表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/181

危うく死ぬ所だったよ!


 メロンソーダの感知防衛魔法に突入する物体があった。


 それを彼女が認知した瞬間、既に目視できる範囲にはそれが存在していた。


「……――ア?」


 それはメロンソーダの予想を超える速さだった。そして、恐るべき高度――すなわち、雲の上にいるハズの彼女よりも更に上を飛来する棒状のような物体が、白い線の煙を残してエルタニアの王都に向かって飛行していた。



『メロンソーダ様、いかがされましたか?』

「……悪い、フクロウ。残りの空飛ぶ棺桶はお前に任せる」

『畏まりました。御武運を――』



 メロンソーダは揃えた爆散岩に手を加えて、更に秘術として扱われている重力魔法を使用した。そのまま爆散岩を上空へと打ち上げ、飛来する物体に直撃させるように爆発をさせた。


(アレが何かは知らんが、まあ、壊せばいいだろ)


 と、軽くあしらうつもりであった。


 だがそれも、たった一つの弾道ミサイルの破壊力を目の当たりにして驚愕の顔になった。




 滞空していた無数の岩の中に飛来物が衝突した瞬間、眼を焼くほどの光が溢れ、思わず目を覆った。ミサイルから赤々と燃え上がる炎が溢れ出し、さらに叩きつけられるような暴風が一帯を襲い、メロンソーダと周囲すべての雲を吹き飛ばした。彼女は言葉にもならない光景にしばらくの間放心していた。


 ハッとなった時には機雷として扱っていた爆散岩が全て消滅する威力だった。



(なんだ、今のは? 普通の爆発じゃない。黒煙がまったくなかったぞ。魔素ではないな。あぁ、クソ、眼をやられた……)



 それは、メロンソーダにとって未知のエネルギーだった。

 五感の内の痛覚は遮断しているので熱気や衝撃による痛みは体験せずに済んだ。しかし視覚はそのままだったのが仇となった。メロンソーダは今、全てが薄い灰色で着色された世界を目にしていた。


 さらにメロンソーダに追い打ちをかけるように、もう一度同じ物体が飛来してくると感知防壁魔法に反応があった。それも今度は先程と同じ速度のモノだ。




(……うへぇ、それシャレにならんって!)




 メロンソーダには先ほどと同じ規模のミサイルが飛来してくるのがわかっていた。でもそれはわかるだけであって、今度は同じように対処できない状態にあった。



「くっそ、体験幻痛とかしなくていいんだよ! 腐れ脳みそが! 早く治れっての! ダーッ! マザー○ァッカッッ!!」



 メロンソーダが一人、おぼつかない視覚を叱咤するが、二本目のミサイルがメロンソーダの頭上を通り過ぎ去ってしまった。たまらずに激怒するが、それでも目の調子が治る様子がない。

 彼女は数多くの魔法が得意ではあったが、唯一苦手な魔法があった。それは魔法でありながら神の奇跡として扱われる聖属性の魔法である。

 彼女は自分の傷を治す術を持っていなかった。


 この時ほど、メロンソーダは自らが回復魔法を行使できなかった事を怨みはしなかっただろう。



(……状況的に考えてアレがお姫様の精霊が言ってたっつー“大量破壊兵器”か。あんなのが王都に落ちるのかよ。完全に舐めてた。あーあ……面倒臭がらずに自動追撃型の魔法術式、作ればよかった。つーかアタシがなんでこんなに頑張んなきゃなんだよ……。ちぇ、ころぽんの奴が安請け合いなんかすっからだ、バーカ、バーカ)



 メロンソーダはストレスを自分の頭を掻き毟る事で一通りの憂さを晴らすと、腹の空気を全て吐き出す程のため息を誰もいない空でひとしきり堪能すると、すぐに代案を思い付き、水晶玉の中より意識が這い出るイメージをした。徐々に、外へ、外へと意識を吐き出させるように念じると、今度は急激な倦怠感と脱力感がメロンソーダを襲い、いつしか意識は自分の研究室の己の体に戻ってきていた。



「ぐへぇ、また魔力が枯れてる……」



 目を開けると、見えている乱雑とした部屋は灰色に染まっていた。

 意識に刻み込まれた傷は、そう簡単に治ってくれるものではなかった。


「どうでもいい。それよりも――」


 自分の懐よりスノーから頂戴したエメラルド色に輝く魔宝石を取り出して、飴玉のように口に放り込んだ。舌の上でコロコロと転がしつつ、魔力が体に馴染む感覚を覚えると、すかさず重力魔法の引力で箒を呼び寄せた。いざ、部屋を出ようとする前に、最後にもう一度、水晶玉を覗き込んだ。するとそこにはエダン山脈とエルタニア王都との丁度間に設置されていた感知魔法に猛烈な勢いで飛び込んでくる物体を知らせる赤い光が灯り続けていた。



「ええい。もう第二ラインまで来てるか。早いな」



 メロンソーダは今から自分がやろうとしている事に自分でも嫌気を覚えながらも、やるしかないのだと言い聞かせて、箒に乗ると窓から飛び立った。


 できれば王都からもっと離れた所でやるべきかとも考えたが、時間もないし、何より目が見えないのが何よりも辛い。



「はは、もうやってらんねー……。でも、真正面から受けるしかないよなぁ」



 王都の城壁外の空までやって来ると、既にこちらに向かって飛んできているミサイルの存在が見える位置にあった。だが、それをメロンソーダが正確に目にする事はかなわなかった。

 だが、大体の位置さえわかればそれでよかった。



「……コレ、疲れるから本気で嫌なんだけどなぁ」



 嫌々ながらも、時間はもう残されていないのを理由に早速魔法を編み出した。


 指で線を描くと次々と奇怪な、絵とも呼べない曲線で描かれた魔法陣が作られていく。それはまさしく、人界の外の知識であった。



(我が命ずる、従え魔の因子共。回せ、回せ、回せ、引と斥、ここに新たな星を生み落とす。重ねて命ずる。交ぜて、混ぜて、掻き乱せ。万理の法則が乱れる時、秩序の門が現れる。祖は門、碧き門なり、祖となる神の偉大なる力よ、顕現せよ)



 メロンソーダの目の前に小さな……色のない穴が一つ、亜空間に繋がるに周囲を引き寄せる形容しがたい何かを右手のひらの上に創り上げていた。

 その穴を掲げるようにして両手で持ち上げて天にかざした。



「……クソ喰らえ」



 それは、人がまだ見たことも無いような光景であった。


 メロンソーダの発する一声だけで、亜空間はメロンソーダの手の平よりも上の全ての物体を引き寄せ、飲み込んだ。


 大小問わずにそれは飲み込む。

 空を渡る鳥の群や、空高くに位置する雲さえも引き寄せ、ついにはミサイルまでも飲み込む暴食のブラックホールだった。



 ミサイルは自分から飛び込むようにブラックホールに飲み込まれていくと、圧縮されていく空間の中で爆発を起こした。だが、その爆発はまるで何万光年も先で起きたガス爆発のようなモノで、これと言った被害は全くなかった。



 後には、音のなくなった静寂な世界だけがメロンソーダを取り囲んでいた。



「…………。あーあ。疲れた……。もうムリ。絶対に無理」



 口の中に入れた魔宝石はとっくの昔に溶けて無くなっていた。


 空っ欠となった自身の魔力により、メロンソーダは力なく空から自由落下した。

 もう地面と激突しても何も思わないくらいには疲れていた。なにも考えたくないと。


 いっそのこと寝てしまおうとは思ったのだが、不意に、何かが体に宿る感覚に陥った。



『ソーダ! どこで寝てるの!?』



 地面に落ちていく最中に、体が勝手に魔力を空気中から摂取していく。精霊が勝手に瞑想を使っているのだとメロンソーダは感じた。


 とにかく何も考えていない内に、彼女は最低、飛行するのに必要な魔力だけを吸収し、地面に激突する前には落下速度は激減し、地面に優しく降ろされた形となっていた。


『まさかついに、ソーダが空で居眠りするようになるなんて……。ゴメンね、貴女を働かせ過ぎてたみたい。私が悪かったわ』


 ちなみに、ころぽんはこの時、まさかメロンソーダが自分の身を削ってまで王都を守ろうとしていたなんて、まったく知らなかった。ただ、たまたま仕事が半休で「メロンソーダはどうしてるかなぁ?」という気分でパソコンを点けて覗いただけであった。それがまさか絶賛自殺の最中のようなシーンを想像せざるを得ない状況が目に写ったのだから焦るしかなかった。


 メロンソーダは面倒になりながらも、生き残った状況に対して、口から小さく呟いた。


「……またころぽんに助けられた……」

『うん? ソーダ、なにか言った?』

「……別に。面倒くさいからあとよろしく」

『えぇえ? いったい何がしたかったの?』



 妙に心地よい気分に浸りながら、メロンソーダは目を瞑って眠たい風に草原に転がって居眠りに入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ