしたいです…!
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2024/09/05追記
無事2作目の『王女に捧ぐ身辺調査』もゲットしました。
王位の推定相続人・王女エリザベスが恋しているフィリップ王子に関連したスキャンダルをほのめかす脅迫事件がなんか発生したけん、お前ら密かに探ってほしいんやけど、と王妃に仕えているグウェンの従姉妹ペイシェンスが斜め上案件を持ち込み、うちら探偵事務所ちゃうで…と思いつつも、今使ってるよりマシなオフィスに移りたい2人は受けます。
最初の事件を解決して、事務所がちょい上向きになったこともあって、自信を取り戻しつつあるグウェンが前作よりも大活躍!
捜査には上流階級ならではのコネも活用して、亡命中のギリシャ国王ゲオルギオス2世とグウェンがワルツを踊る場面もあって、めっちゃ参考になりました。
カーテシーする時に、少女時代に受けたレッスンを思い出す描写とか、やっぱアレってお嬢様方にもむずいんだな感が。
異世界恋愛物書くときに、実際やってみたことあるんですが、ハムストリングスと体幹くっそ遣う上に、バランス取るのが本当に難しいのですよアレ…
作品に戻ると、ペイシェンスほか王妃直属の人ら、イギリス情報部、亡命ギリシャ人達のグループ、前作で登場した警察の皆さん&闇屋のアーチーなどいろいろ入り乱れてちょい複雑ですが、面白かったです!




