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1話 2度目の春といつか見た桜

卒業した日の夜、僕は強く願った。

もう一度高校生活をやり直させて欲しい。


何も起こらないことは知っている。こんな惨めなことをやっても意味の無いことは知っている。

だけど、こうしていないとまるで納得しているみたいで嫌だった。




何時間経っただろうか。瞼が重くなってきてしまった。


「もう寝るか」


明日は特に予定はない。


高校は卒業した。特にやりたいことも無く4月から工場で働くことになった。


こんな惨めなことはやめた方が良いと自分に言い聞かせるように部屋で「おやすみ」と呟いた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



朝になった。

いつも通り顔を洗って朝ごはんを食べようと思った。

「あれ...?」

何故か少し顔が若返っている気がした。

まるで入学した時のような顔。少し丸みがあって顎髭がなくツルツルだ。

筋肉も少し無くなっている気がする。


「なんだよこれ...。中学生の時みたいな顔だな...」


母親が洗面所に入ってきた。


「何ボーッとしてるの。早く入学式の準備しなさいよ。」


僕は言っていることがよく分からなかった。


「いや昨日卒業式だっただろ。何言ってんの?変な薬でもやったの?」

「それはこっちのセリフよ。寝ぼけたこと言ってないで早く準備しなさいよ。」


もはや意味がよく分からなかった。


「母さん、今日何年の何月何日...?」

「はぁ...。2015年の4月6日ですよ。」

「え!?嘘だろ?!」


その日は丁度僕が高校に入学した日だった。

もう頭の中はゴッチャゴチャでおかしくなりそうだ。




とりあえず母さんが怖いので準備する事にした。

新品の制服、新品のローファー、いつか無くしたはずのキーホルダー。


「いやさ、昨日めちゃくちゃ戻りたいって祈ったけどまじで戻れるとか聞いてないから...。」


下に降りたら母さんがとても笑顔で僕を見てきた。


「似合ってるじゃない。立派な高校生よ。」

「あぁ...。そりゃどうも...。」


似合っているなんてどうでもよかった。


「行ってくるよ」と母親に向かって言い、家を出る。


僕は中学からの親友と同じ高校に行くことになった。


学校は家から電車と徒歩で1時間かからないくらいの場所だ。

親友は別だが中学の知り合いに会いたくなくてわざと遠い高校を選んだ。


「お、おはよう。」

朝からのよく分からない出来事に戸惑いながらも親友に挨拶した。


「おお。制服似合ってんじゃん。俺らも高校生だな。」


僕の親友の名前は渋沢 龍之介

中学の頃は先生の事が嫌いでいつも反抗的な行動をしていた。

でも決して悪い奴ではなく同級生には基本優しい。


「ありがとな。これからもよろしく。」


もう色々と噛み合っていて今起きていることが現実なんだと思った。


サラリーマンと学生で埋め尽くされた電車の中で僕は小さめの声で話した。


「なぁ。今日なんかおかしいと思わないか?」

「いや別に何も無いだろ。緊張してるのか?」

「んなわけないよ。」



もうトコトン乗っかってやろうか。醒めない夢ならば楽しむのが1番な気がしてきた。



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