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実は公式の技名ではない

タイトル変更しました。

本当は『クロステラ』のみにしようかと悩んだんですが、タイトル全部消えると今まで読んでくださった方が迷子になるのを恐れて、若干削って残すことにしました。我ながら勇気が足りない……。

 相手のレベルなんかはわからないが、スノーの投擲が命中する程度だったから、それほど強敵という訳でもないだろう。

 とりあえず茶髪の男のタゲを取ろう。


「スノー、茶髪の男に適当に挑発してくれ」

『……小猿って言ったのを撤回して。そうすれば許してあげる』


 ちょっと挑発ではない気がするが、暗に自分の方が強いと言っているから大丈夫か。


『テメエ、調子に乗るなよ。こんなもん、不意を突かれただけだ』


 そう言った茶髪の男が凍って剣同士がつながったモノを指差して怒りを露わにしていた。後一言くらいあれば完璧かな。


「スノー、俺の言った事をマネしてくれ。――御託は良いから掛かってこい。それとも怖いのか?」

『……御託はいいから私と戦って。それとも怖いの?』

『小猿風情が、泣いて謝らせてやる』


 ちびっ子だからね。あんまり高圧的な煽りができてないけど、まあいいか。相手は元から激高状態の山猿みたいに安い挑発に乗ってくれた。楽でいい。

 それにしても、武器も無いのにどうやって戦うつもりなのか。それとも無手でも勝てると舐められているのか。


 どうでもいいか。


 ホワイトジャガーよりかはザコだろうし、対人戦の練習相手にさせてもらおう。



「さてと、どんな技が出るのかね」


 茶髪の男が、怖そうなおじさんポーズで手をぽきぽき鳴らしながら、スノーの前までやってくる。距離5mと言ったところか。



 本当はダンジョンに潜る前に練習をするつもりだったのだが、いい機会だ。『下>斜下>横(左)>斜上>上>攻撃』とコマンドを入力する。


 本来、格闘ゲームは基本的には横スクロール……地面が下、一直線の地面の上で戦う。スティックを横にすれば、自キャラから見て前後へ移動する。上にすればジャンプになり、大方のゲームで上入力のあるコマンド技は存在しない。例外は山ほどあるがそれらは別にしろ(溜め技、回転など)、基本はそういう仕組みだ。


 だがこのゲームは三次元(3D)の戦闘で、基本的にスノーの背中を追いかけている。スティックを上に倒せばジャンプではなく前方に移動する。


 色々と考えていたが、上向き入力のコマンドが多く存在するのではないかと思うのだ。だから有りそうなコマンドとして上記の半回転コマンドを行った。それに上記のコマンド技をスノーが持っていなかったとしても、『下>斜め>横』の魔力剣が代わりに発動する筈だ。コマンド入力は最後に判定成功した技が採用されるシステムだ。きっと空振りにはなるまい。


 それに、魔力剣自体もどんな内容だったのか知りたかったし、丁度いい。




 さて、俺の思惑がどのような結果になったかというと、結果は新技発見だった。



 スノーが、居合のような構え……溜めの姿勢をとった。姿勢は低く、右半身を前にして、相手からすればバデレールが体で隠れて見えない状態だった。そして、白いオーラのようなモノが剣を纏い始めた。何が始まるのかと待っていると、瞬間――残像のエフェクトを残しながら超高速で前方に移動し、茶髪の男の腹を剣で殴っていた。


 終わった後に、それが突進技だと理解した。しかも魔力剣を伴ってのモノだった。


 スノーのMPが15ほど、SPと一緒に減っていた。


 強い衝撃と魔法による攻撃を受けて男は悶絶し出しており、鞘の打撃を受けた部分が薄氷を付けて白んでいた。男の血色の良かった怒り顔が、今では白々とした色となっており、奇妙な怒り顔になっている。怒っているのに青ざめそうな顔面とは、けっこう面白い絵だ。


 茶髪の男はその場で崩れ落ちることはなく、むしろ目が覚めたとばかりにスノーに向かって手を向けてくる。掴んでなにかするのだろう。当然黙っている訳にはいかないので、回避行動で移動する。体の一部が冷えたせいか、奴の動きが鈍い。


 回避後に、再び前方になるように視界を調整し、今度は左半回転ではなく、右半回転でコマンド入力をして技を出す。


 するとスノーは先程とは違う構え方をする。

 左半身を前にして、右手のバデレールを逆手にする。同じように溜めてから白いオーラを剣に纏わせ高速の突撃攻撃を行った。やはり右と左で構えが違うようだ。


 それだけではない。逆手突進は攻撃を与えてから、さらにその場で立ち止まる事は無く、そのまま通り過ぎて対象の背後で止まった。



 相手は背後に回られたことに対応しきれていない。振り返って攻撃するのならスノーの方が圧倒的に早い。


 即時に追撃のチャンスだと判断し、必殺技の『旋風翔』を使う。するとダガー二刀と違って回転はせず、極端に強く切り上げてスノーは飛び昇った。ならばこっちはどうだと技の確認のつもりで下二回入力の天中殺を行うと、そっちは普通に一本の剣を地面に突き立てる構えで、急落下して茶髪の男の肩を砕いた。


 これには男も悲鳴を上げ、膝を突いてしまった。



「コンボ自体はよくつながるけど、やっぱのけ反りがないと格ゲーとは呼べんよな」


 大型モンスターを斬り付けているみたいな状態だ。


 個人的な感想は置いといて、とりあえずこのくらいだろうか。

 さて、膝を屈しているという事は更なる追撃のチャンスだ。コマンド入力の『魔力剣』ではどうなるのかを確認しよう。


 スノーがバデレールをふり抜くために構えを取った。すると再び白いベールを纏う。今度は突進はせずに、その場で雪嵐のようなオーラを纏わせて攻撃をする。


『ま、待ってくれ!』

『!?』

「?」


 男が突然、喚きだした。だが攻撃の指示は既に終わっており、止めることなどできなかった。まあ死にはしないだろうと気楽に思っていると、スノーの攻撃の軌道が急に変わり、頭頂部を掠める位置で過ぎ去った。面白い事に、男の茶髪が綺麗にハゲ散らかし、残った茶髪と頭皮がパキパキに白んで凍っている。どんな絵面だよ。スクショ取ってSNSにでも投稿しよう。



『降参だ! あ、アンタが強いって事は十分にわかった!』

『……そう。じゃあ貴方は帰って。他の三人だけでいい。報酬は帰った後にそっちで話し合って』

『わ、わかった!』


 すると、男は歯をガチガチと鳴らしながら走り去っていった。足を砕いた場合はどうなっていたんだろうなと思った。……たぶん『サモルド』の事だから、足引きずっていくんだろうな。



 まあ、それはそれとして。


「最後の攻撃、逸らしたのはスノーがやったのか?」

『はい……。あの、いけませんでしたか?』

「いいや、俺はどっちでもよかったし」


 俺としては、操作をしている間もキャラクターAIの思考が結果につながる、ということ自体が考え物だった。


 このゲーム、隠しデータや説明不足が多すぎる。


 クラスによる補正、ダメージ系の数字がステータスを除いてほぼ不明、性格による変化の有無、コマンド入力に、チャット方法もそうだ。


 さらに今回の件でプレイヤーに対する信頼度のようなモノが可能性として現れた。



 多分、スノーが俺に不信を抱いたりすると、色々な動作で弊害を起こすのだろう。例えば最後に攻撃をした時のように、モーションは行っても、実際には攻撃を当てないようにするとか。そうなってくると、武器を勝手に手放したり、魔法開発に非協力だったりする可能性もある。



 ……なんてやべーゲームなんだ。まるでリアルの人間関係のようではないか。素晴らしい。


 どっかの誰かが現実はクソだとか言っていたな。あ、自分か。


 だが、リアルなゲームはゲームだから許される。……言葉がゲシュタルト崩壊しそうだな。


 もう少し丁寧に言うと、ゲームにはリセットボタンがあるからリアリティがあっても許されるのだ。嫌なら止めればいい。即行でアンスト実行だ。


 だが、現実というリアルはやめたくてもやめさせてくれない。やめたければ自殺すれば? と冷たい人間なら言うんだろうが、それほど気狂いできないのが大多数の人間だ。さらに大人ぶった御真面目さん達は甘ったれた考えだと揶揄しそうだし、言いたい事も言えないこの世の中ってホント面倒くさい。



 そういう話は実際問題どうでもよくって。


 これから先はもっとスノーに対して真摯でいかなくてはいけないという事だ。


 さっさとゲームに戻ろう。



「さてと。スノーさん。いやスノー様。そろそろ、お詳しい事情を御説明してくださらないかしら?」

『なんですか、その口調』

「信頼度稼ぎ」

『元に戻してください。気味が悪いです』



 そうして数分間、冷めてしまったピザと氷が解けて薄くなったコーラを胃に流し込み、その間に連れてきた冒険者達の事情を聞いていた。まあ、ユリウスだったかユリアンだったか忘れたが、結構しょうもない事を仕掛けてきたものである。ダンジョン内にいる時にしかけりゃいいのに。それともそういう計画だったけど、ジェノバさんが早まっただけかもしれないし。


 まあいいか。



 その後はラックさんが来るまで技の確認をしたり、研究会に参加しにいったりして時間を潰した。ちなみに俺が発見した技は『魔迅残影剣』と名付けられた。スキルの残影と魔力剣を所持していないと習得できない技らしいのでそう名付けられた。まんまだけど、わかりやすいからいいか。






・ゼタ君の個人メモ

 スノー 隠しデータ一覧。


 スキル使用

《魔力剣》武器に自分の得意な魔法属性を付与する。スノーの意思で属性変更可能。武器によって付与するエフェクトがかわる? 牙剣みたいに氷の剣が他の武器ではできなかった。


《残影》 常時スキルなのか? 回避行動をすると回避時間が増えるとか?



・魔法

 得意属性 スノーは風・氷・闇が得意らしい。反対に苦手属性とかありそう。



スノーコマンド技

《魔力剣》  下>斜め>横

 MPを消費。魔力剣の即時出しの一撃で解除。中威力?


《旋風翔》  横>下>斜め

 カウンター上昇技。硬直無し。右か左かで回転方向が変わる。剣一本なら切上げ。


《天中殺》  下>下

 落下系。良いダメージ。トドメの技。


《魔迅残影剣》下>下斜>横>上斜>上

 高速直進の攻撃。魔力剣兼用。MP消費。威力が乗るし使い勝手もいい。


《???》  一回転

 スカった。たぶん掴みだから投げ技だと思われる。詳しくは不明。


《空中ダッシュ》  アサシン系統クラス限定?




・隠しデータ

《擬似心眼》 ランク忘れた。Cだったかも? 確認もできないのでわからない。トロフィー要素? 効果があるかどうかも不明。回避回数の連続成功で得たので、結構な難易度。続けるかわからない。


《急所発見》 コレも同じく。とくに何も変わらない。ランクがないから結構簡単?



・種族特性

《エルフの感知》 視覚・聴覚が人間よりも優れているらしい。補正要素がある?


《火炎弱体》 暑さ・熱・炎に対する耐性が低下する。

友人がステータスを見た時に、擬似心眼とかないん? と聞いたのでその辺を一応。忘れた訳じゃあないです。


どこかで主人公が、どのような効果なのかを知ると思います。

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