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ネタはいらないので早く倒してください

 状況は二対二、一人一匹倒せば楽に終わるはずだ。


 ただし、時間を掛けてはいけない。何せ長期戦は敵が成長する。


 残っているホワイトジャガーは両方ともレベル30を超えていた。どちらも元のレベルより上昇していた。運営側の長期戦法対策なのかもしれないが、嫌な設定だ。

 さらに今後、敵の数が増える可能性もある。


「ゼタっちどうする? 前衛後衛で連携する?」

「いや、一対一(サシ)でいこう。練習なしで魔法使うと同士討ちの恐れがある」

「ファンタジーなのに仲間への当たり判定があるとか、面倒だよねー」


 既にその方面の実験は有志がやってくれていた。物理でも魔法でもダメージは受けるらしい。ちなみに回復魔法もあるらしいのだが、魔物にも回復魔法は通用するらしい。つまり乱戦などで間違って敵に回復魔法が当たると敵が回復するのだ。


「ま、レベル7のゼタっちでもダメージ少ないみたいだし、楽勝っしょ」

「ああ、そうだな」


 敵二匹のヘイトがアゲイルに向いているうちに、牙剣に魔力剣を使用する。今度はちゃんと《属性:魔》で付与するつもりだ。しかし、魔力剣は属性を選ぶことができず、再び氷の刃が出来上がってしまった。



「うん? あれ、無理なのか? スノー、ちょっと魔属性を意識して魔力剣をつかってくれないか?」

『はい、解りました』


 再び氷剣に魔力剣を付与する。と禍々しい色の光が氷剣に宿った。


「なんだ、できるじゃないか」



 直後――氷剣は手元の牙ごと、塵の如く風に吹かれて消えていった。




「……なんだ、ダメだったのか」

『無手で戦うつもりですか』

「ちょっとまって! 不可抗力だから! 誤解だから!」

『何故碌に確認しないでそういう事をするんですか?』

「ごもっともッ!」


 そりゃそうだ。試してもいないのにできるのだと勝手に思ってました。本当に申し訳ない。

 もうこの際何でもいい。普通に魔撃でやってしまおう。



 残りMP29か。確か異名持ち(ネームド)撃破にはMP42を使った全力だったか。


 ……威力計算式がわからないので、せめて全力で攻撃したほうがいいだろう。しかし最大の攻撃を外したら戦う手段がなくなってしまう恐れがある。そもそも前回のは、相手に悟られる前に行った狙撃だった。当たって当然だ。


 今回は戦闘態勢、当然警戒されている。避けられる可能性は十分ある。



「……しょうがない。必殺技、やるか」

『また性懲りもなく……』

「今度のは大丈夫だから! 試したことないけど」

『…………やっぱりそういう類なんですね』



 どうしよう、スノーの信用なくなった。


 だがやる事はかなり真っ当だと思う。魔撃《魔属性》を溜めて入力バーを出す。形態は破裂。威力に全MPをつぎ込み、後は魔撃をぶち当てるだけである。世に数多く存在する『至近距離○○波』である。一番有名なのはかめ○め波だろうな。


『もうさすがにネタは必要ありません』

「心配性だな。まあ失敗しても何とかするさ」

『その失敗してもいいやって精神が不安なのですが』



 溜めた状態で移動を開始する。今度こそ、仕留める。そのままホワイトジャガーに接近をして、その腹に一撃を入れてやろうと意気込む。


 が、ここで又もや問題発生。


 両方のホワイトジャガーは俺に目もくれず、アゲイル目掛けて同時に突撃したのである。



『ぐッ!?』

「アゲイルーッ!?」


 片方は避けたが、後ろから襲い掛るホワイトジャガーの鋭い爪は、アゲイルの鎧を横から叩き飛ばした。鎧のお陰で殴られたような状態で済んだが、その鎧には恐ろしいまでの傷跡を残し、体は地面を転がっていったのだ。



「ちょ、ちょいゼタっち!? いまのでHP半分持ってかれたんですけど!? アレ全然弱くないんですけど!?」

「ちゃんと回避しろよ」

「もしかしてあの素早さで回避してたの!? さっすがゼタっちの感覚は信用ならねえ!」


 

 そもそもの問題は、最初の一撃でアゲイルが凄い勢いでヘイト値を稼いだ所為だろう。お陰で現在、スノーは見向きもされていない。


「……というかこの状況チャンスだな」


 現在、ホワイトジャガーの二匹は互いの肩が触れそうな程に近い。

 SPを全て使うつもりで全力疾走をしながら、無理やり二匹のホワイトジャガーを射程に入れた魔撃を放つ。


 禍々しい色のエネルギーが拡散状に広がった。フラッシュコットンのような炎の広がり方をして、すぐに消えてなくなった。その後、範囲内の物体全てが黒い塵となり、風に吹き飛ばされたようにパッと散った。後には雪すら残らずに真っ黒に焦土と化した空間が残っていた。


 そこには当然、ホワイトジャガーの姿などなく、僅かにそれらしき残骸のような塵の山が残っていた。



「ゼタっち、爆発オチなんてサイテー!」

「いや、俺もこんなんになるとか思ってなかった」

「素材とか回収できる?」

「マジ、ゴメン……」



 まあ勝ったんだからいいじゃあないか。とレベルアップを期待してみる。だが、そのような報告は一向に訪れなかった。ステータスをチェックしても、レベルは変動していなかった。


 おかしい。アゲイルが直下攻撃で仕留めたジャガー一匹ではレベルが2上がったのに、後の二匹同時撃破ではレベルが上がらないとは、どういうことだ。


「ゼタっち。その魔撃……というか魔属性さ、強すぎね? 見た目、マジ半端ねえし」

「それはあるかもな」


 こうなってくると、最初の異名持ちのホワイトジャガーを一撃で倒せたのは、NATO弾の設定が強かったのではなく、魔属性だったから倒せた、という話になってくるかもしれない。


 今のところ、有志の集まりで情報が判明している属性は8種類だ。


 それぞれ、火、水、風、雷、氷、土、聖、闇である。

 一応、魔属性も報告しているが他の連中が未確認の為、βテスト終了後も認知はされていない。



「強すぎる技や能力には、デメリットがあるモノだ。そうは思わんか、善太郎?」

「唐突に名前言うなや」

「いや、俺の方も一匹目以外の経験値が入ってないっぽいからな……。あんな強い奴を二匹も倒してレベル上がんなかったし」

「うーん、やっぱり小田もそう思うか」


 魔属性、使うと経験値が下がる説。ありえる。

 今度試しに色々とやってみよう。魔撃の溜め無し攻撃とか、実はまだ敵に当ててすらいないし。


 それまではなるべく使わないようにしよう。




「時にゼタっち、俺回復したいんだけど、傷薬と包帯ない?」

「村に戻ればある」


 HPの回復手段はいろいろだ。ポーションもあるが、あれは価値が高いくせに回復量がそれほどないらしい。それよりも傷薬と包帯を使って待機した方が全回復するし、何より安上がりであった。一応、寝ても回復するけれど、状態異常の出血を残したままだと永眠するらしい。


 このゲーム、状態異常の出血が何よりもイヤらしい。俺はまだ経験していないが、HPも徐々に減るし、SPの回復量も減る。長時間経つと特定のステータスが下がることもあるのだとか。そんなイヤらしい出血が治せるのが包帯なのだから、包帯は必須アイテムなのである。



 アゲイルは敵の攻撃を直撃していた。HPもごっそり減っている。治さなきゃいけないのは当然の流れだろう。

 


 今日はもう狩りをやめて、村で回復する事にした。そういう細かい事はスノー達本人に任せて、俺達は一度、ゲームを閉じることにした。


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