第17食目:プルムの炒めもの(肉入り)
最初の部分は三人称です
「ルピア、ミルティアの病に気付いているか?」
「やまい?」
ミルティアはカリスナダの料理に夢中になっている。
別の部屋でジュブグランとルピアが話をしていた。
「食べ物至上主義という病ですか?」
「うん、まあそうなんだが」
ジュブグランは憂鬱そうに言うと
「彼女は親の愛を知らない。召使い達も同情していただけだ。彼女は徹底して愛された事が無いんだよ」
「……両親から放置されていたとは聞いていますが」
「あの食べ物への執着はな、愛の代価なんだよ。愛を知らない彼女が縋ったのは、食べ物。逆を言えば、あの娘には食べ物しか縋るものが無いんだ」
「ジュブグラン様、ミルが、愛に飢えている、と言うことですか」
「あいつの話聞いて驚かなかったか?私は親を殺してもなんとも思わないと断言したんだ」
「!!!聞いてらしたんですか!?」
「済まないね。本当に申し訳ないが、ミルティアとルピアの会話の殆どは聞かせてもらっている」
ジュブグランは申し訳無さそうにするが
「あのミルティアの予想は間違っている。実際はな、エウロバは父親を殺せなかったんだ。殺すのが最適だと思っていても殺せなかった。父親の愛を信じていたんだ。だから愛する父を殺せなかった。人はそんなに割り切れんよ。ミルティアが異常なんだ。あの娘は、心の底から両親なんてどうでもいいと思っている。いや、他人もだ」
「……ミルは、のんびりしていて、でも手が焼けるけど、楽しい娘だと……」
「その側面は否定しない。もちろん、のんびりしていて、楽しい娘だ。だが、猜疑心は強い。私のことも、カリスナダのことも信用しておらんよ。ルピア、あの娘の心を溶かすのはな、お前しかいない」
「心を、溶かす」
「そうだ。あの娘に愛を与えられるのは、ルピア、お前だけだ」
「ジュブグラン様も、おばあちゃんと慕われています」
「もちろん、慕われている事は否定しない。だが、疑っているし、残念ながら、私はミルティアに明かせない秘密がある。ミルティアの疑いは正しいんだよ。だから、私では無理なんだ。すべてを明かして、ミルティアを受け入れられるのは、ルピアしかいない」
「わたしが、出来ますでしょうか?」
「出来るさ。ルピア。友達として、愛を注いでやってくれ。ミルティアを救えるのは、ルピア、あんただけだ。そして、ルピア、あんたも救わないといけない」
「わ、わたしですか」
「龍姫と話がついた。あんたの病を先に癒やしてやる」
「わたしの病って……」
「お前に取り付いている、スティアナと、お前の母の亡霊退治だ」
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「ルピアー!ごはんだよー!」
おばあちゃんと部屋で話をしているルピアを呼ぶ。
部屋から出てくるとルピアの顔が青い。
「ルピア、やっぱり昨日の晩御飯の生の穀物は身体に悪いのですよ。顔が青いのです」
「うん、それ関係ないから」
ルピアがいつもの表情に戻る。
「今日は穀物をミルクに浸したもの……わたしは」
「え?わたしは?」
「うん。これはね。豆をミルクのようにしたものなんだ」カリスナダさんが答える
「は!?これ豆なんですか?」
そうなのだ。豆を素手ですり潰して液体を集めてミルクみたいにしていたのだ。
カリスナダさんの握力やばい。
「ミルクも抵抗あるんだろう?ルピアは。これは豆だから安心して飲んで」
「カリスナダさん……毎回本当に感謝します」
ルピアは嬉しそうに豆ミルクを飲んでいた。
学園の勉強だが、すごい問題カリキュラムがぶち込まれた。
『性技』
「待ってください!これは年齢制限は!?」
生徒から一斉に質問
「ありません。全員に受けて頂きます」
「聖女様の転生体も含まれるということですか?」
「確実に巻き込まれます。絶対にこの中からしか選ばれないので」
「それで良いんですか!?」
「聖女様でも問題がない内容ですので」
タッグを組めと言われたので
「ルピアー!」
「ええ。安心して。組みましょう」
良かった。ルピアなら安心。
なにさせられるんだろう?
とドキドキしていると
「まず指を相手の膝に乗せます」
ドキドキ
「ゆっくりと、触れるか、触れないかのギリギリのところで動かしてください」
ん?
言われたとおり、動かすが
「ちょっ!ミル!くすぐったい!」
ルピアが笑う。
ルピアだけじゃない。他の女子もそうだ。
「はい、代わってください」
???もう?
今度はルピアが私にやるが
「くすぐったい!くすぐったいです!るぴあ!」
「でしょ?これくすぐったいよ」
またクラスで笑い声。
「はい、では次に腕を……」
待って、これ性技なの?
「なるほど。大胆な事は出来ないけれども、心構えはしなさいと言うことですね、先生」
気品よくヤファさんか微笑む。
なるほど。みんなにそういうことやるんだよ。と教えているのか。
でも、聖女様の転生体も混ざっているから大胆な事はできませんよ。と
「否定はしません。カリキュラムは続きますよ」
結局、くすぐったいのが延々と続いていた。
夜ご飯。
今日はカリスナダさんの手作り料理。
「いつも二種類作らせてごめんなさいです」
「良いんだよ。私は料理すきだからね。それに見ての通り、同時に作るから」
カリスナダさんは両手で鉄鍋を振るう。
毎回、見惚れるのだ。
カリスナダさんの料理は美しい。
「カリスナダさんの料理は美しいです。龍族って凄いんですね。皆さん料理好きなんですか?」
すると、カリスナダさんは吹き出す。
「全然!龍族で料理していたのは、私とフェルラインさんと、エールミケアだけだよ!後はみんなご飯は食べる専門」
「へー。なんでです?」
「闘争本能が強いからね。料理よりも闘うほうに思考が寄るんだよ」
「料理だって戦いですよ!」
「そうかもね。料理対決とかしたら盛り上がったかもなぁ。みんな負けず嫌いだし」
なにそれ、楽しそう。
「今度、龍族料理王決定戦とか開いてください。審査員やります」
「ふふふ。楽しそう。フェルラインさんのご飯食べたらビックリするよ」
楽しそうに笑うカリスナダさん。
「不思議です。カリスナダさんは、フェルラインさんに怒られてこっちにいるのでは?でもフェルラインさんの事を楽しそうに話します」
「別に恨んでないし。フェルラインさんだって、私のことを考えてこっちに送ってくれたんだから」
「不思議な関係です」
「そうかな?全てを恨みとかに結びつけるのは正しくないよ。それはそれ。これはこれ。私はミスをした。フェルラインさんは怒った。それで話はお終い」
料理が出来上がった。
今日は
「プルムと穀物の炒めものだよ。ミルにはお肉がたっぷり入ってるからね」
「わーい!」
カリスナダさんから学ぶことは沢山ある。
本質的には敵だ。
でも、こんなに美味しい料理を、私とルピアの為に作ってくれる人を嫌いになれるわけがない。
わたしは
「ルピアー!ごはんだよー!早く来ないとルピアの分まで食べますよー!」
この生活が気にいり始めていた。




