色々試そう
約2000文字の短め。キリが良かったので今日はここまで。
スノーのレベルが7まで上昇した。
レベルが上がると、ステータスが上昇した分だけHPもMPも回復するらしい。全部使ったはずのMPが32回復した状態だった。これはレベルアップの全回復を見込んだ戦術が使えない事を意味している。
それはしょうがないので受け入れよう。
そんなことよりも、だ。近接戦闘のスキルを覚えた。これは助かる。やっとまともな戦術が組めそうだ。実際、ノースキルで根性耐久バトルをしなくてはいけないと覚悟していたからだ。
ステータスも目覚ましい勢いで上昇した。HPなど倍以上ある。これで一撃くらいはダメージを受けても大丈夫そうだ。
問題は肉体面での上昇率が少ないところか。それに体格の数値がほぼ変動しない。
もしかしたら体格のステータスは本当にキャラの見た目の通りに算出されているのかもしれない。だとしたら、開始直後のステータスはキャラメイクによって決まってくるのかもしれないが……。
憶測で決め付けるのもよくない。それに検証できる状況でもないので、そこら辺は何度も死んでくれる有志に任せるとしよう。俺はスノーを簡単に失うつもりは毛頭ないのだ。
「それにしても、あっさりし過ぎだ。それにあんまりおいしくない……」
魔撃で一撃……NATO弾が強かったのだろうか。ネットで調べたアンチマテリアルライフルに採用されている弾丸を真似ただけなのだが、ここまで凄いのか。
まあいい。これは『研究会』に提出しておくか。もしかしたらスノーの魔法が凄いだけなのかもしれない。なにせユニーク個体の『闇エルフ』なのだからな。
詳しく研究はされていないが、種族特性なる隠しデータがあるらしい。ドワーフが熱に強いとか、半魔族のHPが妙に高いのだとか。それもいずれ調べていきたいところだ。
話を戻そう。
今しがた殺したのはホワイトジャガーの件だ。あれは普通の個体ではなく、異名持ち“虐殺の神獣”であるらしかった。しかもレベル55。どうせ同じホワイトジャガー、大差ないだろうと思っていたのだが、一瞬で終わったので実力がわからない。
それに思ったよりレベルが上がってない。一気に階段飛ばしでレベルアップできたのは嬉しいが、明らかに強敵、大ボスを倒したのだ。もうちょっと経験値があってもいい気がした。
もしかしたら魔物のレベルは強さの物差しにならないのかもしれない。これもまだ憶測の域をでないので、断言はできない。
知りたい事はたくさんあるが、どれも今すぐに答えは出せないものばかりだった。
「とりあえず、殺したホワイトジャガーの剥ぎ取りだ! はっぎっとり♪ はっぎっとり♪」
『……解体経験がないのですが』
「みんな初めてを経験して大人になっていくんだよ?」
『なぜ疑問符があるので?』
「ボク、マダ童貞ダカラワカンナイッ!」
『今、言葉以上の意味を感じた気がするのですが……もういいです』
実際問題、解体はやらないと覚えないしね。それにもしかしたら『剥ぎ取り上手』なるスキルも後々手に入るかもしれない。筋トレで筋力や体力が伸びるゲームなのだ。十分、可能性はあるだろう。
そうして、拙い手つきで皮を剥ぎ取ってもらい、爪を剥ぎ、食肉として使えそうな部位を取り、頭部から牙を取ったりして終わった。お世辞にもキレイにできたとは言い難い。それ以上に全身血まみれだ。風呂とかあるのだろうか。
『……血が冷えて手が凍りそうです』
なんだか耳に痛い言葉だった。
家に戻り、スノーはさっそく湯を沸かし始めた。タオルを用意し、全身の汚れを拭いだす。
どうでもいいんだが、『サモンズ ワールド』のレーティングとか、どうなっているんだろう。自然に服を脱いであられもない姿を拝ませてもらっているのだが、隠したり見えなくなったりすることがない。キャラメイク時に散々見たので今更であるけれど。うむ、今夜のおかずは決まったな。
体を綺麗にしてから、さっそく素材に手を加える。ぜひとも試したい事があるのだ。
「俺の方からでは細かい作業ができないから、スノーにやって欲しい」
『? わかりました』
自律行動にして、スノーに剥ぎ取ったばかりのホワイトジャガーの素材をいじってもらう。ちなみに作業するのは外である。臭くなるので家に入れたくないらしい。やはり感性が現地っぽい。臭いなんて画面のこちら側には伝わらないからな。
ひとまずその話は置いておき、試したい事を始めさせる。
まずははぎ取った皮を使えるように加工する。なめす技術は無いので、とりあえず皮に残った肉を削いで、綺麗になったら水で血を落とし、乾かす。
次にホワイトジャガーの大牙を刃に見立てグリップできそうな場所に包帯を巻く。
そして柄になり得る箇所に乾かした毛皮を付けて、完成だ。
ホワイトジャガーの牙剣。見た目通りの鋭い牙の剣だ。突き刺すしかできない。最高に野蛮な武器だ。……未開人の武器かな?
『コレは武器になるんですか?』
「さあ? でもスキルを使えば、剣と認められるかどうかがわかるだろう。スキルの魔力剣を使ってくれ」
魔力剣、つい先ほど習得したばかりのスキルだ。本来スキルはSPを消費するだけで使える技なのだが、魔力剣はMPも消費する。その分、魔力の数値が高い程、威力が出るらしい。もっともどれほどのダメージ量なのかは定かではない。そもそもステータスは数値化されているくせに、ダメージに数字が画面に出ないので正確な威力がわからないのだ。
『……ハッ!』
技名は言わないらしい。恥かしいのかもしれないと考えると、ちょっとニヤっとする。
さておき、覇気を声にしたのと同時に、ただの牙に鏡のように美しい氷でできた剣が生まれた。一振り、二振りしても氷は消えてなくならない。素晴らしい、替え刃の利く剣が出来上がった。
そしてアイコンが画面中央に現れる。『《属性:氷》の素質を習得しました。《魔撃:氷属性》を習得しました』と予想以上に嬉しい結果が待っていた。
「やったな、条件がイマイチわからないけど、氷魔法を習得したぞ!」
『すごくうれしそうですね』
「当然だ」
スノーは自分の事なのに、あんまりうれしくなさそうだ。何処か他人事の様な反応だ。たぶん実感とか湧かないのだろう。そういう所がまた無欲っぽくて赴き深し。
しかし、それもすぐに思い知る事になるだろう。
この新たな力が、どれほど頼りになるかという事を……!
「よし、この牙剣で狩りに行こう!」
『……え?』
さっそくもう一頭、ホワイトジャガーを狩りに行く事にした。
今度は魔法を一切使わず、己のプレイ技術のみで勝つ。
構想練ってたらどう考えてもあらすじの末文に到達するのに一章分の量ありそう。
もはや本編が遠すぎてプロローグどころかエピソード0だよ! 計画性ゼロの話は結局こうなるのね。
……でも時間すっ飛ばしすぎていきなり「二年後」とかはしたくないのです。「もう、しょうがないなあ」と付き合っていただけるとうれしいです。
スノー様がこっちの世界に来るまでに一体なにをしでかしてきたのかが語られるのがエピソード0。なのだと思われます。