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第XXXX話:大人はみんな嘘つき

「記憶とはなんなのか。自我、とはなんなのか。魂とはなんなのか」

聖女は、一人宮殿で喋っていた。


「思想とはなんなのか。祝福とはなんなのか。私とはなんなのか」


「答えは全て一つ。聖女は私だと言うこと。いくわよ、ミルティア。私の人生最大の賭け。あなたの魂だけを食い破り、他の全てを手に入れる」


そして、大きく手を広げ絶叫した。


「神官達につぐ!!!時は来た!!!今こそ祈りの時!!!!!!」

=====================



「今日ですか」

「カリスナダの報告を総合すると間違いない。聖女は昨日祝福の力を使っていない。既に儀式の準備をしている」

聖女の大陸からもどったばかりのフェルラインと、龍姫は話し合っていた。


「ミルティアの自我は残るのでしょうか?」

「フェルライン、私の予想は少し違う。

今回の聖女は賭が多い。私に借りを作ってでも龍族を動かした。

ルピアの為に一つの国の王族を皆殺しにした。

やり過ぎよ。よほどの事をしようとしているとしか思えない」


「では、龍姫様のお考えは……」

「いい、フェルライン。私たちは聖女の豚の儀式の知識は正確ではない。ただ、予想では、今までの転生体は忠誠心の高い娘を選んでいる。要は乗っ取りやすい人間ね。しかし、今回はミルティアという自我が強い人間を選んだ」


「はい。新しい時代の為に、ミルティアに引き継がせようと……」


「有り得ないわよ。フェルライン。豚はそんないいやつじゃない。

私だってそう。時代が変わるから犠牲になれ、と言われたら、そいつの事蹴るわ。

そんな話じゃない。聖女の豚のやろうとしていることは、多分違う」


「では、乗っ取りですか?」

「……なんとも言えない。フェルライン、私の話を元に予想はできない?」

フェルラインは考え込む。


「ミルティアは、とても知能が高い人間です。運動能力も高い。また判断力もいいです。人族の中では飛び抜けて優秀です。まるで龍族……」


突然、龍姫が叫んだ

「ま!待って!?ミルティアの両親は!?本当に人族なの!?」

その言葉にフェルラインは青ざめる。


「おかしすぎるのよ!よく考えたら!なんでそこまで徹底して無視をする?つまり、本当の貴族の子じゃないんじゃないの!?」


「し、しかし!子を産んだ龍族の女性の子の行く末は全員把握しています!龍族の男性は、いません……あ、あああああ!!!!!ハイリンケル!!!ハイリンケル!!!」

フェルラインは絶叫する。

龍姫が龍族にした男性の唯一の生き残り。


「すぐ調べなさい!!!ドラゴンハーフというなら可能性がある!豚は!ドラゴンハーフを乗っ取ろうとしているんだ!そうだ!ドラゴンハーフならば最大の賭けになる!」


「でもですよ!姫様!ハイリンケルは姫様へのねじれがあります!相手は必ず姫様に似た相手。ミルティアは全然似て……」


「……み、ミラーだ」

呆然とした顔をする龍姫。

「あの娘、ミラーに似ているんだ」

=====================



ヒルハレイズ、ジュブグランの二人は、宮殿の部屋にいた。

「儀式は始まる」

「ミルティアか、姫様か」

ヒルハレイズは申し訳なさそうに、ジュブグランに言う。


「ジュブ、ここに至り、ようやく伝えられるわ。聖女様と、私から伝えた内容がある。それはミルティアに伏せるようにとした内容」

「ああ。転生の時期と、転生の内容だろう」


「あれはデタラメよ」


「……は?」

「ミルティアは嘘を見抜く。ジュブグランには隠し通すことは不可能。なので、間違った情報を伝えていたの」


「ま、まて。転生の内容がデタラメ?バカな、過去の転生から言っても」

「違うの、ジュブ。今回の転生がデタラメなの。今回やるのは今までの転生じゃない」

「……なにを、やるんだ?」


「ミルティアはドラゴンハーフ」

目を見開くジュブグラン。


「3つのときに、私は彼女を見つけた。信じられる?あの娘は、20日間、飲まず食わずで生きていたのよ。最初は単なるバカ貴族の育児放棄かと思っていたけど、あの生存で驚いた。そして、私の手の者を召使いに入れてミルティアを保護させ監視した。そして聖女様が気付いた。こいつは人間じゃないと」


「宰相にしようとしたんじゃないのか」

「無論そう。だから、その召使いに色々教えるようにした。10になったらこっちに呼んで本格的に鍛えようと。しかし、聖女様は決断された。ミルティアを、次の身体にすると」


「その話は聞いた通りか」

「そう。スティアナの死で決断された。でも、その前から検討はされていたよう」


「ドラゴンハーフが転生体だと、なにが違う」

「まず、乗っ取りが不可能。自我は必ず残る。だから、ミルティアの自我が残るか否かは焦点じゃない。逆なの」


「なに!?」

「聖女様の魂が、転生体のミルティアに移植出来るかどうか。

それが本当の焦点。散々カリスナダに美味しい料理を作らせて、仲の良いルピアという友人を作らせ、おばあちゃんと慕われるようなジュブグランを派遣した理由。

それはミルティアの自我を残すことが目的じゃない。

聖女様はドラゴンハーフのミルティアを、ミルティアの頭脳と能力のまま支配する。

魂と、自我、記憶の違い。いい?ジュブ。ミルティアは全力で自我を守ろうとする。自我ってなに?」


「自我?自分が、自分であろうとすることか」

「ええ。そうね。魂は?」

「たましい……?すまん、難しい話は苦手だ」


「転生をしようがミルティアはミルティア。記憶と能力は流れ込むけれども、今までのような乗っ取りが出来ない。ではどうする?そう、乗っ取らなくても思いのままに動かせるようになればいい」


「……?それが魂?」

「難しい話よ。要はこう考えて。ミルティアが守ろうとしている物は、実は聖女様は狙ってない。不可能だから。それに集中している間に、魂を打ち抜き支配する」


「魂を打ち抜かれたミルティアとはなんだ。自我は残らないのか?」

「自我とはなにか、魂とはなにか、記憶とはなにか」

歌うように語るヒルハレイズ。


「いい、ジュブグラン。自我とはね。周囲との関係からもたらせた自分という存在思考の事よ。自我を守るというのは、今までの記憶、関わりを守るということ。つまり、ルピアやあなた、カリスナダ。美味しい食べ物を、楽しい人達と食べるともっと美味しい。それらの記憶、関わりを残そうとする。それが自我の守り方」


「では、魂とは?」

「魂とは精神の根元」

「……すまん。意味が分からん」

「ど真ん中に魂がある。それを覆うように自我がある。さらにそれを覆う記憶がある。記憶、つまり経験により自我は生まれ、自我により魂は成長する。魂こそが根元。ミルティアの魂を破壊し、自我ごと取り込もうとしている」


「……これ、私に話されても全く理解出来んぞ。隠す必要なかったのではないか?全然意味が分からないしな。今でも」


「ミルティアに魂の存在を知られてはいけないの。それだけ。

自我を守ろうとすればね。ルピア達の関わりあいを守ろうとするわ。

でも違うのよ。狙うのはそこじゃないの。

ミルティアという存在そのもの。

今までの転生では自我ごと乗っ取れたから問題にならなかった。

転生体は聖女様にすべてを明け渡していたからね。でも今回は違う。

ミルティアの自我は、ドラゴンハーフがゆえに破壊できない」


「ミルティアの魂とはなんだ?」


「美味しいものを食べたい」


「……はい?」

なにを言ってるんだ?お前?という顔でヒルハレイズを見るジュブグラン。


「魂とは欲求の事よ。人は欲求が根元なの。

あれしたい、これしたい。とかね。

そして、ミルティアは生まれた環境からか、この欲求、食欲が強烈だった。

このままでは魂も奪えない。

だから、家族と友達を知らないミルティアに、おばあちゃんのジュブグラン、お母さんのカリスナダ、友達のルピアを用意した。

今のミルティアなら、この家族と友達を守ろうとするわ。食べ物よりもね」


祈りの声が宮殿に響き始める。


「さあ、賽は投げられた」

ヒルハレイズと聖女が説明している「魂」とは「イド(エス)」の事です。本能欲求ですね。

とは言え、魔法だ、転生だ、が跋扈する世界なので、結構適当に考えてください。

要は聖女は自意識支配が不可能なので、欲求(本能)を支配して、思うがままに身体を操ろうとしている。と言うことです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ぎゃー!最初の方で冗談で言ったことがー! もう一人ドラゴンハーフ作れちゃうのいたね!? あー心理詳しくないけど、言うなれば守りたい部分の欲求をずらす事で、芯は奪ってやろうと。 大事な記憶を…
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