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たっくんと絵本

作者: 田鰻

たっくんは えほんが だいすきです。

なんべん よんでも あきることが ありません。

きょうも おきにいりの おはなしを よもうと ほんを ひらくと もわもわと まっしろな けむりが あがって まっくろい かたまりが とびだしてきました。


わあ と おもわず たっくんは おおきなこえを だしてしまいます。


「こんにちは たっくん。

おどろかせて ごめんね ぼくは えほんのせい なのさ」


びっくりしている たっくんに かたまりは みぎに ひだりに ゆれながら ぺこりと あいさつを しました。


「いつも よんでくれて ありがとう。

たっくんは そんなに このえほんが すきなのかい?」

「うん、だいすき!」


たっくんが こたえると かたまりは ますます うれしそうに ぶよぶよと ゆれました。


「そうかい、そうかい。

なんべんも よまれるのは えほんにとって いちばんうれしい ことなのさ。

そうだ おれいに たっくんの おねがいを ひとつだけ かなえてあげよう」

「おねがい?」

「こうなったら いいなって おもうことだよ。

ただし ひとつだけ だからね」


たっくんは ううんと うなりながら かんがえました。

もっといっぱい えほんがよみたい。

おいしいおかしを まいにちたべたい。

かっこいいおもちゃが ほしい……。

こうなったらいいなと おもうことは たくさんあります。


「じゃあね たっくん おとうさんと おかあさんに あいたい!」

「いいとも、いいとも。

ちょーいの ちょい でぃく でぃく どっど どろっぽ でどん」


かたまりが ごにょごにょっと ふしぎなじゅもんを となえると たちまち たっくんの となりに おとうさんとおかあさんが あらわれました。

きゅうにいなくなった ふたりが もどってきて たっくんは おどろきながらも おおよろこびです。


「すごいや おとうさんと おかあさんだ!」

「うれしいかい? よかった、よかった。

それじゃ ぼくは そろそろ かえるからね。

これからも えほんを よんでおくれよ」

「うん、ありがとう」


まっくろな かたまりは ぴょんと ねこみたいに たかくはねると えほんのなかに きえていきました。

わあ と たっくんは また おおきなこえを だしてしまいました。

ぱちぱちと まばたきしても そこにはもう ひらいたままの えほんしか ありません。

たっくんは ていねいに ほんをとじると もっとていねいに もとのばしょに もどしました。

あしたも ぜったいによもうと もっと えほんがだいすきになった たっくんは おもいます。

こんどは かえってきた おとうさんと おかあさんと いっしょに。


そのひの ばんごはんは おにくでした。


つぎのひの あさごはんと おひるごはんと ばんごはんも おにくでした。

おとうさんと おかあさんは かえってきたのに おじさんと おばさんが まだ かえってきません。


そのまたつぎのひ しらないひとたちが きて おとうさんと おかあさんは いなくなって しまいました。

おとうさんは? と たっくんが きいても おとなのひとたちは いそがしそうで へんじをして くれません。

おかあさんは? と たっくんが きいても じこし はんとし と むづかしいことを しゃべっています。


おじさんと おばさんは まだ かえってきません。


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