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クロステラ ― 俺のパソコンと異世界が繋がっている  作者: 白黒源氏
Episode:Μ(ミュー)
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シュールなコラ画像みたいな光景だな

 以前、どこかで見た爆弾を使うデスゲーム系の漫画だったか。

 ゲーム廃人の主人公が丸みのあるコントローラーを全力で投げると壁に突き刺さった……なんてシュールな一コマを目にした覚えがある。当時それを見た俺は「いやいや、どんな腕力だよ。どころかそのコントローラーは鉄製なのか?」と、あまりの荒唐無稽さに苦笑いをしたものだ。



 たった今、自分の身に起きた出来事が似たものだったので、ついそれを思い出してしまった。



 自分の親指が板みたいなコントローラーを破壊していたのだ。食パンを指で押すみたいに、沈んで突き破り、裏側まで指が見えていた。割れたとかじゃあなく、押し込んで親指が出ていたのだ。




 対戦中、ダイスが思った以上の適応力を見せたので、俺も熱が入ってきた瞬間だった。中キックのボタンを押すと不発し、親指に違和感を感じたので下に目をやったらこの有様だった。


 一応、中キック縛りで残りの対戦時間も継続を試みたが案の定、他のボタンも不動作になっていた。結局、何もできずに負けてしまった。



 こんな馬鹿げた負け方をしたのは生まれて始めてだが、そういうのはどうだっていい。こんなの、普通はありえない。どこかの誰かがイタズラで仕込みでもしない限り……。


 この場にいる人間でそんな企みをしかねないのは氷魚先輩だ。実績はないが、そういう破天荒な行為をしそうな人物でもある。現に賭けを提案した時、俺ではなくダイスを指名したのだから一番怪しい。



「お、おいおい。ゼタくん。キミってば握力いくつなんだい? うわぁ、なにこれ、ぶち抜いたみたいになってる……あ、Aボタンの破片、中に入ってた」



 だが氷魚先輩はと言うと壊れたコントローラーを引っ手繰り、勝手に観察して驚くばかりだった。賭けの話なんて忘れているみたいに。


 そもそも、だ。


 この入部試験は俺が言い出したことで、氷魚先輩が仕込みをするタイミングはなかった。ゲームを選んだのはダイスだし、そこまで計算して予測するのは相当難しいだろう。コントローラーだって骨董品並みに古い物だし、わざわざそんな勿体無い行為をするハズがない。


 ならば他を疑うのだが、斉藤部長もそんな無駄な手間などしないだろうし、細工したのだったら俺に賭けたりしない。同様に双子先輩も容疑から外れる。


 そして最後にダイスも疑うが、コイツは最も論外だ。ダイスは部室に来たばかりで、ゲーム機が備えてあるのも今しがた知ったばかりだ。仕込み云々の前提が成り立たない。



 だったら……最後に思い当たる節はアッチ側(サモルド)の事情だけが候補として残る。



「……すみません、指痛めたみたいでお先に失礼します。あと、コイツは弁償しますんで」

「あ、おい!」



 氷魚先輩から壊したコントローラーを取り上げて退散した。この場で追及を受けるのは悪い予感がしたからだ。


 下駄箱で靴を履き替えていると、ダイスが肩をつかんで制止してきた。少し前までなら鬱陶しく感じたが、今回は逆に好都合だ。



「おい、どうしたんだよ」

「丁度いい。一つか二つ、聞きたいことがある」

「いきなりだな……。別にいいけどよ」

「とりあえず握手しよう」

「オマエはオレの手を潰す気か!? ゼッタイ嫌だぜ!?」



 軽い冗談だ。

 それに握手なんかしなくても、その辺の小石でも掴んで力を入れてみたらいい。それで自分の指が怪力になったかどうかは簡単に把握できる。



「……ふむ。潰せない、か」

「何してんだ?」

「石を潰せるのかの実験」

「はあ?」



 コントローラーを潰したときと同じように力を入れてみるが、結果は普段と変わらず。小石は何ともなかったように手元に残っていた。


 念のため右手だけでなく、左手でも試してみたがこちらも別段、何も無かった。



「うーん。妙だな」

「あのさぁ。オレにわかるように説明してくれ」

「俺にもわからん。わからんから調べてる。逆にダイス、お前の方で何か変化はないのか?」

「あ? なんでオレ?」

「お前も俺と同じ、サモルドのプレイヤーだからだ」



 こういうのはとにかく取っ掛かりを見つけることから始めなければいけない。一つヒントでもあれば大体の場合、関連性と予測で調べていける。


 しかしダイスは「ううん?」と見当もなさそうな声で応えた。あまり長考だと時間の無駄だし、こっちから聞いて促そうか。



「走るのが速くなったりとか、腕力が強くなったとかは感じないか?」

「いや、特にはなんとも。つーか運動苦手だし、あんまりそういうのはやらねえかなぁ」

「運動が苦手?」


 ちょっと引っかかるな。確か以前、コイツに胸をつかまれたとき、地面と足がピッタリと離れない見事な掴みをしたハズだ。あれは柔道だとか空手をやっていた人間独特の力強さだった。


「……ダイスって武道経験者だよな?」

「え? いや、やったことねえな。兄貴はやってたけど」

「お前の兄弟の話なんざ聞いてねえよ」



 武道経験者というのは俺の勘違いだったのだろうか。でも自分の勘違いというのは簡単に認めたくはないものだ。だからもう少し深く潜っていく。



「ちょっと今、俺の胸倉掴むのやってみ」

「ええ……意味わかんねえよ」

「いいからやれって、怒らねえから」



 結果、やらせてはみたが、全然力の入っていない……ただやらされているだけの掴みをされた。まるで喧嘩ド素人ですって具合に体の使い方も悪い。


 あの時、俺を怒った奴と同一人物なのかと疑うくらいの下手さだ。もしもあの時、こんな具合に掴まれていたら、俺はきっとショートアッパーを入れていただろう。



「お前、それ本気か? ふざけてんの?」

「やれっていうからやったのに、何で怒られんだよ。つーか周りに見られてんの、恥ずかしいんだけど……」

「知るか。今それどころじゃあねえんだよ」



 もしかしたらあの時のダイスも、自分の実力とは違う、外の影響を受けていたのだろうか。だとすれば今の弱腰も一応は頷ける。


 ならばどうして今は発動していないのか。なにかしらの発動条件が必要なのだろうか。考えられる最初の候補は、やはり感情が起因しているとか……。



「――お、いけた」

「今度はなんだよ?」

「指で石が割れた」



 怒りだとか闘争心を意識してみると、指で挟む小石が簡単に砕けた。コレを繰り返せば小石を粉々にするのも可能だろう。まるで自分の手が万力みたいにどこまでも力が入る。


 なんとも単純だが、気付かないとわからないものだ。



「久しぶりの新発見だな。褒めてくれても良いんだぜ?」



 いや、褒めてもらわなくってもいい。自分で自分を褒め称えるね。えらいぞ、俺。さすがだ。



「いや、スゲーんだけど、ちょっと場所考えてくれ。スゲー見られてっから……」

「……でも左手はダメなのか」

「なあオレの声聞いてくんね!? わざとなの? わざとだよな!?」



 これはスノーにいい土産話ができたかもしれん。今日は一直線に帰ろう。最近、行き詰っていたから余計に気分が弾んだ。




 そうしてダイスの相談の話も忘れて、勝手にいい気分になって自室へと向かうのだった。




 ……未だ、自分の腕の異常事態にも気付かぬまま。

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― 新着の感想 ―
[一言] うーわ身体能力まで影響が及ぶんだ どんなゲームだよ すげー
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