第39食目:ブライグの香草包み焼
アラニアとエネビットは戦争を避けた。
そして、アラニアの公王、エウロバは自ら親征し、帝国の要、新都に向けて出撃していた。
帝国は公国の連合体。
本来は他の公国がアラニアを止めるべきだが、殆どの公国は、兵を出すこともなく、アラニアの軍を素通しにしていた。
「この!!!バカ息子が!!!恩知らずが!!!」
新都、帝国の本国と接する公国、クレイブ公国の、前公王シークスが叫んでいた。
「なぜ立ち向かわない!我等の先には陛下がいるのだぞ!もう帝国本国、新都しかない!帝国を滅ぼす気か!」
「しかし、お父さん。アラニアの勢いは凄まじく、今回はアラニア四将軍のうち、三将軍までもが帯同しているのです。とても我々のような小国では対抗できません」
現公王の息子がなだめるが
「アラニア四将軍がどうした!?元々アラニアは我等と変わらぬ小国だ!」
シークスは病気により、息子に公王を譲ったのだ。出来る限り息子の治世に口出しするまいと決めていたのだが、今回の事は無理だった。
「一軍を貸せ!クレイブ公国は意地を見せねばならんのだ!」
「し、しかし、それではアラニアとの関係を……」
シークスは顔を覆う。
この息子はアラニアが帝国を滅ぼすのも容認しているのだと。
そして、その判断は公王としては間違ってはいない。
もはや帝国本国は立ち直れない状況にある。
だが、それでも
「目先で考えるな!確かに帝国本国は限界だ!だがな!ここでアラニアの好きにさせればどうなる!
公国が意地を見せなかったらどうなる!そんな公国残す理由など無かろうが!
ここで戦わなければ!クレイブ公国は滅ぶも同義だ!」
「……お父さん。それでも、今戦えば、今滅びます。私もお父さんの話は分かりますが……」
「お前の判断は分かった!ならば公国軍ではなく私兵として戦おう。クレイブ公国の先王として、先祖に対して胸をはり報告しようぞ!最後に意地を見せたと!」
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「クレイブ公国が軍隊を出すようです」
アラニアの四将軍の筆頭、ツーバックは斥候の報告を聞くと
「ギャハハハハハハ!!!てめえら!聞いたか!!!ようやく戦争だ!!!」
楽しそうに笑う。
頭は剃っていて、ギラギラした目をしている20代中頃の青年。
彼が、四将軍の筆頭。
戦闘狂ではあるが、冷静沈着な指揮もとれる名将。
だが、言動は粗暴だった。
「これは意外ね。クレイブの公王は見逃すかと思ったけれど」
エウロバも軍議に参加していた。
「クレイブ公国の旗がありません。私兵のようです」
「ああ。じゃあ、あれだ。シークスだ。あのお爺ちゃん、病気で寝たきりじゃなかったっけ?
まあ、いいや。ツーバック、蹴散らしなさい。城攻めはいいわ」
「任せてくれよ!エウロバ様!最高のパーティー見せてやるからよ!」
ツーバックは会議をしていたテントから出る。
「んで?そろそろ不快なんだけど、ビルナ」
「わ!わたしは!お兄様から離れません!」
会議中、ずっとマヤノリザとくっついたビルナを睨みつけるエウロバ。
「このサノバビッチ。名目上はだ。お前の兄貴は私の婚約者だし、お前はあの白痴と結婚しに新都に向かってるんだ。そんなのが、部下の前でも兄貴とくっついてるとか、シットの塊だ。マザーファッカー」
「ビルナ、これはエウロバの言うとおりだ。というか、俺は離れる為に軍議に来たのだが、なんでお前付いてくるんだ」
「こ!こんな野蛮な兵士共の真ん中に1人なんて耐えられません!」
「安心しろ、ビッチ。確かに兵士達は女に飢えている。ビルナは身体がエロイし、劣情する兵士もいるだろう。
だが、兵士は規律があるからこそ兵士なんだ。
規律なき兵は単なる盗賊だ。
性欲があろうと、劣情があろうと、規律に基づき、絶対に規律違反などしない。
劣情に負けて陣列中にセッ○スをせがむなんてお前ぐらいだビッチ」
顔が真っ赤になるビルナ
「ツーバックの仕事は早い。私達も準備しよう。帝位まであと少しだ」
エウロバは新都の方角を睨みつけていた。
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マディアクリアは、病気で寝たきりとなっていた皇帝と話していた。
「陛下。お覚悟を決めてください」
「……マディアクリア、どうにかならぬのか」
「陛下の弟様方に、継げる方がいらっしゃいますか?」
「弟の子達ならば可能性はある」
「その為にも、ここは全滅を避けるべきです」
マディアクリアは、皇帝に抵抗しないように呼びかけて来たのだ。
「先帝達に申し訳がたたない。返す返すも、子が産まれなかったことが口惜しい……」
皇帝は悔し涙を流す。
「陛下。アラニアにも隙はありましょう。ここは血族を残されることを優先されてください」
「私はともかく、龍姫は先帝達に恩もあろう。最後まで我等を守ってくれぬか?」
皇帝の言葉に、マディアは顔を歪める。
そして
「御一族の保護は必ずいたします」
そう言って、マディアは離れた。
「ふぇるー」
『聞いてたわ。お疲れ様』
フェルラインと遠距離会話
「皇帝一族が龍姫様にした恩ってなーにー?」
『知らないわよ。そんな気持ちだから扱いが適当だったんでしょうね』
「だよねー。で、エウロバはもう着きそう?」
『シークスが最後に意地を見せているわ。マヤノリザのように、待ちに入るには老いがね。自分には時間がないと自覚しているのでしょう』
「しかし、まあ本当に簡単に帝国って瓦解するんだねー」
『もう、限界だったのよ。誰の目から見てもね。内々に龍姫様への支援の願いは来ていたのよ。皇帝一族を滅ぼしたら味方になってもらえないかと』
「野心こわいなぁ」
『へたれどもよ。実際に兵を起こしたのはエウロバ一人だもの』
「まあいいや。じゃあ皇族のみんなを拘束しちゃうよー」
『ええ。お願いね』
「さあ!クーデター開始だぁ!」
マディアクリアは元気いっぱい腕をふりながら、歩き始めた。
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オーディルビス王国の王宮。
タチアナは、臣下との決裁や相談を除いてあまり王座には座らず、執務室で治世の判断を行っていた。
これはオーディルビスの初代と二代も同様のやり方だったので、臣下たちの不満はなかった。
そうタチアナは、初代、二代の治世方法に戻したのだ。
執務室では、大勢の美しい少女達が、タチアナの周りにいた。
少女たちが持っている皿にあるブライグという魚に香草を巻いた焼き魚を端から食べるタチアナ。
「へー。ミルティアが聖女様かぁー。意外だったなぁ」
大陸からの報告を聞くタチアナ。
「ルピアからの遠距離会話で報告来たって?じゃあ意識もミルティアだろうね。聖女様のお力を得たミルティアかぁ」
タチアナは、聖女の儀式の結果起こりうることを正確には把握していなかったが、ミルティアの意識で、聖女の能力という厄介さに気づいていた。
「どうしよっかなー。いい機会だと思うんだよなぁ」
部屋の端。
少女たちに囲まれた裸の男に近づく。
タチアナは鎖につながれ、少女たちの玩具にされていた、従兄弟であり、クーデターに失敗してから、タチアナの性奴隷とされていたバディレスの元に行く。
「バディレス、気分はどうだい?」
「こ、ころせ、こんな、くつじょく……」
「死にたきゃ勝手に死ねばいいじゃない。死ねないくせに。結局セッ〇ス大好きなんでしょ?大丈夫、私もそうだし」
少女たちがケラケラ笑う。
「それはともかく、南群諸島攻めるから」
「な!?なんだと!?」
「あんたの戦略は悪くなかったんだよ。聖女様は代替わりした。現聖女様は、祝福をそんなに使うタイプとは思えない。でもオーディルビスは祝福なしの単独では無理なんだよね。人が耕せる土地ないし」
「俺の、戦略は間違っていなかったのか……」
バディレスは救われたように微笑む。
「戦略はね。他が間違えたんだけど。
まあ、と、言うことで我がオーディルビス王国は、念願である大陸以外の進出を行う。
南群諸島にはまともな軍事もない。帝国からも、聖女様の大陸からも遠すぎる。
ちゃっちゃと終わらせよう。その前に性処理でもしながらね。
ああ、バディレス。あんたは生涯性奴隷だから安心してね。
よかったね、こんな美少女たちに囲まれるなんてハーレムだ。
男の味も知りたくなったころかな?。ちゃんと用意してあるから」
顔が青ざめるバディレス
「みんなー。女装したバディレスが、屈強な男の人達に犯されるの見たくなーい?」
「はーい♪見たいです!」
「面白そう!」
少女たちはケラケラ笑う。
「ま!待て!?そんな」
「ねえ、バディレス」
微笑んだままタチアナが言った。
「民の為に命を投げうったお兄様達への侮辱、こんなもので消えると思うなよ」
バディレスの顔が凍る。
「お前はお兄様たちを否定した、それが最大の失敗だ。病状のお兄様を支えればよかったんだ。
実際の政務はお前がとれたんだから。それをせずにお兄様を否定したお前を生涯許さない。お前は性奴隷として、誇りをなくし生き続けるんだ。わかったか」
そういってタチアナはバディレスの頬に口づけすると
「じゃあみんな、女装させてあげてね」
『はーい』
少女たちの歓声と、バディレスの悲鳴を聞きながらタチアナは
「さあ!王様としてやることやりましょう!」
時代は変わった。大きく動き始めていた。




