究極ノ選択
「さて、どうしたもんか」
俺は腕を組み悩む。
そう、あの町を目指すと決めたところまではいい。
しかし、どうやってこの高台を降りるべきか。
階段があるわけでもない、ましてや飛び降りて無事でいられる自信なんてあるわけない。
選択肢としては、
1、丈夫そうな蔓を探してきて編みこみ、それを伝って降りる。
2、決死覚悟で飛び降りる。
3、誰かが来るまで待つ。
4、緩やかな傾斜を探す。
うむむ…どうだろうか?
2と3は自分で提案しておいて何だが、無いな…。
飛び降りなんて、さっきも言ったが決死の覚悟とかそんな問題じゃない。
第一、一体何メートルあるんだ?確か学校の屋上から下を眺めた時もこの位あった気がするぞ?果てしなく高いとまでは言わないが、ちょっと飛び降りてみろと言われて、はいそうですか、と言えるような高さではない。運がよくて骨折、運が悪ければ…考えたくないな…。
3だってまぁ、安全面で言えば無しではない。だが、ここから見た感じ、ここの中心部はあの町だろう。
所々に家があるっていっても、町には行けどもこんな外れの森に人が来るとは思えない。人が来るのを待っていたら日が暮れるどころの話じゃない。
ところがどうだろう?
1…はだいぶ使える手だと思う。ほら、よく映画とかであるじゃないか。
蔓を編んだとかシーツを編んだとか!
なかなかの上等手段だぜ!
だが、ちょっと待て。決断を急ぐな。
4の可能性も試算してみよう。
さて、傾斜を探すといっても、どこに行けばいいのやら。
森の中へ戻るのはイヤだと言うしな。
端に沿って歩けば何か見つかるか…。
「うーん、蔓を使うべきか傾斜を探すべきか…」
「は?蔓?」
「あ、うん、ここどうやって降りようかなって考えてたんだけど…蔓を編みこんでそれを伝って降りるのと、降りれそうな斜面を探すのとどっちがいいかなって…」
美春は、然も「何言ってんの?」と言いたげな顔をしている。
「悠斗…」
「なんだ?」
「あんた…バカでしょ」
「!!!?」
めちゃくちゃ悩んだのにバカ呼ばわりされた!!
「あのねぇ、キミはゲームだの映画だのの見すぎ!蔓を編んでそれに人がぶら下がるくらいって、ちょっとやそっとの蔓じゃダメでしょ!」
ガーン…せっかくいい手だと思ったのに…。
「でも、確かにここを降りるのは厳しそうね。後者の”傾斜を探す”のには同意かな?」
良かった…受け入れてもらえた…。
さて、ここで一つ問題がある。
見た感じ、開けた部分というのはここだけの様だ。
傾斜を探すにしても、若干は森に戻らなければならないだろう。
美春は了承してくれるだろうか…。
「さて、立ち往生しててもしょうがないものね。傾斜を探すにしても…やっぱりあの森入らないといけないのね…」
俺が言うより先に美春すでに森の方を向いていた。
「うん…日が暮れる前に急ごうか」
「そうね」
短く返事をすると美春は近くの棒を手に取り高々と掲げる。
「よーし!いざ行かん!」
中々に気合が入っているようである。勇ましい事だ。
でも元気が戻ったようで良かった。
俺たちはまた手を繋ぎながら少しだけ森の中へ入ることにする。
この後、やっぱり蔓を使えば良かったと思う出来事が待ち受けているとは知らずに…。