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されどいつだって時は足りないモノさ

誤字報告ありがとうございます!

本当に多くってすみません(--;

 作戦会議を中断された。もうあと少しで終わらせられると思っていたのに。



「また邪魔をされたな」



 結論は出ていたはずだ。ただ焼き払えば良い。それに聞けば砦のドワーフ共はほとんどが精霊なしと聞いた。ならば確保必要性もない。既に一人捕まえたのだ。それで良いではないか。



 そこに戸惑う要素が何処にあったというのだ。


 また、スノーの気まぐれに振り回されるのか。




 苛々する。




 反抗的な態度もそうだし、私の個人的な味方にならない事もそうだが、なにより面白くないのが奴は自分の精霊に対して信頼していることだ。



 スノーの精霊アレは確かに優秀かもしれない。だがそれと同じくらいに下衆な臭いを感じる。


 人を操ろうとする態度が透けて見える。他人を利用しようとする態度を隠そうともしないあの厚かましさには辟易とするしかない。それでも此方が良くやったと褒めておけば気を許すのだから、本当に単純だ。



 精神が幼いのだ。



 そんな奴が……連中が、我々の体を使って好き勝手をする事の恐ろしさを何故、許容できるのか。


 許すなんてありえない。


 精霊と仲良くするなどという判断そのものが、愚か過ぎて理解できない。




「もういい」




 なぜ今まで気を使っていたのか、本当に馬鹿らしくなった。



 今、目の前にドワーフ達の拠点が見える。


 ラックの奴は休憩の間に何かをしてくると言って、今私の傍にはいない。



 やるならば今だった。





 聖剣を引き抜き、魔力を流し込む。


 頭の固いエルフ連中から補修を受けた聖剣は、今では見間違うほどの存在と変貌していた。


 抜剣しただけで光を放っている。さらに魔力を籠めると煌々と輝く赤い閃光となり、爆発するのを今か今かと待ち構えている。



「目覚めろ、聖焔の剣“ウーリィエイル”」


『ハイ、如何致しましたか?』


「我が身、我が心のままに、我が覇道の障害を屠るがいい」


『ハイ、我が主』





 ・・・・・・・・・




 人は僕の事を黒田、あるいは幸成、もしくはブラック・ラックと呼ぶ。


 独身でマンションの一人部屋暮らし。しがないサラリーマンだけど、とあるゲームでは立派なギルド長だ。と、自負している。



 最近は本当に忙しくて夜の遅い時間しかできない。いや、八月が忙しいのは仕方がないのだ。……その上で帰れない理由を作ってくれる大馬鹿もいるのだけど。



 例えば、変な時間にトラックの受け入れ指定を予定されていたり、とか。そのトラックの受け入れで夜八時まで待機しなければいけない、などはまだいい方だ。待ってるだけで良いからね。


 でも半日かけて作った月間予定表を「この連絡網、渡し忘れてたから足しておいて」と一週間前にはわかってた資料を取り出して半日の努力を無駄にされた時は殺意を抱いた。

 彼からすれば「別に付け足すだけだろ」と思っているんだろうけど、違うんだよ。一つ噛み合わなかったらまた最初から全部を作り直す必要があるんだよ。それを理解してるんですかねあの馬鹿は!?


 僕はあの部長をいつか殺してしまうかもしれない。



 しかもこの間、たまたまタバコを吸いに外に出たら、あのボケナスめ……自分の車の中でゲームして時間潰してやがった。テメエは暇なのかよ!?



 誰の尻拭いしてると思っているのか……と転職を悩み始めたりもするのだが、残業代が出るだけマシかと自分を慰めて、今日も仲間たちが待つネットの世界で楽しもうとしていたのだが――。



 どうしてこうなった……。



 休憩がてら、ハチミツ入りの紅茶でもと思って台所から帰ってきたら、画面の向こう側でドワーフ達の工場が盛大に燃え上がっていた。


 なんだろう、コレは僕の深層心理が望んで見せた幻覚だろうか。ついつい敵の砦が「会社の工場に似てるなぁ」と思ったからなのか、壊したい衝動に駆られてしまったのだろうか。


 いや、現実逃避はこのくらいでやめておいて、犯人がアリッサに見えて仕方がなかった。


 今、彼女の手に握られている聖剣が全てを物語っていた。



 赤く光り輝く焔の聖剣。



 MPを注ぎ込んだ分だけその威力を発揮できる武器で、実験した時は指定した場所に極大の炎の塊をメテオのように落とす事もできた程だった。それも、ある程度加減していた上で、だ。


 アリッサにはユニークスキル、魔力無尽蔵がある。そのスキルによって、聖剣の威力はどこまでも上昇させる事が可能だ。僕等にとっては最強の切り札でもある。それゆえに、切り札は使ってはならなかった。



 それを彼女は独断で使用し、話し合いの場も待たずに砦を破壊してしまったのだ。



 いや、待て。決め付けるのは早急だ。

 だって僕は過程を見ていない。結果しか目撃していない。



 とにかく、まずは確認だと、ヘッドセットに手を伸ばして、マイクを付け直す。




「あの、アリッサ?」

『ラックか。終わらせておいたぞ』


 いや、終わらせたって……。

 これでは自分がやったと告白されただけだ。


『面倒な作戦会議など時間の無駄だ。それに、これも他の連中のためだ』


「いやいや、そんな勝手に決めちゃダメだよ。確かに言いたい事はわかるよ? 長引かせるとリスクも多くなるし、時間の掛かる作戦は人の少ない現状では困難だ。王都を留守にしている時間も気になるのはわかる。でも、無駄だからって他人と折り合う事をやめてしまったら、それは――」


『――独裁だと? ああ、そうかもしれないな。確かにそうだ。すまない。今回は反省しよう。少しばかり旅の疲れがあったのかもしれない』


 そう言われてしまうと、言い辛い。確かに疲れていたり差し迫った状況になると、人は判断を誤る場合がある。……性根から腐っている連中は違うとして、アリッサは違うと僕にはわかる。



 彼女は真面目だ。真面目だからこそ、色んな何かに怒っているのだ。ステータスなど見なくてもわかる。


 同じだからわかる。


 怒りを隠して、日々生きている。


 それには共感できるし、僕だって同じだ。



 でも、その何かを僕にはわからない。

 彼女はずっと隠して言わないからわからない。




 だから、仕方がない。


 黙っているなら、黙ってフォローするしかないんだ。



『見つけました。アリッサがいます』

『ラックさん? ちょっとこれ、どういう事ですか?』

『凄まじい魔法ですな。いやはや、アリッサ王女の御力には感服させられました』



 続々と現れる仲間たちに、どうして説明したものかと悩んだが、仕方がない。暴走されたという訳にもいかないし、何とか穏便に済むように話を進めてみよう。


「ごめん。ちょっとね、色々考えててね。結局コレが一番いいかなぁと思ってね」

『そう、なんですかね? ちょっとラックさんらしくない判断ですね』

「まあ、人が多くなるとそうなるさ。ちょっと大目に見てよ」


 とは言いつつ、ゼタ君は偶に鋭い時がある。キャラクター達には聞かれたくない会話をするので、通話アプリの方にメッセージを送る事にした。



『今回はゴメン。でも、スノーちゃんとアリッサだと、意見が必ず一致しないと思ったから』

『ああ、なるほど。言われてみれば確かに……。という事は今回の作戦立案、そもそも土台から問題があったかもしれませんね。すみませんでした』

『いや、謝らないで。こっちが先にルール違反したんだから』

『気にしないでください。こちらも途中離脱しようと考えてたところなんで(笑)』


 ……最後のは気を使ってくれているのか、本気だったのか、いまいち判断に困るコメントだった。



 まあ、何とかなったと思いたいところだ。



「アリッサ」

『なんだ?』

「良かれと思ったことでも、結果として悪くなる場合もある。まあ、それくらいわかってるとは思うけど、今度から気を付けてね?」

『その時は今回のようにまた頼もう』



 何故そうなる。


 ……まあ、頼られるだけまだマシか。そう、思っておくことにした。






 それがまさか、あんな事になるなんて……。


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