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早く経験値をよこせ③

すみません、遅くなりました。


今月までに聖剣抜刀を終わらせようと思うと、書き進めるのを増やしたくてつい……

 異名持ち(ネームド)“軍を束ねる愚妖精”を全滅させたあと、価値のありそうなものだけを剥ぎ取って確保する事にした。のだが……


「……つってもゴブリンの素材ってなんだ?」

『さあ?』


 緑の皮膚に、尖って大きい耳、不揃いで汚い歯、ギョロっとした眼ん玉、細くて長い手足に、ボロボロで汚い無数の武器。

 どれも役に立ちそうな見た目をしていない。


「……唯一、ボスの大刀は価値がありそうなんだけどな」


 黒い鈍ら大刀。見た目が既にボロいし弱そうなのに、(エネミー)が持っていると妙に強そうに見えるから不思議だ。スノーでは重くて持つ事も難しいだろう。持って帰ったら売って金にするとかどうだろうか。


 一応、運べるかどうかだけ確認するために持とうとすると、スノーが気になる反応をした。


『ゼンタロウ、この剣。たぶんだけど、武器じゃない』

「どういうことだ?」

『刃が最初から潰されて丸くなってる』

「飾りモノって事か?」


 スノーが頷く。


 最初見たときからボロボロだったから、あんまり刃の状態は気にもしなかった。が、装飾品の武器を手にしていたとなると、どうにも俺の謎解き脳ミソが疼く。

 こういう……『なんでそんな仕組みなの?』とか無視したギミックをヒントなしで思いつく。



 周囲の四つの像の特徴を確認する。


 盾を持っていないナイト。

 剣を持っていないソードマン。

 弓を持っていないアーチャー。

 杖を持っていないソーサラー。



「わかりやすいな。スノーその大刀を運んでくれ」

『はい?』


 黒塗りの鈍ら大刀を持ち上げる。やはり重そうだが、持ち運べなくはない。それを銅像の所まで運び、手に握らせようとすると自然と収まる形となった。


 そして銅像の床のタイル一枚分が下に沈みこむと、カチリとギミックが稼動する音が聞こえた。


「……やっぱりな。大方、像が装備してた武器を探せって奴だろ。あと三つ、同じような武器を探してこないといけない訳か……」

『よくわかりましたね』

「こういう仕掛けは定番だからなー」


 入ってきた扉のほかの三つの扉の先に、一個ずつという訳か。

 わかりやすいが、時間掛かりそうだな。



「スノー、あと何回戦えそうだ?」

『……1、2回でお願いします』


 それでは武器三つ分の回収ができないではないか。


「少ないなぁ、そんなに疲れたのか?」

『ゼンタロウの戦いは心臓が持ちません。いつもウッカリをやらかしますので』


 ああ、左様でございましたか。そりゃあわるぅございましたね。

 でも前回のようなクラッシュ落ちはないぞ。なにせ既に最新型のハイエンドパソコンになっているんだからな!


 でもやらかしちゃったのは事実だし、ゴネてもいい事はないだろう。……せっかくソロでダンジョン内全掃討とか考えてたのに。



 こうなったら現在、戦える敵の中で一番強い奴を狙ってみるか。




 そうと決まったら、頭の中で悪知恵をフル稼働させて考える。で、一番初めに思いついたのが――



「スノー、ゴブリンの死体を像に担がせろ」


『え?』


 昔から思ってたのだが、こういう重量感知系のギミックって、他の物体で応用ができないか、と。


 自由度の高いゲームでそれが可能なのかどうかと言うと、その辺はむしろ厳しかったりする。自由すぎるとゲーム製作側のフラグ管理が難しくなる所為か、ミッションやイベントなどの攻略アイテムは決まったアイテムでしか起動してくれなかったりするのが通例となっている。


 でもまあ『試してみるだけなら別にいいでしょ?』という気分で、銅像の腕にゴブリンの死体を担がせたり、寄り添わせたりして像の周りに配置していく。



 そして数分後――



 芸術が完成した。


 題名は『勇敢なる戦士等に集うゴブリン達、しかして剣士はボッチ』である。

 我ながら味の詰まった光景を作り出してしまった。



「これは傑作だな」

『意味がわかりません』


 スノーはお気に召さなかったようだ。


「いやいや、想像力を掻き立てられる、これぞまさに芸術じゃあないか? 仲良くゴブリン達と共にいるのは武器を捨てた三人の戦人たち。そんな中で剣士だけが武器を取り、三人とゴブリン達に挑もうとしているじゃあないか。これはつまり剣士が“ゴブリンなんて魔物と仲良くするなんてとんでもない!”といった少数派が多数派に異論を唱えている描写が見えるはずだ。するとどうだ? 狂っているのは剣士か、剣士以外の三人なのか。どっちだと思う?」


『え……いえ、あの、その……わ、わかりません』


「そうだとも! わからないが正解だ。真実はないし、人によってどっちが正しいかなんて丸っきり変わってくる。このストーリーだって今しがた考えた俺の妄想だ。他の人が見たら別の観点で物語を想像するだろう。そもそも飾ったゴブリン達は全部死体だから“死体まみれのゾンビ戦士達に囲まれ、一人追い込まれる剣士”とかにも見えるわけだ」


『いったい何が本当なんですか……』


「この作品には無限の可能性が秘められているってことなんだよ! 芸術に答えなんか必要ない。見た者が“何か”を感じ取れる存在であるならば、それは既に芸術となるのだ!」


『ゼンタロウは芸術家だったのですか?』


「は? あんな面倒くさい連中の仲間なんかになりたくねーよ」


『め、面倒くさい』



 一通り語り終えたタイミングで、高台全体が『ガタン!』と音を出して一段ほど下に落ちた。そしてどんどん、床下の内部で機械的な何かが動きつづけ、最後には石床が階段状に沈み落ちていき、地下へと続く階段が出来上がった。この芸術品をダンジョンが認めてくれたのだろうか。



 自分でやっておいてあれだけど、こんなので本当にいいのか?



「……このダンジョンのギミック、チョロいな」

『……大丈夫なんでしょうか?』

「まあ、いいんじゃないの?」


 RTAするときも基本バグ技でショートカットとかするし。



 軽い気持ちで階段を駆け下りていくと、重い物体が地面を引きずりながら動き出す音がした。


 嫌な予感を感じて振り返ると、あら不思議、天井が塞がっていくではないか。ないか……。……ダメじゃないか。



「さ、行くか」

『見なかった事にしないでください』

「大丈夫さ、なんとかなるよ」

『その自信はいったいどこから来ているのですか……』


 最悪、また救助してもらえばいいだろうし。外にはラックさん待ちのアリッサが待機しているし大丈夫なハズだ。

 だがスノーは俺に対して少しばかり物申したい気分のようだ。ここはイエスマンのようにスノーの意見を肯定し続けてやらねばと心に命じる。



『いい加減な解き方をしたから、ダンジョンが怒ったのでは?』

「ハハ、ありえる」

『笑ってる場合ですか……』


 呆れられた。笑ったのは失敗だったか。


 まあいい。


 どの道、後戻りはできない。ここから先は何が待っていても逃げる事は許されない。



 今のうちに瞑想してMPを全回復させたり、携帯食料の固焼きクッキーの塊みたいなモノを食べてもらう。水は程ほどにして、スノーが心の準備を終えれば、再び階段を下りていく。



 そして、やっと平らな地面に足を下ろすと、奇妙な色をした地底湖が広がる空間に出た。


 碧の湖だ。変な光景だったが、そこに気持ち悪さはなく、むしろ仄明るく空間を照らし、天井の鍾乳石等のおかげで幻想的な風景に仕上がっている。水面が不規則に揺れると天井も同じようにユラユラと模様を作り、音はそれと同期してチャプ、タプと乱れて演奏してくる。


 美しい地底湖だった。



 そんな絵の中に、直立不動で立っている黒く、影のモヤを不気味に漂わせる鎧が一つある。



『敵ですか?』

「シャドウナイト。こりゃあ強そうだ」



 個体名:シャドウナイト  レベル32 異名持ち“古の一騎当千兵”




 さっきのゴブリンとはえらくレベルの差がある。エルタニア国の中でも別格の存在だろう。


 相手のレベルはホワイトジャガーの時と同じくらい。

 それを意識すると、雪山での戦闘を思い出した。あの時は色々とあったから、ちゃんと勝利した気がしなかった。


 それに今回、魔属性を使うつもりは一切ない。




 ある意味、リベンジマッチかもしれないな。



 一対一の真剣勝負。




 シャドウナイトが長刀のサーベル(シンクレアー・サーベル)を抜くと、刀身が黒いオーラを纏って妖しく揺らめいている。


 更にもう一本、左手に棘付きの護拳のある短剣を逆手に握り、それもまた黒いオーラが纏っている。


 さらに、兜の眼の隙間から、紅く、煌々と光る目のようなものが現れる。

 奴は違和感のない自然な動きで二刀攻守の構えをして、こちらの動向を待った。


 いつでも掛かってこいと言われているようだ。




「お誘いされたな」


『勝てるんですか?』


「もちろん」



 正直、どんな動きをするか知らないから、前回ほど楽な戦いにはならないだろうが、そこは自信を持って勝てると言わないと、スノーが不安がるからな。




「今度こそ、ちゃんと勝つぞ」


どうでもいい過去ネタですが、シュワちゃんの代表作と言っても過言ではない殺人ロボット2の映画で有名な台詞「アイルビーバック」てのがありまして、吹き替えだと「必ず戻ってくる」ですが、字幕だと「未来で待ってる」と表記してるんですよね。まあ、そういうどうでもいいネタでした。

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