ハジマリ。
始めまして、りん太郎です。
初めての創作、初めての投稿になります。
短編物からやってみたかったのですが、いきなりストーリー物を書いてみてしまいました。
頑張って書こうと思いますので最後までお付き合い頂けたら幸いです。
親元を離れ県外の高校へ入学してから1年と数ヶ月がたち、だいぶ寒くなってきた。たまに吹く風に木の葉が舞い踊るのを見ながら急いで帰宅をする。
そろそろ冬物のコートやらマフラーやらを用意しなくてはいけないだろうか。
「うおーさぶっ!早く帰ろ」
学校での友達はそこそこいるが、やはり県外から来たせいなのか俺はなんだか居心地がいいとは言えなかった。なのでどうしても一人でいることが好きだったりして趣味はもっぱらゲームだ。
学校生活は別に苦でもないが楽しいわけでもない。
まぁ、女の子のレベルが高いのは楽しい部類に入るのかもしれない。だからと言ってフラグがたつわけでもないのだが、新生活を送る際には色々ドギマギシチュエーションがあるんじゃないかって変な期待をしたもんだ。
「あ〜…何か面白い事ないかな〜…」
独り言を言い始めるとボケの始まりだっていう話もあるが、もう殆ど口癖になっているセリフをぼやいてしまう。
今日は新しいゲームの発売日だ。今から面白い事が待ち受けているはずなのについつい口にしてしまう。
とは言え、ゲーム以外での面白い事というのが見つからないので、そういう意味では常に面白いことを探していると言えるだろう。いつもと変わらぬ日常なんてつまらなすぎて屁がでそうだ。
とりあえずは、新作ゲームのストーリーはどうだろうか、とかキャラには萌えられるだろうかとか、いろいろな妄想に耽りながら歩く。
と、ふいに後ろからポコっと叩かれた。
「面白い事って例えば?」
振り返るとそこには同じクラス、同じ部活の女子、滝川 美春がいた。
美春は所謂『非の打ち所がない人間』。
こんな人マンガの世界以外にいるのかと思うような成績優秀、眉目秀麗、スポーツ万能…ついでに言うと自宅も結構金持ちのお嬢様なんだとか?ホント、神様って不公平だと思う。ほんのちょっとでいいから俺にも分けてはくれないだろうか(特に成績部分)。
美春との出会いは高校に入ってからだ。まぁ、出会いと言えるほど素晴らしいものではないが。
たまたま同じクラスで、たまたま隣の席だった。それだけの偶然なのだが、俺は内心「ラッキー」と思っていた。
そんでもってさらには同じ部活ときたら、ラッキーすぎだろ?
しかもしかも、美春の家の方向と俺のアパートが一緒の方向なんて、いろんなワクワクドキドキな某恋愛シミュレーション的発想になって**や***な事妄想するだろ!?こりゃもうフラグ確定!!?とか思いこんじまうよな?
しかし現実はそうそう甘くない。むしろ仲良くなれただけでも奇跡みたいなもの、偶然が重なるくらいでフラグなんて立たないと知ったのはつい最近のことだ。
だが、それでも周りの連中にしてみれば十分に羨ましいと思えるシチュエーションであると言えよう。なんせ高嶺の花と一緒に小突きあいをしているのだから。
「そうだな、例えば…100円くじで一等を引く…とか!」
「小っさ…」
「うお!100円くじバカにすんな!あれには男の浪漫がどっさり詰まってるんだぞ!?」
「どんな浪漫なんだか…男ならそんな事よりもっとデッカイ夢はないの?世界がドカンと引っ繰り返っちゃうようなさ?」
そう言いながら俺の一歩前を歩く。
ドカンと引っ繰り返っちゃうようなデッカイ夢ねぇ…いくら考えても思いつくのはアイスの当たりを引くとか、雑誌の懸賞に当たるとか…そんな事ばかりだ。
「そういうお前は何かあるのかよ」
何かの参考にでもなるかと思い聞いてみる。
「んー、別に私は毎日楽しいからこのままでいいもの♪」
はー、さいですか。どっちが小さいんだか。
現状維持ほどつまらないものはないぜ。
やはり雑誌の懸賞に当たるくらいだとドデカイよな!
などとデカイ夢を考えつつ、ふと我に返る。
「…おい、何でお前がここにいるんだ?授業はどうした授業は」
そう、今の時間は丁度午後の授業が始まったばかりの時間だ。
ゲームやりたさにサボる俺はともかく、真面目な性格の美春がサボるとはとても…。
「そのセリフ、そっくりそのままお返ししてあげるわよ、サボリーマン竹井 悠斗!」
俺はサラリーマンじゃないっつの!と心の中でツッコミを入れる。
「キミがそそくさと教室を出て行くのが見えたからね…ズルイじゃない!」
うお、もしかしてサボリばればれ?
「俺は…風邪で具合悪いんだよ!」
バレているんじゃないかと思いつつも、とりあえず悪あがきをしてみる。
「…ふーん…」
なんでも見透かされているようなこの「…」が恐ろしい…。
「じゃあ、キミの机の下に落ちてたコレはなにかな~?♪」
そう言って腕を上げ紙切れをヒラヒラさせる。
えーっと、あれは…。
あれ!?
「うお!それは今日発売のゲーム引換券!!」
俺は慌てて鞄の中をガサゴソと引っ掻き回す。が、ゲーム引換券は美春の手中にあるわけで、鞄の中にあるはずもないのだが思わず探してみたくなってしまう真理は不思議なものだ。
「オーホホホ。この美春様を騙そうなんて100万年早いわよ」
くそ、こりゃ一本取られたぜ。
そんでもってお前いつから女王様キャラになったんだよ!美春ファンの男子共がショック受けるぞ!…いや?逆に喜ぶやつもいるか?
おっと、そんなことより引換券が大事だ!
「ていうか100万年てお前いくつだよ!返せ!」
手から無理矢理奪い返すと鞄の中へさっさとしまいこむ。
はぁ…疚しいゲームじゃなくてよかった、などと妙な安心をしてしまう。
しかし、今日は美春の目がある以上買いには行けなさそうだ。トホホ、明日までお預けか。
「んなことより美春もよく抜け出してこれたな、お前だって風邪引きには到底見えないぞ」
美春はふっふっふと含み笑いをしながら顔を寄せてくる。
「私くらい先生からの信用を得てると色々と言い訳も楽なのよ♪」
こ…こやつ…なかなかあくどいぞ。
誰だ?真面目とか言ったやつ!訂正しろ!
しかし、笑いながら歩く彼女は本当にかわいい。
髪は栗色で肩より少し長いストレート、サラサラしていい臭いがしそうだ。
身長は…そうだな、俺より10数センチも小さいか?160前後といったところだろう。
大きなクリっとした目元がまたチャームで、どちらかというと童顔かもしれない。
スレンダーな体は赤いチェックの制服がよく似合う…んでもって少し控えめな胸がまたたまらん。…と、おおっと、これはあまり洩らさない方がいい情報だっただろうか。
正直、こんな美人を連れて歩くのはなかなかに気分のいいものである。
一緒に帰る姿を他の野郎共が見たら蜂の巣にされるだろうな。
あぁ、ほら、今も周りの奥様やお姉様達が俺たちを噂している。
「見て見て!あのカップル!」
「え〜?あの女の子あんなにキレイなのにどうしてあんな男連れて歩いてるの?」
「美人って自分にないもの求めるって言うからね〜」
…っておいこら!!!!
俺はあんな男扱いかいっ!失礼だな!そんなに酷くないと思うんだけどな…
俺だってイケメン!とまでは言えないがまぁ普通だと思う。
やはり黒い髪のナチュラルヘア(俗にボサボサともいうが)はダサイのだろうか…。
身長だってそんなに低いとは思わない。というか176センチもあれば十分だろ!メタボなんてのも無縁だしな!
確かに、女子のことしか考えなかっただろ、と言いたくなるような赤チェックの制服は似合ってないと思うが、俺なりに着こなしているつもりだ。
お姉様方の言い分もわからんでもないが、内心凹む。
第一に、美春に釣りあうようなイケメンなんているのだろうか?いたとしても俺は認めないけどな!
美春はそんな噂話聞こえているのか、いないのかくるっと振り返り最大級の微笑みを向ける。
ぐ…かわい過ぎる。
「ほらほら、100円くじに夢見る少年よ!早く行こ?」
その瞬間、ざぁっと風が吹いた。
いや…単に風と言うには妙な感じだった。
木の葉が舞い上がり、俺と美春だけを残し周りの風景全てが木の葉で埋めつくされる。まるで世界の全てが木の葉になってしまったようだ。
「きゃっ、なにこの風っ…」
数秒吹いた風はピタリとやみ、木の葉がパラパラと落ちていき元の風景に戻る。
って…あ…あれ?なんか変だぞ?
確かに風景はそのままなのだが…何かが違う。
でも何が違うのか気付けない。この妙な違和感は何だ?
「ねぇ…悠斗…なんかさっきと違わない?」
「…え…そうか?…同じだろ」
気のせいだと思いたくて美春の問いにすっとぼける。
「…違うよ…」
「…違わないって」
「違うって、だってさっきあたし達のこと噂してた女の人達いないじゃない」
あぁ…確かに…でも人なんて歩けばいなくなるだろ。てかさっきの話聞いてたのか。
「どっか行ったんじゃねぇの?」
「だってここ一本道だよ?ダッシュしたっていなくならないよ」
ふむ…確かにこの道は一本道でちょっと入れそうな道もなければお店もない。
正確に言えば、犬猫くらいなら通れそうなのはあるけどな。
人間がわざわざあんなとこ通って行こうとは思わないだろう。
「ほら、それにそこ!」
美春はすぐそこにある家の塀を指差す。
「あそこで寝てた猫ちゃん!いなくなってる!」
って、いやいやや、猫は人間より普通にいなくなるだろ。俺が猫でもさっきの風はビビッて逃げるって。
「気にしすぎだって」
そう言いながらもさっきから違和感を拭えないのは俺も同じだった。
何かがチガウ…でも何がチガウ…?
人がいないから…?そうなのか?
「とりあえず、ここで立ち往生してもしょうがないし、行くぜ」
なんだか気味の悪いこの場を早く離れたくてさっさと歩きだす。
「あ、ちょっと待ってよ!」
後から美春もあわててついてくる。
しばらく歩くと、だんだん美春の言いたかった事が見えてきた。
本当に、誰もいない。
誰かにすれ違うこともない。猫の子一匹いない。
あまりに静かすぎるこの空間が薄気味悪い。
「ねぇ、悠斗、やっぱり誰もいないよ。おかしくない?」
「う~ん…さすがに…ちょっと変…?かな?」
おろおろする美春にヘタレな姿を見せるわけにはいかないと思い、内心ザワザワする気持ちを抑え頼れる男ぶりを見せる。
「でも大丈夫だって。俺がついてるし!」
「え?あぁ、うん、そう?それよりちょっとあそこの公園見て?」
…軽く流された…
ショックを受けながらも目の前にある公園へと足を伸ばす。
その公園は広く一般的な公園で、いつも昼間なんかはチビっこやら近所の奥様方、ワンコの散歩してるじいさんやらばあさんやらがのほほんと過ごしている。だが、不思議な事にここにも誰もいない。さすがに、ちょっと変だ。
公園の中はというと、右手前には滑り台や砂場があり、左手前にはシーソーや鉄棒、中央には噴水、ベンチがいくつもあるいたって普通の公園だ。
そして一番奥には広い…森…?えっと…森なんてあったっけ?
「はー…しばらく見ない内に公園の奥に広い森ができましたねぇ…」
「バカ!なんで数日で公園の奥に森なんて出来るのよ!」
そりゃそうだ。
毎日通っていて、わざわざこの公園に寄ったり気にしたりなんてことはないが…森があった記憶はない。いくらなんでも急にこんな森が現れるなんて不自然すぎるだろ。
どうなってるんだ?
「ちょっとだけ行ってみようか…?」
美春がとんでもない事を言い出した。
「おいおい、わけもわからん森に入っていくって大丈夫なのかよ?」
「わかんないけど、こんな気味悪いとこにいるよりはマシだと思わない?」
そうかなぁ…と思いつつも森へと進む美春を置いていくわけにもいかず、仕方が無く後ろからついていく。
ここからが、俺たちの物語の始まりだった。
初作品いかがだったでしょうか?
なんせ初めての作品だっただけに至らない事だらけだったのでは…と不安がいっぱいです。
なるべく新しいもの、と思いつつもなんだか王道ばっかりでもう少し頑張りたいと思います。
何かありましたら、どうぞご指摘の程よろしくお願いします。