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第37食目:ティルマモメ食べ放題

ハリアの魂は砕け散った。

その自我は乗っ取った。

記憶はハリアのものも残っているが、聖女としての記憶も引き継がれているようだ。


「なるほど、こうやって乗り換えればいいのね」

「ハリア!今の光は……え?お前、ハリア……か?」


村長の息子オーダが怯えている。

外面はそのままでも、内面の変化は気付かれるのだろう。


「オーダ、私は聖女様のお力を得た」

「……な、なに?」

そして私は能力の確認も含め、両手を広げた。


「祝福を!!!」

供えられていた枯れかけた花は蘇り、目の前の大地から芽が生えはじめる。


「な!?なんだ!?まさか!?」


「馬車を用意しなさい!聖都に向かう!!!」



私は聖都に乗り込み、祝福の能力を見せつけ、聖女しか知らないはずの知識を披露し、重臣たちを納得させた。


そして真っ先にやったことが後宮の連中の処分。


全てを残虐に殺した。


これは危ない綱渡りだったのだ。

転生はたまたま上手くいっただけに過ぎない。

それに対する怒り。


重臣たちは混乱を収める意味もあって、そのままにした。


これがいけなかった。


身体が新しくなった私は、頭の働きもまた変わった。

以前の身体よりも活発に物事を考えることができた。

そのため、新しいことを始める。


すると、重臣たちに不信感が生まれた。


「この少女は本当に聖女様なのか?」と


時代の変化についていけない石頭ども。

結果、重臣たちは私を幽閉した。


クーデターだ。

幸い、代替わりした私を信じている臣下が多く、混乱はすぐ収まった。


このあたりで私は決意したのだ。

「転生とは時代を変えること、そのたびに、後宮も臣下も入れ替える」と

=======================



「聖女様は最初の転生の時に気付きました。転生とは身体の入れ替え。これにより思考の変革がもたらされる」

私は、ルピアとおばあちゃんに語りかける。


「その変革に前の臣下たちはついていけない。だから転生のたびに処分をした。その伝統が終わったのは4代前です。おばあちゃんがご存知のメルーシャの処分」


おばあちゃんの目が見開かれる。

「聖龍大戦はあれがきっかけだった。メルーシャを残していればあんなことになっていない。

そしてなによりも恐怖だったのが、おばあちゃん。ジュブグランの処分。

本来はジュブグランも処分対象だった。おばあちゃんも旧世代でしたからね。

でも、暗殺部隊はジュブグランを除くと頼りないし、ジュブグランはあまりにも優秀。気まぐれで残しました。

この気まぐれが無かったら、死んでいた。

ジュブグランがいたから聖龍大戦も乗り切れた。この恐怖が三代の停滞を招いた」


私はおばあちゃんを見て言った。

「聖女の治世は実は4代前まではそこまでではない。確かに嗜好品しこうひんは帝国優勢、料理の技術も帝国の方が優れていた。

でもここまで治世が緩み、混乱が起き、怠惰が支配したのは、この3代です。

聖女は変革を恐れ、安寧を求めた。その結果が現状。

でも聖女もそれは限界だと気付いた。だから私を選んだ」


二人は黙って聞いている。

「おばあちゃん、聖女様は、龍姫に騙されていたんです。いや、騙す意図があったかどうかもわかりませんが、でも意図的に伏せてはいた」


「なにをだ。カリスナダが騙していたのか?」

「一つは二重思考。龍族は二重思考が可能です。だから、自我を守っている間に魂を狙い撃つという戦略は初めから破たんしていた。でも聖女は、攻撃中にそれに気づき、ルピアに襲い掛かって、私の動揺を引き出した」

「あの衝撃はそれだったの?」

ルピアの問いに頷く。



「もう一つ龍族の魂について。自我が破壊出来ないのは事前に知っていた。なぜ知っていたか。それはソレイユに精神攻撃を行ったことがあるからです。

大陸で暴れたソレイユに制裁として、自我破壊の精神攻撃を行った。ところが、ソレイユはそれに抵抗した。それで龍族に対する自我破壊は不可能だと知りえた。

では、なぜ魂は可能だと思ったのか。それが龍姫が意図的に伏せた点」


そこまで話して

「それはともかく、おなかが空いたので、なにか食べたいのですが」


「!?え!?このタイミングで!?」

「……そうだ。このドタバタで忘れてた。カリスナダは帰ったぞ」

「むう。悲しいです。また料理人として招きたいですね」


「とりあえず果物でいいか?宮殿には果物はたくさんあるからな」

「はいです」

おばあちゃんは果物を取りに行ってくれる。


「とりあえず、ミルでいいのね」

「そうですね。でも違和感はあると思いますよ?記憶の流入はどうしても性格に影響を与えます」


「そうね、なんというか……」

ルピアはなにかを躊躇ためらうが

「冷酷とか、ですかね」

「……そうね、ここまで、ドライじゃなかった気がするわ」


「そうですね。そのあたりも話します。私は正直怒ってますから」

「怒る?なにに?」


「ミル、果物持ってきたよ」

「はい!まずは食べましょう!」

おばあちゃんが持ってきたティルマモメ(苺みたいなもの)をパクパク食べる。


「それで、話の続きを」

ルピアがせかすので


「龍姫はカリスナダをこちらに送り込んだ。特に制限は与えなかった。カリスナダが知っていて、聖女に知られて困ることはない。と送り込んだ。カリスナダもそう答えている。問題は、カリスナダが誤解していることをそのままにしていたこと」


「誤解?なにを?」

「龍族は魂が無防備であるということ。闘争本能が強く、欲望が激しい龍族は魂が無防備。そう認識していたし、現に龍族の中では理知的なカリスナダの魂ですら無防備だった。これならば破壊できる。そう聖女は判断した」


「そう。カリスナダは龍族の変わり者だった。その変わり者の意味を勘違いしていた。

龍姫は、本人も、聖女にも伝えなかった。フェルラインにも口止めしていたのでしょう。

彼女は、その魂の無防備さが故に変わり者だったのです。

龍族は、本来は魂がもっとも強い」


ティルマモメの最後の一粒を食べる。


「ドラゴンハーフの私もです。魂を攻撃した聖女は私の魂にふれ消滅しました。私の魂の破壊など不可能ですよ。だって」



「美味しいものを食べることが私の存在理由ですから」

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― 新着の感想 ―
[一言] 勝ち残ったか……… 騙したというより、んなこと考えてたんかい!って龍姫は言いそうw ところで、天変地異に勝てるけど、それ以外はほぼノーリスクノーコストの蕎麦屋に負けてませんかね?意地の悪い…
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