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13.篠田真由美『琥珀の城(ベルンシュタインブルク)の殺人』(1992)

あけおめことよろでございます!


この小説、冬休み入ってすぐに読んで、まとめないと…年内にまとめないと…と思っていたらあっという間に大晦日。

「私が寝るまで、年内は年内じゃーい!」理論で書き上げました… (24.1.1 午前1時半)

 相変わらず異世界恋愛ミステリ道に邁進している昨今。

 んが、今書いている『公爵令嬢カタリナの婚活』が長い!くどい!

 4万字書いて、メインのお相手役がまだ出てこない!!


 アウトプットがなかなか進まない時は、インプットしろってばっちゃがゆってた……

 というわけで、館物系の推理小説でも読もうと思って引っかかってきた作品なのです。


 篠田真由美、過去に色々あって人間嫌いの超絶美形大学院生(専攻は建築学)が、能天気ナイスガイにほだされつつ、ついでに過去に色々あった超絶美少年にも癒やされるというバディ物ちょいブロマンス風味な「建築探偵」シリーズが(たぶん)一番有名な作家です。

 というか、確認したら、本編15作+スピンアウト7作も出ていた……いつの間に……

 同シリーズは昔それなりに読んだ気がするし、文体が華麗寄りかつ読みやすかった記憶。

 ということで、近所の図書館で文庫版を借りてきました。

 私の筆名とタイトルかぶってますしね!

 ちなみに、著者が初めて書いた推理小説で、いきなり鮎川哲也賞の最終候補→デビュー作でもあるそうです。

 しゅごい。


 時は1775年冬。


 日本ではマリー・アントワネットのママとして有名なマリア・テレジア(1717-1780)も存命中で、オーストリア=ハンガリー帝国もまだまだ健在な頃の、ハンガリーの山奥にある城館ベルンシュタインブルクが舞台。


 このお城、もともとあった方形の塔を包むように増築しまくってカオス構造になった造りという設定で開幕本館と別館、全体の見取り図が掲載されており、テンションぶち上がります。

 本館裏には、お約束の湖もあるよ!

 ちゅうか、『犬神家の一族』とか『霧越邸殺人事件』とか古くは『赤毛のレドメイン家』とか、推理小説で湖が印象的な作品てなにげに多いですよね。


 というわけで、現在の当主であるブリーセンエック伯爵の遺体が開幕でいきなり大発見。

 しかも塔部分を改修した書庫の中で短剣で刺されております。

 やったー! ゴツい感じの密室殺人やんけー!

 なにやら遺言状がどうとか、一族の人間関係が面倒くさいことになっているとか、王道王道アンド王道展開!


 そもそもこの伯爵、軍人にして家父長制絶対死守マン(62歳)なのですが、子どもたちがちょっと妙なことになっておりまして。


 庶長子:イザーク(31)

 嫡男:アンドレアス(16歳)※先妻の子

 長女:ユーディット(15歳)※先妻の子で盲目

 次男:ユーリウス(14歳)※先妻の子

 三男:シュテファン(4歳)※後妻の子

 養女:ベアトリーチェ(18歳)※伯爵の知人の娘


 イザークは遊び人系。

 アンドレアスは、とにかく粛々と義務を果たす系虚無性格。

ユーディットとユーリウスはめちゃくちゃ仲が悪いっていうか、普通に殺し合いをしかねない勢いで双方ヤバみがあり。

 シュテファンはまだちっちゃいので、癒やし枠。


 んで、子どもたちとは別に一族の皆さんがおりまして。


 伯爵の現在の妻:ソフィー(28歳)


 伯爵の姉:アデルハイト(どっかの貴族の未亡人・64歳)


 伯爵の弟:ライナルト(58歳)

 伯爵の弟の妻:ヴィルヘルミーネ(42歳)


 ソフィーはなにがあったのかメンタルぼろぼろでとにかく引きこもり、アデルハイトはシャキシャキ老貴婦人、ライナルトは遊び人系、アラフォーとはいえ現役感漂うヴィルヘルミーネは愛人持ち。


 という感じの布陣。

 毎年更新されていた遺言状では、遺産はアンドレアスが基本継ぎ、条件を満たせばイザークやライナルトもいい感じにというものなのですが、今年はちょっと変えるつもりだったらしい的な話もあり──


 というわけで、起きてしまう第二の事件\(^o^)/

 今度は雪の中、園亭で発生するも、あるはずの犯人の足跡がないですよー!


 要はガチ館を舞台に、タイプの違う密室2つをぶっ込んでくるという野心的な構成なのです。


 篠田真由美、私は未読ですがファンタジーのシリーズも書いているし、ちょっと別世界の話にして魔法要素とか入れてくれれば、普通に異世界恋愛ミステリになっていたのにー!

 18世紀に流行った電気ネタとかメスメリズム的なほにゃららも出てくるんだから、適宜魔法に翻案しとけば……惜しい……ちょう惜しい……


 という感じで楽しめたのですが、ただのちの「建築探偵」シリーズと比べると、若書きかなと思われるところもなくもなく、そのへん他山の石としてまとめてみたいと思います。


(1)語り手がグダりすぎ

 語り手は、伯爵の妻、ソフィーの親戚のジョルジュ(17歳)。

 自分の家に引き取られていた親戚筋の孤児だったソフィーが初恋の人。

 政治的なアレなんだかようわかりませんが、唐突にソフィーが伯爵に嫁がされた時はめちゃくちゃ悲憤慷慨し、駆け落ちまで考えたものの、その後忘れかけ。

 んが、新思想にかぶれてしまい、父親がとりあえずフランスから遠ざけようと、ソフィーの見舞いでも行ってこいと命じられてやってきたところ。

 いうて、ソフィーはジョルジュに対しても心を開かず、ジョルジュの気持ちはあっという間にベアトリーチェの方に行ってしまうんですが、えらい薄情やなとしか思えず、ついでにソフィーの物語はおぼろに示唆されるだけで終わってるんですよね。

 もうちょいソフィーにも見せ場が欲しかったです。

 そのためには、10歳年下の遠い親戚というポジションじゃちょっと無理。

 28歳から見れば、17歳なんてガキですから、エグいドロドロ話を打ち明けるとか無理無理無理ィ

 ジョルジュがせめて20代くらいでないと厳しかったんじゃないかな……

 事件と関係のない中立的な立場の若者が巻き込まれて、語り手になるというのは古典推理小説の王道ではあるのですが(ディクスン・カーとかだいたいソレ)、なんでそこにいるのかというところが弱いと、話に締まりがなくなるんやな……とちょっと思いました。


(2)探偵の人物像がようわからんまま終わる

 伯爵に招かれてやってきた、古典学者……ということになっているのだけれど、錬金術的なほにゃららに通暁しているっぽくもあるプレラッツィが探偵役なのですが。

 著者あとがきによると、本来は別作品の主人公として構想されたキャラクターを流用したとのことで、サンジェルマン伯爵とかカリオストロ伯爵とかそっち系っぽい匂わせはあれど、匂わせたまま終わり、彼がどういう価値観のどんな人間なのかがこの作品ではあんまり見えてこないんですよね。

 このへん、推理小説は基本的には犯人のドラマがメインになるので、しゃーないといえばしゃーないところもあるのですが。

 ただ、彼女自身の「建築探偵」もそうですけれど、推理小説のシリーズ物って、探偵役のキャラの強さに依存するところがあるのは否めないですよね。

 古くはポーのデュパン、ドイルのホームズ。

 京極堂シリーズも鈍器本鈍器本言われつつ、なんであんなにクソ長くて小難しい小説が売れるんか言うたら、やっぱりキャラが良いからというのが大きいと思うんです。


(3)◯◯が◯◯で、◯◯◯が◯◯◯◯の構成は、やっぱ難易度高い……

 思いっきりバレなので申し上げられんですが\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/




 というわけで、面白くはあったんですけれど、後の作品からすると、篠田真由美-1.0という面もある『琥珀の城の殺人』。

 『祝福の園の殺人』も17世紀イタリアの話らしいので、そのうち読み比べてみたいと思います。

 あと、19世紀イギリスを舞台にした冒険活劇寄りっぽい『レディ・ヴィクトリア』シリーズに、どうも異世界恋愛っぽい波動を感じるので、そちらもいずれ…

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― 新着の感想 ―
[一言]  年が明け、さっそく拝読いたしました。  篠田真由美作品は、建築探偵シリーズはかなり読んだのですが、「琥珀の城」は未読です。いや、数ページ読んでみてやめてしまったのかも――。あまりよく覚え…
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