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早く経験値をよこせ①

 ピザって凄いね。水分がほとんどないから喉カラカラになって、コーラの飲料回数が半端ない事になった。お蔭で全く苦に感じることもなく、2ℓのコーラを一人で飲み干せてしまった。


「人体の神秘って奴を感じるぜ」


 あれだけ飲んで食ったのに、全て腹に収まるとは恐れ入った。糖尿病まっしぐらだな。

 だがもっと太る必要があるので今後も同じメニューをするつもりではある。今の自分の目標は現体重プラス10キロである。……ちなみに、栄養バランスをしっかり取りつつ、大食であるほど太りやすいらしい。でも健康系の話題って、時間が経つと簡単に今まで言ってた事をひっくり返るんだよな。『~大学○○教授のお墨付き!』とか『最近の医学の常識~』なんか、最たるものだと思う。でも個人的に糖質生活はかなり信頼しているので、三日に一日はカレーライスを作る事にしよう。


 カレーライス、アレは間違いなく太る。でんぷん質たっぷり取れるからな。でもラッキョウはダメだ。あれを食べると痩せるらしい。




「それにしても、ラックさん遅いな……。今日は早めにログインすると思ってたのに……」


 ちょっと気になって携帯を探すと、メッセージが入っていた。書き込みに夢中になっていたので気づかなかった。


『すみません、仕事関係で遅れます。もし待てないなら先に始めておいても大丈夫です』


 さらに現状の気持ちを『辛くて吐きそうなキャラ』のスタンプで表している。ラックさん、ドンマイ。


「……十五分前か。一応返事しとかなきゃな」


 とりあえず『お疲れ様です……。お仕事頑張ってください』とだけ送っておく。それからアクションハリウッドスターの『未来で会おう』セリフ付きのスタンプでも張っておくか。これでラックさんも安心して仕事に集中できるだろう。……台詞の人物、その後溶鉱炉に落ちるけどね。



「さてと……切り替えてダンジョン攻略しちゃおうかな!」



 こちらは準備万端である。むしろ早く乗り込みたい気分でうずうずしていた。スノーもずっと待機状態だったので問題なさそうだ。

 


「スノー。そろそろ行こうか」

『? 精霊ブラック・ラックは来ていませんが』

「仕事だってさ。先に行ってもいいらしいから攻略しちゃおう」


 それほど時間も掛からないだろう。むしろタイムアタック……いや、違うな。今回は全領域討伐を目標にすべきか。現在スコアランキングがどう変動しているか知らないけど、流石にレベル9のままじゃあ怪しいからな。

 となると、別にアリッサがいなくてもいいのではなかろうか。


 ラックさんが操作していない間にアリッサが危ない目にあったら、申し訳ないし……。



「スノー、ダンジョンには一人で攻略するか、アリッサと二人で行くか、どっちがいい?」

『……それはどうしてですか?』

「経験値稼ぎしたい。あとラックさんが操作してない時にアリッサが動くとちょっと心配」



 ラックさんとの連携は大方わかるんだけど、アリッサのAIがどんな動きをするのか知らないし。


『……できるだけ、アリッサとは別行動がいいです』


 予想外の回答だった。

 なんか悪い意味で含みのある言い方だった。まあ深読みをすると、スノーさんはアリッサ王女が苦手なのかな。辺境暮らしのエルフ娘とシティガールな王族とでは価値観も違うだろう。そのうち、友情が芽生えるイベントでも発生するだろ、たぶん。


 それはともかく、今回スノーはソロ攻略には賛成してくれるようだ。ダンジョン内の魔物を綺麗に掃除してからアリッサを案内する形になるだろう。


 ちなみに、魔物のリスポーンとかどうなってるのか、まだ詳しい結論は出ていない。研究会でもその辺は意見が割れている。まあ、正式稼動日数も僅かなゲームで、それほど人口もいないゲームだ。あっさり結論がでる訳がないのだ。


 ただし、ダンジョンは魔物の巣窟だと聞いているので、敵が多いのは確かだろう。俺もレスの住人の一人としてデータを取るつもりだ。



「じゃあ、とりあえずアリッサに一言だけ伝えて、出発するか」


 一応、俺からアリッサに単独アタックしてくるとだけ伝えた。ラックさんがいないので連れていけないという話もしたが、アリッサはただ、静観した表情で『期待している』と言ってくれた。


 期待されているのならば応えよう。俺は期待を裏切らない男だからな! ……いま誰かに笑われた気がするのはどうしてだろうか。






 スノー単独でダンジョンに潜る事になった。


 石洞の中は火の点いていない松明台が等間隔で並んでおり、中はほとんど真っ暗だった。

 でも、何故かうっすらと見えている。光源の一切ない空間なのに、どうして部屋の奥の扉とか、怪しい窪みとか、わかりやすいトラバサミなんかが見えるんだ。


「スノー、そっちでも見えてるか?」

『はい。問題ありません』


『サモンズ ワールド』らしくない設定だな。こういう時、このゲームなら真っ暗でまったく見えませんって感じになると思っていたのに。明かりの準備もしてきたのに、無駄になってしまったか。


 まあ、両手が塞がらなくていいだろう。もしかしたら隠しデータの種族特性が関係しているのかもしれない。『エルフの感知』というのがどれほどの効果があるのかしらないが、感知能力系にボーナスがあるらしいし。


 しかし憶測ばかりは答えにならない。一応、ラックさんと合流できたらアリッサの画面のスクショを貰って、比較データを取らせてもらおう。



『あの、ゼンタロウ』

「なんだ?」

『冒険者はつれてこなくて良かったの?』

「あいつ等、なんか意味あったの?」

『荷運びとか松明持ちとか、頼めたと思います』



 へえ、そのための冒険者だったのか。


 荷物といえば、無限に入る道具袋みたいなのがないんだよな。どこかで入手イベントでもあるんだろうか。どんなゲームでも所持アイテム上限解放のイベントはあるし。


「今回はいいだろう。あくまで魔物狩りをしたいし。ダンジョン攻略後に素材は回収すればいい」

『それもそうですね』


 明らかに怪しい罠を避け、簡単に奥の扉まで到着し、特に何の仕掛けもなく扉は開いた。


 そこは一本道の通路でゴブリンが二匹、立っている。扉を開く音で気がついたのか、奴等はギーギーと鳴き始めた。共に話し合っているのか、それとも何処かの仲間に知らせているのか。どちらもレベルは7で、エルタニア王国では強い部類の個体だな。



 まあ何でもいいけど。


「スノー、ナックルダガー」

『わかりました』


 装備完了と共に、素早く半回転コマンドで魔迅残影剣を使う。一瞬で距離を詰め、背後を取る。スノーの右短剣が一匹のゴブリンの腹を切り裂き、切り口は血が出る前に凍り付く。追撃に背後から魔力剣を使用しての斬撃。それが完全に背後を取った状態なので、急所である首を刃は通過し、ゴブリンの細い首は簡単に落ちてしまった。しかも傷口が凍っているので血が飛ばない。スノーの白い和服が汚れなくていい。


「次」


 もう一方のゴブリンは既にスノーの位置に困惑しながらも対応しようとして、こん棒を振りかざしている。だがスノーと比べるととても遅い。


 回避動作を前方に使用し、一気に相手に接近する。するとうまい具合に相手の体をすり抜け、再び背後に回れた。この際、試してみるのもいいだろうと、謎の一回転コマンドの掴み技(仮定)を使用する。するとスノーがゴブリンの体を触った。その触れた背中の場所から全身に向かって凍てつき始め、その後、全身が凍結すると砕けるようにゴブリンの肉体がバラバラに砕け落ちた。


 なんともエグイ技だ。だが一切の汚れがないスノーの姿には痺れるものがあった。中二病を患っていた頃を思い出したくなる勝ち方だ。


「戦闘するともっと汚れるって聞いてたのに、氷属性のお陰でまったく気にならないな」

『そうですか。でも、私もゴブリンの血で汚れたくありません。よかったです』



 ちなみに今の戦闘でスノーのレベルが10に上がった。ほとんど上がりかけだったのかもしれないが、やはり魔属性に頼らずにいるお陰だとも考えられた。この調子でどんどんレベリングしていこう。




 ゴブリン2匹が守っていた通路の先は、大広間だった。各方面に一つの扉、計四つの扉である。真ん中に四体の銅像に囲まれた中央舞台の高台があり、壁の端になるほど汚れている。


 そんな大広間に、ゴブリンたちがあちこちにいる。まるで虫が湧いたような状態だ。地面に落ちたゼリーに群がるアリみたいなのを想像した。


 要するにウジャウジャいる。


『気持ち悪い……』

「魔物に慈悲はない」


 あんなもん害虫と一緒だ。いや害獣の方が近いか。

 それにしてもレベルが妙に高い。平原に居た連中はレベル2とか4だった。高くて最大7くらいだ。


 でもここではレベル7は当たり前にいて、高い奴だと13の奴もいる。

 しかもそいつは異名持ち(ネームド)だ。



「“軍を束ねる愚妖精”。大方、あれが大将ってところか」



 中央高台に王のように鎮座する存在だ。

 さっそくボスとか、展開が速いね。それともあれで中ボスなのかもしれない。




『……この数、なんとかなりますか?』

「むしろ同じ()ばっかりで飽きそう」



 真面目に範囲攻撃、作っておけばよかったと後悔した。

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