第3食目:コウホークのステーキ
転移したところから少し歩いていくと、高級そうなお店につく。
「ここだ。もういるかな?っと」
おばあちゃんがお店に入ると
「ようこそいらっしゃいました。ジュブグラン様」
お店の人が出迎えてくれる。
「カリスは?」
「はい。カリスナダ様はもうお待ちになられています」
「そう。さあ、どうぞ」
中に招かれた。
「すごい!綺麗な絵!」
そう。メニュー表には絵が書いてあるのだ。どれも美味しそう。
「好きなのを頼むといい」
「はい!ええっと、お肉、お肉が」
「じゃあこれがお勧めだ。コウホークのステーキ。これは、解体してすぐ調理しないと食べられないんだ。都でも食べられるお店は貴重だぞ」
「じゃあそれにします!」
「……あ、あの、ジュブグラン様、そちらの方は……」
「ああ、ルピアでも知らんか。こいつはカリスナダだ。名前は聞いたことあるだろう?」
「……カリスナダ……?え?あのカリスナダ様ですか?先代の聖女様の重鎮だった?」
なにが?と思って見たが、カリスナダと呼ばれた女性は20代にしか見えない。
「そうだ。今代ではあまり表に出ないようにしているが、まだこちらで働いてもらっている」
「ま、待ってください。カリスナダ様はジュブグラン様と同じぐらいの時期に活躍された方では」
「そうね。こっちではね」
カリスナダさんは笑う。
「こいつは人間じゃない」
おばあちゃんがカリスナダさんを指差す。
「不老で、実質不死の龍族。聖女様の不倶戴天の敵、龍姫率いるアルネシア公国に仕える龍族だ」
「お待たせしました」
ステーキが来る。
「わあ!美味しそうです!凄い!いい匂い!早速頂きます!」
「ま、待ってください!ジュブグラン様!カリスナダ様が龍族!?なんで聖女様の敵である龍族が!?」
熱々のステーキのお肉。
それをナイフで切ってそのまま口に運ぶ。
「うまっ!?なにこれ!?めっちゃ旨いし!!!」
口の中でお肉が溶ける!
お肉に振られたお塩と、果実の実が良いスパイスになってる!
「カリスナダは龍族の変わり者でな」
「この果実なんですか!?お肉と合わせたらこんなに美味しくなるなんて!?」
果実の甘酸っぱさがお肉の美味しさを引き立ててくれる。
「変わり者?龍姫を裏切って、聖女様に付いたのですか?」
「裏切ってないよ。私の移籍は龍姫様の御許可を得て行われた。いまでも私が仕えているのは龍姫様」
「だったら、そんな方が、なぜ聖女様の重鎮に」
「お待たせしました。クルムのスープです」
「お姉さん!この果実はなんですか!?ステーキと合いすぎて、天国の味がします!」
「ふふふ、それはアラマガスという果実。お肉に合うでしょう?」
「最高です!!!」
「……ミル、あのね、今物凄い大事な話をしているんだけど……」
ルピアが凄い目でこっちを見ている。
「ふふふ、旨い食事より大事なものなんてないさ。とりあえず食べよう。それから話をしよう」
クルムのスープも最高すぎました。
ステーキの重厚感を、爽やかにしてくれる後味。
わたし、生きてて良かった。
「それで、あの……話の続きを」
「簡単な話だよ。カリスナダはな、向こうでミスをしたんだ。それも龍族の沽券に関わる重大なミスを。それで、龍族のリーダーが激怒した」
「龍族のリーダー?龍姫ですか?」
「違う。龍姫は別物だ。奴はオリジナル・ドラゴン。まあその説明はいい。龍族のリーダーはな、フェルラインという化け物だ。私も何度も対峙したが、まあヤバい奴だな」
「……まあ、色々あってね。フェルラインさんとも話して、しばらくこっちにいた方が良いだろうってことになったんだけど」
「……しばらくって、何年ぐらい、いらっしゃるんですか?」
「40年ぐらいかな?」
「よ、40年!?」
何歳だ。スゴいなぁ。
「やっぱり、こっちのご飯が美味しいから、聖女様のところにいるのですか?」
「……ミル、あなた、なにを聞いてたの?」
呆れたようにルピアが見る。
「……ご飯かぁ。わたしもご飯が好きでね。向こうとこっちだと食材が違うから。どっちも好きだよ」
「向こうの美味しいご飯ってなんですか!?」
「魚料理は向こうの方が美味しいよ。お肉好きだったら、こっちがいいんじゃないかな?この大陸の料理はシンプルな料理が多いからね。お肉はシンプルな料理が一番だよ」
「ほうほう。その美味しいお魚料理も食べてみたいです」
「この大陸って、豆とか生で食べたりするじゃん。あれとか有り得ないんだよね。なんか料理の手間惜しんでるというか。豆はさ、肉や魚と、果実と煮込むと物凄い美味しくなるのにね」
「分かります!凄い分かります!めっちゃ話合いますね!」
「ジュブグラン様、あの二人はともかく。その、龍族のカリスナダさんが、事情があってこちらにいるのは分かりましたか」
「ここに連れて来た理由だな。まずカリスナダは信頼出来る人物だ。安心するといい。その上で、カリスナダは学園に臨時教師として入る」
「え!?」
「もうすぐ、聖女様の後継の儀式が行われる。半年かけて行う予定だ」
「そ!?そんなの!聞いたことがない!」
「国内ゲリラも落ち着いた。敵対している帝国も、現在は後継者争いと、公国間の争いで手一杯。現在は聖女様を狙う勢力は殆どない。落ち着いて後継の儀式ができる。今回はもうある程度は先に発表することにした。混乱が無いようにな」
「……は、発表とは?」
「今回はこの学園生80名から選ばれる。カリスナダは臨時教師兼任の護衛だ」
コウホーク:牛みたいなもの
クルム:トマトみたいなもの