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クロステラ ― 俺のパソコンと異世界が繋がっている  作者: 白黒源氏
Episode:Μ(ミュー)
173/181

時を遡れば――④

こんなところで言うのもあれですが、申し訳ありません。コメントなど読ませていただいているのですが、返信できる余裕が色々とないモノで……。この場でお礼申し上げます。ありがとうございます。


それから今回で過去、置き去りにしてきた重要なファクターの描写は最後です。(本当はスノーの京都ぶらり一人徒歩録も入れようかと思ってましたがさすがにどうでもいいかと……)

《部活動》。


 俺にとっては意味も意義も価値も見出せない……つまるところ興味のカケラもない存在だった。もしもこの現状がオモシロ可笑しい青春コメディだとしたら……例えば活動内容不明の部活動が存在して、登場人物たちが好き勝手する組織などが登場するのだろう。期待したところで絶対にないだろうけども、あったら面白そうだ。当然、傍から見るだけなら、という話だけどさ。


 当事者なんてゴメンだよ。俺は既に別件で当事者なんだ。もう手一杯だよ。



 ……それはそれとして、この学校には何故か必ず部活動に参加しなければならないという納得し難いルールが決められていた。素直に受け入れたくはないが、回避不可能な案件ばらば最低限の手続きで終わらせよう。要は適当な部活道に席だけ置いておけばいいのだろう。そういうつもりでどこか幽霊部員を募集してくれていないかと校舎の隅に設置されている部活動を見学しに行った。



 注意事項として、漫画部は絶対に近寄ってはダメだ。芸術校の中では文化部の連中であっても、熱血スポ魂根性を持っている連中だ。迂闊に勧誘でもされたらその時点で引きずり込まれることも予期せねばなるまい。大きな部活と言うのはそういうのが恒例なのだ。


 厳しい上下関係、本人たちの落書き混じりの同人漫画の品評会、有無を言えない先輩ヨイショの雰囲気もあるだろう。さらにその部屋はまともに換気もできないから最低最悪にインクと汗の汚臭が満ち満ちている……。そんな死にたくなるような世界が待っているに違いない。



 うん、ほとんど偏見だけどそんなところだろう。



 とりあえず、色々と楽ができそうなところを回ってみた。



 映画研究会は部費をふんだくる金食い虫だった。なんで見る気もない部内上映会で札一枚取られるんだよ。そんなだったら自分でディスク買うわい!


 茶道部とか意外と廃れてるんじゃあないか? と思っていたけど、そこはさすが京都の学校……。アレは別世界だった。道具買うだけでも値が張りそうだった。これもパス。


 調理部とか完全に女の花園を築いていたし、チラッと見たパソコン部は遊び成分など全くない、プログラミング言語を齧り続けているメガネ集団だった。なんか洗脳教育の事例みたいに見えて一瞬で扉を閉めた。……ところでなんでプログラミング言語って無駄に多種類あるの? 統一しろよ。




「……くそ、運動部がないせいで、文化部はユルい空間っていう雰囲気が全くないぞ」




 いや、運動部がないわけではない。だが、その存在はメジャー的な野球部やサッカー部というものしかないのだ。そしてその数は文化部より下回るわけで、つまりこの芸術高校では運動部のほうが少数派となっている。普通の学校とは立場が逆なのだ。


 だったら幽霊化しやすそうな運動部に席を置けばよいのではという話になるのだろうが、それも嫌だ。俺は体力に関しては過去、ジム通いをした経験で多少の自信はある。だが球技だけはダメなんだ。ボールはいつも俺の顔面を襲いやがる。俺にとってボールとは友達ではなく敵である。ボールの友達であるキャプ○ン翼も同時に敵だ。


 というわけであっちは最初からノーチェックだ。……球技じゃない陸上でもしろよって? いや、なにが面白いんだかわからんのもパスだ。



 結局、どこでもいい筈なのにえり好みしすぎてフラフラと彷徨ってしまうこととなった。そしてついに、俺は薄暗い端の端、木造の空き教室にまで辿り着いた。一応、札には『ゲーム制作部』とあった。



 こういう誰もが興味を持つであろうゲーム関連も、きっと七面倒なことをやらされるんだろうか。でも不思議なことに、大人数を抱えているというほどの大きな部室でもなさそうだった。どころか中から聞こえてくる声は数人程度のもので、割と小規模なのだろうと知れた。


 とりあえず中を覗いて、席だけ置かせてくれるような緩そうな部活かどうかだけでも確認してみようじゃあないか。……という所で、俺の未来は決定してしまった。



「お? 誰ですかな?」

「おー、少し待てや。すぐストップするから――ちょっとまって、ストップして、いやストップしてって言うたやん!」

「真剣勝負に待ったもカカシもないですぞ」

「こん卑怯者! テメエ賭けは無しじゃボケ!」

「それで結構ですぞ、負け犬」



 ……学校の校舎内で部屋一つ使って平然と巨大テレビを使って、ゲームで遊んでいた上級生達がワイのワイのしていた。しかも遊んでいるのは格闘ゲーム、ついでに言うと自分が過去にかなり熱中していたタイトルゲーム「GB(グレイトバトル)」であったのだから、胸がザワつかないわけがなかった。


 目の前で対戦している風景を見てしまうと、自分も参加したいという欲が沸々としてしまう。



「ようこそ、ゲーム制作部へ。入部希望者ですかな?」

「いえ、見学しに来ただけですので」


 挨拶をしたのはメガネでポロシャツの温室育ちって感じの男だった。あと、口が悪い方は剃りこみ入りの短髪兄ちゃんで、服はラフな赤いタンクトップの如何にもガラの悪い男だった。なんだか対照的だな。



「おっと自己紹介を済ませておきますかな。僕は伊藤一雄(いとうかずお)。それからこっちの金髪が僕の弟の雄二(ゆうじ)ですぞ」

「…………あ、そう……なんですか?」


 え、なに、何の冗談?

 とりあえずおちょくられているだけなのか真偽が定かではないが、短気そうな金髪の方は全く否定する様子がなかった。



「……本当にですか?」

「うむ、双子ですぞ」

「全ッ然似てねえだろ」

「あ、ハイ」


 

 メガネ見て、金髪見て、再びメガネを見て……どうでもいいかと思うことにして処理しきれない感情を無視することにした。いや、一発目からキツいギャグを見せられてしまった気分だ。



「それから、こちらのソファで横になっておられるのが、ウチの実力派選手の副部長、球磨川(くまがわ)氷魚(ひお)先輩ですぞ」



 言われて、初めてもう一人この部屋に人が存在しているのだと気がついた。


 そのソファに居たのは女子生徒だった。長い髪をゴムで縛ってポニーテイルにしており、スカートなのに足を組んでだらしなく寛いでいる。太もものタイツにしばしば視線を奪われそうになるのだが、それが逆にムカついてくる。


 無神経なのか無意識なのかどちらでもいいが、そういう目のやり場に困る光景を作らないでほしい。意識しないということができない男に対する挑発行為だ。これがもし見せ付けられているというのならば、むしろ舐めるように見てやろうじゃあないか。



「どっちもホント下手っぴ。みじんこがどっちのが強いのかって競っても結局だよね? 一雄くんは最初から最後までガタガタ、ワンパターン、そんなのすぐに見切られる。あとコンボミスるの良くない。それから雄二くんはコマンド練習からやり直しね。体は最後の行動を覚えるんだから、下手な入力を覚えたままだとずっと下手なままだよ。矯正してね」

「すみませんですぞ」

「……うっす」



 あれれぇ? おかしいぞぉ? ここ、ゲーム制作部のはずだよね? なんで制作側でなくてeスポーツの選手みたいにまともな指導でゲームしているの? やってること、畑違いじゃあない? ……今気がついたけど、ゲーム制作という割りにプログラムを組んだりするようなパソコンが一台もないし、端のほうに古臭いノートパソコンが置いてあるだけだった。……しかもあれ、OSがMEじゃあないのか?


 なんだか知らんが、違う方向で心配になってきた。珍生物と遭遇してしまったとか、そういう具合で……。




「ねえねえ、キミ。名前は?」

「――なッ!?」



 気がつけば、目の前に球磨川という女子の顔が突如現れていた。

 いつの間にソファから目前に移動していたのか。まるで妖怪だとか思ってしまった。体格が小さすぎるわけでもないのに、どうやって視界から消えたんだ。



「辻風、善太郎です」

「おっけ、じゃあー……名前長いから端折ってゼタくんね」



 唐突にハンドルネームと同じ仇名をつけられた。



「さっそくだけど入部試験するから」

「あの、まだ入るって決めてないんですが?」

「いいからいいから。そっちの選んだゲームで私に勝てたら好きにしていいから」



 そういうと、棚から格闘ゲーム以外の対戦形式のゲームなどを取り出してきた。双六ゲームとかレースだとか、モンスター育成系とか……。中にはファ○コン版の囲碁なんかも取り出された。


 なんだか有無を言わさずという感じで、ゲーム制作とは関係なさそうな入部試験をけしかけられた。というか、負けたら好きにされて無理やり入部させられるのだろうか? それは断固拒否しなくてはいけない……のだが、丁度いい機会だとか思ってしまった。何せ、目の前で久しぶりに自分の好きな格闘ゲームを見せられたのだ。自分もちょっとくらい触りたい。


 それに逆に言えば勝てば好きにできるということでもある。幽霊部員として席を置くことも簡単だろう。



「じゃあ、いまさっきやっていた、そのゲームで」

「うんうん、そうこなくっちゃね」



 とりあえずコントローラーを選ばせてもらう。自分は一番使い慣れているゲームパッドを選ぶ。

 一方の先輩はアーケード形式のコントローラーを用意すると、膝の上に置いた。多少はやりこんでいるのか、見た目は様になっている。


 そして対戦画面にてキャラ選択。既にここから勝負は始まっている。キャラクターの多い格闘ゲームでは各々、相性が発生する。有利不利は当然のようにあり、相手が何を選ぶかで勝率は大幅に変わってくる。


 だが、そんなセコイところで勝敗の有利を得ても俺は満足できないかもしれない。だから先にキャラクターを選んだ。



「“氷雪”か。本当にそれでいいの?」

「俺は先輩が何を使おうが勝つ自信があるんでね」


 氷雪とは、中距離型の準オールラウンダータイプの槍兵の妖精だ。弱点は近距離で攻められると抵抗しにくく、遠距離で離れて攻撃されると突破するのに少々難があるくらいだ。けれど、自分の得意な距離になると最大限の威圧と火力を発揮し、全部のキャラに対して特別に相性の酷い対戦がないというキャラだ。



「じゃあ、採点しようか」


 そう言いつつ、何の躊躇いもなく球磨川先輩は同じ“氷雪”を選んできた。

 これはさすがに舐められている。


 同じキャラを選ぶという行為は、相手よりも自分のほうが上手く使いこなせるというアピールに他ならない。


「……採点たぁ、随分と上から見てますね」

「なぁに、私はキミの実力を見切っているのだよ」

「寝言は寝てから言いやがれってんだ」

「威勢がいいのは良いね」



 どうやら設定はベーシックな二本先取制。先に二ラウンド勝利した方の勝ちだ。



『ラウンド1、ファイト』



 そして、そこから長い長い……実に長い99秒が始まった。

 一ラウンド目から差し合いが拮抗した。槍同士がぶつかって1フレームの間、硬直する演出が入る。同じ動作、同じ戦術、攻め方もその理論も最適回答。やっていることがすべて同じなのだから、相打ちになるし、多少別の動きをしたと思ったら、結局振り出しに戻る……。


 お互い同じ無敵技を放つと動作が強制キャンセルとなり、すぐさま別の攻撃で応戦したり、その度に相打ちの応酬となる。そんな繰り返しだ。


 なんだか、鏡と戦っているようだと感じた。


 しかもこの人、まさかコレほどまでに正確で素早い指捌きとは思わなかった。多少のやりこみだけでは済まない。もはやバケモノ級の実力だ。下手なことを言うもんじゃあないが、俺より強いかもしれない。


 結果、世にも珍しい両者体力1残しのタイムアップ。一秒たりともせめぎ合いが止まったことはなかったのに、だ。


 とてつもない緊張感が首筋を強張らせた。喋る余裕すら惜しむほどの戦いなんて、ネットで師匠と対戦して以来だった。



『ラウンド2、ファイト』


 格闘ゲームで引き分けになることはあまりないのだが、この“GB”では一応、両者共に一本を取ったことになる。もう一度引き分けにならない限り、どちらかが勝利した時点でこの勝負の勝敗は決まることになる。


 どうするか考える。負けたくはない。ここまでの強者だ、勝ちたい。だが同じことをすればワンパターンで見切られる。

 ならば今度は最適の行動ではなく、あえて主導権を相手に渡して挑む。後手に回りこみ、相手の僅かな隙を突いてひっくり返す作戦だ。



「ッ。へえ、凄いね。ガードが驚きの白さだ」


 相手の攻撃を短いタイミングの中で的確にガードをすると、白い反応を起す。コレをすると、必殺技のゲージが溜まりやすい上、ガードの硬直が減り、特定のカウンターを狙うことも可能となる。


 相手の連撃をこの白ガードで殆んどを防ぐと、しばらくは反撃不可能な間合いと隙の少ない攻撃で様子を伺われた。

 それでも俺の方が必殺技ゲージの溜りが早い。そろそろ上限に達する頃になり、これならむしろ、今から俺のほうが攻めた方が有利に動けるだろうというタイミングで、先に相手が仕掛けてきた。



(ついに来た、この後の連撃は例の中段か下段しかない!)



 簡単な二択である。中段は攻撃に隙ができ、容易く攻撃を差し込める。逆に下段なら攻撃された後に白ガードをすれば反撃が確定でできる。



(どっちだ。どっちで来る? いや、そんな簡単な読みでいいのか? この人ならば何かしでかしてくるとは思わないか? なら――)



 あえて、普通では行わないような動作で来ると踏んで、使った後に大きな隙のできる無敵技を使用した。コレでどんな攻撃が来ても、大概はダメージを受けないし、この判断が失敗だったとしても、ゲージを吐いてキャンセルすれば帳消しに――




「やっぱりキミはゼタだったな」




 自身が気を失ったかと思うほど、唖然としてしまった。



「――は?」



 何故、どうして、と思うしかなかった。相手も同じく、俺と同じ無敵技を使っていたからだ。


 そんなの、俺の常識では考えられなかった。一応、連撃中にこの技を出せること自体は知っていた。だがリスクが大きすぎて、まさかその技を出すなんて考えが最初からなかったのだ。ガードしてる相手に隙のありすぎる大振りカウンター技を撃ったら大反撃を受けるのは必須。いや、本当にどうしてそれを撃ったんだ。……違う、俺が間違いなくカウンターすると読んでの行動だったんだ。


 同じ無敵技を使った瞬間、お互いの動作が強制キャンセルされ、キャラクターはすぐさま通常攻撃可能な状態へと移る。この状態だとゲージを使った俺のキャンセルは無為になる。その上、俺は読みが不十分だったこともあり、動作が一歩速かったのは球磨川氷魚だった。



 結果として、その攻防の一つで流れが決まり、俺は負けてしまった。




「ほい、部員一人確保。ようこそゼタくん。皆、新しいパシリを歓迎しよう」

「いやー、凄い接戦でしたぞ。ゲーム制作とは全く関係ないけど」

「マジでそれな」



 そうして入部させられることになった。まあ、軽はずみに了承した自分が悪いんだけどさぁ。



「とりあえず先輩、強すぎです」


「ゼタくんもねー。いやあ、相変わらず目もいいし勘もいい」


「……相変わらず、ですか」


「あとそうそう。自己紹介。ちゃんと言えてないから言うけど、私が“ベア”だから」



 ……いや、薄々そうなんじゃあないかと思っていたが、この人――



「やっぱりアンタ師匠かよ」



 俺がネットで格闘ゲームやってた頃の師匠だった。

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