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後編

あなたは幼馴染と離れ離れになったことはありますか?幼馴染と再会したらどうしますか?

もし、再開した幼馴染と昔みたいに遊べたら嬉しくありませんか?小さい頃、何も考えずに友達と遊んだ楽しさ。成長してから、友達と遊ぶ楽しさ。成長したからこそ分かるお互いの気持ちや考え方。

この本が幸せな物語か、悲しい物語かは読んだ人次第で決まると思います。あなたがどう考えるかです。

どちらの捉え方も恐らく間違えではないと思います。色々な考え方があるのが人間なのですから。

ただ、僕は書いてる途中に泣きそうになりました。

朝だ……。早いな……。ぐっすり寝れてるからか、寝てから朝になってるのが早いな。

 気づけば朝だ。いつもは寝てる途中に何度か起きたりして、体感時間だと朝になってるのもうちょっと遅いんだよな。

 何の気なしにベッドの方を見てみると、リアはスヤスヤと寝ていた。なんかこうして見てると安心するな。

 人の寝ているところって見てると安心するんだよな。俺だけかな。気持ちよさそうで穏やかな気分になる。

 朝の準備をし始めるまで、しばらくボーっとしながらリアの寝姿を眺めていた。そろそろご飯とか身支度しないといけない時間だな……。今日も頑張るか。

 リアはどうしよう。寝ているし無理に起こさなくてもいいんだけどな。昨日とか起こしてたのに今日起こさなかったら変な感じになったりしないかな?うーん。とりあえず、一度起こしておこうか。

 スヤスヤの途中申し訳ないけど、これも俺の仕事だ。悪く思うなよ、リア。

「リア。起きて。朝だぞ。」

……。微動だにしない。リアって朝凄い弱いよな。

「リーアー?朝だぞー!起きろー!」

 体をゆさゆさと動かしながら大きい声で名前を読んでみる。ダメだ……。昨日とか朝すんなり起きていたような気がしたけど、タイミングが良かっただけなのかな……。埒が明かないし、先に軽く身支度だけ済ませて置こう。リアを起こすのは後でもいいだろう。

 よし。終わったな。後は飯とリアを起こすぐらいだ。リアはまだスヤスヤ寝ている。どんだけ気持ちよく寝てられるんだ……。

 先に飯作るか。今日は白米食べたいな……。白米と味噌汁と冷蔵庫の何かでいいか。

 リアは普段どんなご飯食べてたんだろうな。食生活とかって家庭とか人とかによって全然違うから見たり聞いたりしないと全然分かんないんだよな。

 今のところ俺の好みに合わせてくれてるっぽいから大丈夫そうではあるけどな。苦手な物とかだけでもあるなら聞いておかないとな。

 大抵の物食べられたとしても苦手な物の一つや二つぐらいはあるかもしれない。大体の人あるからな。別にそれを咎めるつもりもないし。

 俺にだって苦手な食べ物ぐらい沢山あるしな……。一人暮らしとかしてると、逆に自分の好きな物しか絶対に食べないしな。わざわざ苦手な物をお金払って買わない。そんな奴いたらそれはもう……何て言うか、凄い奴だ。

 おっ、冷蔵庫の中にウインナーあるじゃん。そういえば残ってたな。今日の朝食は白米と味噌汁とウインナーにしよう。美味しそうだ。

 味噌汁の具は無しでいいかな……。リアはがっかりしちゃうかな。俺は味噌汁の具無しって結構好きなんだけど、普通の人はあるほうが好きだからな……。

 具無しを好む人の方が明らかに少なそうだけど。まあ、残念ながら入れる具がない。具無しの味噌汁で今日の所は我慢しておいてくれ。

 入れたとしても俺が作ったら具沢山にならないだろうが……。木綿豆腐と油揚げぐらいか?あとワカメとかかな……。リアの好みの物があったらせっかくだしそれを入れてもいいかな。 俺も別に嫌いなわけじゃない。具無しが色々考えたら一番効率的で味も悪くないからそうしてるだけでな。

 あっという間に白米も炊けたし、味噌汁もウインナーも、もうできそうだな。流石にそろそろリアに一度声を掛けとかないと。

「おーい。リアー!起きてくれー!朝だぞー!ご飯出来たぞー!起きろー!」

「んん……。誰……?何……?」

「何……じゃなくてだな……。朝だぞ。」

 リアは目を擦りながらこっち睨んでいる。これは、やってしまったか?朝苦手な人って起こされたりするの凄い嫌がるよな。俺も気持ちは凄い分かる。

「ん……。あれ……。湊じゃない。どうしたの?誰かと思ったわ……。危なく不機嫌になるところだったわ。」

「おう。俺しかいないだろ。リアが不機嫌にならなくて良かったよ。リアが不機嫌になって怒ってきたら泣いちゃうかもしれない。」

「大袈裟ね。悪かったわ。夢のせいかしら。湊が一瞬知らない人に見えて、記憶がこんがらがっていたのよ。」

「そうかそうか。そういう事もあるよな。」

 良かった良かった。ちょっとタイミングが悪かったのかもしれないな。嫌な夢とか見てる時って凄い精神的に不安定な状態だよな。

 嫌な夢ってなんであんなに精神的にダメージを受けるんだろうな……。

 半日、下手したら一日中体が重くなるぐらいダメージを食らう時がある。現実世界より食らうダメージでかいぞ。

「朝飯作ったけど食べるか?もう少し寝てるならラップして置いとくけど?」

「せっかく起こしてもらったんだし、食べようかしら。今日の朝ごはんは何?」

「白米と味噌汁とウインナーだ。どうだ?」

「食べやすそうでいいんじゃない?どれも好きよ。」

「それは良かった。出来立てだから十分美味しいと思うぞ。」

「湊の作ってくれたものは何でも美味しいわ。変に心配しなくていいわよ。」

「気持ちは有難く受け取っておくよ。それでも、出来立ての方が美味しいと思うから。」

 リアは目を擦りながらゆっくり洗面所に歩いていき、顔を洗ってきて、戻ってきた。

「今日の朝は最悪だったわ……。いえ、最悪ではなかったのかもしれないけど……。」

「そんなに嫌な夢だったのか?」

「そうね……。憂鬱な気分だわ。」

「大丈夫か?今日は大学休んで一緒に居ようか?」

「そこまでしてもらわなくても大丈夫よ。気を使い過ぎ。時間が経てば忘れてしまうし大丈夫よ。それに最悪の事態にはならなかったわ。」

「最悪の事態?」

「あのまま湊に気づかなかったら私凄く不機嫌な状態になって、湊に八つ当たりしてかもしれないもの。気づけて良かったわ。」

 それはあんまり想像したくない状態だな……。運が良くて良かった。助かったぜ……。リアが不機嫌な状態で俺に当たってきたりしたら泣いちゃうかも。冗談抜きで。

「朝は苦手か?」

「間違いなく得意ではないわね。朝は不機嫌な方が多いかしら。不機嫌といっても、基本的にはそこまでではないんだけど。少しテンションが低いぐらいの。今日のは特例と言ってもいいぐらいだわ。ごめんね、湊。」

「いや、俺の事は別に良いんだけどさ。何かあったわけでもないし。不機嫌なときぐらい誰にでもある。常にそうだったりしたら流石に困るっちゃ困るけどな。リアは普段がテンション高めだから少しびっくりするかもしれないけど、そこは多分慣れだろう。そうじゃなくて、朝起こしてたけどさ、朝起こすのやめとこうか?正直迷ったんだよ。ぐっすり寝てたからな。でも、いろいろ考えた結果起こしておいた方がいいかなって思ったんだけど、どうだ?」

「そういうこと……。そうね、起こしてくれた方が嬉しいかな。湊には申し訳ない事かもしれないけど、朝起きて一度顔を見ておきたいわ。」

「そうか?じゃ、遠慮なく起こすぞ?」

「ええ。お願いするわ。もし、私が不機嫌でも許して欲しいわ。償いはするし、その後何でもするわ。気にしないでくれると嬉しいかな。」

「なるべく不機嫌にはならないで欲しいが、了解した。これから朝はご飯前ぐらいに一度起こすからな。」

「わかったわ。」

 とりあえず、朝起こす起こさない問題は解決したな。正直、朝起こされて不機嫌になるぐらいだったら、まだいい。その後に繋がらなければ。

 それにリアが頼んできてることだからな。俺としても起こさない訳にはいかない。後は早く起きてくれることを祈るだけだな。

「それなら朝飯そろそろ食べようか。」

「ええ。私のせいで朝から申し訳ないわ。」

「気にするな。人が二人も居れば色々と起きる。その一つに過ぎないから。」

「湊は優しいわね。良かったわ。」

「それはリアとか他の奴らのおかげだよ。ご飯の味はどうだ?」

 リアがご飯を一口ずつ食べたところに聞いてみる。ウインナーはともかく、ご飯の硬さとか味噌汁とかは味の好みがでそうだからな。

「美味しいわよ。良い味だわ。」

「良かった。ご飯の硬さとか希望あるか?希望があれば次からそうするけど?」

「びっくりするぐらい柔らかくなければ特に大丈夫よ。粥ぐらい水っぽくなければ。」

「それは俺も嫌だな。分かった。味噌汁は好きな具とかあるか?希望の具があれば次から入れるようにするぞ。後は濃さとか。」

「味噌汁……。普通何の具が入ってるかあんまり分からないわ。豆腐とかかしら?他に思いつかないから何でもいいわよ。湊のチョイスに

任せるわ。」

「そうか。分かった。」

 リアも俺と同じぐらいこだわりが無いタイプなんだろうか?それなら楽っちゃ楽だが少し寂しいな。こだわりが強すぎるのも問題かもしれないけど、多少はあった方が人間味があるという感じがして安心するんだけどな。俺が言える事でもないけどな。

「あ!そうだ。一つ聞こうと思ってたんだ。」

「なにかしら?」

「苦手な食べ物とかってあるか?流石にリアの苦手な食べ物を食卓に出したくないからな……。」

「特にないわ。」

「本当か?!凄いな……。」

「もしかしたら、無い事はないのかもしれないけれど。何も思いつかないし多分無いと思うわ。」

「そうか。なら、もしあったら教えてくれ。」

「分かったわ。」

これで、疑問は減ったな。ご飯に関する問題も当分起きなさそうだな。安心した。

「それにしてもご飯美味しいわ。湊の家に来てからご飯が楽しみになったわ。」

「今まではそうでもなかったのか?」

「そうねー。何と言うか味気がない食事だったわ。それに、食べたりする場所もね。」

 場所……?今もそんな特別な場所で食べてるわけではないが……。味に関しては好みとかがあるからな……。分からないけど、楽しみが増えたんなら良かったか。

「じゃあ良かったよ。俺もリアと食べるご飯は美味しいぞ。」

「本当かしら?」

 リアは俺を疑いつつも少し嬉しそうに微笑んでいる。リアはこうでないと。笑顔が一番似合っている。不機嫌なリアは正直見たくないな。

 慣れの問題もあるかもしれないけれど、リアには笑っていて欲しい。本当にそう思ったな。辛いところとか悲しいところとか、リアにはそういうのをあまり感じてほしくない。無理な事だとは分かっているけれど、出来る限りそうしてやりたいなって思ってしまう。俺の我儘なんだろうか。

「ああ。本当だ。俺も一人寂しく作業のようにご飯を食べてたからな。リアと二人で食べてるのと今までのとを比べると全然違うぞ。俺も楽しみが増えたってもんだ。」

「ふふ、大袈裟ね。でも、それが本当なら嬉しいわ。」

「本当に決まってるだろ。」

「迷惑になってないなら、一番だわ。」

「迷惑な訳ないだろ。考えすぎだ。リアはもっと自信を持って、俺を導いてっていくれよ。」

「湊がそういうならしょうがないわね。頑張れるところまで頑張ってみようかしら。」

 少し元気になってきてくれただろうか?リアは元気でいてくれないとな。

「湊は今日何時ごろ帰ってくるのかしら?」

「今日か?そうだな、今日は十六時ぐらいだな。」

「十六時ね。分かったわ。」

「何か用事でもあったか?」

「単純に何時ごろ帰ってくるのかなって思っただけよ。ある程度何時頃帰ってくるのか分かってた方が気持ち的に良いのよ。あまりにも遅かったりすると変に心配したりするからね。」

「あー、そういうことか。確かにそうかもな。必要以上に遅くはならないと思うが……。まあ、特別遅くなる理由は今のとこないな。」

「そう、分かったわ。」

 確かに家で待ってるだけだもんな。待ってるのかは分からないけど、ある程度こっちの予定を知ってる方がやりやすいだろう。

「今日は春と会うの?」

「春?会う予定はないぞ。」

「そうなの?」

「昨日は偶然出会ったけど、今までも出会ってこなかったんだ。出会った方が運が良かったって感じだよ。」

「確かに、それはそうね。春と再会してから連続で出会ってたみたいだから、てっきり会うものなのかと思ってたわ。」

「気持ちは分からなくないが、約束とかはしてないからな。出会う可能性が全く無いとは言えないけど、無いだろうな。」

「そっかー……。」

「ああ……。」

 何でかリアが残念そうだ。そんなに俺に春と会って欲しいんだろうか?それとも春と自分が会いたいのか?

「まあまあ、今度三人で会う約束してるんだからそれまで我慢しててくれよ。」

「それもそうなのだけれど……。仕方ないわね……。どうしようもない事もあるもの。もしあったら春と仲良くしておいてね。」

「仲良く?まあ、喋ったりはするだろうけどな。」

「ええ。それでいいのよ。関わることが大切なのよ。」

「そんなもんか?」

「そんなもんよ。」

 リアがそう言うならそうなんだろう。リアは基本的に正しい事を言うからな。

「まあ、会えたらそれとなく話はしとくよ。そろそろ時間だから行ってくるな。」

「ええ。行ってらっしゃい。気を付けね。」

「ああ。」

 リアは玄関まで出て手を振ってくれてた。悪くないな、こういうの。こういうさりげない一つの行動で元気が出るってもんだ。今日も気合入れて大学行こう。春と出会えたら話をしよう!

「よう。」

「おっす。」

「そう上手くはいかないよな。」

「何の事だ?」

「気にするな。こっちの話だ。」

 そう都合よく会えるはずもなく、今朝は出会えなかった。後は昼に食堂で出会うかどうかぐらいか。

「今日学校終わったら遊ばねーか?」

「ん?珍しいな。どうしたんだ?」

「最近遊んでなかったなーって思ってな、どうだ?」

「学校終わりかー……。」

 タイミング悪いな。今日は十六時頃に帰るって予め伝えてたしな……。遅くなっても怒ったりはしないんだろうけど、少し気が引けるよな。

「何か用事あったか?」

「小鳥遊さんか?」

「いや、違うよ。それならそう言うしな。」

「じゃあ何なんだ?」

「用事があるわけではないんだけどさ、家に人待たせてるんだよな。今日十六時ごろに帰るって伝えてたからどうしようかなって。」

「誰だそれ?!お前、小鳥遊さんと言うものがありながら……。」

 何か勘違いしてるなこいつ……。

「そもそも性別も言ってないだろ。色々と勘違いするなよ。」

「ああ。そうか……。女かと思ってたけど、そうじゃない可能性もあったもんな。すまん。男だよな。」

「まあ、女の子ではあるんだけどさ……。」

「おい!」

「聞けって。夏目が言ってる小鳥遊さんの知り合いでもあるんだよ。」

「前言ってた幼馴染のもう一人か?」

「そうだ。」

「ふーん。小鳥遊さんと言うものがありながらお前はなんて奴なんだ……。」

「春とはそもそも何もないってば。それにその幼馴染とも何もないって。」

「本当かよ?」

「悲しい事に本当なんだよ。で、帰るって言っちゃってたからなー。どうしようかなって感じだ。」

「どんな子だ?」

「そうだな。銀髪で胸は大きめで身長は普通って感じだな。元気な子だ。」

「おいおい。めちゃくちゃいいじゃねえか。小鳥遊さんも運が悪いな……。」

「何がだ?」

「気にするな。どうせだったら今日会わせてくれよ。三人で遊びにでもどうだ?」

「俺はいいけど……。一回に家に帰ってリアに聞いてみないと分からんな。」

「リアっていうのか。なら、それでいいぞ。別に急いでるわけじゃないしな。一回帰ってその子に聞いてから、LIMEか何かで俺に伝えてくれ。」

「おう、分かった。」

 一番丸く収まったかな……。

 ん?どうせなら春も誘ってみたらいいんじゃないか?リアもその方が喜ぶかもしれないし、春もリアが入るなら来てくれるかもしれないしな。

「おい。夏目。ちょっといいか?」

「ん?どうしたどうした。何か問題ありそうだったか?」

「問題があったわけじゃない。夏目にはもしかしたら朗報かも知れない。」

「なんだ?」

「三人で遊ぶかもしれないなら春も呼んでみようと思ったんだけどいいか?」

「ああ。お前の知り合いなら誰でも行ける覚悟あるぞ。」

「それはありがたいな。先に春に連絡してみる。繋がるといいけど。」

 プルル、プルル、お、繋がったか?

「もしもし、春か?」

「うん。そうだよー。どうしたんだい急に。」

「確かに急だったな、電話なんて大体急だけどな。」

「それもそうだね。でも、急だったな……。」

「ん……?一回切ってからもっかい電話掛けるからな。今度は急じゃないぞ。」

 ぷつっと電話を一度切ってからもう一度最速で掛けなおす。そうすると即座に春が出てきた。

「もしもし。」

「うん。もしもし。今回はちゃんと前もって言われてたからね、無事出れたよ。何も問題ないね。」

 流れで謎のやり取りをしてしまっているな。制御しないと。

「春ー?」

「何ー?」

「今日夕方ごろ暇か?」

「特に用事はないよ。どうかしたの?」

「今日遊ばないか?」

「えっ?!春と二人!?本当に?!」

「いや、ごめん。俺の知り合いの夏目と春と来るか分からないリアって感じだな。今の所。」

「あ……。そうなんだ……。そのメンバーならまだいいけど、リアは分かってないの?」

「ああ。一度家に帰ってから様子を見ようと思ってる。」

「あー。なるほどねー。どこに行くか次第にもよるだろうけど来そうだよね?」

「俺もそう思う。万が一はあるかもしれないけど、ないだろうと思ってる。」

「最悪湊と、その知り合いがいたら大丈夫かなって思ってるぐらいだから私は行ってみようかな。」

「何時ぐらいに授業終わったりする?俺らは予定では十六時過ぎには動き出しそうだ。」

「どこ行くの?」

「決まってない。集まってから考えようかと……。今日はいつまで講義とってんだ?」

「四講義目までとってるから普通に皆と合流できるよ。」

「場所だけ決まってなくて家に帰って一度リアに聞いてみるって言う作業が残ってるからさ、それ待っててもらっていいか?」

「そんな遠くいかないでしょ?まあ、それでいいんじゃない。湊も大変そうだし……。」

「ああ、色々汲んでくれると助かる。じゃあそういうことで、帰ってから連絡するな。」

「分かったよ。」

 ふう。何とか春確保。意外と誘ったら断らないタイプの人間だったのかもしれない。

「夏目、春は釣れたぞ。だからリアがもし来なくても三人で遊ぶこと自体は決まった。後はリアだけだな。」

「おう。この場合お前は一度家に帰るけど、俺と小鳥遊さんってもしかして一緒に待機したりする?」

「考えても無かった。それでも全然いいけどな。もし、リアが来なかったことを考えるとそうなる可能性はある。」

「まじか……。」

「夏目って小鳥遊さん苦手か……?」

「っそういうわけではない。応援もしてるし良い人だとも思ってる。純粋に二人っきりの時間は恐ろしいな。」

「夏目でもそういうの苦手だったりするんだな。意外だわ。」

「おう。俺は女性がそもそも得意じゃない。他の人でも話すのあんまり得意じゃない。」

「そうだったっけ……?結構いろんな人と話してない?」

「できないことはない。やろうと思えば出来る。理由があったりすればな。出来ても基本的にはしたくないんだよ。」

「そういうもんか。」

「そういうもんなんだよ。」

 夏目でもそういう事ってあったんだな。意外な弱点だ。その割に友達多いからな、夏目って。

「まあちょっとだけだろうし、我慢しててくれや。」

「まー、そうするしかないわな。運に任せるか。小鳥遊さんとなら俺も普通に話せる気がするわ。」

「だろ?」

 何だかんだあって16時付近になってた。今日も早かったな。

「夏目、春と話し合って行きたい所とかあったら決めておいてくれ。」

「わかった。」

「俺は家に帰って様子を見てくるよ。」

 できるだけ急いで帰宅した。

「おーい。ただいまー。リア起きてるかー?」

「んんー?どうしたの湊ー?」

 リアは寝そうになりながらパソコンで動画を見ていたみたいだった。

「眠いか?」

「そこそこね。」

「そうか……。」

「どうかしたの?」

「俺の知り合いがリアと遊びたいって言いだしてさ、リアにどうする?って聞きに来たんだけど、どうする?」

「んー。どうしようかしら……。湊の友達ねぇ……。」

「ああ。いい奴なのは保証する。後……。」

「後?」

「春もいるぞ。」

「行くわ。」

 春が居ると分かったら即答だった。最初から春の名前を出しておくべきだったな。

「そうか。じゃあ出れるように普段着に着替えておいてくれ。俺はちょっと連絡しとく。」

「分かったわ。」

 連絡しようと思ったけど、どうしよう。どっちに連絡すべきかな。どっちに連絡しても同じことなんだけど、少し違うよな……。

 俺の考えすぎかな。春には一回電話掛けてるから今度は夏目しとこう。

「夏目?」

「おう。どうした?こっちは一応小鳥遊さんと合流してるぞー。」

「もう一人の幼馴染が来るってさ。で、どこに行けばいい?」

「そうだなー。一度こっちまで来れるか?」

「分かった。じゃ、もう少し待っててくれ。」

「おう。」

 とりあえず向こう組も問題なさそうだな。後は少しリアを待って行くだけだな。

「湊ー。準備終わったわよ。」

「お、じゃーそろそろ行くか。春も待ってるぞ。」

「春が待ってるならしょうがないわね。行きましょう。」


「おーい。」

「来たな。待ちくたびれたぞ。」

「そんなに時間掛かってないだろ。これがもう一人の幼馴染のリアだ。よろしく頼む。」

「ああ。よろしく。リアさん?」

「ええ。よろしく。」

 リアは夏目と挨拶した後、春のもとへと近づいて行った。

「春~!会いたかったわよ~!すりすり~。」

「もー、ちょっとちょっと。他の人もいるんだから少し控えてよー。」

「えー?!これでも控えてるわよ~。春の事大好きなんだから~!」

「分かった分かった。僕が悪かったから。」

 春はリアのスキンシップを諦めて受けていた。百合っていいな。

「あの二人っていつもあんな感じなの?」

 夏目が興味深そうに俺に尋ねてくる。

「ああ、そうだ。いいだろ?」

「ああ……。最高だ。」

 やっぱ、こいつもよく分かってるな。考えてることは同じだ。二人で頷いていた。

「そういえば、どこ行くか決まったか?」

「近くの店とかぶらぶらするだけでもいいかなって思ってたんだけどどうだ?」

「リアは大丈夫か?」

「ええ。私はなんでもいいわよ。任せるわ。」

「じゃ、それでいいかな。移動しようか。」

「ああ。」

何となくの流れで近くのゲームセンターに行くことになった。

「俺と湊はゲーセンとかたまに来るけど、二人は来たりする?」

「私はないわね。」

「んー。僕もあんまりないかな。だから今日は楽しみだよ。」

「私もよ。春がいるもの。」

「なら良かった。どうせなら皆で楽しみたいからね。」

「そうだな。」

 夏目は結構周りの事気にするタイプだからな。春とリアの機嫌を伺ってるみたいだ。良い奴だからな。

「リアと春は何かやってみたそうなゲームがあったら言ってくれ。」

「二人は良いのかしら?」

「俺と夏目は普段から来たりしてたからな。どうせなら二人がやりたいやつ皆でやれたら良いかなって。夏目もそうだろ。」

「ああ、そうだな。是非是非。俺には変な気を使わないで良いよ。」

「そう……。じゃあ私はこれやってみたいわ。」

「レースゲームか。いいんじゃないか?二台しかないから交代しながらやろうか。」

「そうだな。」

 レースゲームは久々だな。ちょっと楽しみだ。リアと春が酔わないといいけどな……。たまにめちゃくちゃ酔って気分悪くなる人がいるから心配だ。でも、リアは大丈夫かな。家のパソコンのゲームの時も酔ったりしてなかったし春だけか。

「私最初にやっていいかしら?」

「どうぞどうぞ。それならもう一つの方は小鳥遊さんに行ってもらおうか。」

「うん。」

「分からないことがあったら俺と夏目が教えれるから気軽に聞いてくれ。」

「操作は単純でアクセルとブレーキとハンドルだけなんだけど、車だけはちょっと差が出るというか仕様が変わったりするかな。」

「これって初心者向けの車とかあるのか?」

「無い事には無いけど、好みで良いと思うぞ。好きな見た目のやつとか。」

 車とかって人の趣味が結構出るよな。リアは派手なの好きそうなイメージだけど春は派手なのは乗らなそうなイメージ。実際はどうなんだろうな。

「これってどうやって選ぶのかしら?」

「ハンドルを右に回したら右のやつに変わっていくと思う。」

「ほんとだわ。ありがとう。」

 何にするんだろう。

「小鳥遊さん凄いの選ぶな……。」

「ん……?え。」

 春は想像以上のド派手な車を選んでた。何ていうんだろ。トラックみたいなのに凄い装飾がついてるやつって言うのかな……。不良とかが好きそうな見た目の車だ。春ってこういうの好きなのかな……。

「春ってこういう車好きなのか……?」

「間違えて選んじゃった……。」

 間違えか。なんか一安心したわ。

「ま、これで良いかな。そんなに悪くない。うん。」

 本人的には悪くないらしい。意外とああいうのが好きなのかも。意外だ。

 リアはどんなやつだ……?リアは予想通りと言うか、所謂外車だな。好きそう。イメージとぴったり合う。良いんじゃないか?

「後は音に合わせてアクセルを踏めばいい。それ以外は普通の車のイメージで大丈夫だ。」

「ええ。」

「分かった……。」

 どっちが勝つだろうな。正直俺の予想だとリアが勝ちそうだ。他のゲームもそこそこ上手だからな。二人共集中しながらやってるな……。初めてやるゲームとかだと特に集中しがちだよな。何回目からか相手に勝ちたいとかって気持ちが出てくるんだよな。

 勝者はリアだな。予想通りだな……。春は車のせいもあるんだろうけど、レースのエリアからだいぶズレたりしてたな……。それも解釈一致だ……。

「楽しかったわ。レースゲームもいいものね。車は楽しそうだわ。こういうのってバイクのゲームはないのかしら?」

「バイクか……。あんまりゲームセンターでは見た事ないな。夏目知ってるか?」

「いや、俺も見た事ない。」

「そう、残念ね……。」

「僕にはちょっと難しかったみたいだ……。」

 春は少し落ち込んでいた。

「まあまあ、初めてだったししょうがないって。車も凄いの選んでたしな。」

「僕結構気に入ってたんだけどな……。」

「そうか……。」

「次は俺と湊でいいか?」

「いいんじゃない?」

「やらせてもらうか。」

 夏目も結構ゲーム上手だからな……。勝っていいところ見せたいな……。本気で行こう。

 車もこれで、用意は大丈夫だ。後は集中していこう。

 あれ……。何事もなく勝ってしまった。

「湊はレースゲームも上手なのね。凄いわ。」

「湊凄いね~!」

 そういうことか。夏目には気を使わせてしまったな。

「結構やってるからな。良いところ見せれて良かったよ。」

「悔しい負けちまったな……。また今度勝負だな。」

「ああ。」

 夏目の耳元で「悪いな。」と一言。夏目も「いいってことよ。気にするな。」と言わんばかりの表情。これが男の友情って奴か……。

 それからクレーンゲームとか他のゲームを色々少しずつしていた時夏目が急に「プリクラ取ろうって言いだした。」

「プリクラって何?」

 リアはプリクラを知らないようだった。

「プリクラっていうのは言わば写真みたいなもんだよ。それを加工したりできるやつみたいな。そんな感じだよな?」

「そうじゃないかな。」

「写真か……。いいわね。取りましょう!」

「僕もいいよ。」

 二人共そこそこ乗り気なようだった。問題ないなら良かった。プリクラなんて滅多に撮らないからな。久々だ。昔撮った時は男しかいなかった気がする。虚しいな。

「じゃあ撮ろう撮ろう。ちょっとスペースがそんなに広くなくて申し訳ないけど。」

「別にお前の機械じゃないだろ……。」

「これどうしたらいいの……?」

「お金入れて待つんじゃなかったっけ?」

「多分そうだ。」

「えっと、順番はどうしよっかな。リアさん湊、小鳥遊さん俺でいいかな。」

「何でもいいわよ。」

「そうしよっか。」

 3,2,1……パシャ。

「ちゃんと撮れたか?」

「多分……。問題ないと思うけどな。お、上手く撮れてるんじゃないか?細工はリアさんと小鳥遊さんに任せてよう。女の子の方がこういうのセンスいいイメージだ。」

「確かにそうかも。リアと春大丈夫か?」

「ええ。」

「いいよ。適当でも良いんでしょ?」

「大丈夫だ。」

 二人で相談しながら色々な加工してる。楽しそうだな……。凄い女の子っぽい空間だ。

「これでいいんじゃないかしら?」

「僕も良いと思う。」

「悪くないんじゃないか?」

 何か色々な加工がされてて正直良く分からないけどいい思い出だろうきっと。」

「えっと、じゃあこれを皆に……はい。」

「ありがとう。」

「ありがとー。」

「どうも。」

 しばらく店の中を歩いて見て回ったりした。


「そろそろ良い時間だな。解散するか?」

「もうこんな時間か。俺はどっちでもいいから任せるよ。」

「僕も大丈夫だけど……。リアはちょっと疲れちゃってるみたい。」

「あはは……ごめんね。」

 確かにリアは少し疲れ気味の表情だった。あまり体力がないのか?知らなかったな。今度から気を付けないと。

「全然大丈夫っすよ。楽しかったんで。また遊びましょう!じゃ!」

 夏目は一人で去って行った。

「さて、俺らも帰るか。春は大丈夫か?送っていこうか?」

「ううん。大丈夫だよ流石に。それより、リアを心配してあげて。」

「ああ。」

「私の事なんてそんなに気にしなくていいのよ。これくらい平気よ。心配のしすぎ。」

「そんなこと言ってもう。僕もこの辺で去るよ。じゃあねー!」

「おう。またな。」

「ばいばいー!」

 何とか何もなく家に着いた。リアは思いのほか疲れてるみたいだ。ちょっと心配だな。

「リア、大丈夫か?」

「大丈夫よ。ちょっとお腹空いたわ……。」

「確かにな。今日は悪いが残ってる材料で適当に作ったもので我慢してくれ。また明日色々買ってくるよ。」

「ええ。何でもいいからお願い。」

 冷蔵庫に残ってるものを適当に作り、食べた。

「思ったより疲れたわ……。」

「飯食ったら今日の所はもう休んどこう。ちゃんと寝るんだぞ。シャワー浴びれそうか?」

「うーん……。湊が体を洗ってくれるなら。」

「するわけないだろ。疲れてるならそのまま寝てもいいぞ。」

「ケチねー……。仕方ない。一人でシャワー浴びてくるわ。」

「おう。」

 俺も今のうちに色々準備しておこうっと。

「湊ー。上がったわよー。」

「その服で大丈夫そうか?」

「全然問題ないわ。」

 リアの服とか買わないとな。俺の服をいつまでも着てるより自分の服が合った方が色々と楽だろう。

「俺もシャワー浴びてくるわ。先に寝ててもいいぞ。」

「うん……。」

 ふー。あれ?シャワーを浴びて出てきたらリアがテーブルの前に座っていた。てっきり疲れて寝てるかと思ってた。

「眠くなくなったのか?」

「そんなことないわ。」

 じゃあなんで寝てないんだ……。

「お願いがあるんだけど。」

「ん?」

「今日は一緒に寝て欲しいの。だめかな?」

 それは反則だろ。そんな上目遣いでお願いされて断る男がどこにいる。俺もそろそろ我慢の限界が近づいて来てるのかもしれない。

 一緒に寝たくないわけがないし。一緒に寝るだけだ。それだけだ。そう思えば行ける気がしてきた。

「わかった!一緒に寝よう!」

「びっくり。断られるかと思ってた。優しいわね、湊。それじゃあ、さっそく布団に入ろ。」

「うん……。」

 リアは抵抗っていうのかな、戸惑いが一切ないな。凄い。リアが男だったら凄くモテモテなんだろうな。憧れる。女の子のままでもモテモテだろうけど。

 考えてなかったけど、これってどういう姿勢が正解なんだ?流石にリアの方向くのは気が引けるし、背中を向けるのは相手に失礼が気がするし。

 間の上を見る状態が正解か……?普段横になってしか寝てないから今日は寝れないかもしれないな……。

 しかも、今日は横にリアが居る状態。そもそも緊張して寝れんかも。とりあえず布団に入って天井を見てよう。

「湊。湊は人生最後にしたいことってある?」

「人生最後?考えたこともなかったな……。人生最後かー。何だろうな。想像もつかん。」

「じゃあ、もし後一か月。もしくは一週間後に死ぬって決まってたらどうする?」

「え……。そうだな……。どうするんだろ。最後ってなるとやっぱり仲良かった友達とか家族とかと一緒に過ごすってなるのかな……?それか美味しい食べ物食べるとかか?それかゲームかな……。これといった事がないな。もしかしたら今とあんまり変わんないかもしれないな。」

「湊らしい意見ね。最後だからといって特別な事をしないといけないなんて事はないもの。私は湊の意見を尊重するわ。その考え方好きよ。」

「そういうリアは?最後に何かしたいことってあるの?」

「私の最後は秘密よ。」

「え、それはずるくない?」

「ふふ。乙女の秘密は気軽に聞いちゃだめよ。その内気が向いたら教えてあげるわ。」

 乙女の秘密か……。ずるい言葉だ。これ以上聞いちゃダメってことなんだろうな。気になるけど、またの機会に期待しておこう。

「湊、手を貸して。」

「ん?どうした?」

 手を差し出す。そうすると手を物色するように触った後、握られた。ぎゅっと。

「これは……どういったつもり?」

「そのままよ。」

 そのままってどういう事だ。そのまま……。手を握ることにそのままって一体どういうことだ……。

「湊、好きよ。」

「……。え?」

 今好きよって言ったか?俺の聞き間違いか?急に好きよなんて普通に考えたらないよな。俺の耳がおかしかっただけか。

「今さ、何て言ったんだ?」

「……。」

「あれ?」

 寝息が聞こえてきた。寝るの早すぎだろ。リアが言った寝言を俺が聞き間違えただけだったみたいだな。明日も大学だしさっさと寝ないとな……。寝よ。

 アラームが鳴ってる。もう朝か……。凄く寝るのに疲れちゃったな。朝起きても手を握ったままだった。リアはまだスヤスヤと寝てる。

 可愛い寝顔だ。あんまり寝れなかった代わりに寝顔を拝ませてもらおう。リアの可愛い寝顔を見てたら元気が出てきた。

 起きてトイレとか行ったりとかもしたいんだけど、この手を放したくないな……。どうしたらいいんだ。自分の欲望に忠実になるべきか否か。

 それとも寝たふりをして抱き着いたりするか。それは流石にできないな。俺の理性がそれは許さない。俺には度胸がないな……。

 ひよった俺は結局手を握ってるだけにした。欲望と理性を天秤にかけた結果こうなった。もうしばらくだけこの感覚を味わっておこう。

 それにしてもリアの手は柔らかいな。ぷにぷにだ。ぎゅっ。強めの力で握ったり弱くしたりを繰り返したりしてみた。

「どうしたの?私の手で遊んで。」

「えっ?!リア起きてたの……?」

 欲望に中途半端に従った結果がこれか……。何もしないが正解だったか。どう弁解したらいいんだ……。正直に言った方がいいのかな……。

「今起きたところよ。起きたら湊が私の手で遊んでたみたいだったからどうしたのかなって。」

「……。リアの手って柔らかいなって思ってさ。何か気持ちよくてつい……。」

「そう。そんな顔をしなくても私は怒らないわよ。これで湊の罪悪感も和らぐかしら?」

 そう言いながらリアは手をぎゅっとしてきた。

「これでお相子よ。」

「ははは……。」

 手を強く握ってくれたと思ったら、その後すぐに手を放してトイレに向かっていった。俺も楽しみはこの辺にしておいて朝の準備にかからないとな。適当にご飯とか作らないとな。今日の朝はチャーハンだ。

「湊ー。今日の朝ごはんは何?」

「チャーハンでもどうかなって。」

「いいわね。湊はご飯を作る才能があるわ。」

「言いすぎだよ。もうちょっとで出来るから待ってて。」

 さっさと作っちゃおう。チャーハンだからそれほど時間もかからない。調味料も適当に入れてっと。味見も一応しておこう。

うん。悪くない。これぐらいだったらリアの口に合わないことは多分ないだろう。

 「リア出来たよー。お茶いる?」

「お願い。」

「おっけー。」

 自分の分とリアの分のお茶を入れて持ってった。

「よし、食べてくれ。」

「頂くわ。」

 どうだ?頼むから不味い以外の感想を求む。せめて普通ぐらいからがいい……!

「美味しいわ。」

「よかったー。ドキドキした。」

「何度も言ってるけど湊の料理を不味いなんて思うはずないわ。心配しなくていいわよ。もっと自信を持って料理を作ったら?」

「そんな事言われても簡単な料理しかしてこなかったからな……。自分好みならまだしもリアの口に合うかってなると心配になるよ。」

「だから心配しなくていいわ。湊の料理なら何でも食べれるわ。」

「どういう舌してんのさ……。」

「それはそうと湊、今日も大学?」

「そうだよ。今日は昼からだけど。聞いて驚くな。今日は今週最後の大学だから俺は気合が入ってるぞ。」

「それは凄いわね……!それより、昼から少し出かけてきていいかしら?」

「え?ああ。勿論構わないけど……。何か必要な物とかあれば俺が買ってくるけど?」

「少し行きたいところがあるのよ。それほど遅くはならないと思うから大丈夫よ。」

「そうか……?わかった。」

 それから昼間ではリアとゆっくりテレビを見ながら過ごした。

「じゃ、リアも気をつけてな?俺もそんなに遅くならないと思うけど……。」

「ええ。湊も気を付けて。じゃ。」

 リアはとことこと歩いて行った。確かにずっと家に居たりするだけじゃしんどいよな。どこかへ行ったりするのも普通だ。

 俺がちょっと過保護になりすぎてただけかもしれない。リアは何となく子供っぽいから心配になってしまうけど、同じ年齢だしな……。俺もちゃっちゃと今週最後の学校終わらせよ。

 「よう夏目。」

「おっす。」

 気づいたら大学に辿り着いていた。今日も駅で春と会わなかったな。偶然がそんな続くわけもないか……。ちょっとだけ期待してたんだけどな。

「どうした?そんな残念そうな顔をして。」

「俺の心を察する天才かよ。」

「お前が顔に出過ぎなだけだって。」

 またもや顔に心情が出てたみたい。恥ずかし。気を付けないとな……。

「春と今日は会えるかなって思ってたんだけどさ、会えなかったなって思ってさ。」

「ほー?単刀直入に聞くけどお前って小鳥遊さんの事好きなの?」

「好きってLOVEの方か?」

「ああ。」

「うーん。それはどうだろうな……。単純にさ昔仲良かったんだよ。本当に。男女のそういうの関係なしにさ。それでしばらく会ってなくてついこないだ再開したばっかりだから話したい事とかもあるわけよ。」

「なるほどなー。それで昔みたいにまた仲良くなりたいって訳だ?」

「そんな所だな。」

 春の事は勿論友達として好きだ。仲良くしてたい。これはリアに対しても同じ。同じ感情だ。

「そっから先に進みたいって思わないわけ?」

「随分とグイグイ来るな……。そりゃまったく思わないわけでもないけどさ。再開して本当に間もないんだぜ?」

「それはそうかもしれないけど、あんなに可愛い子だったらそういう気持ちが芽生えたりするもんだろ?」

「ないわけじゃないけどさ……。夏目は俺と春にひっついてほしいのか?」

「ぶっちゃけそうだな。小鳥遊さんとでなくてもいいんだけど、俺としてはお前には幸せになって欲しいわけよ。で、小鳥遊さんも良い子そうだしさ。お似合いだなって正直思うから。」

 俺と春がお似合いか……。勿論有難い評価だけどな。こういうのってどこまで信用てしていい ものか……。あんまり信じすぎて春に嫌われたりもしたくないしな。

「夏目の意見は有難く受け取っておくけど、今はまだ実感わかないな。恋人とかってもうちょっと時間かけたりするもんじゃないのか?」

「その場の勢いでひっついたりするのも俺はありだと思うぞ。それに、お前ら幼馴染なんだろ?時間かけたりすると、そのままダラダラといきそうじゃね?俺からしたら逆に今がチャンスなんじゃないのって思うけど。」

「逆にチャンス?」

「そうだ。今は場の状況的に言うと温まってる状況なわけだ。それがダラダラってなってると段々冷えていくわけよ。冷えていったら、またその場を温める所から始めないといけない訳なんだよ。それって結構難しいと思うぜ?中途半端なタイミングでもし告白でもしてみろよ。向こうからしたら今迄置いておいて、今告白するんだ?って思う可能性があるって訳よ。」

「なるほど……。夏目は何でも知ってるな。俺の先生にしてやる。」

「そうか。生徒。じゃあ、俺から生徒に言えることは行動出来るときにしておけ。日々落ちてるチャンスを逃すな。

いつまでもあると思うな今の関係。ってところだな。」

「先生勉強になります!」

「ははは。よきにはからえ。」

 夏目の言ってくることはどれも納得いくものだった。勿論当たり前の事なのかもしれないけど、胸に突き刺さるというか俺にピッタリの言葉って感じがした。

「夏目の言ってることはよく理解してるつもりだけど、実際に行動に移すとなると今じゃない気がしてくるんだけど。」

「そういうもんだろ。自分の事だと必要の無い物まで考えてしまうから段々とずれていくんだよ。俺からみたら必要な物しか見えなくて、

お前はそれを満たしてる。」

「そんなものか?」

「そんなもんさ。皆他人の事は冷静に見れても自分事だとそうじゃいられなくなるのさ。良くも悪くもな。」

「でもさ、俺幼馴染二人と出合っちゃったんだよ。両方女の子なわけ。どうすればいいと思う?」

「あれ、そうだっけ?そういえば二人いるみたいな事言ってたっけ?しかも、もう一人も小鳥遊さんの仲の良い人なんだよな。お前結構面倒くさい事になってんな……。」

「面倒くさいって言うな。二人共俺の大事な幼馴染だよ。どっちか選べって言われてもどうしたらいいかわからん。」

「そういうことか。俺がいらないこと言いすぎたかもな。ただ、お前はいつか選ばないといけない時が来ると思うぞ。遠かれ早かれな。今からちゃんと考えとけよ。」

「おう……。」

 本当にそんな時が来るんだろうか……?そもそも二人のどちらかとそういう関係になるのかすらわからないし……。

「参考にしとくよ。」

「ああ。俺から言えることは頑張れって事と、もし困ったことがあったら言ってこい。助けてやるよ。」

「頼りになるぜ親友。」

「お前の親友だからな。任せとけ。」

お互いの手を交わし、去っていった。

「じゃあな。」

「おう。」

 ガチャ。リアは家に居るかな?

「ただいまー。」

 返事がない……。まだ帰ってきてないみたいだ。そんな遅くにならないといいがな。

 家で一人で居る時間の方が長かったのに、今一人で居るのはなんか寂しいな。二日だけだけど、帰ったらリアが居たからかな。リアが居ないと寂しいな。何して時間を過ごそう。

 溜息ついてると電話が掛かってきた。珍しい事もあるもんだ。誰だろ?春だ。何かあったんだろうか?

「あ。もしもし、湊?」

「どうしたー?」

「明日の事なんだけど、僕さ明日の土曜日、湊の家に行くってことであってるよね?」

「そういえばそうだったな。」

「え?!こっちは楽しみに待ってたのに湊は忘れてたの?」

「違う違う。今のは違うぞ。そういう意味じゃない。リアも楽しみにしてたし忘れるわけないだろ。そうじゃなくて、どこで待ち合わせとか何時に来るとか連絡取ってなかったなって思ってさ。」

「そうそう。その事。どうしたらいいかなって思ってさ。」

「家に泊まるって事以外何も決めてなかったな。どうせならどこか出かけたりしてもいいかもしれないけど、どうする?」

「どうするって言われても……。どうしようね。今はリアいないの?」

「ああ、今ちょっと出かけてるんだ。」

「そっか……。」

 ずっと俺の家に居てもつまんないだろうしな。どこか楽しめそうな場所があったらいいんだけど。三人で適当に買い物に行くだけでも十分か?

 それとも、どこか遊園地みたいなところにいったほうがいいのかな……。リアが居たらすぐ決まりそうだけどな。どうしよ。

「リアが帰ってきたらまた電話掛けていいかな?その方がスムーズに決まり易そうだし。」

「うん。わかった。お風呂とか入ってない限りは出れると思うから。」

「そうか。リアもそんな遅くにならないと思うから、すぐ掛けることになると思うけど、じゃあそれで頼む。」

「待って待って。」

「どうした?」

「折角だしちょっと話しようよ。」

「いいぞ。」

 用事意外で電話で話すなんて人生初めてかもしれない。友達とかでしてる人は見たことあるけど、自分がそんな事をする日が来るとはな。

「湊ってさ、リアの事好きなの?」

「皆そういう話好きだな……。リアの事は勿論大事な友達だって思ってるし、友達として好きだぞ。」

「友達じゃなくてそれ以上の関係になりたいって思わないの?」

「そりゃリアは可愛いしさ、まったく思わないわけでもないけど大事な幼馴染だしさ。」

「ふーん。じゃあこのままがいいの?」

「そう言われると返答に困るけどさ、そういう経験がないから実感がわかないんだよ。付き合うとかさ。」

「経験ないんだ?」

「悪かったな。そういう春はあるのかよ?」

「……ない。」

「なんだよお互い様じゃん。」

「ふふ。そうだね。」

 春に恋人がいなかったって聞いて一安心してる俺がいる。この安心はどこから来てるんだろうか。俺の知ってる幼馴染のままだったから安心してるのだろうか。

「春は恋人が欲しいなって思ったりしないのか?」

「そりゃー、そういう人見てたらどんな感じなんだろうなって興味はあるよ。」

「春なら可愛いしさ、男も黙っちゃいないだろ?」

「そんなことないよ。全然モテなかったし。」

「まじかよ?!そんなに可愛いのにか?!」

「大袈裟だって。僕の事をそういう風な目で見てる人なんていないって。」

「いやいや、それはないだろ。夏目ですら可愛い子だなって言ってたぞ。夏目がそんなの言ってるのあんまり聞いたことないから世間の人から見ても可愛いんだと思うけど……。」

「恥ずかしいからやめてよ。実際にモテなかったんだしさ……。」

 何でモテなかったんだろう?あんだけ可愛ければモテモテだろ。普通に考えたらな。何か理由があったんじゃないのか?

「不思議な事もあるもんだな。」

「全然不思議じゃないよ。モテないもんはモテないの。そんな湊こそモテなかったの?優しいし顔も悪くないしモテてもおかしくなさそう。」

「冗談はよせよ。俺がモテてたら世の中モテてない人いないって。そういうのとは縁がまったくなかった。悲しい事にな。」

「僕からしたらその方が不思議。」

 不思議った何だ?俺は本当にモテなかったし、モテる要素をもってないと思う。見た目が良いわけでもないし、友達も多くないし、性格が特別いい訳でもない。悲しいけど本当にモテそうな要素をもってないな……。

「俺だってさ、彼女とか作ってみたいけどどうしたら出来るかわからないんだよ。そもそも女の子の知り合いって春とリアぐらいだぞ。」

「僕はリアと湊がお似合いだと思ってたんだけどな。」

「まじで?」

「まじまじ。僕がそう思うんだから間違いないと思うんだけどな。二人は相性いいしさ。」

「そう言われると悪い気はしないけどな……。リアはリアでわからない所があるし難しいぞ。」

「まーそれはあるかもね。リアに振り回されてそう。それも楽しそうだけど。」

 リアは行動力の塊だからな。常に色々な事に付き合わされそうだ。毎日色々な事が起きてそう。

「リアの事は好きだけどさ、やっぱ付き合うとかそういうの想像できないな。」

「そういう経験がないから、想像できないだけじゃない?体験してない事って想像するの難しいし。」

「ぐっ……。それはそうかもしれないけど……。」

「告白してみたら?」

「告白って……。した後どうするんだよ。振られたりしたら最悪だし、つき合ったとしてもその後どうするのかわからんし……。」

「だめだね湊。男は度胸だよ。何事も挑戦が必要なんだよ。湊が告白したら付き合ってくれる人なんていっぱいいると思うよ。」

「じゃあさ、春。俺と付き合ってくれよ。春の事好きだしさ。」

「それはダメ。僕をからかっちゃだめだよ。僕は湊とリアを応援してるんだから。二人の事を応援してるんだから、湊はリアの事だけ見てたらいいんだよ。」

「ほら。やっぱ俺って魅力ないだろ。」

「そんな事ないって。僕が応援してあげるし、手伝ってあげるからさ。」

「まじで?」

「うん。僕に任せてよ。」

 ガチャ。玄関が開いた。リアが帰ってきたのかな。

「ただいまー。」

「おかえりー。大丈夫だったかリア?」

「ちょっと子ども扱いし過ぎよ。これぐらい何ともないわ。誰と電話してるの?」

「春だよ。春が明日どうするのー?って聞いて来ててさ。泊まるって言ってただろ?それ以外どうしようかって。」

「あー。そういう事ね。春は何て言ってるの?」

「特にリクエストはないみたいだけど。」

「じゃあ、朝とりあえず家に来てもらおうよ。荷物とかもあるかもしれないし、その時考えたらいいんじゃない?家でゆっくりするのも悪くないと思うわ。」

「そう伝えとくよ。」

 リアが発言したらやっぱりすぐ決まったな。リア様様だ。リアのリーダーシップ力というかそういうの力は凄い。

「ってことで、聞こえてたかもしれないが朝の9時頃に春がバイトしてた喫茶店辺りに来てもらえるか?家から近いからさ。向かいに行くよ。」

「わかった。リアのことなら任せてね僕に。」

 ガチャ。言うだけ言って切っていきやがった……。こういうのって応援されてなるものなのかな……。

 何でか知らないけど春にリアとの関係を応援される事になってしまった。

「それはそうと、その荷物何だ?何買ってきたんだ?」

「服とか生活に必要な物よ。下着も何個かないと不便だしね。他にもあった方が良い物っていくつかあるから。」

「あー。そっか。確かに俺にはリアの下着買ってくるなんて無理だな……。」

「それもそうかもしれないけど、いくつか欲しい物があったら自分で行ったほうが手っ取り早そうだからね。湊には随分世話になってるから。」

「何もしてないよ。」

「そんなことないわ。私こんだけ幸せにしてもらってるもの。今度は私が湊を幸せにする番よ。」

「考えすぎだから。ちょっとスーパーで良い材料売ってるか見に行くけど、欲しいものあるか?」

「そうね……。私もいっていいかしら?」

「いいけど、大丈夫か?今日出かけてたんだから家でゆっくりしてたらどうだ?」

「一緒に居たいのよ。迷惑はかけないわ。」

「迷惑かけられるのは別に構わないんだが……。」

 この前少し出かけてた時も結構疲れてたみたいだから正直心配だ。買い物行くぐらいの距離だったら大丈夫かもしれないけど、休んでレくれるのが一番安心できるけどな……。

「お願いっ!」

「ふーっ。分かった。疲れたら言えよな?途中で休憩するぐらい何てことないんだかさ。最悪おぶって家まで連れてくから。」

「ありがとう、湊。やっぱり優しいのね。でも、荷物を持ってたらおぶるのは難しいのじゃないかしら?」

「それぐらい大丈夫だよ。リアは多分軽いだろ。多少重くても大丈夫だよ。」

「あら、失礼ね。乙女に向かって思いは禁句よ。ふふ。安心していいわ。軽さには自信があるから。」

「だろうな。リアは軽いだろうとは思ってたから、もし辛くなったらすぐ言うんだぞ。」

「ええ。」

 リアは正直大分細い。痩せている。重そうな要素が一切なかった。多分本人も自分がそうな事は自覚してるだろう。周りからそう見られても仕方ない事も。最初で会った時は長めの服とズボンを履いていて、そこまで気にはならなかったが着替えた時とか、俺の服を貸した時とかに見える素肌の部分を見て思ったんだ。細いなって。

 俺は女性の体形とかそこまで気にしないし、太くても細くてもどっちが良いとかそういうのはあまりない。その人が健康そうならそれで良い。だけど、正直リアは細すぎな気もする。全然細くてもいいんだが、もうちょっとご飯とか食べたほうがいいんじゃないかな。今日からリアのご飯の量を増やしてみようかな。無理に食べさせる気はないけど、リアはもう少し太った方がいいだろ。食べれないなら残してもらえばいいしな。

 そうと決まれば今日からぐんと美味しいご飯を作ろう!そうだ。美味しいご飯を作って食べさせれば少しぐらい体重が増えるだろう。増えすぎは問題だが、なさすぎるのも問題だ。料理を作る理由が一つ増えた。

 俺は俺で自分の体重を気にしないとな。太ってるわけじゃないけど、食べ過ぎて凄く太ったら流石に困るしな。ていうか、俺とリアが同じ量食べてたら体重が増える量もほぼ同じなのかな?代謝とかによって少し違うだろうけど、それで体重の増える量とかも分かるかもしれない。流石に体重測らして毎日データを取るみたいなのはしたくもないし、相手も嫌だろう。

 美味しい料理か……。モチベーションは凄く上がったけど、調べないと分からないな。そういや春に教えてもらえば早いんじゃないか?喫茶店のメニューを作ってるぐらいだしな……。喫茶店のメニューのレシピを丸々教えてもらうのは流石に良くないと思うけど、俺でも簡単に作れる美味しいレシピをいくつか教えてもらうぐらいだったら大丈夫かな。喫茶店のメニューじゃなくても美味しい料理の作り方とか知ってそうだしな。明日とかもし良かったら教えてもらおう。忘れないようにしないとな。

 今日はいつもより色々なこと考えてスーパー回らないとな。栄養も考えないといけないし。

「湊ー?どうしたの?行かないの?」

「ああ、行く行く。ちょっと考え事してたんだよ。」

「何の?」

「今日の晩御飯のだよ。」

「あー。そういうことね。今日も美味しいご飯期待してるわ。」

「できるだけ頑張ってみるよ。」

 目標が出来て少し燃えてきたな。頑張らないと。

「大丈夫か?」

「え?流石にまだ疲れてないわよ。心配しすぎ。」

「いや、それも無いことはないが少し冷えないか?陽が落ちたせいか帰ってきた時よりずっと寒い気がする。リアもそんな温かい恰好じゃないし大丈夫か……?」

「確かに少し冷えてるかもね。」

「家戻るか?」

「大丈夫よ。」

 大丈夫って言ってもな。事実冷えてるの感じてるんだろ。しょうがないな。

「これでも着とけ。少しはましだろ。」

 自分が着てたパーカーを着させた。

「湊は良いの?」

「俺は大丈夫だ。男だからな。」

「ふふ。」

「何か可笑しいこと言ったか?」

「頼もしいなって。」

 リアはこちらを覗きながら微笑んでた。

「リアのことなら任せておけ。安心しろ。大体の事なら助けてやるよ。」

「じゃあ、大体の事からは守ってもらおうかしら。ねえ。」

「ん?」

「私は今空腹に襲われているわ。早く守って欲しいのだけど。」

「だから今スーパーに向かってるんだろ。少しぐらい耐えてくれ。」

「えー?今守ってくれるって言ったのに~。湊ったら嘘つきね。」

「おいおい、無茶言うなよ。ま、できるだけ材料も急いで見るし、作るのも早くしてみるよ。」

「あはは、冗談よ。お腹が空いてるのは本当の事だけど、別に急がなくていいわ。冗談を言ってみただけよ。」

「そっか……。ま、俺も腹減ってるしな。」

 何かリアって守ってやりたくなるような仕草をしてるんだよな。雰囲気なんだろうか。春とはまた違う感じの。春と電話でリアの事について話したからこんなことを思うんだろうか。それとも、夏目と話したからだろうか。それとも……俺自身がそう感じているだけなのだろうか。

 付き合うなんて、そりゃ人生でしてみたかったことではあるけど実感湧かないよな。リアと付き合うってな。どうなるんだろうな……。

 夏目からは春との関係を応援されてるようにも感じるし、春からはリアとの関係を応援されてるように感じる。難しいな、人間関係って。俺はこれから先どちらかを選ぶことになるんだろうか。進まないといけないのかな。正直三人このままの関係が好きだし、大切なんだよな。

 リアと春はどう思ってるんだろうな。二人共三人の関係を大事に思ってることは伝わってくる。でも、男女の関係とかそいうのは分かんないんだよな。

 夏目が言うように付き合ったりするなら今の方が良いのかもしれないとは思わないことはない。このまま三人の関係を続ければ続けるほどに、この関係を変えることが怖くなるだろう。ただ、再開してそんなに時間が経ってる訳でもないんだよな。時間が経たないと分からないことも多い。時間が経ったからといって分かることでもない気もするけどな。

 二人共好きで大事なんだよな……。どうしたらいいんだろ。

「そういえば今日何か食べたいものあるか?聞いてなかったなって思って。」

「美味しい物なら何でもいいのだけれど。」

「それでも何か無いか?今日以外の飯でもいいから。何か気になってるやつとか。テレビで見たことあるやつとか。」

「じゃあ、一度ぐらい松坂牛っての食べてみたいわ。美味しいらしいわよ。」

「松坂牛……。」

「ええ。そうよ。人気らしいわ。」

「いや、それぐらいは知ってるけどな。超高級牛だからな。そうじゃなくて、俺みたいな庶民が軽い気持ちで買えるものではないんだよな……。」

「高いらしいわね。」

「知ってたのかよ。」

「湊が聞いてくるから答えたのに。」

「まあ、そうだけどな……。少なくとも今晩は買わない。買わないっていうか、多分売ってないこのスーパーに。」

「そういうもんなのね。悲しいわ。」

「そんなに食べてみたいのか?」

「難しいところね。食べてみたいと言えば食べてみたいけど、全財産を使ってまで食べたいかと言われたらそこまででもないわ。」

「なるほどな。言ってることは良くわかる。」

 俺も食べてみたいけど、金欠の状態で食うもんではないと思う。金持ちになったら食べてみたいとは思うけど、金が無い時はいいやって感じだな。

「高いとは聞くけど、どのぐらいの値段か知らないな……。もし、少し高いぐらいの値段ならお金が入った時に一度食べてみてもいいかもな。」

「ほんと?」

「ああ。あまり無茶苦茶な値段じゃなければな……。」

「楽しみにしてるわ。」

「そうだな。」

 松坂牛か……。高そうだな。お金があればな。

「そうじゃなくて、今晩のメニューの話だ。なんか他には無いか?」

「うーん。湊が作ってるくれるご飯どれも美味しいし、何でもいいのだけれど。そういえばあれ食べてみたいわ。昔一度食べた事があるのだけれど。」

「お、やっときたか。何だ?」

「何て名前だったかしら。麺のやつなのだけれど。名前が思い出せないわ……。」

「麺か……。ラーメンか?」

「いえ、ラーメンではないわ。そんなこと言われたらラーメンも気になってきたわね……。」

「それならラーメンも買っておこう。インスタントのやつでもあれば好きなときに食べれるしな。」

「そうね。ありがとう。」

「麺でラーメンじゃないとなると、他に思い浮かぶのはパスタ系のやつだな。」

「それ!」

 パスタ系か。パスタ系と言っても色々あるんだよな。カルボナーラとかペペロンチーノとかミートスパゲッティとか。他のやつもあるだろうけど、思いうかばん。ナポリ……。なんだっけ。ナポリみたいなやつがあったのは覚えてるんだけどな……。最悪店を回ってたら見つけられそう。

「ペペロンチーノか?」

「ペペロンチーノ!あれは美味しいわね。でも最初に浮かんでた奴じゃないわ。」

「はずれか。ミートスパゲッティか?」

「それだわ。あの赤いやつよね?」

「それだ。」

「じゃあそれだわ。湊凄いわね。私が思い浮かんでた奴を当てるなんて。」

「あんだけヒントが出てたらな……。何個か外してたし。ミートスパゲッティは久々に食うな。何か俺も楽しみだ。」

「ほんと?なら嬉しいわ。」

「ミートスパゲッティなら喫茶店にもあるかもな。また今度行ったときにでも食べるか?」

「それも悪くないわね。でも今日は湊が作ったやつがいいわ。」

「そうか?俺が作るって言っても市販のやつだけどな……。」

「湊が作ることに意味があるのよ。」

「ま、そう言われたら悪い気はしないな。」

 とりあえず今日の晩御飯は決まったな。後は店を回りつつ今後のご飯を探す程度にしておくか。あまり時間掛け過ぎても、リアがお腹を空かせて待ってるからな。

「一緒に店回るから、美味しそうな物あったら言ってくれ。高すぎなければ買ってやるからな。」

「分かったわ。何か湊ったらお兄ちゃんみたいね。」

「そうか?どこがだ?」

 リアのお兄ちゃんか。リアが妹に居たら楽しそうだな。少し心配ではあるけど……。

「雰囲気がよ。頼りになるお兄ちゃんって感じがする。」

「雰囲気か……。ま、頼れる存在って事か?」

「ええ、そんな所ね。」

 頼れる存在か……。自分で言っててあれだけど、何か可笑しいな。照れるというか、俺が頼れる存在かって思う。

 やっと店に着いた。真っ先にスパゲッティの方に向かうべきかな。どういうルートで買物しよう。うーん。

「とりあえず一周するから欲しい物あったら言ってくれ。」

「うん。分かったわ。」

 ここのスーパー何回も来てるけど一周するのは久々だな。一人だと面倒くさくてあまりしようとは思わない事だな。

「これ美味しそう。」

「ん……?なんだ?チーズフォンデュ?チーズ好きか?」

「分からない。これは食べた事が無いわ。見た目が美味しそう。」

「これはチーズフォンデュって言ってパンとか他の食べ物をチーズに付けて食べるんだよ。そこそこ美味しいぞ。俺は好きだ。」

「じゃあこれその内食べたいわ。」

「おう。買っておくか。今日はしないとしても、具材をそのうち買っておかないとな。これだけあってもしょうがないし。」

「これってパン以外って何を付けるものなの?」

 何付けるんだろ。チーズに付けて美味しい物なんていっぱいありそうだけど、パン以外なんだろうな……。ウインナーとか美味しそう。大体の物合いそうだよな。ネットで調べたら色々乗ってそうだな。リアと一緒に見たら楽しそう。

「ウインナーぐらいしか思い浮かばなかった。ネットで調べて一緒に見ようか?色々乗ってると思うよ。」

「ネットって便利ね。湊のパソコンを借りて簡単なものだけ見ていたのだけど凄いわ。」

 おばあちゃんみたいなセリフだな。

「ああ、便利だ。便利が故に問題を起こす人もいるけどな。少し使うぐらいなら問題は起きないし、いい所だけを使えるんじゃないかな。」

「確かに問題を起こすのはだめね。使い方は守らないと。」

「そうだな。」

「一緒にご飯について見るのはどう?そうして食べたいものメモ取っておけば湊も晩御飯のメニューに困らないと思うわ。」

 確かに。今まで直前までメニューについてあんまり考えてこなかったな。今思うと何でなんだろ。他の事に脳を割きすぎてたな。

「リアは賢いな。思いつかなかった。」

「当然ね。」

 予めある程度メニューを二人で決めておいたら嫌いなものも入らないだろうし、良いことだらけだな……。名案だな……。早くからそうすれば良かった。

 それからは適当にリアが言ったものと保存が利きそうな食べ物を籠入れて買い物を終えた。

「少し時間掛かったけど体力は大丈夫か?」

「大丈夫よ。」

「無理だけはしないでくれよ。体調崩されたら心配だし。」

「ありがと。できるだけ気を付けるわ。」

 親とかは子供が風邪をひいたりしたら凄く心配だろうな。忙しい人なら余計に。俺はリアが風邪を引いたときを想像するだけでも過保護気味になるだろうなって想像できてしまう。

 俺も自分の体調には気を付けないとな……。リアに移すわけにもいかないし、俺が風邪を引いたら看病するのはリアだしな。流石に無理をさせたくもないし。

「よし……。」

「着いたわね。」

「ああ。」

 言えに着けばあとは料理を作るだけ。パスタ系は早く作れるから楽なんだよな。ミートでも一から作るとなると大変だろうけど、今日は市販のやつだから温めるだけで作れる。後は麺の茹で具合か。

「麺の茹で具合は好みあるか?」

「柔らかすぎず硬すぎずが良いわね。」

「俺もそれに賛成だ。」

 よし……。出来たな。

「お茶いる?」

「お願い。」

「はい、これ。」

「ありがとう。助かるわ。」

 二人でミートスパゲッティを突く。まあ、こんなもんだろ。十分美味しい。

「美味しいか?」

「ええ。美味しいわよ。昔食べたのを思い出すわ。どこで食べたかも覚えてないけど、こんな味だった気がするわ。」

「そか。それは良かった。」

 たまに昔食べた料理とかって食べたくなるよな。でも久々に食べてみると案外美味しくなかったり。想像で美化しすぎてるだけなんだろうか。それとも舌が変わってしまったんだろうか。逆に美味しいままっていうのも全然あるんだけどな。美味しくなかったときは結構ショックだ。

 ふう。食べ終わった。思ったより美味しかったな。これもリアのおかげだな。久々に食べたな。

「どうする?寝るか?」

「まだ寝ないわ。その前に一緒にご飯見とかない?忘れてしまうわ。」

「確かにそうだ。俺はもう忘れてた。」

「湊ったら忘れん坊なのね。」

「そうだな……。」

 さっき話してた事なのにすっかり忘れてた。昔から記憶力ないんだよな……。なんでだろ。

「んー。何て検索しようかな。とりあえず晩御飯で検索してみるか……。で、画像を開くと。」

「色々なものが出てくるわね。」

「適当に画像見ていくから美味しそうなのあったり興味があるのがあったら言ってくれ。」

「ええ。」

 色々な晩御飯あるな……。本当に他の家庭はこんなもん食ってるのか?実家でもこんなの出てこなかったぞ。こんなの本当かよ……。

「これ食べたいわ。餃子。」

「餃子か。いいな。餃子ぐらいだったら手作りもできそうだな。やってみるか?」

「ええ。是非。これはそんなに簡単なの?」

「そうだなー。物にもよると思うけど基本的な奴だったら難しくはないと思う。餃子ってよく手作りでしたって聞くんだけど、俺はしたことなくてさ。一度してみたいって思ってたんだよ。リアが居てくれたら心強いぞ。」

「それならやりたいわね。美味しいの作って見せるわ。」

「頼もしいな。なら餃子は決定だな。」

 手作り餃子って興味あったんだよな。レシピはそのうち見とかないとな……。メモっとけば忘れないだろう。

「結構美味しそうな晩御飯見つけれたな。こんだけあればしばらくメニューには困らないだろう。あとは栄養バランスぐらいか。」

「色々気を使わせて悪いわね。」

「気にするなって。俺は俺で楽しいからさ。それにリアが居てくれてるおかげで色々な事にも気が付いたりするし。美味しいご飯も作ろうって思えるんだよ。」

「湊のご飯は美味しいわ。もっと自信持っていいと思うのだけれど。」

「気持ちは有難く受け取っておくよ。リアにそう言ってもらえるのは勿論嬉しいしさ。でも、これも多分リアの為に作ってるから頑張れてるんだよ。」

「そうなの?」

「ああ。」

 事実自分の分だけ作ってる時は何も考えてなかったからな。毎日同じメニューとか。簡単とか。インスタントのやつばっかりとかな。

「料理は誰かの為を思うのが大事なのかもね。」

「俺もそう思う。」

「湊はいい奥さんになれそうね。」

「俺は男だ。」

「あはは。」

「そろそろ寝るか。リアも少し疲れたろ。」

「もういい時間ね……。寝ましょうか。」

 部屋の明かりを消して眠りについた。


 うう……。もう朝か。アラームの音量下げようかな……。前々から思ってたけどちょっと音でかいな。起きれなかったら困るけど、起きた時にこんだけうるさい音が鳴ってると頭が痛い。

やべ。そろそろ準備して春を迎いに行かないとな……。リアはまだスヤスヤと寝てる。あんだけでかい音のアラームなってても気づかないんだな……。

 時間より早いけど向こうで待ってよう。さっさと行って待ってる分には困らないだろう。それでも十分前だし、遅くもなく早くもなくっていう所か。

 角を曲がって喫茶店の方を見たら既に春が居た。着くの早くない?俺が時計見間違えてたか?

「春、おはよ。」

「おはよ。」

「もしかして、結構待ってた?」

「いや、今来たところだよ。」

 アニメでよく見るやつだ……!これは多分俺が言わないとダメなんだろうな。言わないとダメっていうのはおかしいか。先に居て言うべきセリフ

なんだろうな……。次待ち合わせとかあったらもっと早めに待つようにしておこう……!

「そか。じゃあ家こっちだから。」

「うん。」

 特に言葉を交わさないまま家まですぐに着いてしまった。何かちょっとぐらい話するべきだったかな。

 ドアを開けて玄関に入っていく。春は黙々と俺に付いて来てる。

「さ、どうぞ上がってくれ。特に何もないけれど……。」

「うん。ありがと。」

「飲み物いる?お茶ぐらいしかないけど。」

「じゃ、お茶もらおうかな。」

「わかった。」

 春は部屋の方まで歩いて行ってびっくりしていた。まだリアが寝ていることに。それに、ちょっとだらしない格好をしてることに。

 俺はリアがだらしない格好になってても慣れてしまったせいで、何も言わなくなっていた。

「リアー?もう朝だよ。起きなよ。僕が来たよー。」

リアを起こすのは春に任せよう。俺は俺で朝食でも作るか。流石にお腹が減ってきたな。

「春。朝食作るけど、春は何か食べてきたか?」

「あー。どうしよう。何作るの?」

「本当に簡単な物だよ。目玉焼きとハムと焼いた食パン。あとウインナーも食べたくなってきたらついでに乗せようかな。」

「それぐらいだったら食べれそう。僕も貰おうかな。」

「わかった。」

ちゃちゃっと用意しよ。今日は豪華目にウィンナーも乗せてやるからな。

「ほれ。出来たぞ。味はあんま期待するな。不味くはないけど、特別美味しくもないと思う。」

「ああ。ありがとう。リアは起こしといたよ。」

「助かる。」

 リアはとても眠そうに目をこすっている。何か寝ぼけてるみたいだ。

「おい、リア。春が来たぞ。そろそろ目を覚ませよ。」

「んん……。春?これは夢かしら……。朝から湊と春が居るわ。どういう状況かしら。それとも、遂に私の夢は叶っちゃったのかしら……。」

「おーい。夢じゃないぞ。現実だぞー。今日は土曜日だから春が泊まりに来たんだぞ。」

「え……?そうだったかしら。そういえば……そんな事を言っていた気もしてきたわ……。ねむ。」

 リアは朝が苦手なんだろうな。起こした時大体眠そうだ。いつも辛そうにしてる。

「はは。リアは相変わらずだね。安心したよ。」

「あれ?春が居る……。うぅ……。おはよ。」

「おはよ。」

「リア。春も来てることだし頑張って顔でも洗ってこい。朝食も作ってるし頑張れ。」

「わかったわ……。」

 滅茶苦茶ゆっくりなスピードで洗面所まで歩いて行った。

「リアっていつもあんな感じなの?」

「そうだな。朝は苦手みたいだ。普段のスピードの倍ぐらい動きが遅いぞ。気づいたらいつも通りになってる。」

「なるほど。」

 春とリアについて話してたらリアはパッパッパと素早く戻ってきた。目がちゃんと覚めたのかな?

「春ー!会いたかったわ。湊も、もっと早く起こしてくれたらよかったのに!」

「行く時に起こしててもどうせすぐ寝ちゃってたでしょ。そういう事言う前に起こされる前に起きれるようになりな。」

「湊はいけずね。」

「まあまあ。ご飯食べようよ。僕もお腹段々空いてきたし。」

「それもそうね。春は相変わらず良い事を言ってくれるわ。」


「んー。これ美味しいわね。」

「うん。僕もこれ好きだな。特別な食材は使ってなさそうなのにそれ以上の美味しさを感じる。」

「そうかな……。ちょっと照れるぞ。特別な事はしてないから誰でも作れるけどな。」

「やっぱり、湊が私たちのために作ってくれたから美味しいのよ。そう思わない?」

「それはあるかもね。料理は人への気持ちが大事だからね。料理屋のご飯は味は美味しいかもしれないけど、また違う美味しさがあるよね。」

「そんなもんかな。自分の作ったもんだと分からないけど、確かに誰かが自分のために作ってくれたら美味しく感じるかもな。」

「じゃあ今度私が二人のために料理を作ってあげるわ。きっと美味しいわね。愛情しかないもの!」

「え……。」

「ちょっとリアの料理は不安だな……。」

「え?!二人共さっきと言ってることが全然違う!」

「ははは。」

 三人になると会話が増える。リアがいるからなのかな。リアと二人でも静かなときはあるしな……。やっぱり3人いると空気感が変わる。

 春と二人の時とも全然違うしな。リアと春が二人の時はどうなんだろう。そういう所は分からないからな……。

 この3人で居るのが好きだな。三人共色々変わったことがあるのかもしれないけど、こんなに仲がいい。中々こんな関係ないと思う。

 「ねえ春。春は明日も一緒に居てくれるの?」

「考えてなかったけど、二人さえよければそうさてもらうけど?」

「俺は別に大丈夫だぞ。」

「私も春と一緒に居たいわ。春がいてくれてダメな理由なんて何一つないわ。湊もこういってるし一緒にいましょ。」

「じゃ、お言葉に甘えさせてもらってそうしようかな。」

「やったーっ!春ーっ!」

 リアは春に抱き着きに行った。やっぱ女の子同士って良いな。横からこの景色を眺めてるだけで満足だ。絶対に邪魔はしない。

「ちょ、ちょっとリアくっつきすぎだってば。変な所触らないで!ちょっとーっ!」

「あはは。春~~っ。春は相変わらず可愛いわね~。そんな遠慮しなくていいのに~。」

「別に遠慮してるわけじゃないってばっ。急にひっつかれたらびっくりするでしょーが。」

「春ったら我儘ね~。じゃあ春から私にぎゅーってしにきてよ~。」

「ええっ?!」

「ほらっ!」

 リアは両手を突き出して早く早くとしてる。可愛い。春は凄くためらいつつも近づいて行ってる……。

「春ー。もうちょっと!ほらっ!来てっ!」

「はぁー。リアはもう、しょうがないな……。」

 春もためらってるものの嫌ではなさそうだ。素直に飛び込んでいくのが気恥ずかしいだけなのかもしれない。もしくは俺が横から眺めてるからかも。

 でも、この景色はどうしても見てたい。逃すわけにはいかない。

「はいっ。ぎゅーっ。」

「んーっ。ぎゅ。」

 女の子が抱きしめ合ってる光景って本当にいいな。この光景を良くないって言う人間は世界に一人でも居るのだろうか?

 こんな素晴らしい物全世界の全員が肯定するだろう。

「えへへ。」

「リアは温かいね。」

「春も凄く温かいわ。ねえ、春。私は今すごく幸せよ。春は?」

「僕も幸せだよ。」

「えへへ。良かった。春は良い匂いだね。」

「えっ?!恥ずかしいから匂いは嗅がないでよ……。匂い嗅ぐのはちょっと流石に抵抗が……。」

 確かに女の子って良い匂いするよな。体からそういう成分が出てるらしいが、凄いよな。

「減るもんじゃないし良い匂いなのだから大丈夫よ。ずっと嗅いでたいぐらいなんだから気にしなくて大丈夫よ。」

「リアが気にしなくても僕が気になる……。」

「ところで春。」

「どうしたの?」

「私と春は今とってもとっても幸せだけど、この場に一人そうじゃない人が居ると思わない?」

 リアが俺の方を見ながらとてつもない事を言いだした。俺の事を言ってるのか?俺はこんなに幸せなのにか?

 リアル百合を見ていて幸せじゃない男はいないぞ!

「私ね、三人で幸せになりたいのよ。春とリアと湊私達で幸せになりたいのよ。」

「うん?」

 春もきょとんとしてる。リアの発言の意図がわからないのだろう。

「私と春だけじゃなくて湊もこっちにきてぎゅーっってするべきだと思うの。」

「えっ?!いや、それは流石に……。」

「湊は嫌なの?」

「嫌とかじゃなくてさ……女の子二人に抱き着くって……。恥ずかしいし、何か違う気がするんだけど。」

「恥ずかしいのなら春もさっき恥ずかしがってたけどしてくれたわ。湊はしてくれないの?」

「それはそうかもしれないけど……。春は嫌だろ?!な!俺がそこに入っていくのは違うと思うよな?!」

 最後の救い手の春に懇願する。どうにか助けてくれ、と。必死に目で訴える。

 春はアイコンタクトで俺の気持ちを察してくれたみたいだ。

 良かった……。一安心。俺があそこに入っていっては俺が一番嫌いな百合の中に男性が入っていくの図が出来上がってしまう。それだけは守れたみたいだ。

「僕は良いよ!さあ、春!どんと来い!」

 あれ……?俺と春はアイコンタクト失敗してたみたい。もしくは、春は空気を読んだつもりだったのか?俺の送信ミスだったか?

 そこに入れてくれって伝わってしまってたのか?それとも春の意地悪なのか?

「マジで?」

「マジマジ。早く!」

「早く!」

 マジか……。そりゃ男冥利に尽きるけど、これは相当勇気がいるな。人生の中で一番かもしれない。こんなに勇気が要るシチュエーションに出会ったことないぞ。

「早く早く早く。」

 リアが急かしてくる。俺もそろそろ覚悟を決めないとだめらしい。百合の間に入る男を軽蔑してて悪かった。俺もそうなってしまうみたい。

「分かった分かった。急かさないでくれ。俺にも覚悟と勇気が要る。ちょっとづつ近づくから待っててくれ。」

「湊ー?往生際が悪いわよ。ほらっ!」

 最後の抵抗としてゆっくり近づいて言ってたら手を思いっきり引っ張られてしまった。

 ヤバい。女の子二人の体の柔らかさ。これは、ダメかもしれない……。俺はもう限界なのか……。

「ぎゅっ!」

「ははは……。」

 リアは喜んでいたが俺は渇いた笑いしか出ない。どういう表情をしてどういう声を出すのが正解なのか分からない。

 こんな素晴らしい状況は中々無いのだろうけど、素直になれない。素直になっていいのかすらわからない。

 正直、手もどの辺に当ててたらいいのか分からない。変なところに当たってしまったら流石に気持ち悪がられるかもしれないし、一生懸命大丈夫そうなところを探す。

 春の顔を見たら春は春で恥ずかしそうだった。そりゃそうだ。女の子二人で引っ付いてるのとは訳が違う。すまんな。

「湊?力が足りないわよ。もっと強くぎゅーっってしないと!」

「ええ……。これでも頑張ってる方なんだけどな……。あんまり強くすると流石に……な?」

「だめよ。もっと強く!」

「春、もうちょっと強くしても大丈夫か……?」

「うん……。いいよ。」

 本当に全力でやったら流石に痛いだろうから痛くならない程度に強い力で抱きしめてみる。

「あはは。いいわよ湊!私も力を入れるわ!春も!」

「うん……。」

 三人でしばらく抱きしめ合ってた。どういう状況?

「私は今とても幸せよ。二人は?」

「俺も幸せだ。これが幸せじゃないはずがない……。」

「僕も幸せだよ。とっても。」

「そう……。それは本当に良かったわ。私の幸せな事が二人の幸せならこんなに嬉しい事はないもの……。」

「リア?」

 リアはさっきまで笑顔だったのに、その笑顔はどこかへ消えていた。凄く真面目な顔をしている。

「どうした……?」

 俺も春も困惑してる。ずっとかもしれないけど。

「聞いてくれる?凄く真面目な話があるの……。」

 リアの表情から伝わってくる。今から言う事は冗談じゃないと。本当に信頼してる人にしか話さない真面目な事なのだろう。

 俺と春は勿論それを茶化したりしない。それが親友ってものだからな。

「リア、どうしたの。僕と湊ならちゃんと話を聞いてあげるよ。」

「そうだ。大丈夫だぞ。」

「うん……。二人事とは信じてるし大好きだわ。だから、私の願い事に付き合って欲しいの。」

「願い事?俺たちに出来る事なら何だってしてやりたいけど……。」

「僕もリアのためなら勿論協力するよ?」

「驚かないで欲しいのだけれど、私もうすぐ死ぬのよ。」

「「ええっ?!」」

 俺も春も口を開けたまま固まってる。お互いの表情を見ながら「え……?」って戸惑っている。

「もう……。驚かないでって言ったのに。」

「それは流石に驚くだろ……。驚かないとおかしいだろ。死ぬって、死んじまうって事か?この世からいなくなるって意味なのか?」

「そうよ。」

「それは……何でなの?僕も湊も、もうちょっと説明してくれないと理解できないかも。」

「そうね。急に死んじゃうって言われても分かんないわよね。私ね、昔から体が弱くて。正直    

 今まで生きてこれたのが奇跡なぐらいなのよ。

 本当ならもう死んでしまってるのよ。それが奇跡的に生きてこれたのだけれど、もうそろそろダメみたい。昔この辺に住んでいたのに引っ越ししたのも、遠くにある病院じゃないと診れないって理由があったからなの。その病院に行ったからって助かる保証は無かったし、私はそんなことより二人と一緒に居れたほうが幸せだったのになってずっと思っていたんだけど、奇跡的に本当の自分より長生きしてる事には感謝してるわ。勿論長生きしてるのは良い事なのかもしれないけど、私は"生きてる"だけにはあんまり意味がないと思ってるのよ。自分のしたい事をしてこそ自分の人生だと思っているわ。自分の魂、欲望に素直になってこその人生。だから、したい事はできるだけしてきたし思ったことはやるようにしてた。病院内でも、できるだけ無茶をしてた。怒られながらもしたいことは率先してやってきてた。でも、病院に居たら私の中の本当にしたかった事はずっと叶えられなかった。そんな私にチャンスが来たのよ。もう助かる見込みはないだろうって。体がどんどん弱ってきていて、奇跡が起ころうが何が起ころうがもう長くない。家族はショックを受けていたわ。私も家族の気持ちを考えると素直に喜べないけど、私はチャンスに感じた。だって、もうあの病院に居る必要はないんだもの。大好きな二人に会いに来れるのだから。」

 何を笑顔で言っているんだ……?どうしてそんなに堂々としていられるんだ……。死ぬって居なくなってしまうって事じゃないのか?

「それで、私の人生最後の願い事は湊と春、二人と居る事なのよ。ずっと会いたかったわ。会えてよかった。本当に。」

 俺は今どんな顔をしてるんだろう。頭の中が真っ白だ。何も考えられない……。俺は今、どういう姿勢をしてるのだろうか。どうなってるんだろうか。

 暗闇に吸い込まれてくような絶望感。俺と春はただただ、リアの言っていることを聞いてることしかできなかった……。

 先に口を開いたのは春だった。

「僕はどうしたらいいんだろう……。」

 春はショックを隠し切れず泣いていた。だらしないな、春は。俺を見習えよ。あれ……。おかしいな。男なのにな、俺。涙が止まらねえわ。一度出た涙は中々止まらなかった。

 リアは俺たち二人が泣き止むまで慰めながら待っていた。本当は逆の立場な気がするんだけどな……。なんで一番辛い筈の人に慰められてるんだろう。

 男なのに本当にだらしないな俺って。泣けてくる。泣いてるけど。

「ねぇリア。本当に死んじゃうの……?」

「ええ。本当よ。今度は万が一にも助からないみたいだわ。」

「それは前みたいに奇跡的にも何が起きてもだめなのか?本当にか?!」

「そうね。もう、そういう話じゃないみたい。治るとか、治らないとかそういう事じゃないみたい。」

「リアぁぁ……。なんで……。もっと一緒に居たかったよ……。もっと一緒に遊んだり過ごしたかったよ。もっと幸せになって欲しかったよ。

やっと再開できたのに、こんなのってないよ……。」

「よしよし……。」

 こういう時ってどんな言葉を掛けるべきなのだろうか。何も言葉が出てこない。リアの事を考えたら悲しがってるより、リアの願い事を叶えるために全力を尽くすのが礼儀ってものなのかもしれない。でも、そんなすぐに切り替えれないよ。機械じゃないんだ俺達って。ゼロか百で動いてる

 生き物じゃないんだもんな。仕方ないよな。なんでこんな事になってしまうんだろうな……。

「二人共少し落ち着いてきたみたいね。」

「ごめん……。」

「私だって驚かれない方がびっくりするわ。だから、多少取り乱してくれた方が嬉しいわ。二人を試したわけじゃないけど、私の事で本当に悲しんでくれてるんだって。良き友人を持てたなって自分が誇らしいわ。」

「当り前だろ……。リアはいつだって凄かったよ。リアの生き方は憧れる。リアほど凄い人物を俺は見た事ねえよ。」

「ありがと。最高の友人にそう言ってもらえて良かったわ。でね、さっきの事なのだけれど。」

「ああ。」

「これから最後まで私と一緒に居てくれないかしら。」

「「もちろん!」」

 これが俺たち二人に出来る唯一の事だろう。リアを思うのであれば、これしかないのだろう。 俺と春は強く決意した。

 「それでさ、聞きにくい事なんだけどいくつか質問していいか?」

「ええ。絶賛質問受付中よ。何でも聞いて。」

「さっきはもうすぐ死んでしまうって言ってたけど、後どれくらい生きれるんだ?」

「んー。そうねー。後一週間か二週間ぐらいかしら。」

「まじか……。」

 思いの他長くない。長くないとは言ってたものの、本当に長くない。人の命ってそんなに短いのかよ……。

「僕、自分の事しか考えてなかったけど、リアの親御さんは大丈夫なの……?認めてくれてるの?湊の家に泊まることを許してくれてるみたいな

話を聞いた気はするけど……。」

「悪い。あれは俺が付いた嘘だ。リアが突然きて泊めて欲しいって言ったのをどう説明したら春が納得してくれるかなって思ってさ。」

「え~~~?!」

「私の親は私が今してる事は許してくれてるわよ。説得したわ。散々迷惑かけてきたのは承知の上で、最後ぐらい全部私の好きなように生きさせてって。本当なら最後ぐらい家族と過ごすべきなのかもしれないけど、家族とは今までもずっと一緒に居たもの。それなら私は大好きだった友達と最後に過ごしたいって思ったのよ。親不孝な娘でごめんって謝っておいたからきっと大丈夫だわ。」

 大丈夫ではないだろう……。きっと親御さんも心配してるだろうな。それでも娘の気持ちを優先させてあげたんだ。なんて立派なんだろう。

「それでもこっちから連絡ぐらいしといた方がよくないか……?」

「そうそう、言い忘れてたことがあったわ。もし、私の様子がおかしくなって倒れたりしたらこの番号に掛けてくれる?」

「これは何の番号?」

「私の親よ。来る前に一応私がしようとしてたことは伝えてあるのよ。その上で私がいつ倒れたりしてもいいように私に何かあったら連絡させるって言っておいたの。だから連絡して私が倒れたって言ったら大体の状況を把握してくれるはずだわ。」

「準備いいな……。じゃあ、今変に連絡したら逆に心配かけてしまうか……?もし会ったら謝罪しないとな……。」

「謝る必要はないわ。私がしてることだもの。それと本当に大丈夫かしら。二週間ほど私に時間を使って欲しいという意味でさっきは行ったのだけれど、学校とか親とかそっちは大丈夫なの?その、無理はしないでいいのよ?学校とか行かなくちゃいけないってなってたら全然言ってくれていいのだけれど……。

暇な時間私と居てくれたら構わないわ。」

「春は大丈夫か?」

「大丈夫だよ。ちょっと家族にだけ連絡しないと。僕の解釈が間違ってたら申し訳ないんだけど、三人でこれからずっと一緒にいるっていうのはここで三人でしばらく暮らして過ごすっていう意味であってる?」

「私はそれが出来たら一番嬉しいわ。」

「分かった。ちょっと連絡だけしてくるね。」

 確かに、リアのために色々したいからって他の事が疎かになりすぎてたらどうしようもないからな。連絡とはしないといけない所にはしておかないと。

「湊も大丈夫かしら?」

「当り前だろ……。後悔したくないんだ。出来る事はしておきたい。それも、リアが望んでいることなら尚更。」

「ありがとう。二人共。本当に大好きだわ。」

「ちょっと俺も知り合いにだけ連絡しとくわ。急に休みだしたら心配するかもしれないし。」

「わかったわ。」

 とりあえず夏目には連絡しておこう。普段から世話になってたからな……。それに何かあったら助けてくれるかもしれないし、俺の頼みならきっと来てくれる。

 プルルル。

「夏目か?」

「おう。俺の携帯にかけてきてるんだからそりゃそうだろ。どうした?」

「ちょっとしばらくの間大学休むわ。二週間程度。もしくはそれ以上。」

「何かあったのか?」

「そういうとこだな。今詳しく事情を伝える事は難しいけど、いつか聞いて欲しいとは思ってる。」

「なんだそれ?まあ、お前がそうやって言うってことは何かしらの大事な事情があるってことは理解した。わかったよ。

もしなにかあったら言ってくれ。俺に出来る事なら協力しよう。」

「助かるぜ親友。」

「おう。頑張れよ。」

「ありがとう。じゃあな。」

 夏目はいいやつだな。あまり話をしなくてもこちらの事情を察してくれる。後は春の方がどうかだが……。

「春、どうだった?」

「大丈夫だよ。一応事情を伝えといた。一度帰ってちゃんと説明しに行くよ。ついでに荷物とかも持ってきたいし。」

「それなら春に頼みごとがあるのだけれど。」

「何?」

「春の服いくつか貸してくれないかしら?着替えをそんなに用意してないの。いくつかあった方が便利かなって。」

「任せて。今日の分はあるの?ないなら今行ってくるけど。」

「今日の分は大丈夫だわ。ちょっと買ってきたもの。」

「そっか。じゃあ明日一度帰るからそんとき持ってくるね。」

「助かるわ。」

 服とか下着とかは春がいると助かるな。俺じゃちょっとどうしようもないし……。

「これで私も一安心して二人と過ごせるわね。」

「まあ、そうか?」

「リアは僕と湊にしてほしい事とかない?出来ることなら全部してあげるけど……。」

「おう、何でも言ってくれ。何でもしてやるぞ。」

「そうねー。私は最後の二人と過ごせれば満足と言えば満足なのだけれど……。」

「例えばどこか行きたいところとかないのか?それとも体調的に厳しいか?」

「あんまり遠くへは行きたくないわね。体力がそもそもないもの。それでも二人と昔遊んだ場所とかは行ってみたいわね。」

 こないだ少し出かけた時もこれで疲れていたのか。あれでも少し無理してたんだろう。あんまり無理するなよな……。

「明日様子見ながら行ってみようか?」

「そうね。私も具体的な案が何かないか考えておくわ。」

 リアのために俺が出来る事って何なんだろう……。何をしたらリアのためになるんだろう。出来るだけ精いっぱい楽しませてやりたい。満足させたい。俺には何ができるんだろう……。

「湊には一度聞いたことがあったけれど、二人は人生最後にしたい事とかってあるかしら?どうせならそれもしてみたいわ。」

 そういえば寝るときに一度聞いて来てたことがあったな……。あの時は軽い気持ちで言ってたけど、今は違う。軽い気持ちで言えない。だって、本当に最後なんだから。責任重大だ。

「僕は何だろうな……。想像もつかないな……。やっぱり美味しい物でも食べるのかな?」

「やっぱり皆そんなところなのね。実際死が近い私でもあまり思い浮かばないもの。意外とできることって決まってるのかも。」

 リアの発言に気軽に触れて良いのかわからず、俺と春の口が止まる。

「二人の気持ちが分からない訳じゃないけれど、私の事を思うのなら必要ない心配はしなくていいわ。私は皆が思ってるほど自分の死を重く感じてないのよ。辺に空気を読もうとか、いつもと違う感じに接しなくていいわ。いつも通りが私の希望よ。」

 リアは強いな。俺は自分の死が近づいてきたとき、こんな風に振舞えるのだろうか?こんな堂々と立ち向かえるのだろうか?

 それともそもそもこんな考え方じゃないのだろうか?実際に死が近い人間とそれを見守る人ではどうしても分かり合えない部分があるのだろうか?

実は頑張って強気な風に振舞ってるだけなのだろうか?俺にはわからないんだろうな……。

 俺はいつかリアの様な生き方を出来る日が来るのだろうか。

「流石に自然にするのは無理があるかもしれないけど、いつも通り接するよう努力するよ。」

「頼んだわ。」

「さっそくだけど、今日はどうしようか?もう15時だけど……。」

 気づいたら時間が結構経っていた。それもしょうがない。色々あったんだ。他に何も考えられないほどに。

「お腹が空いたわ。」

「そろそろご飯にしよっか?そろそろっていうのもおかしいかもしれないけど、お昼の時間は過ぎてるし。僕が何か作ろうか?」

「春が作ったら味は間違いないだろうな。喫茶店のオムライスは美味しかったし、喫茶店で色々な物作ってるなら尚更な。」

「湊のオムライスも十分美味しかったわよ。」

「え?湊もリアにオムライス作ってあげたの?いいなー。僕も湊のオムライス食べてみたい。」

「いやいや、比べ物にならないって。ネットで適当にレシピ見て作っただけなんだから。」

「それを言ったら僕だって店のレシピ見ながら作っただけだしねー。そんなに変わんないんじゃない?」

「そうか……?」

「そこまで言うなら私が決めてあげるわ!今日は皆でオムライスを作るわよ!それで皆で皆のオムライスを食べてくのよ!凄く友達っぽいわ!」

「マジで……?」

「湊は春のオムライス食べたくないの?」

「俺が心配してるのは俺が作ることでもなく、春のオムライスの事でもなくリアが言った皆って言葉が気になってるんだけど?」

「ええ。私も作りたいわ!それで二人に食べてもらうの!」

春の顔を見ながら訴えかける。どうする?って。春も苦い顔をしている。小さい時のリアの料理にトラウマを覚えているんだ俺たち二人。

「リアがやりたいんならいいんじゃない?!」

春は吹っ切れていたようだった。俺と春がいたらそんなに不味い物はできないかな……。だといいけど。

「わかった。皆で作ろう。ただしリアはちゃんと俺と春の言う事を聞けよ?」

「ええ。お願いするわ。作り方なんて知らないもの。教えてくれないと困るわ。」

本当にただの思い付きだったみたいだ。

「材料ならこの前作った時の残りがあると思うんだけど、春的には大丈夫そうか?」

「んー。どれどれ?」

 春は冷蔵庫の材料と調味料を物色していく。

「まー、これだけあったら十分じゃないかな?特に問題は怒らないと思うよ。」

「そうか。それは良かった。三人でオムライス作るのはわかったんだけど、同じようなやつ作ってもあれだよな。」

「そうね。春は喫茶店の時のような感じのオムライスで、湊はこの前の時のオムライスで、私は二人が適当に教えてくれた奴で良いわ。」

「そうするか。これ順番とかどうする?」

「あー。それもそうだね。とりあえず下地的な物は皆同じのにしようか?それで卵の部分と卵にかけるケチャップの部分を工夫したらいいんじゃない?それが三人で作るうえで一番纏まりそう。」

「じゃあそうしたほうが良さそうだな。」

一人づつ作るのを待ってたら時間も掛かるし、冷めたりもするし色々不便な事が起きてしまうかもしれないしな。

 リアにやらせるのにもこの方が向いてるかもしれない。卵が多少上手く行かなかったとしても食べれないことはないだろうしな。一安心だ。

「先にケチャップライスを作ろっか。せっかくだしリアに作ってもらおうよ。そんなに難しい工程ないしさ。」

「いいの?!」

 リアは目をキラキラ輝かせていた。料理やってみたかったのかな……?どうせならやらせてあげたいしな。

 何かさっきまでやらせたくないって思ってた自分が憎い。これぐらいさせてやらないでどうするんだ。例え腐った料理を出されても食べればいいじゃないか。それが友情ってやつだ!

「うんうん。リア、こっち来て。僕が言う通りにやってね。」

「ええ。」

 春が教えてるだけあって上手だ。特別問題もなさそうで安心した。

 圧倒いうまにケチャップライスは出来ていた。

「春、問題なさそうか?」

「うん。上手に出来たと思うよ。味見もしたけど問題ないと思う。リアはもしかしたら料理の才能あるかもね。」

「えへへ~。ほんと~?照れるわ。」

 リアは何時になく上機嫌だった。

「とりあえず三人分のケチャップライスは用意したからここからは卵の部分を作ろうと思うんだけど、誰からやる?」

「はいっ!」

リアが真っ先に手を挙げてた。滅茶苦茶やりたそうだ。

「これは僕が教えたほうがいいかな?湊が教える?」

「いや、春に任せるよ。俺は教えるほど上手くないし作った事も無いからな。自分のやつで精いっぱいだ。」

「そう?じゃあ僕が教えるよ。」

「ありがと春~。」

 おー。中々様になってるな。本当に普通のオムライスだ。滅茶苦茶美味しそうだ。

「リア上手だねー。僕でも初めてやった時は失敗したりしたけど、全然そんなことなかったし危なげなくできたね。」

「春のおかげだわ。教え方が上手なのよ。将来料理教室でも開いたら?」

「あはは。リアってば言いすぎ。僕はそういうの苦手だから難しいかな。」

「え~。それは残念。春なら向いてると思うのにな~。」

「まあまあ。後はリアの好きなようにケチャップで文字書くといいよ。」

「何て書こうかしら。」

 リアはしばらく悩んだ末何か思い浮かんだらしい。

「これは後で書くわ。皆で同時に書くのよ。同時は難しいかしら。一人づつ書いて行って、最 後に皆で何て書いたか見せ合いっこしましょう!」

「それはひとつのお楽しみポイントだね。わかった。じゃあそうしよっか。次は湊が作る?」

「ああ。そうさせて貰おうか。」

 前の時のレシピ通り作っていく。一度作ったこともありスムーズに出来た。まあまあ悪くない。俺的には十分だ。

「おー。上手じゃん湊。十分じゃない?」

「そうか?春に言われると嬉しいな。」

「えー?!私に言われたのは嬉しくなかったの?!湊ったらひどい!」

「いやいやいやいや。そういう事じゃなくてだな。料理経験ある人に褒められたら嬉しいだろ。リアに言われたのも勿論嬉しいから。」

「ふーん?ならいいけど。」

 いかん。リアの機嫌を損ねるような事を言ってしまった。本当にそんなつもりはなかったのだがな……。

「まあまあ。湊もそんな気はなかったと思うよ?許してあげなよリア。 

「えへへ。別に怒ってないわよ。こういうやり取りをちょっとしてみたかっただけよ。」

「もー意地悪だなーリアは。湊ったらちょっと傷ついちゃってるよ?」

「湊ごめんね?」

「いや、リアが気にしてないなら全然俺としては困らないからいいぞ!よかったよかった。」

「湊らしいわね。」

「さて、僕もさっさと作っちゃわないとね。」

 春は慣れた手つきでオムライスを完成させていた。俺と春じゃ格が違うな。自分がちょっとでも料理できるんじゃないかって思ってたのが恥ずかしい。

「それじゃあ、各自自分のオムライスをちょっと離した所に持って行ってケチャップで文字を書いていこう。で、文字を書いたら次の人にケチャップを渡しに行く。これで最後まで他の人の文字を見ずにできるんじゃないかな?」

「春は賢いな。そうしようか。」

「これも私から書いていいかしら?」

「おう。いいぞ。」

「うん。書き終わったら湊の所へ持って行ってあげて。最後の僕が書くよ。」

 リアが書き終わった。何て書いたんだろうな。他人の事ばっか考えてて自分のやつ何て書くか考えてなかったな。

 何て書こう。あれにしようかな?うん。あれにしよう!

 自分のやつを終えて満足気に春の所へケチャップを持っていく。

「湊は随分と満足気だね?なんて書いたの?」

「それはお楽しみだ。」

「え~?僕も何て書こうか迷ってるから参考にしたかったのにな~。何て書こうかな。」

 春は春で結構悩んでいた。悩むよな。気持ちは凄くわかる。他人に見せるってなるとまたハードルがちょっと上がっちゃうしな。

「皆準備はいい?!」

「うん。」

「いいぞ。」

「それじゃあ、どーん!」

 リアの掛け声と同時に皆のオムライスを見せ合いっこした。

「「「ははははははは。」」」

 三人とも大爆笑だった。薄々そうなんじゃないかと思っていたけど、本当にそうなるなんてな。

三人ともお互いの顔を見ながら笑ってる。皆もそう思っていたんだろう。同じ事を書いてるかもしれないって。

 俺たちは皆、オムライスにケチャップでオムライスって書いていた。やっぱ俺たちって考えてること同じなのかな。

「僕は春の反応を見て、こう書いてる気がしたからこう書いたんだよね。」

「え?!良く分かったな……。そんな俺もリアがこう書いてる気がしたからこう書いたんだけどな。」

「二人共凄いわね。私はこれ以外思い浮かばなかったわ。」

「でね?二人には言ってなかったけどこれからが本番よ。」

「え?本番ってどういうこと?ご飯を食べるんだから今からが本番かもしれないけど……。」

「そういう事じゃないわ。このオムライスは自分で食べちゃだめ。お互いに食べさせ合うのよ。」

「そういう予定じゃなかったっけ?全然俺は二人のオムライス食べる気でいたけど。」

「僕も。」

「そういう意味じゃないわ。食べさせ合うっていうのはこうやって食べさせるって事よ。」

 リアは自分のスプーンでオムライスを一口分救い、春の口へと運んでいた。

「マジで言ってるのそれ?」

「ええ。大マジよ。」

「えぇ……。」

 春はドン引きしていた。これはかなり恥ずかしい。食べさせる方はまだいいんだが、食べる方は凄く恥ずかしいぞ。耐えれるかな、俺。

 春も相当恥ずかしそうだし、俺だけじゃないならいいか……。

「次は春が私に食べさせて。」

「はい。あーん。」

「あーん。」

うん。ここまでは問題ない。女の子二人が食べさせ合うのって素晴らしい。だけど、何で俺が?!

「美味しいわ。次は湊に私が食べさせてあげるわ。」

「ああ……。」

こういうのって憧れてる反面恥ずかしい。凄い抵抗がある。勇気が要る。それに第三者の目がある。恥ずかし。

「はい。あーん。」

「あーん……。」

美味しいのかどうかわからない……。緊張で味がしなかった。

「どう湊?」

「美味しいぞ。」

「それは良かった。じゃあ次は湊が食べさせて。あーん。」

「ほい。あーん。」

「うん。とても美味しいわ。やっと湊にご飯を食べさせてもらえたわ。」

「やっとって、初めて聞いたけどな……。」

「あら?そうだったかしら。次は湊と春よ。」

 遂に来た。まだ、リアとは恥ずかしい気持ちはあれど出来た。リアってば純粋だしこっちのことも真っすぐ見てる感じがするから余計な事を想像しなくて済むからな。

ただ、春はそうじゃない。所謂普通の考え方と持ってる。それは、お互い多分わかってる。だからこそ恥ずかしい。

 自分の考えてることが見透かされてるようで。

「ほらっ!早く!時間掛かり過ぎよ!私だってまだ食べたいんだから!」

「おう……。じゃあ、春いくぞ?」

「うん……。」

 春は滅茶苦茶顔を赤くしていた。本当に恥ずかしそうだ。俺も恥ずかしい。

「あーん。」

「……あーん。」

 何だこれ?恥ずかしそうにしながらあーんしてる女の子めっちゃ可愛いんだけど。これは新しい発見をした。リアに感謝だな。

「はいっ!次は湊の番だからね?!あーん!」

 春はやけくそになっていた。

「あーん。」

「えええ?!なんでそんなに恥ずかしそうじゃないの?!」

「何か春を見てたらどうでもよくなってきた。」

「えええ……。」

なんだか凄く落ち込んでいた。俺は春の動揺の具合に助けられたな。あそこまで春が動揺してるとかえって冷静になる。恥ずかしさがとんだ。

助かったぜ春。

その後はそのままお互いのオムライスがなくなるまで繰り返した。

「美味しかったわー。毎食これしたいわ。」

「いや、それは却下。たまになら、まだ!いいけど。毎食これはちょっとカロリーが高すぎる。僕にはちょっとハードだな……。」

春は凄く疲れている様だった。終始恥ずかしそうにしてたからな。俺もちょっと可哀そうな気持ちもあったけど、からかいがいがあって楽しかった。

リアは逆に満足している様子だった。

それからもなんて事のない話をしてたら夜になってた。

「もう夜ね。時間の進みが早いわ。どうなってるのかしら。」

「きっと楽しいからだよ。僕も楽しかったり……したから時間の進み早く感じるよ。」

春はさっきのご飯の食べさせあいをまだ根に持ってるらしい。

「ねえ、お願いがあるんだけど。」

「何だ?」

「どうしたの?」

「三人でお風呂に入らない?」

「やだ!」

 今まであまり否定してこなかった春が大声を出して否定していた。これには流石に俺も賛成だ。

「流石にそれはちょっとどうかと思うぞ?」

「えー?何でよ。三人で入りましょうよ。慣れたら恥ずかしさもすぐ飛ぶわ。きっと楽しいわ。」

「楽しいからとかじゃなくてさ……、春とリアが二人で入ってきたらいいんじゃないか?男女で入るのが問題だろ。」

「だめ。三人で入りたいのよ。」

「だめって言われたってなあ?」

「これは流石にね……。」

「えー?!お願い!お願い!一生のお願いよ?!」

リアの一生のお願いは流石に強すぎるだろ。そんな事言われて否定できないぞ……。

「んん~~……。春はどうしたらいいと思う?」

「僕に聞かないでよ……。」

「私の言う事聞いてくれたらいいと思うわ。」

「リアはちょっと黙ってて。」

リアは怒られてしょんぼりしていた。凄く残念そうにしていた。

「あー!もう!わかった!リアの言う通りにしてあげる!本当に仕方ないなぁ!でも!湊もジロジロ体を見てきたりしないでね!頼むよ!」

「いいのかよ……。」

「だって仕方ないでしょ!リアの願いだしあそこまでお願いされたら断れないよ……。」

「それはそうだな……。悪いな春に任せてしまって。」

「やったー!ほらほら、そうと決まれば入るわよ!」

「待て待て。まだお湯張ってないから!流石に何も無いところに三人で入るのはおかしいだろ。」

「っていうか、この家のお風呂ってそんなに広いの?」

「まあ、そこそこ広いな。三人ぐらいなら入ろうと思えば入れる。」

「それはちょっと凄いね。思ってたより広いみたい……。」

お湯を入れてからしばらく立ったみたいだ。機械が教えてくれてる。これって本当に便利だよな。昔は自分で蛇口を捻って時間が経ったら止めに行ってたからな。

「よし!今度こそ入るわよ!二人共準備はいい?!」

「ああ……。」

「うん……。」

「なあ、これって俺が先入ってるか後から入った方がいいんじゃないか?流石に洗面所から一緒ってのは違うよな?」

「だめよ。もうお風呂は始まってるのよ。」

「何だその遠足は帰るまでが遠足的なノリは……。悪いな春。我慢してくれ。気が向いたら殴ってくれて構わん。」

「そうさせてもらおうかな……。」

 いつの日かボコボコにされてしまうだろうな。こればっかりはしょうがない。出来るだけ平常心を保つように意識しないとな……。

 流石に俺にだって避けたい事はある。こんな状況で勃たせてしまっては不味い。でも、そうならない自信もない。見ちゃだめだ……。

 後ろを向きながら服を脱いでいく。そして、後ろからは服を脱いでいく音が聞こえる。今頃後ろで二人共裸になっていってるんだ……。

 想像すればするほど興奮してくる……。ごめんなさい!


 服を脱ぎ終わった。どうしよう。振り向いていいのかな……。もうちょっと待ってた方がいいか?

冷静に考えられなくなってきた。そうすると、ドアを開ける音が聞こえてきた。

「一番のりーっ!」

リアがざばーんと音を立てながらお風呂に入っていった。

「二人共早く早く~。ほら~。」

「わかったよぅ……。」

春も恥ずかしながら歩いて行った音が聞こえた。ちょっと湯船につかるまでは待たせてもらおう。流石にな。

「湊もはやくー。」

「ああ……。」

流石にタオルで隠しといたほうがいいよな。これは怒られないよな。礼儀だよな。

お風呂の方へ歩いていくと二人は湯船に浸かってた。普通に丸見えだ。二人の裸。初めて見た。

「湊ったら何を隠してるのよ。こんなものいらないわ!」

リアは何をとちくるったのか、俺が隠すのに使ってたタオルを取ってぽいっと手の届かないところに投げてしまった。丸見えだ。

「ちょちょちょ。何するんだよ。」

「私も春も裸なのに湊が隠してたらおかしいでしょう。私たち三人に隠し事はなしだわ!だからそれもなし!」

「ええ……。」

春は顔をずっとそっぽ向けてた。リアは興味津々でまじまじと人の裸を見ている。ちょっとは恥じらいというか遠慮というものをだな……。

「湊も大人になったのね~。」

「うるさい!あんまり見るな!」

「だめよー。三人でお風呂に入ってる意味がないじゃない。」

「見るために入ってるのか?」

「それも一つの理由ね。」

「まじかよ……。春も何か言ってくれよ……。俺じゃリアをどうにかできないぞ……。」

「僕はもうどうしたらいいかわかんない……。」

「春もこんな事いいながら湊の体に興味あるのよ。恥ずかしがり屋だから上手に見れてないだけで。」

「いや、リアが恥ずかしがらな過ぎなだけだって……。俺も相当恥ずかしい。」

「うぅ……。あんまり見ないで……。」

「すまん……。」

 混浴ってこんなに緊張するもんなんだな……。

「二人共緊張しすぎよ。本当にだめね。決めたわ。私が元気な内は毎日これをさせるから。これは命令だから逆らったら許さない。」

「なんでっ?!」

「どういう命令……?」

「まあまあ。私の為だと思って付き合ってよ。」

「ずるい……。」

リアはとことんパワープレイで付き合わせてくるな……。そんなこと言われたら俺たち二人断れるはずもない。

「段々と二人も慣れるわよ。そうなってもらわないと私も困るわ。」

「何を困ることがあるんだ?」

「ふふ。それはまだ内緒よ。」

まだ内緒って何だ……?まだってさっさと言ってくれなきゃ聞き逃すことになるかもしれないのにさ。

「さて!これからはお互いの体を洗いっこよ!」

「えー?!」

結局そのままリアの言う事に付き合わされることになり三人で体を洗いっこした。

「はぁ…はぁ…はぁ…。」

「大丈夫か春?」

「もうだめかも……。お家に帰りたい……。」

「もー春はそんなんだからだめなのよ。もっと自分に自信もって勝負しないと!」

「勝負って何だ?」

「湊にはまだ内緒ね。」

俺に対して内緒ごとが多くないか……?

「僕はなんだかリアが企んでること少しだけわかったかもしれない……。」

「流石は春ね!鋭いわ!」

「もう、僕は何も知らない……。なるようになれ……。逆のはずだったのにな……。」

 春は全てを諦めたようだった。どういうことだ……?

「それでは今から一緒に寝ます!」

「僕はそう言われる気がしてたよ……。」

「俺もなんかそんな気がしてた……。」

「二人共凄いわね!段々と私の考えてることを読めるようになってきたみたいね!それでこそ二人だわ!やっぱ三人仲よくしないとね!」

ここで俺の予想外の事が起きる。俺は少なくとも端っこだと思ったんだけど、なぜか真ん中に配置させられた。

「なんで俺が真ん中なんだ?」

「私がその方がいいと思ったからよ。両手に花でいいじゃない。」

「良いとか悪いとかじゃなくてな……。」

「まだまだこれは序の口よ。湊が驚くのはこれからだわ。」

 何っ?!まだ何かあるのか……。先が思いやられてしまう。これ以上どうなるってんだよ。

 その矢先、リアが左側から抱き着いてきて、手を伸ばしている。反対側に。これってもしかして……。

「ほらっ。春!手を貸してよ。はやくはやくー。」

「恥ずかしい……。」

 凄い状態になってしまった。俺の予想以上だった。両側から女の子に抱き着かれる構図になった。どうしてこうなった……。

「幸せだわ。こんな事を夢見て今まで生きてきたのだもの。三人幸せになれて私は言うことないわ。」

「こんな事を夢見てたのかよ……。」

「ええ。私は二人の事が大好きだもの。二人に幸せになって欲しいのよ。勿論私は幸せよ。」

「俺も幸せじゃない筈はないけどな。男の夢だろ。両手に花ってやつだ。この状況が幸せじゃないはずがないけど。」

「ね?春も恥ずかしそうにしてるけど、きっと幸せなのよ。春はちょっとしゃいだからね。自分の気持ち通りに動けないのよ。」

「恥ずかしいにきまってるでしょ……。」

「春は私たちの事好きかしら?」

「好きに決まってるでしょ。二人共大事だよ。大好きだから……。これで許して。」

「後は湊だけよ。湊は?」

「ああ。俺も二人共好きだぞ。とっても大事な友達だ。」

「えへへ。それを二人から聞きたかったのよ。もう私の人生に悔いはないわ。」

「ちょっと待て!それは早いって!まだまだ限界まで生きてくれよ。まだ三人で幸せにならないとだめだろ!」

「僕も今のはちょっとどうかと思うな。僕と湊はリアのことをとっても心配して、大事に思ってるんだから。こんなことしてるんだから、限界まで

生きてもらわないと僕もリアを許せないよ。」

「えへへ。そう言ってもらえて幸せ者だわ。本当に。二人に出会えてよかった……。二人を好きになって良かったわ……。」

リアは少し泣いてるようだった。そんなの見せられたらこっちまで泣いてしまうよな。春。

春はリアとは比べ物にならないぐらい泣いていた。俺も涙で何も見えない。

もっと一緒に長く生きたかったよな……。なんでこんな事に……。感情がぐちゃぐちゃになる。ただ、泣き疲れていつの間にか寝ていた。

もう朝か……。いつ寝たんだろうな……。両腕がなんか重いぞ。どうしちゃったんだ俺。

左右を見ると俺の腕にくっついてるのが二人いた。そういえばこの姿勢で結局寝てたのか……。

「おい。二人共朝だぞ。起きてくれ。俺が動けないからさっさと起きてくれ!」

 頑張って声を出したり腕を動かしたりしてようやく二人共起きてくれた。

「ん……。あら、おはよう……。」

「おはよう。」

「あれ……?ここどこだ……。僕は何してるんだ……。」

 春も朝苦手なタイプか?まだ寝ぼけてるみたいだった。

「おい。朝だぞ。起きろ起きろ!」

「あっ……!そういえば湊の家に泊まってたんだった……。あっ!リアは……?」

 春はリアの事を相当心配してるんだろうな。起きて第一にリアの事を考えてるんだなって伝わってくる動きだった。

「春、おはよ。私ならここにいるから安心して。大丈夫よ。」

「よかった……。おはよ。リアは元気?」

「ええ。元気よ!朝だからいつもよりは元気が少ないけど、全然平気よ。任せてちょうだい。」

「何を任せたらいいのか分かんないけど、元気ならよかった……。ちょっと洗面所借りるね。」

「ああ。好きに使ってくれ。」

「私も~。」

二人で洗面所に眠そうな姿で歩いて行った。似た者同士だな……。

 俺はどうすっかな。喉渇いたな……。お茶でも飲みながらいったん落ち着くか。

「ふー。おはよー。さっきはボーっとしてて正直何が何だか分かんなかったよ……。」

「おはようさん。春も案外朝弱いんだな。」

「そうだねー……。あんまり得意ではないかも。朝は……辛い。」

「俺も好きではないけどな。」

 昨日の出来事もあったから精神的にも疲れがあったのかもな。

「春ー!春ったら移動が速いわね……。顔を洗ってたら知らない間に一人になってたわ。」

「リアが遅いだけじゃない……?僕は多分普通だよ……。」

「もう、いけずね。」

「それより、朝飯でも食わないか?」

 思ったよりお腹が減ってる。腹ペコだ……。何でもいいから食いたい。

「僕も少し減ってきたな……。」

「私も食べたいわ。」

「じゃ、朝飯にするか。朝飯にするのは決まったけど、何にしようか……。材料が思ったよりないな。」

「それなら喫茶店借りようか?多分今マスター居るから、ちょっと借りて使わしてもらうぐらいなら出来ると思うよ。」

「本当か?っていうかバイトの方は大丈夫だったか?急に休むなんて言って。」

「大丈夫だよ。元々マスター一人でしてる店だったしね。何て言うか物分かりが良い人っていうか。凄い人なんだよね……。」

「そうなのか?俺たちが行ったときは特に何もしてなかったから謎の人だなって思ってたんだよな。」

「謎の人って言うのは間違ってないかも。不思議な人って感じ。ちょっと電話してみるよ。」

「任せた。」

 どういう関係か分からないけど、喫茶店でご飯作ったりしてもらえるなら凄い楽だ。味の保証もされてるし、問題は金だけだな。

「リアはあの喫茶店好きだっただろ?」

「そうね。独特の雰囲気をしているから気にいってるわ。味も良かったし、文句ないわね。」

「なら、後は借りれるかどうかだな。」

 今思ったら喫茶店って朝は普通やってるよな。電話して聞いてみるってことは普段朝はやってないって事なんだろうか?不思議な店だな……。

「大丈夫だってー。今仕込みとかしてるから勝手に使ってくれて構わないってさ。」

「無理言って悪いな。借りれるなら感謝しかない。良かった。」

「それじゃあ、準備して行きましょうか。」

「そうだな。」

 それから、着替えて喫茶店まで歩いて行ったらclosedの看板が掛かってあった。普段はこの時間やってないってことなんだろう。

 closedって書いてあるのに入っていくって特別感があっていいな。

「マスター。どうもー。ありがとうございますー。」

 春は入ったと同時にマスターの方へ歩いていき何やら話している様だった。

「すいません。無理入って使わしてもらって。ありがとうございます。」

「ありがとうございます。」

 俺とリアはマスターに一言感謝を。マスターも「全然問題ないよ。」ってな感じだった。

「二人共メニューは何にする?何でもいいよ。」

「リアは何か食べたいものあるか?」

「オムライス!」

「オムライス?!昨日食べたよな……。いいのか?そんなに好きだったっけ?」

「そういう気分なのよ。別に私は同じご飯が何回続こうと気にしないのよ。好きな物であればね。二人は違うメニューで良いのよ。」

 そんな事言われてもな……。俺としては何か同じメニューを食べたい気分だ。普段ならしなかっただろうけど、今はな。

「俺もオムライス頼む。」

「あいよー。分かったよ。じゃ、僕もオムライスにしようかなー。飲み物は?」

 春もオムライスにするのか。三人ともオムライスだ。

「俺はカフェオレで。」

「私はお茶がいいかな。」

「はいよ。」

 春は凄い手際でオムライス三つを完成させていた。改めて思うけど凄いな……。綺麗で速いんだよな。

「お待ち。」

「腹ペコだ。待ってたぞ。」

「ありがとう。」

 ケチャップでオムライスって書いてあった。何か安心するな。

「これってさ、いつもはなんて書いてるんだ?」

「何にも書かないよ。適当に線をぐにゃぐにゃ~って感じにするだけだよ。」

「そうなのか。春なら何か適当に書いてあげるだけで客は喜ぶんじゃないのか?」

「やだよ恥ずかしい。」

 やっぱ普通は恥ずかしかったりするんだな。

「相変わらず美味しいわね~。」

「えへへ。ありがとう。リアが喜んでくれて僕は嬉しいよ。」

 何だかんだあって、有難くオムライスを頂いて喫茶店を出て家に戻ってきた。

「美味しかったねー。」

「ああ。」

「良かった。今からどうしよっか?リアは体力的に大丈夫そう?」

「大丈夫よー。」

 まったりムードで何にも決めてなかったな。

「映画とかアニメとかゲームとかにするか?」

「今日は家より外に出てたい気分だわ。軽い散歩とかでもいいのだけれど。」

「じゃ、そうしよっか。」

「いいぞ。疲れてきたりしたらすぐ言えよ。」

「ええ。二人の事は信頼してるから大丈夫よ。」

 三人で近くの景色の良いところまで歩いて行って、特に何をするでもなく、他愛もない話をして過ごした。昔を思い出すように。

それからは毎日三人で色々な事に挑戦した。やったことのない事、少しやってみたかったこと、テレビで見た事。普段だと絶対にしないこと。三人でやると何でも楽しかった。本当に色々な事をやりつくした。

 これも、リアのおかげだ。リアの生き方の見習うべき点だ。リアがいなかったら行動に映せなかっただろう。俺も、春も。

 リアに引っ張ってってもらってる。俺たちが引っ張るべき存在なのにな。リアは何て力強いんだ。

 なんでこんなに強く生きてるんだ。何がリアをそうさせてるんだろう。俺なら挫けてる。人生を諦めていただろう。

 でも、これからは諦めない。何事にも挑戦する。これはリアから教わったことだ。これを守らなければ、リアに与えてもらったものを捨ててしまってるようなもんだ。これだけは大切にしないといけない。

 そして、一週間程立った日リアは言った。「最後のお願いがあるの。」と。

 それは三人で布団に入ってる時の事だった。

「ねえ。二人に最後のお願いがあるんだけど。」

「最後のお願い?」

「ええ。私が二人に最初から望んでいたことよ。」

「なになに?ここまで聞いて来てあげたんだから早くいいなよ。どんなお願いでも僕と湊なら付き合ってあげるからさ。」

「ふふ。そうね。今までもそうだったわね。二人には結婚して欲しいのよ。それが私からの最後のお願いよ。」

「「結婚?!」」

 結婚って言ったか?俺と春が?!何でそれがリアの願いなんだ?

「ええ。そうよ。私は最初からそのつもりだったの。でも、久々に会いに来た時はびっくりしたわ。居場所すら怪しいって。私は大好きな二人に囲まれて過ごしたかったのに思ってたのと違ったんだもの。」

「結婚てな……。」

「僕は何となくリアがそう言ってきそうなのわかってたけどね……。」

「そうなのか?」

「まあね……。」

「えへへ。二人はお似合いだもの。二人にはこれ以上に無いほどに幸せになって欲しいの。私が保証するわ。二人が結婚したら

絶対に今以上に幸せになるって。」

「結婚ばかりはリアに言われたからするってわけにはいかないんじゃないか……?」

「それはそうよ。二人の気持ちが繋がってなかったら成立しないわ。湊は鈍感だから気づいてないかもしれないけど、春は湊の事好きよ。男性として。」

「え?!」

「やめて!こっち見ないで!恥ずかしい!」

 そうだったのか……。知らなかった。友達としては好意をお互いに持ってるとは思っていたが……。

「それも昔からだわ。昔三人で遊んでいた時から。」

「本当か春?」

「うん……。湊の事好きだった。でも、リアの事も好きだった。それに、僕からしたらリアも湊の事好きだろうなって思ってたしさ。だから、このまま三人で過ごせたらいいなって思ってた。」

「ええ。私は好きよ。二人とも。湊の事は男性として好きだし、春の事も同じぐらい好きだわ。私が居なくなったらそれはそれで自然に二人がくっつくかと思ってたんだけれど。」

「そうだったのか……。」

「それも、私が居なくなってしまったせいもあって関わりがなくなっちゃったのかもしれないわね。」

「それは。しょうがいないだろ。」

「ええ。だから責任取って二人をくっつけるために頑張ったわよ。色々命令させて。強引にしないとお互いが前に進めないみたいだったし。」

そんな企みがあったのか……。

「で、二人共お互いが好きでしょ?結婚してくれる?」

「俺はいいぞ。」

 俺も前へ進もう。リアみたいに。いつまでも進めないままじゃだめだ。勇気を出そう。現状維持じゃなくて、前に進むことが俺には必要なんだ。

「僕も……。」

「良かった……。これで本当に思い過すことはないわ。したいこともいっぱいしてきたし、叶えたいことも全部叶えた。

私には贅沢すぎた人生だったわ。」

「贅沢すぎるなんてことないだろ。もっと贅沢するべきだ。リアはな……。」

「僕もそう思うよ。リアは誰より贅沢な人生を過ごすべきだと思うもん。」

「ありがと。二人共。そうだ。結婚するなら今キスしてよ。見たいわ。」

「ええ……。」

「キス……。」

「遅かれ早かれするんだからいいじゃない。私が見逃したらどうするのよ。」

「仕方ないな。いいか?春。」

「うん……。」

 そっと顔を春の方へ近づけ唇を重ねた。キスってこんな感じなのか。心地よい……。

「どうだ?」

「いい物見させてもらったわ。ねえ、春ちょっとこっち来て。」

「どうしたの?」

 おおっ!春とリアがキスしてる!これは良いものを見させてもらった。

「えへへ。これで三人でキスしたような物ね。」

「恥ずかしいよ。リアは湊とはキスしなくていいの?」

「それは、やめておくわ。湊はリアの夫だもの。間接キスで我慢しておくわ。」

「そっか。リアなら僕は怒らないよ。湊がいやらしい目でリアを見てても文句は言わないから。」

「……。」

 俺はどういったリアクションをすればいいんだ?頷いたら下心丸出しに思われそうだし、そうは思われたくないし。でも、否定もできない。

 黙っているのが正解か?

「ふふ。春がそういうなら気が向いたら一度くらいお願いしてみようかしら。」

「別にいいよ。」

「明日はどこへ行こうかしら。二人に新婚さんごっこしてもらいたいわ。私はそれを横から眺めるの。」

「リアは気早すぎ。」

「新婚さんごっこてな。まだ俺たち付き合ってすらなかったんだから。」

「それはそうね。これからに期待かしら。」

「明日も楽しむためにそろそろ寝ようか。」

「うん。」

「おやすみ。」

 三人で楽しい朝を迎えるはずだった。ただ、そうは行かなかった。昨日まで元気だったのに。いや、本当は薄々感じてはいた。

 リアの体力が落ちてきてるのを。体調を崩してきてるのを。

 それをもっと頑張ってくれって思ってただけなのかもしれない。リアならまだ、何とか生きてくれるんじゃないかって。期待していただけなのかもしれない。

 翌朝あわてて救急車を呼んでから、リアに教えてもらっていた番号に掛けた。リアの親御さんも素早い対応で察してくれたけど、だめだった。

 リアは亡くなってしまった。そうなることを事前に聞かされていても、俺と春には泣くことしかできなかった。本当に悲しかった。

 何でリアなんだろうな。リアは……。幸せだっただろうか。一緒にまだ色々な所に行きたかったのに。早すぎるよ。本当に。

 俺たちはリアの望みを叶えられたのかな……。リアを楽しませられたかな……。リア……。

俺と春はリアの親御さんに謝ることしかできなかった。向こうは事情を知ってたし、逆にこちらに「娘が迷惑かけたね。娘は本当に良き友人を持って幸せ者だと思う。もし、罪悪感を感じたりしているなら忘れてくれ。私の責任でもある。罪悪感を感じるべきなのはこちら側なのだから。」と。

 俺たちはリアを幸せに出来たかな。リアの良き友人でいれたかな。

 月日が経って俺と春は結婚して、子供も生まれた。そして、俺と春は子供たちにリアの生き様を英雄のように語り継げていった。

「あんなに凄い奴はいない。」と。





もし、興味を持っていただければブックマークなどしていただければ助かります。

少しずつ物語に変更を入れる予定です。物語の結末などには変化は入りませんが、日常話や細かいところを修正したいと思ってます。よろしくお願いします。

また、感想や指摘などあれば受け付けてますのでお願いします。


皆さんはこの物語どう感じていただけたでしょうか。

書いてみたら誰かに読んで欲しくなり投稿させて頂きました。

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