エピローグ
「ほれっお父さんそろそろ行くよ!お母さんもっ!」
俺たちにも子供が出来て随分と大きく育った。立派に。俺と春の気持ちはリアの意思を受け継ぐこと。子供が出来た時は名前にリアを漢字にした感じで付けようかと思っていた。だけど流石にそれは、俺たちの子供にリアを押し付けているような気がして出来なかった。純粋に子供からしたら嫌だろう。
「凛!ちょっと待ってくれよ。早いって。俺も春も着いていけてないから……。」
「凛ったら本当に速いね……。誰に似ちゃったんだか。」
立花凛。こんなに立派に育っちゃってな。リアのわんぱくな感じとの逆の感じの凛って名前を付けてみた。これには春も悩まず即答で良いんじゃない?って。
凛っておしとかやかな感じで気品があっていいだろう。落ち着いたことに育つかなって思ってたら反対だった。
「リアさんの所に早く行くよ~!!」
家の凛はリアのことが大好きだった。生きている時に会えなかったことが悲しくて辛いっていつも言っている。
俺と春とかはよくリアの話を凛に聞かせていた。正直子供側だったらもう聞きたくなくなってたり、あまり好意を持たない可能性が強いかなって思ってたんだ。でも、その反対。リアの話を聞くのが大好きだった。リアみたいになりたいってよく言ってる。実際考え方とか活発的な感じがリアそっくりだなって思えるレベルに。
「ストップ!危ないから。どうせだから三人で手を繋いで仲良さそうにしてるところを見せてやるんだ。あいつはそれがきっと喜ぶ。」
「だろうね。ほら、凛真ん中に入って。」
「うん!」
墓標の前に立つ。あれからもう8年だ。あの時とは色々変わった。俺も何度来たか分からないぐらいには来ている。春も。俺たちはリアがいなくなってからもリアの力を借り続けているよ。こうやって何度も会いに来るようにな。俺も就職し、春が喫茶店でバイトより凄いポジションにいるみたいな感じらしい。近々運営についても任せてもらうとか、まあ順調みたいだった。やっぱりリアの意思を引き継いだからな。多少のヘマを犯したぐらいじゃ俺らは止まらなかった。
俺も就職して色々問題に衝突したことがあったが、なんてことなかったよ。俺には退くって選択肢が最初からなかったからな。そのおかげでスムーズに問題を解決できて仕事できる奴扱いの人間だよ。これからもどんどん成長していきそうだ。
春は俺をいつも支えてくれてた。凜が生まれるまでは一番辛かったりする立場だと思っていたが、本当に頑張っていた。春と暮らすようになって色々と改めて春の事を知れたよ。考え方、好きな物、趣味とか。
凛は問題なく生まれて、無事元気に育ってる。俺たちの子なのにリアみたいに感じる時だってあるぐらいリアみたいだ。子供だからリアの話をしすぎると嫌いになる可能性もあったけど、俺たちとしてはリアの話を子供にしないわけにはいかなかった。それが功を奏したというか、リアの大ファンだ。リアみたいになりたいっていっつも言ってるぞ。それだけリアの生き方は凄かったんだ。皆を夢中にさせるって言うか凄いって思わせる生き方だった。リアは本当に凄いよ。
「どうだ?リアと話せたか?」
「そうだね。」
「うん!」
最後に一言だけ言わせてもらっていいか。俺たち三人は上手くやってる。間違いなくリアのおかげだ。俺たち三人は最高に幸せだ。リアはどうだ?
リアが作ったこの幸せな光景を見て幸せになれてるか?
聞くまでもない。満足気な顔をしてるだろう。リアの気持ちが分からないわけがない。リアは微笑んでくれているだろう。リアが作り上げた幸せな光景なのだから。リアの願いが叶っているんだから。
「なあ、春。」
「んー?なーにー?湊。」
「俺はリアが俺たち三人の中の良いところを見て笑顔で見守ってくれていると思うんだが、どう思う。」
「当り前じゃん。絶対にそうだよ。それ以外にあり得ない。」
「だよな。俺もそう思ってた。」
「じゃ三人でいつものあれやって帰るぞ!」
「「うん!」」
俺らが帰るとき墓標に向かっていつもしていること。儀式みたいなもんだな。
「「「俺たち・私たちは今幸せですよー!!!」」」