14.「エルミタージュ幻想」(アレクサンドル・ソクーロフ監督・2002年)
エルミタージュ美術館を舞台に、ロシアの歴史と文化を幻想的に描いた作品です。
ちょうど、デジタルカメラによる撮影技術が発達してきた頃の作品で、
・エルミタージュ美術館で撮影
・キャストは2000人近く
・オケの生演奏も入ってるよ!
という壮大なパフォーマンスを、カメラがぬるぬる動きつつ、1カットで90分強の映画として撮りきったものです。
なので、アクションがかかったら、ずーっとカメラが動きつつ、主にエカテリーナ2世から現代までいろんな演者が出てきて、いろんなことしよるんですわ。
3回は技術的な問題で中断して(誰かコードでも踏んだんやろか…)、4回目で成功したそうです。
あたまおーかーしーいー!
昔、そういうヘンな作品があるとどっかで聞いたのを、舞踏会シーンを求めてあれこれ検索していてふと思い出し、アマプラ入ってたー!ということで、さっそく視聴。
いやー、面白かったです。
特にラストの舞踏会シーン。
踊ってるのは数十人くらいなのですが、1000人越えてるんじゃないかという当時の衣装をつけた人たちが、舞踏会終わった終わったいう感じで、がーっと外へ出ていく場面。
その手前でニコライ2世(革命により家族ともども銃殺された、最後の皇帝)が出てくるので、この人たちが最後のロシア貴族なんですよね。
逆らえない、時の流れのせつなさみたいなのがめっちゃ出ていました。
で、その舞踏会シーンで踊られていたのが、グリンカのマズルカ。
はっきりマズルカだと特定できるダンスシーンを初めて見たのですが、いやこれおもろいけど、ワルツより絶対難易度高いやろ!!ってなりました。
斜めに片脚を伸ばして浮かせ、軸足の方でぴょんぴょん飛ぶとかやってます。
↓画質悪いですが該当シーン
https://www.youtube.com/watch?v=pRm9pX5Re8o
衣装もほんとに素晴らしいです。
ロシア特有のヘッドドレス、くっそかわいいですしね。
って、アレってなんて言うんだろうとぐぐったら、ココシニクというらしいのですが、Wikipediaによると、
1903年2月に、ロシア宮廷でロマノフ朝開闢290年[注釈 2]を祝した壮麗な仮装舞踏会が冬宮殿で催され、皇帝ニコライ2世をはじめ皇族、貴族らが17世紀の扮装をした写真資料が多数記録されている。
とかあったので、その場面を再現してたのか!ってなりました。
という風にこの映画、知らずに見てもロマノフゴージャスしゅごい…で楽しめはするのですが、それなりに知識があった方がよいのかもです。
・姿の見えないナレーターとの掛け合い役の黒ずくめのおじーさんは、アストルフ・ド・キュスティーヌというフランスの侯爵兼外交官(1790-1857)
父親と祖父をギロチンにかけられたりしたりしつつ、生き残った母に教養ある紳士として育てられたものの、結構エグい同性愛スキャンダルを起こしてしまい、詩や小説、劇作に取り組むものの、鳴かず飛ばず。
結局、スペイン旅行記が評価されて、1839年にニコライ1世が治めていたロシアを訪れ、「魂はアジアだが、それをヨーロッパで覆い隠している」とか「スパイ文化やべーだろう」とか色々批判したりしているそうです。
そのへんで、「ソ連崩壊後、再び欧米圏との狭間でアイデンティティ危機に陥っていた当時、ロシア人のナレーターと数世紀に渡るロシアの歴史を旅する同伴者として、偏見混じりの視線を向けるヨーロッパ人の象徴として、登場している」(キュスティーヌのWikipedia解説より)とのことです。
ま、ロマノフ朝ってヨーロッパ志向が強いというかなんというかで、19世紀の貴族や富裕層だと日常会話をフランス語でやったりしたりしてますからね…
・雑なロマノフの歴史
ピョートル大帝(名前だけ出た)〜エカテリーナ2世〜ニコライ2世あたりが出てくるところなんですが。
エカテリーナ2世がどんだけエグい人かとか、ニコライ2世がどういう亡くなり方した人かとか、ざっくりしたところだけでもわかっていた方が面白いと思います。
・ついでに西洋美術全般
エルミタージュ美術館は、エカテリーナ2世が自身のコレクションを展示する施設として作ったものなので、エル・グレコ「聖ペテロと聖パウロ」、ティントレット「洗礼者聖ヨハネの誕生」、レンブラント「ダナエ」など名画がてんこもりに出てきます。
このへん、ざっくり絵画史わかっているとおもろそうなところ…
私はそこまで詳しくないので、「え、この絵なんだっけ??」で、後で検索してあーあーあー!となりました\(^o^)/
また色々勉強積んだら、もっかい見てみようと思います!
とりま、異世界恋愛書きにはゴージャス舞踏会シーン、資料として参考になるかもですよということででで……




