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氷耐性持ちに属性氷で攻撃とかバカなのでは……

グラボから電気がバチってなったのを、みなさん見たことありますか?

画面にバーコードみたいなのが並ぶのを見たことがありますか?


あるのならば注意してください。グロ注意

 一応、基本動作とシステムについて確認をする。


 HPがゼロになると死ぬ。

 減る条件は相手から攻撃を受けるか、状態異常などのスリップダメージだ。今までスノーが状態異常になった事はないが、ネットの攻略サイトで既に服毒や火傷、出血などがあると判明している。



 SPは直接の死にはならないが維持管理が必須となる。

 技を使ったり、全力疾走、緊急回避などを行うと減り、それらを行わなければ自然回復する。スタミナみたいなものだ。ただし、寝不足なり空腹であったりすると回復速度が遅くなる。


 MPは魔法を使用するのに必要で、主に攻撃する際に気にする。失った分のMPは食事を取るか瞑想をすると回復する。もっとも、敵前で食事をしたり瞑想などしていたら確実に殺されてしまうだろう。



 魔力剣の消費はSPが15、MPが15だ。

 スキルレベルが1なので、多分改変されるとは思う。


 SPの回復速度は問題ないが、MPの回復ができないから、戦闘が始まって4回までしか再度魔力剣は使えないだろう。もっとも、どこかでMPを1だけ回復できればもう一度使えるようになるが、そこまでギリギリの戦いを演じるつもりはない。


 ホワイトジャガー、レベル55の異名持ちが魔撃で即死だったのだ。案外、楽に勝てるかもしれない。近接系のステータスが低いから多少時間は掛かるかもしれないが、それでも楽勝なイメージしかわかない。



「ふ、今宵の俺は経験値に餓えてるぜ」

『またですか。あと言いたくないんですが、まだお昼です』



 しばらく探索して、林の中で潜む一頭のホワイトジャガーを発見する。レベルは27と低めだ。異名持ちの奴と違って豪華なエフェクトがなかった。


「……さあ、宴の時間だ」


 尚、この時の俺に限って言えば、宴と書いて喜劇(ファルス)と読む。





 スノーには想定される短剣の持ち方を二種教えてある。


 氷の刃を一番自然な握り方である順手。この場合、刃は体から外側を向いている。これは正確に対象を斬る為だ。突くこともできるが、主に振るう動作をして欲しいと頼んである。隙も少なく、使い勝手も一番良い。故にこの握り方をニュートラルとして扱う。


 もう一つが逆手持ちで、刃は体に向けて欲しいと頼んだ。コレは斬るよりも突き刺してから手前に裂くことを目的としている。順手持ちよりも効率よくダメージを与えられる筈だ。ただ、狙いが定めにくいのであまり使わないかもしれない。トドメの一撃くらいだろうか。



「よし、戦闘開始」


 スノーが指示に従い、戦う構えをする。右手に氷剣を持って、右半身を前にして剣を突き出す形だ。相手がコチラに気がついたので、こちらから襲い掛かることはない。勝手に敵から襲い掛かってくるからだ。


 ホワイトジャガーはしなやかな筋肉を躍動させ、たったの一跳びで襲い掛かってきた。スノーは右に回避で横移動しつつ、同時に氷剣を振った。回避直後に攻撃を行うとダッシュアタックみたいになる。小田が発見したことだ。かなりタイミングがシビアだが、慣れればあとは簡単だった。

 氷剣から超音波のような高い音が鳴り、同時に敵の前足に傷が付く。斬った傷口が凍りつく。


「大した事ないな」


 敵の動きに付きまとうように、死角に回り込んで氷剣を突き出し、確実にダメージを与える。当然嫌がって、無理な体勢から攻撃に転じようとする。そうとなれば今度はもう一度回避行動を取った後、すれ違いざまに刃を筋に撫でる。


 そして再び奴が振り返る際に、首を回して顔がスノーに向く。それに合わせて顔面に氷剣を切り上げ、鼻を裂いてやる。それが一番応えたのか、可愛らしい猫科の叫び声を上げた。



『凄く痛がってますね』

「そりゃあ急所みたいな物だからな。嗅覚の鋭い奴は大概神経が鼻に集中してる。神経が多いって事は痛覚にも敏感って事だ」



 ふふん、と得意がっていると、いきなり画面真ん中に『短剣術を習得しました』と出てきた。どうやらレベルアップ以外でもスキルの習得はあるらしい。熟練度みたいなモノがあるのかもしれない。

 ただ、戦闘中にいきなり画面真ん中に出すのはやめてもらいたい。かなり邪魔だ。



 そんな一瞬の隙に、ホワイトジャガーが距離を取った。離れた途端、奴は獅子さながらの雄叫びをあげる。

 ただの威嚇か。しかし再度、口を開けて吠える動きをする。しかしそこから出てきたのは音ではなく、白い冷気――ブレスだった。


 ブレスの射線から逃げるように右横へ回避する。僅かに攻撃範囲に入っていたのか、HPが少しだけ削れていた。不覚だ。

 射程は10mくらい。しかしブレス中は首が回せないのか、ブレスの射線がスノーへ追ってくる事は無い。


 これは懐に入る隙さえあれば滅多刺しが可能となるだろう。やはり余裕だなどと画面の前でほくそ笑みながら攻撃を仕掛ける。

 その瞬間、スノーが何かを感じ取った。



『何か来ま――避けてっ!』



 スノーが今までにない程の危機的な声を出した。

 今まで視線を目前のホワイトジャガーから外す事はできなかった。だから気がつかなかった。背後から別のホワイトジャガーが迫っていたのだ。


 三人称視点なので、ギリギリの時点で間に合った。もちろんスノーの一声がなければ何の警戒もなかったので、スノーには感謝だ。



 回避動作を行い、前方に一歩跳ぶ。だが背後からの奇襲を受けた状態なので、このままでは追撃を受ける恐れがある。仕方がないので親指だけゲームパッドに残し、中指と薬指でボールマウスを操作して画面を180度回転、スノーの体もグルリと回転し、すぐさま牙剣でガードをする。背後からの爪を氷剣の腹で弾き返した。その場はしのげたが、魔力剣の氷がガラスを割るように砕け散った。


 この場ですぐに魔力剣を作ることはできる。でも今はしない。先に位置取りをすることの方が先決だった。このままではブレスを吐いていた一匹と奇襲の仕掛けた一匹で挟み撃ちの状態だ。

 急ぎ、ブレスを吐いていた方の懐に潜りこもうと全力疾走をする。そこで乱戦に持ち込んで、攻撃を回避し続ければいい。


 そして再び視界を一匹目に戻そうと画面を回転させると……新にもう一匹、別のホワイトジャガーが飛び込んできた。しかも奴は直進してスノーを狙ってくる。


 こりゃあ絶望的だぁ。


「三対一なんて聞いてねえぜ」

『……余裕なんですよね?』

「ムリムリ、難易度インフェルノ」


 この時、スノーは遠い目をしていた。『ああ、私死ぬんだ』などと言いたそうな顔だったが、知らん振りを決め込む。

 とりあえず緊急回避で思いっきり前進し、直撃は避ける。SPがごっそり削れるが構わない。そこで一匹目のホワイトジャガーを中心に乱戦を始める。回避を主軸に、SP回復に専念する。


 それにしても物凄く圧巻な光景だ。これだけモンスターが集まっているのにモデル同士がぶつかっても現実感が損なわない。ちゃんとモンスターがぶつかれば反発し合っているのだ。CGが抜けた様子もない。


 俺はグラフィックボードが心配になってきたよ。




 それからしばらくは三匹のホワイトジャガーを相手にし続けた。常に襲い掛かってくるのでSPが溜まらないジレンマ。それでも相手の攻撃にタイミングを合わせて回避しつつ、無傷で攻撃できそうなら一刺しする。魔力剣を使う隙すら生み出せない。


 ずっと回避と刺突ばかりを繰り返し、何とかダメージを与えていく。


 そして嫌がらせのように時々、画面真ん中に時々現れる習得メッセージが出てくる。


『短剣術がLv2になりました』

『残影を習得しました』

『残影がLv2になりました』

『パッシブスキル《急所発見》を習得しました』

『《回避》の連続成功回数が100回に到達しました。おめでとうございます。《疑似心眼D》を習得しました』


「せめて戦闘が終わってからまとめて報告して‼」


 スキル習得は素直にうれしいが、画面の邪魔だ。勘弁してくれ。

 一向に敵は倒れてくれないし、敵は一匹だって疲れていない。どころか、最初に戦っていたジャガーさんのレベルが27から28に上がってらっしゃる。


 まさか戦闘中に敵のレベルが上がるとは思わなかった。戦っている最中に魔物側が強化されるなんて普通のゲームじゃないよね。


「ちくしょう、やっぱり雪山の敵に氷属性で挑むのは間違いだったか」

『わかっていたなら何故やるんですか!?』

「使ってみたかったからに決まってる」


 思った以上に面倒だ。それに今は三匹だけかもしれないが、その内また増えるかもしれない。

 これなら最初から魔法で戦っておけばよかった。もう今更魔撃を使わせてくれる隙すら与えてくれないけど。


「しょうがない。助けを呼ぶか」

『呼べるんですか!?』

「まあ、小田が電話に出てくれたらだけど」


 一人で倒したかったのに、非常に残念だ。しかしこのままではジリ貧も良いところだ。負けはしないが勝ちもしないだろう。

 携帯で「ジニー、お願い。小田真雄に通話」という。するとあら不思議、勝手に通話をしてくれる。


 数秒のコールの後、小田の声が聞こえる。


『モスモス? どったのさ』

「わるい。一人で狩りに出かけたらジャガー三匹に囲まれて死にそう。助けてくれ」

『ふ、ついにゼタっちも死ぬのか』

「死にたくないッ! 死にたくなぁいッ!」

『ククク……カカカッ! ところで今日、お前の家で飯食っていい?』

「OK、それで手を打とう」

『じゃあ夕方にそっち行くわ』

「え? いや、今すぐ助けて欲しいんだけど……あれ――あの野郎、切りやがった」


 全然、こっちの緊迫した状況を気にしてくれてない。あと一時間くらいは余裕で回避できるけど、問題は夕方か。今はまだ昼の二時だ。さすがに俺の集中力が持たない。


『どうでしたかッ!?』


 祈るような声で返答を待っていたスノー。


「はは、まあ何とかなるさ」

『…………何とかならなかったんですね』



 まあ、そうですけど。


 そして再び『《回避》の連続成功回数が250回に到達しました。おめでとうございます。《疑似心眼》のランクがCに上がりました』と習得のタグが画面中央に現れる。


 もういっその事、この《擬似心眼》のランクが上がり続けるまでやってみるのもいいか。

 どんな効果があるか知らないが、上げておいて損はなかろう。

 そうと決まれば声を出して気合を入れなおす。俺は一度決心した事は絶対にやりぬく男だ。


「おっしゃあッ! どんどんこいやッ! 百万回でも回避してやる――て、あれ?」




 さっきまで聞こえていた音が全て消えてなくなった。

 スピーカーから流れるSE音。実際に雪山の中にいるような雪風も、敵の唸り声や雪を踏む音、スノーの声も、パソコン本体のファンの音すらもしない。



 目の前には真っ暗になった画面。


 うそ、おい、マジかよ。




「パソコンの電源が落ちたッ!?」



 パソコンから危機感を煽るブザー音が4回。そして直感する。

 ブザー音が4回は埃が溜まったことによる熱暴走。つまり――



「……そういえば最後に掃除したの、いつだっけな……」




 うん、相当やばいよね、この状況。

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