第5食目:マサウチの煮物
夜、いつものようにお外でご飯を食べようと準備している最中
「いいですか!今日の外出は一切認めません!例外はありません!速やかに寝てください!」
大声で呼び上げる先生方
「えー。なんでですか、これから出かける気満々だったのにー」
「ふふふ、都に招かざる客が来たからな」
いつものように、気がついたら部屋にいるおばあちゃん。
「おばあちゃん、こんばんわ」
「ああ、良い夜だ。都に急にやばいのが訪れてね。今騒ぎになっているんだ」
「やばいの?」
「龍族リーダー。フェルライン」
「その人がいたらご飯が食べられないのですか?」
「そんな事はない。学園の方針は分かるが、わたしや聖女様は、別に会わせても構わないという方針だ。ミルも、そんな会ったこともない奴より、美味しいご飯を食べる方が重要だろう?」
「さすがおばあちゃんです!」
「じゃあ行こうか」
「はいです!」
ルピアはなんか他の生徒に呼び出されて、お話しているようです。
多分止めるだろうからちょうど良いや。
今日は違うお店。
とっても賑やか。
「ここのお勧めはな、蛇の料理なんだ」
「蛇?食べたことないのです」
「旨いぞ。びっくりするほどな。元気にもなるんだ」
「じゃあ食べま~す」
おばあちゃんと2人きりでお食事。
おばあちゃんは毎回凄い量のお酒を飲む。
「そういえばおばあちゃん。ご家族はいないのですか?」
「ああ。いない。わたしは男に興味ないし、性行為が嫌だったからな」
性行為。わたしもあの城にもう少しいたら、貴族の妾で、延々と性行為させられたんだろーなー。
「なんか分かります。私もそういう感じです」
「ふふ、まだ10にしても達観しているな。まあ、いい。独り身もいいもんだぞ。気楽だしな」
お酒を飲み干すと。
「旨い」
幸せそうに微笑んだ。
わたしの蛇の料理ですが、身が柔らかくて、味が染みていますが、ちょっと辛い。
まだ早かったかも。
「辛かったかな?酒のつまみには最高なんだが」
「大人の味がします」
「口直しに他のも頼むか、なにが良いかな?」
「奢るわよ、ジュブちゃん。お子さま向けならマサウチ(大魚)の煮物がお勧めよ。私の故郷の料理なの」
おばあちゃんの手が止まった。
なんとなく分かった。
理屈とかじゃない。
目の前の人はヤバい。
「いきなりたどり着くとはな、フェルライン」
「たまたまよ。ここの料理人はね。元帝国の民。わたしはこの大陸の料理が合わないから、このお店、気に入っているのよ」
「嘘付け、前ビックボーン(大牛)を丸かじりで食べてたろう?あんな料理、帝国にあるか」
「懐かしい記憶ね」
2人は親しげに喋るが、わたしは人生で最初の恐怖を味わっていた。
そう、恐怖。
この人は怖い。
「怯えないで。殺さないわよ。挨拶に来ただけ」
「初めまして。ミルティア=アディ=ネルテルゼと申します」
「初めまして。ティルディア神聖帝国に仕える、アルネシア公国の公女。ドラグネイシア・メイ・ルテルスに仕える、フェルライン・ルテネスよ」
長い。
「よく分かりませんが、奢りのご飯は美味しく頂きます」
「あら、話が早いわね。もちろんよ。あなたお魚は好き?」
「お肉が好きですが、魚も好きです!」
「ここの大陸だと新鮮なお肉が手に入りやすいからそうかもね。でも手のこんだ魚料理も美味しいのよ」
ちょうどお魚が来ました。
「凄い良い匂いです」
「この大陸は果実と肉や魚の煮物が多いわね。でもね。クルムとかの野菜を出汁にするととても美味しいのよ。この魚料理もそう。この大陸は果実が溢れているから贅沢に使いすぎているけれども、果実はね、ちょっとした口直しにあるぐらいに使うのがいいのよ」
フェルラインさんは、マサウチ(大魚)に出し汁をふんだんにかける。
「さあ、どうぞ」
「頂きます!」
食べると
「お、美味しい!美味しい!なんですか!これ、本当にお魚ですか!?」
ふっくら、ほくほく。
お魚なのに、噛むたびに味が口全体に広がる。
「噛むたびに味が広がるでしょう?こちらの大陸はシンプルな味付けばかりだから、こういう料理は珍しいでしょ?」
「めっちゃうまいです!魚料理って凄いんですね!!!」
世界は広い。旨いご飯はいくらでもある。
「フェルライン、目的は?」
「この娘に、故郷の美味しいご飯を味わって欲しくてね」
「本当の目的を聞いてる」
「ジュブちゃん、引退した貴女に駆け引きはしないわよ。まんま言ってるの」
おばあちゃんは顔をしかめる。
「そういう腹芸は苦手だ。私は頭が悪いんでね」
「頭の問題ではないわ。簡単な話。あなた、今度うちの大陸にご飯食べに来ない?」
「な!?なんだと!?」
「ほ、本当ですか!?それは楽しそうです!」
「待て!そんな許可でる訳ないだろう!?」
「あら?この娘は転生体候補生の一人だけれども、落ちこぼれなのでしょう?この年齢でようやく学園入りって補欠ってところ。別にいいじゃない」
「……わざと言ってるだろう、お前」
「ジュブちゃん、今現在、龍姫様は聖女と、ことを構える気は無いわ。帝国、そして神教の混乱を収めるのに手一杯。今は図らずも友好を望んでいるわ。そこで、是非食事から友好関係を築きたくてね」
「……信じられんが、相談はしよう」
「ええ。私達は待つわ。またお会いしましょう、ミルティア」
フェルラインさんは立ち上がる。
「そう言えば、カリスナダはまだこっちでいいのか?」
「もう許してあげる、って言ってるんだけど。この前帰った時、5日連続でレイ○したのがまずかったのかな?」
「……相変わらずだな、その性欲」
「わたしは老若問わないわよ?ジュブちゃん、今度どう?」
「お断りするよ」
フェルラインさんは妖艶な笑顔を浮かべ
「それではご機嫌よう」