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マヤの理論と親しい友人達

 マヤはある種の天才であった。


 彼女の代表的な論文と言えば、夢を見る事で平行世界の存在を認知する事が可能であると云うものである。

 夢を見ると云う事は脳の記憶処理によるものだと云う説があるが、彼女は未体験の経験を脳がどう処理し、記憶にない架空の世界を産み出すのか研究し、現在の理論に到達したのである。

 マヤにはこの理論を裏付ける体験がある為、例え、人に笑われても絶対の自信を持っていた。


 彼女はその記憶力の良さ故に夢の記憶を鮮明に覚えている。

 そして、それを幼少の時から拙い字で記録し、ある時から一定の確率で平行世界へとリンクする事を導き出す。


 そのような現象は夢幻病と呼ばれるのだが、夢を記録し続け、異世界や平行世界へとダイブする現象を人はいつしか、朝多マヤが命名したアカシックドリームと呼び、朝夕マヤの事をある種の天才として揶揄するようになるのだった。


「それで今日はどんな夢を見たの?」

「今回は確率35パーセントくらいのアカシックドリームだったよ」

「ああ。男子になって生活するって奴だっけ?」

「そうそう。文ちゃんにも見せれるといいんだけどね?」

「マヤはその研究をしているんだったよね?

 いつか、私にもマヤの見ている夢を見せてよね?」

「モチロンだよ!文ちゃんは親友だから、真っ先に見せて上げるね!」


 マヤの明るい言葉に文と呼ばれる少女はクスリと笑うと彼女と共に登校する。

 教室に入るとマヤの事を3人の友人が待っていた。


「遅いぞ、マヤ」

「ごめんね、恵ちゃん」


 長身で青いロングポニーテールの少女にマヤは謝るとノートパソコンを取り出し、電源を入れる。


「早速だけど今回、出題されるテストの範囲を復習しよう」

「マヤもいい加減、スマホを使いなよ?

 ノートパソコンとか効率悪いだろ?」

「そうだけど、スマホはスマホで夢を記録するには非効率だからね?

 それにパソコンは就職したら必須のジョブになるだろうから、今の内に慣らしておいた方がいいよ?」

「流石は天才少女だね。もう先の事を考えているのかい?」


 恵の言葉は何処かトゲを含んだ言い方だったが、マヤはそれに対して素直に頷く。

 西城さいじょうけいとは中学からの付き合いだが、彼女の言い方には他意がない事はよく理解している。

 寧ろ、自分の理論を馬鹿にするでもなく、受け入れてくれた理解者の1人である。

 逆に西城恵も口が悪く、姉御肌である事が災いして不良と間違えられる事が多く、そんな自分を受け入れてくれたマヤ達には感謝していた。


 故に恵とマヤは切っても切れない縁となったのである。


「それで復習だけど、私も解らないところがあるから、教えてね?」

「専門外の事になると本当に弱いね、マヤは・・・」

「十を習うよりも一を極める事の方が性に合っているからね?

 まあ、だから、英語とかは赤点続きなんだけどさ?」


 マヤがにぱっと笑うと恵は「やれやれ」と肩を竦め、隣に立って、彼女と他愛もないやり取りをする赤いショートボブの小柄な少女ーーあかつき陽美はるみを見る。


「ここは陽美の出番だろ?

 ちゃんと教えてやりなよ?」

「また恵ちゃんはそうやって、すぐ人を顎で使う。

 そんなんだから、不良だと間違われるんだよ?少しは治した方が良いよ?」

「ん?そうか?それはすまないな?」


 陽美の言葉に恵は鼻の頭を掻くと「あっと・・・」とマヤを見る。


「言い方が悪かったよ。マヤも不快にさせたなら謝るからさ」

「気にしてないから謝らなくていいよ。それに恵ちゃんは優しいし、可愛いもん」

「お、おう。そう言われるとなんか、照れるな?」

「照れてる恵ちゃん、可愛いよ」


 そんなマヤ達を見ながら今まで黙っていた長い黒髪で影のある少女ーー七加瀬ななかせ弥生やよいがボソリと呟く。

 彼女達は基本的にこの5人でいる事が多く、お互いに普通の女子高生として楽しい付き合いをしていた。


 やがて、チャイムが鳴ると楽しげに雑談していた彼女達は各々の席へと座る。

 そんなマヤの後ろの席に座る文がポツリと呟く。


「結局、テストの復習は?」

「・・・あ」


 文のその言葉を聞いて、マヤはついつい、いつものノリで雑談してしまった事を後悔し、天を仰ぎ見るのであった。

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