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間違いだらけの作戦会議・1

 翌日、私はローレンにお茶会の招待状を出した。初めて自分からお茶会をしたいと言いだした私に、お母様は感激のあまり涙目になっている。

 たかがお茶会でそんなに喜ばれると、私が今まで令嬢失格だったみたいで情けなくなるからやめてほしい。


「ティン!」

「ソロ!」


 昨日、拗ねてしまったまま姿を見せなくなったソロが来たので、私はすぐに抱き上げた。


「昨日はごめんね。今日はいっぱい遊んであげる」

「ティンティン」


 相変わらず人間の言葉は話せないけれど、ソロとは身振り手振りで話が通じる。


「ソロ、三日後に私のお友達が来るの。ソロのことも紹介するね」

「ティン?」


 ソロは小首をかしげたと思ったら、急に背中を向けて走っていってしまった。


「どこ行くの、ソロ」

「ティーン!」


 叫び声を残し、また姿を消してしまった。


 そして、三日後。ローレンが私の屋敷へやって来た。


「まあまあ。リンネに女性のお友達ができるなんてうれしいわ。さあさあこちらにいらして」

「お母様。おもてなしは私がしますから結構です」

「あなたは気が利かないから、心配なのよ」


 いつまでも居座ろうとするお母様を追い出し、ようやくふたりきりになった私とローレンはホッと息をつく。転生者同士、礼儀作法とは早々におさらばだ。

 私は早速、本題に取りかかった。


「ねぇ。ローレンのこと、レオとクロードに言っちゃ駄目かな」

「え?」

「実は、レオの胸の魔法陣が悪魔を呼び出すものだって、言っちゃったの。そしたら誰から聞いたんだって問いつめられちゃって」


 ローレンは紅茶を噴き出しそうになり、慌ててハンカチで口もとを拭いた。


「ば、バッカじゃないの! そんな眉唾な話、信じるわけないでしょう?」

「信じてはくれたけど……」


 あのときの状況をローレンに説明すると、眉根を押さえ、深いため息を吐き出す。


「私が教えたなんて、絶対に言っちゃ駄目よ。魔女扱いされて捕まっちゃうじゃない!」

「レオはそんなことしないよ」

「するわよ。少なくとも今の時点では。私とレオ様の間に信頼関係ができあがってないんだもの。彼がいくら優しい人でも、国の安寧を担う立場である以上、不審なものは排除するはず……」


 なるほど。ローレンの言うことも一理ある。

 これ以上、なにもバラすな、と怒られたので、私は仕方なくうなずく。でも、このままじゃクロードに疑われたままなんだよな。

 ローレンは、大きく息を吐き出し、私に納得させるように力強く言った。


「あれこれ説明しなくても、リンネが私とレオ様を引き合わせてさえくれれば、私は彼の呪文も魔法陣も、消すことができるのよ」

「そうなの?」


 こんなところに救世主が!と思って見つめると、ローレンは当然とばかりに胸をそらす。


「あたり前でしょ。私はヒロインよ。ヒーローであるレオ様とは出会うべくして出会うの。レオ様は私の最推しなんだからね。死ぬなんて耐えられない。なんとしてでも助けなくっちゃ」


 最推しかどうかは置いておいて、助けなきゃというところには同感だ。あの魔法陣を消せるものなら、なんでもする。


「じゃあ私はどうすればいい? なにかできることがあるなら教えて」

「リンネは……そうだな。私をいじめているふりをすればいいだけ」

「いじめ? なんで」


 意味がわからない。レオを助けることと、私とローレンの関係はまったく別物だと思うのだが。

 私もたいがい説明が下手だが、ローレンも負けていないようだ。そういえば赤点仲間だったな……と遠い目になってしまう。


「それが私とレオ様の仲を深めることになるの。原作ではね、レオ様はもともと、王妃様に押しつけられた婚約者であるリンネが好きじゃないの。ずっとつきまとってくるリンネに辟易しているわけ。でも一応婚約者じゃない? リンネの評判の悪さは王家の評判にもつながるでしょう? だからリンネの動向は常に見張っているの。それで、私への態度があまりにひどいことを見かねて、私に声をかけてくれるようになるのよ」

「なるほど?」


 少し現実と違うんだな。今の私とレオは親友のような間柄なのに。


「でもレオは女性には触れないんじゃ……」

「それ、子供の頃だけよ。おば様に襲われたショックでしばらく女性恐怖症になったの。 今はリンネだって平気で触っているじゃない」


(……あれ?)


 私は軽い違和感を覚えた。だけど、ローレンは原作を知っているんだから正しいはずだ。うまく追及することができずに私は話題を変えた。


「それで、ローレンはどうやってレオを助けるの?」

「巫女姫の力よ。ちょっと説明が長くなるんだけど、でも一から説明するね――」



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