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精霊騎士団 特別会議③

 時間が経つこと12時間以上。

 意識がもうろうとする中、陰りのない朝日が我々を襲っていた。


「あーさだー……」

『わー……すごいですねー……』

「これが世に言うナチュラル・ハイ」


 徹夜による妙なハイテンションで、気がつけば馬鹿みたいに俺達は夢中になって会議を続けていた。


 夕食も食べずにコーヒーを適量摂取し、エナジードリンクによるパワーアップを利用した結果、朝になってから脳みそを酷使し続けたことによる疲労が時間差で襲い掛かり、急激な倦怠感を伴っていた。気持ち悪い。


 すると、ころぽんさんが思い出したように声を出した。


『そうだ……お仕事、いかなきゃ』

「……お疲れ様です。あの、大丈夫ですか?」

『あとちょっとでお盆休みですから……がんば()ます』


 何というか、頑張ってください。としか言えなかった。申し訳ありません。貴方は巻き込むべきじゃあなかった。だって俺の軽薄な心でも胸が痛いんだもの。



 どうしてこうなった。いや、一日で決められる話じゃないのに強行突破しただけに過ぎない。




 会議資料のまとめはころぽんさんが(ゲーム側は緑茶さんが)用意してくれていたので、せっかくなので徹夜の成果を振り返ってみた。




《檻と拘束具の開発について》


 これは当初の予定通り、メロンソーダに任せることにした。数は百を目途に作るのと、種族的汎用性に優れたモノを依頼した。6種族に対応する道具でないと意味がないからな。

 メロンソーダは寝起きに「はいはい、三日で結果を出すよ」と言ってくれた。彼女はマイペースだけど頼りになる。




《資金について》


 この話はアリッサが帰ってきた時に行われた。わざわざ財務大臣を連れてきてくれたので、大いにタメになった。――なるはずだったのだが……。



『無償化や依頼達成時の報酬額にボーナスを国が補助するというのはさすがにやり過ぎです。商人側が勝手に行うのは構いませんが……』


『ケチなことおっしゃらないで、出せるだけ出せ……と湯呑様はおっしゃっております。あと、足りない分は商人から借金すれば良い、とも』


『そんな無茶苦茶な……』


『ええい、わからん奴じゃのお。お主ら金の亡者ならばうまく運営できるじゃろうって。金は使ってこそ手に入るものなんじゃぞ』


『湯呑様、彼らは亡者なのですか?』


『亡者ではありません! ……とにかく、そんな湯水のように使われる訳にはいきません。減らしてください』



 以後、湯呑太子さんが緑茶さんを通して大臣に言い寄る場面が続く。聞いているこっちが頭の痛くなるような会話だった。俺達はプレイヤーの声が聞こえるけど、NPCには聞こえないからその所為で会話に難が生じていた。


 長いので決めた事だけ説明すると、特典などについては宿屋料金の無料化、倉庫屋の無料貸出などとなった。一応、国営になるので、宿屋や倉庫屋に対して本来の料金分は国から支給される手筈になる。


 武器・防具の割引については横流しなどが発生する可能性があるので却下された。


 その他の各ギルドの特典などはギルドとの共同歩調を取らねばならないので、これは別の議題として後に回した。


 あと、その会話が終わる頃には湯呑太子さんは寝落ちしてしまった。

 脱落者一名。




《牢屋の場所》


 必要だとは考えていたが、初めの時点ではまだ何も考えていなかった。


 どこかいい場所がないか提案を促してみたのだが、これがまた地獄の始まりだった。



『ゼタ殿、王城の牢屋などではいけないのですか?』


「アゲイルのその疑問はもっともだ。でも精霊付きを他の犯罪者と同じ扱いをするのは、さすがに可哀想だと思わないか? 特別に用意した……病院みたいなイメージの場所の方が良くないか?」


『なるほど。それは一理ある。さすがゼタ殿だ』



 アゲイルにはそう釈明したが、本当は隔離病棟、精神病院、黄色い救急車案件の意味合いが強かった。

 精霊付きで頭のおかしいヤツは何をしでかすかわからないからね。


 でもそれは言うまい。心にそっとしまっておく。


「魔法学院の地下とかどう思います? 結界とか完備してますし、結構頑丈なんじゃないでしょうか?」

『まてまてぃ! アタシの憩いの場にそんな厄介なモノ作らないでよ! もしも囚人が大脱走したら大変じゃん!』

『ソーダの言ってる事はあれですけど、ゼタさん。こういうのは人気のない場所に建てるべきだと思いますよ。学校の生徒に被害が出ないとも限りませんし』


 そうなるのか。ではどうするか、という話からが長かった。街の外とかどこかのダンジョンに作るとか色々と案は出た。けれども場所が遠いと搬送が大変になるのでコレも却下。


 最終的に落し所な案が出たのは二時間も過ぎた頃だった。



『教会の地下はどうでしょうか?』



 意外なことに提案は緑茶さんだった。


「それって、大丈夫なの?」

『はい。聖剣の間より更に奥に、使われなくなった空間があると聞いたことがございます。ただ、大神官様に御伺いしてからになるかとは思いますが』

「ゼタっち、もうそれでよくね?」

『そうですね。教会ならイメージも悪くありませんし』



 というわけで、確定ではないが聞くだけ聞いてみることになった。ちなみにこの時点で既にスノーは船を漕ぎ始めていた。

 また一名脱落。




《各ギルドに対して協力依頼》


 各組織に協力依頼をしなければいけない。


 主に大きな組織と言えば冒険者ギルド、魔法ギルド、戦士ギルド。それからギルドではないが教会にも必要だろう。商会側は現在ルピア(コッコさん)がトップな事もあり、あとでコッコさんに説明すればいいだろうから今は除外する。


 何の依頼かと言うと、精霊付きに対する特典や情報の提供だ。


 特典は先の飴と鞭の話で、情報についてはプレイヤーのリストアップ化をしたいという事だ。


 現在、このエルタニアに何人のプレイヤーがいるのかもわかっていない。標準となる数字を出すのも必要だところぽんさんが提案したのだ。色々と便利になるらしいが、頭が馬鹿になっていてあまり記憶に残っていない。ころぽんさん本人も『次行きましょう次』とお疲れ気味だった。



 一応『精霊付きが好き勝手に行動しないようにする』という大義名分があるので、話は分かってもらえるだろう。しかし説明するためには『誰がそれをするのか』という事も決めなくてはならない。


「もう俺がパパって決めていいか?」

『異議ナーシ』

『よろしくお願いします』

「ゼタっち、遊びはいらないぜ」

『ウム』

『……あら、もしかしてワタクシも言わなくてはいけない雰囲気なのかしら?』



 もうみんな、頭がおかしくなっているのが普通になってきた頃だったけど、この話は簡単に決まった。



 冒険者ギルドにはアゲイルが説明しに行く。確かギルドマスターと仲が良かったはずだ。問題あるまい。……問題があるとすればギルマスの方だろう。


 魔法ギルドには当然メロンソーダ。一応、彼女は魔法ギルドでもスーパーエリートとして魔法学院に籍を置いている。スノーと俺は未だに見たことはないが、学長とやらに話を通してもらおう。


 教会にはこれまた当然、緑茶さんに頼む。大神官さんに会う理由が増えただけだ。


 戦士ギルドにはスノーが行くしかあるまい。俺達だけコネクションがない相手との交渉になりそうだが、何とかしてみせよう。確か暗殺ギルドと戦士ギルドは裏で繋がっているという噂を聞いたことがある。サルタルに頼んでアポを取ってもらえば何とかなるだろう。……コネってホントに大事だよね。


 実はアリッサに戦士ギルドに行ってもらった方が良いとも考えたが、やめておいた。さすがに彼女も忙しかろう。




 そして無事に地獄を乗り越えたのは俺、小田、ころぽんさん、アゲイル、緑茶さんの5人だけだった。……メロンソーダ? アイツは自分に関係のない話になった途端に寝たよ。素晴らしいマイペースさだ。いっそ惚れ惚れするね。




「これで、やっと終わりか……。もうさすがに俺も寝たいぞ」

「同感……」

『……そもそもこの会議を一日で終わらせる必要ってあったんですかね?』



 ある! 俺だってスコアランキング上位を維持し続けたい! こんな面倒で時間の掛かりそうな仕事はいち早く終わらせる必要があったのだ。


 エルフ族一位の座は堅いとしても、総合ランクで10位以内から転落するのは気分が許さない。せっかくスタート当初から目立つ位置にいるのだから、このまま維持し続けたいと思う欲はそれなりにある。



 でもそれは表の理由としては言えない。なぜならユキノ=スノーだという真実は、皆には秘密なのだ。……まあ秘密にする理由は特にないので、精霊騎士団の人達には明かしてもいいんだけどね。


 でも強いて理由をあげるのなら、暗殺ギルドなんてモノに入ってるから、雰囲気を考えると正体を明かさない方が設定に忠実というか、そうしたいのだ。この気持ちわかるかなぁ。


 なりきるのって楽しいよねってことさ。



 それはともかく、何か適当な理由でもでっち上げるか。



「こういう制度は早く作り上げて完成させてしまった方が良いんですよ。兵は神速を尊ぶとも言いますし」

「ゼタっち、それ兵法。今回使うのは適切じゃないぞ」

「細かい事は気にするなよ。仕事でも“巧遅は拙速に如かず”と孫子さんも言ってたんだろう?」

「一応言っておくけど孫子は“雑でもいいから早く仕事を進めろ”って意味で言った訳じゃないぞよ?」

「……もういい。なんも言わん」



 いい加減、夜のハイテンションの効果時間も無くなりつつある。ストレスがそのまま表に出てしまいそうだ。つまりへそ曲げた。


 ダメだ。心のバランスが悪い。精神衛生上、これ以上の徹夜行進は無理があると判断する。このままお布団に行こう。



『ま、まあ、言いたい事はわかりましたよ? 確かに早いに越した事はありませんからね』

「それよりころぽんさん、時間ダイジョーブっすか?」

『あ、そうでした。すみません、お疲れさまでした』

「おつー」

「お疲れ様です」



 こうして一つの地獄を乗り越えて、俺達はまた一つ、このエルタニアに新たな歴史を創る事となった。


 ただ、一つだけ最後に言いたい事がある。


 安請け合いはするな。絶対に後悔する。……誰だよ、一週間で仕上げるとか言った馬鹿野郎はよぉ。

※注意:みなさん、空腹時にエナジードリンクを飲んでコーヒーのんでハイになって頑張らないでください。カフェイン中毒になります。興奮して眠れなくなり、眩暈・吐き気を催します。普通に病院案件ですのでそうなったら病院へ行きましょう。

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