表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/47

第24食目:豆と香草のスープ

学園内は凄いことになっていた。

狙っていた後宮の主はルピアが就任した。

取り巻き達の混乱は凄まじい。


そして、教師からの優遇を見ても、候補は三人に絞られた。


他の娘には希望はない。

妾決定。

そこらへんの混乱と


「三人のうち、だれ?」

という予想が収まらない。


「この状況で予想なんてしたって仕方ないんだよ。私達は淡々と過ごす。それだけ」

ビネハリスさんは三人の中で唯一達観している。

自分は有り得ないと知っているからだろうなぁ。


「……そう。素晴らしいわ、ビネハリス。私も混乱してしまった。予想なんておこがましい。私たちに出来るのは、その1日を充実して過ごすだけです」


混乱して、そわそわしているマイセクローラさんも頷く。


一方で一番落ち着きが無いのがヤファさん。

頭をかきむしっている


「こ、これが5ヶ月も続くの……耐えられないわよ、こんなの」

頭の中で可能性がせめぎ合っているんだろうなぁ。


年齢の問題、ルピアとの関係。

不利材料は多い。

だが、それにも関わらず最終候補に残っている。


このあたりで混乱が収まらないらしい。

教室の騒がしさはいつまで経っても終わらなかった。


「ミルティアは、帝国に研修にいくことになりました。明日からしばらくいなくなります」

先生がみんなの前で言う。


「研修ですか?」

ヤファさんが不思議そうに言うと


「私たちはなにかを語ることを許されません。しかし、後宮の主は外交官も兼ねます。その手伝いをする娘も必要でしょう」

その言葉にみんな頷く。


「ミルティア一人ですか?」

ビネハリスさんが聞くが

「ええ。ミルティア一人です」

その言葉にビネハリスさんはうつむいていた。



お昼。

ルピアと、カリスナダさんとお昼ご飯。

目の前には

「スープ!」

「やっぱり私は、豆は煮るのが一番美味しいと思うんだ」

「同感です!」


「……私達だけ、こういうのというのも」

ルピアは申し訳なさそうにする。

「有力候補三人もこれ出してるから」

「ミルティアが疑われないためとは言え……」

「……ルピア、スティアナの亡霊を忘れたのかい?それには必要なんだよ。分かるね」


ルピアの顔が固くなる。


「まあ、難しい話はともかくとして、取りあえず美味しいスープを頂きましょうよ」

「……うん。それはミルが正しいわ。悩んでも仕方ないものね」


スープには、見慣れないものが浮いている。

「なんですか?これ?」

香草こうそう。イビラの葉でね。豆と一緒に煮ると、香りが付くのよ」

「いい匂いがします」ルピアも嬉しそう。

「いただきま~す!」


お豆さんを食べると

「ホクホクです!味も美味しい!」

「本当に。凄い爽やかな匂い……」


三人で笑いながら食べる。

いつまでもこうやっていたい。

カリスナダさんの美味しいご飯を、ルピアと二人で楽しくしゃべりながら食べる。


こんな毎日がずっと続けばいい。


でもそうはいかない。


私は聖女様の転生体として戦うし、ルピアは後宮の主。

そして、カリスナダさんは、本質的には敵。


今しか味わえない幸せ。


せめて、この幸せを味わいつくそう。



帰り、ビネハリスさんに捕まった。

「マイセクローラさんとは思えなくなってきた」

突然、私に話しかける。


「ビネハリスさん、貴女には相談すべき人が他にいるはずです」

「いないわ。ゴマスリしてくるのはいるけどね」

少し嫌悪けんおの表情を浮かべる。


「それにしても、一番日の浅い私に言っても……」

「勘違いだったらごめん。貴女の知能は異常よ。しかも帝国に派遣?元々妾の役割ではなくて、宰相かなにかの候補じゃないの?」


おお、そうなんですよ。元々はそうだったらしいですよ。


「少なくとも、私はそうは聞いていません」

「……まあ、本人に伝えてない事はあるか。

でもね、後宮の主の候補にべったりくっつけて、後宮の主として正式に任命されても、まだ一緒なんて有り得ないのよ。

そんなの、後宮に入ってから依怙贔屓えこひいきとかあったらどうするの?

だからね、あなたが後宮に入るとは思えない。

そして、その時折見せる理解力。

総合するれば……」


「仮定の話として、実際そうだとして、最初の質問のマイセクローラさんの話に繋がるのですか?」

「貴女の目から見て、誰が相応しい?」


ビネハリスさんをじっと見て


「タチアナ、ルピア、ビネハリス。私が会った中ではこの3人しか相応しい人に会ってません」


「ヤファと、マイセクローラさんは……」

「貴女と同じ感想です。相応しくないかと」


震えるビネハリスさん。


「わ、わたしは」

「あなたの自己評価の低さは異常です。ルピアとタチアナが外れた今、冷静に見れば、貴女は本命ですよ。なにを怯えているのですか?」


「私は、有り得ない」


「何故か?は聞きません。もしそれが事実ならば、他に候補なんていないんじゃないでしょうか?」


「スティアナ、だったの?」

「私は会ってませんから、分かりません」


ビネハリスさんは震えている。


「わたしは、ありえない」

震える身体を支える。

「……わたしは、まちがえたの……?」


ビネハリスさんは崩れ落ちるように座り込んだ。



その日の夜。

お出かけの準備をしていた。

「服は帝国でも買おうな。あそこは凄いぞ」

おばあちゃんがにこにこしている。

「はいです!楽しみです!」


服を詰めてっと。

「前渡した金貨はまだ残っているか?これは国からだ」

ずっしりとした袋。


「わあ!ありがとうございます!」

「遠慮なく使いなさい」

「はい!そうします!」

美味しいもの食べ放題!

帝国かぁ。


「そう言えば、結局アルネシア公国に行くのですか?」

「ああ、まずはそこだ。アラニアにも行く。そして、新都にもな」

「わあ、新都って、帝国の首都ですよね?」

「神教の本拠地でもある。そこで会わないといけないのがいるんだ」


「……神教関係者です?」

「そうだ。龍姫から連絡があってな。次期神皇を決めたそうだ。そいつに挨拶に行く」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] わーお。面通しの機会であったか。 まぁ3人は不安よな。別に動かんけどw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ