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森の中で見たモノ

 エルタニア王都からシターニア大森林へと向かう途中にある山岳地帯。一段と急勾配な坂をカリオットは物ともせずに登りきり、ついに頂きまで寸前のところまでやってきていた。


 目の前には西の地平線に沈む夕日が半分隠れており、燈に染まりかけた大自然の碧と、空の青と茜色の空模様が私達を迎えてくれた。



 何ともいえない感動が押し寄せてきて、その景色を目に焼き付けていた。



『スノー、顔だけ後ろに振り返って!』

「はい?」

『よっしゃ、ばっちりだ!』

「はぁ……?」



 ゼンタロウがまた意味の分からない事をしている。折角の雰囲気が台無しだった。


 今日は昼間からずっとこんな調子だ。


『これはタイトル画面に使えそうだな。いや、サムネの方が良いかなぁ。どっちにしても良い絵だ』


 なにやら“ドウガトウコウ”という事をするらしい。私達の行動を映像(?)という形にして誰かに見てもらって楽しむのだとか……。


 よくわからないけれど、誰かに見られるのは私はいやかな。


 しかしゼンタロウの「俺にいい案がある」と言う台詞を聞いて諦めた。こういう時、ゼンタロウは言う事を聞いてくれない。そして高確率で酷い目に遭うのだ。そんな時は何も言わずに嵐が過ぎ去るのを待つばかりである。



「ほぅ。遅かったですな」

「アモン……。貴方と違って私たちは翼がない」


 坂を上りきった真横にある岩洞から、先に到着していたアモンが顔を出してきた。


 空を移動できる鳥獣族である彼に、険しい道など関係ない。しばらくの間、拠点となるこの場所でアモンと落ち合う約束をしていた。



「アゲイルさんにも来てもらいたかったですね」



 確かにアゲイルが同行してくれたら心強かった。しかし竜人族のアゲイルはシターニアから敬遠されているらしいので、今回はそれに配慮した形となる。それに私とアゲイル、同時に居なくなったら王都の警備は誰もしなくなる。そちらも問題だ。



「アゲイルは仕方がない。……でも、どうせなら、カナデとメロンも一緒がよかった」



 カナデの戦闘は実にユニークだ。彼が居れば大抵の小物は引き受けてもらえる。

 でも今回、カナデには重要な役割があるからダメだとゼンタロウに言われてしまった。


 メロンソーダはそもそも麻痺毒の開発を依頼したので同行はさせられなかった。……本人も魔法学院から移動するのは嫌がるだろうけど。



「ユキノさん、ちょっと、早いですよ……」

「もうクタクタぁ」

「私も、さすがに応えました」



 かなり後ろの方でゆっくりと追っていた筈のホーク達が、荷馬を引き連れてやってきた。もう少し掛かるかとも思ったが、どうやら急いで着いてきたようだ。なんだか申し訳ない事をしたな。



 彼等は今回、冒険者ギルドで雇った人員だ。



 ホーク、ニル、ジェシー、聖剣の一件から付き合いのある三人だ。


 朝の早いうちに冒険者ギルドへ雑務役を雇いに行くと、三人で固まっているのを見かけたので声を掛けたのだ。こういう時、顔見知りだと急募の依頼でも乗ってきてくれるので助かる。


 彼等に依頼したのは、雑用の他にも行動不能にした精霊付きを捕縛してもらう。


 その後は倉庫屋の運搬業者に捕獲した精霊付きを運んでもらい、エルタニアの地下牢に閉じ込める手筈となっている。



 精霊達曰く、精霊付きを死なせると、精霊は次の誰かに宿ってしまうらしい。そのため、精霊付きに対してはなるべく生け捕りにしなくてはいけない。そうしなければイタチゴッコとなるからだそうだ。



『しばらくはココで待機な。ラックさんから連絡が来たら、行動を開始するつもりではいてくれ』



 現在、私達が事態解決に乗り出しているのはフライングのような状態らしい。


 アリッサがシターニアの助けを聴き入れるのは確定事項だ。どの辺りまで相手が譲歩するかが問題らしい。


 それが済めば、ドワーフ達を捕まえて、ついでに重要拠点となるルエ山脈の頂にあるらしい砦を攻略して占拠すればこの話は終わりだ。



「承知いたしました。ですが、一つよろしいでしょうか?」


 アモンが何か意味深げに自分の首元にある毛のように生えた羽根を擦って問うた。


「先に到着して暇だったので、偵察のような事を先んじて行ってまいりました。そうしましたら、面白い状況になっておりまして」


「面白い状況?」

『……俺は面白くないと予想したぞ』


「シターニアのエルフ族の領域は既に、その半分がドワーフに占領されております。しかもエルフの番人達と獣牙族の戦士達の抵抗むなしく、生体と死体が半々……軍隊に関しては壊滅状態でしたね。もう少し待てば、王都の警備隊にシターニアの戦士を起用する案そのものが潰れそうでしたよ?」


『やっぱり面白くない話だった!』



 ゼンタロウが『あーあ。全く、まったくマッタクだよ』と、ニュアンス口調で困った様子を繰り返していた。



『そもそも半分死んでるって……そっちの世界観でどうなのか知らないけど、戦略上半分も死んでたら大敗北じゃないのか? 俺、戦争って兵士が3割でも戦死すれば撤退するって聞いたことがあるんだけど?』


「ワタクシも兵站には疎いですが、見たままの感想を述べれば、現在のシターニアは大敗北以外のなんでもありませんね」


 アモンは涼しげな様子で答えていた。

 既に死体となってしまっている彼等には申し訳ないが、個人的には腹の立つ状況だ。せっかく助けにきたのに、勝手に死なれても困る。


 それより、どうしてそんな事になってしまっているのだろうかという疑問の方が浮かぶ。



「アモン、詳しく聞かせて。エルフと獣人はどうやって死んでたの?」


「炎と土の魔法の死体が多かったと思われますが、中には銃という武器で死んだ者も多かったと思われます。こう、小さな穴の空いた傷が多かったので」


『銃? ドワーフが銃を使うのか? ……妙だな。ドワーフって適正武器に銃は含まれてなかったと思うんだけどな』


 なにやらゼンタロウが怪しそうに考え込んだ。確かにドワーフが銃を使っているイメージはない。弓も同様だ。


 メイスや戦斧、大槌や大剣など、力任せな武器を握るイメージがある。しかし、適正武器が持てないというわけではないだろう。私も長剣を振り回すだけならできない事はない。まともに戦える気はしないけれど。


「それから、妙な足跡が残っておりました。こう、曲線を描いたギザギザな線が、延々と続いているような足跡です」

『曲線でギザギザが続いてる? なんじゃそれ?』


 アモン自身にも、よくわからないと言って肩を竦めていた。


「森を踏み潰して横断しているので、実際に見ていただいた方が良いでしょう。ここから遠くない位置にありましたので」

『そうだなぁ。ユキノ、体力的にどうだ?』

「少し休憩を挟めば、問題はありません」



 そういう訳で、一日掛けての大移動の後だけれど、まだ眠る事は許されなかった。


 とはいっても、私はカリオットに乗ってきたのでそれ程疲れていない。それに私もアモンも夜目が利くので、夜中の行動には差し支えなかった。




 それから夕日も過ぎ去り、月が満遍なく森を照らしている中、拠点にホーク達を置いて問題となる場所まで移動してきた。


 そこには確かに、アモンが言う奇妙な足跡が地面に刻み込まれていた。


 足、というよりかは踏み転がって進んだような、そんな足跡が二本、ウネウネと木を避けながら長く伸びていた。二本の足跡の幅は、大の大人の身長より少し大きめくらいか。



「……なんでしょうか、これ」

「見た事はないですね」


 私もアモンも首を傾げるばかりだった。

 ただ、精霊であるゼンタロウだけがこれの正体を知っていた。 



『戦車じゃねーかコレッ!?』

森や山の中を戦車が通れるわけないだろ(オイ)


そもそもファンタジーにオートマタとかロボット要素なんて突っ込んでる時点であきらめてください。あれが来ます。

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