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“無貌の白雪”の雛形

そろそろタイトルのカッコ仮を外すタイトルを考えねば……

『さっそく合流バンザーイっつー訳なんだけど、自己紹介でもしときません? ほら、誰が誰とか俺等は知ってても、アゲイルもスノーちゃんもアリッサさんも、俺らの事は知らないだろうし?』


 珍しく小田が良い事を言った。会話がキャラにも反応するのであれば、きっとその内、誰が誰のプレイヤーか混乱する可能性もあるだろう。ラックさんの指示をアリッサ以外のキャラが聞いちゃったりとか、あるかもしれない。



『それじゃあ年長者の僕からいくよ。僕はブラック・ラック。ラックでいいよ。アリッサのプレイヤー……世界感を大事にするなら、精霊でいいのかな? それとアリッサは前衛剣士って感じだけど、戦旗の支援スキルが多いから、将来的には中衛支援って感じになるかな。王族だからだとは思うけど、まあその話はあとで詳しく説明するよ』



 スノーとアゲイルが共に頷いて、よろしくと言葉を述べる。



『はいはーい。次俺ね、マダオだよ。竜田アゲイルの精霊だよー。えーと、アゲイルは竜騎士で、ワイバーンとか乗って戦ったりできる。メッチャ強いからよろしく! あ、一応槍と盾が使えるけど、槍だけの方がモーション格好良いからこのままでやってくから! 一応、前衛盾はできるけど、個人的には遊撃の方が好き。はい、以上! よろしくねー』



 相変わらず砕けた挨拶だった。お陰でキャラの三人が戸惑っていた。でも、アゲイルは自分が強いといわれた時だけ嬉しそうだった。うん、要点も押さえてるし、小田だから大丈夫だろう。



「じゃあ最後に俺か。ゼタです。スノーの精霊で、一応前衛職希望。スノーのステータスがかなり後衛特化だけど、戦ってみた感じ、斬り合いが無理でもなかったから最前線火力アタッカーを目指そうとしてます。戦力的にはたぶんこの中で一番弱いかな……」

『うそはいけない』

『そうだね、嘘はダメだよ』


 ラックさんと小田が間髪いれずに訂正をされた。

 俺が言いたかったのはスノーのレベルとかステータスの事なのだけど。


「いや、あの、スノーのステータスの話だから……」


『ゼタ君はガチ勢だから』

『そうそう。縛りプレイしちゃう人だから』

『変態だからね』

『よ! 精霊界の変態!』


「ちょ、マダオはともかくラックさんまで俺の自己紹介で遊ばないでくれません!?」

『『WA・HA・HA・HA』』


 悪ふざけされてまともな自己紹介ができなった。

 この場合のヘンタイはむしろ褒め言葉なので若干嬉しいけど。しかし、HENTAIだと聞いたキャラクター三人の反応は、若干気まずい空気になっていた。慌てて誤解を解くべく何を言うべきかと考えていると、スノーが口を開いた。



『精霊さんは、ゼタという名前だったの?』

「え? あ、ああ。その話、しちゃうか」


 どうやら元の自分の名前と俺のハンドルネームが同じことが気になるらしい。


「えっと、気になるか?」

『まあ、はい。そうですね。私の名前は精霊さんと同じだったんですね』


 何かを考える素振りをすると、スノーの表情が少しだけ和らいでいた。


『それはそれで、ちょっとだけ嬉しいです』

「そうなの?」

『はい』


 スノーの何がそう思わせたのかは知らないが、嬉しそうならそれでいいか。



『コレで一通り、僕等の紹介は終わりでいいかな』

「え? ちょっと待ってください、俺の自己紹介だけ中途半ぱ――」

『アリッサで、クラスは剣士だ。ラック殿の精霊付きで今はただのアリッサという事でよろしくお願いします』

『よろよろー』

「あの、えっと――……はい、よろしくお願いします」


 俺の話は流されてしまった。まあ、いいか。時間も勿体無いし。流れに逆らっても、疲れてまた流されるだけさ……と、涙を呑んで受け入れた。



『竜田アゲイル。クラスは竜騎士だ。竜人族でマダオ殿の精霊付きだ。よろしく』


 ラックさんと俺とでよろしくと挨拶をしてから、最後にスノーだ。


『スノー。ゼタの精霊付き。一応、エルフ。よろしくおねがいします』


 どうやらスノーは闇エルフの事は伏せておきたいらしい。昨日聞いた話を覚えていたので、公衆の面前で過去の先祖の話をするのはしたくなかったのだろう。闇エルフの立場がゲーム世界でどんな認知のされ方をしているのかはわからないが、ステータスの友好関係を見る限り、あまりよろしくないだろう事はなんとなく判っている。


 俺も伏せておくのには賛成だ。いずれラックさんには話すべきとは思うが、今はいいだろう。


 これで全員終わったと思ったが、一つだけ忘れていることがあった。


「スノー、クラスを言ってないぞ」

『……自分のクラスがわからない』

「あ、そっか。わかんなかったか」

『うん』

「一応、軽剣士って事になってたぞ」


 確か前に携帯でステータスを確認した時は軽剣士となっていたはずだ。一応、今もそのはずだと思ってステータス画面を開くと、クラスが無効になっていた。


「あれ? クラス無しになってる」


 そういえば武器を装備した時にクラスが決まったんだから、武器の一つも持っていない今のスノーではクラス無しという判定がされていてもおかしくはないのか。


 今更だが、武器も持っていない状態で今日一日、スノーを放置していた。アゲイルがいるから大丈夫だったのかもしれないが、昼間に何かあったら大変だった。……まあ、スノーは魔法が使えるからそこまで武器の事にこだわる必要もないけど。


 とにかく、今後は気をつけよう。



『どうかしたかい?』


 ラックさんがこちらの事情を気にしてくれたので、現在、スノーが武器を持っていないことを話した。たぶんその所為でクラスが無効になっていると。ラックさんがそれなら――と提案をした。


『だったら、今からみんなの装備を整える? 良い武器屋があるんだ』

『お、行きたい! グレイブより強い武器とかありますかね?』

『一応王都だから、村の武器屋よりも強いと思うけど』

『あー、それなら微妙ッスかね。今装備してるグレイブだって、ドラグラン王国の騎士クラスの武器ですし』


 小田は少し残念になりながらも、しかし期待は捨てない様子で武器屋に行きたがった。

 俺も武器屋には興味津々だ。ちゃんと装備を整えたい。


 だが少し考えなくてはいけなかった。



「お金がないんですけど、出世払いとか大丈夫ですか?」



 今現在、俺のスノーは一文無しである。魔物を狩ってもお金は落ちない。素材は手に入れてあるが、できれば武器の素材として使いたい。あんな遠い雪山にはしばらくはいけないだろうからな。


 手持の素材は異名持ちのホワイトジャガーの牙があと一本と、剛爪が数本、毛皮が一枚分だけ。


 実験台にゴブリンを殺して回った時は、ほとんど遺体が残らなかったし、すぐに狩るのをやめてしまったので、スズメの涙ほども得られなかった。


 すると助け舟とばかりにラックさんが提案してくれる。


『一応、手持はあるから、一人分くらい大丈夫だと思うよ。アリッサ、いいかな?』

『ゼタさんは頼りになると聞いています。構いませんよ』


 そういう事で、ありがたく装備の支度金を頂ける事になった。

 まあ、王族プレイヤーの財布には最初から期待していた感もあるけど。


 しかし、どうもその辺の話が思った様子と違う。アリッサの姿は貴族がお忍びで冒険者のフリをして楽しんでいる……というよりは、冒険者として生活している、という風だったからだ。


 何か事情があるのだろう。もしかしたら昨日言っていたお願いとも関係しているのかもしれない。





 アリッサに案内してもらった武器屋は冒険者ギルドの建っていた大通りより、かなり外れた郊外の小道にある小さい店だった。


 中に入ると、武器が壁に飾られ……いや、固定された状態で並んでいた。形が立体的で重い打撃武器(メイスや鉄球)などは机の上のケースに入っている。軽い防具や服なども置かれていて、小さいながらもこの店一つで何でも揃いそうな雑多さだった。

 外からも中からも、小さい店はゴチャゴチャとしていて、薄暗いのも相まって怪しさが漂っていた。



「当然のように流行ってる様子はないですね」

『まあね。人避けのためにわざと、入り難い見た目にしてるらしいからね。とりあえず、好きなのを選んできてよ』



 また事情がありそうな言い方だ。普通にありきたりな予想をするのなら、厭人家の気難しいオヤジで鍛冶業に専念しているとかそんなのかな、とも思うけど、店主を見るとそれほど変人にも思えなかった。

 なんだか丁寧すぎるくらいの対応と「いらっしゃいませ」を言うあたり、偏屈な人嫌いでもなさそうだった。


 訳あり、というよりかは、もうアリッサの王女様がらみの何かなのだろう。



『……何がいいの?』

「とりあえず、小剣と短剣を見て、握って確認してみよう。防具はとりあえず一式。服は……そうだな。一応買わせてもらおうか。村から着てきた服も古いだろうし、丁度いいだろう」


 そうして色々と装備品を選びながら、スノーの筋力でも辛くない程度のモノを選んでいった。


「……バデレール。いいね。スノー、片手で持てる?」

『左手はちょっと……右手なら何とか』


 幅足り50cmほどの片刃で、少しだけ反っていて広刃なのが特徴だ。ちょっとだけ短刀っぽいのが気に入った。

 それからナックルダガーを左手に持たせて、手に馴染むか聞いてみたりする。順手と逆手を持ち変えるのがやや困難だが、振り回すだけならバデレールより簡単だと言ったので、二本購入を決める。


 こうして武器は割と簡単に決まった。



 逆に防具の方は、選ぶのが難儀した。


「疾走、回避、全力回避……。うーん」



 装備を装着してスノーの体を動かしてみるが、いい感触が得られない。


 筋力や体力が不足しているのか、身体の動きが重いのだ。色んな装備を試しても、スノーの動きがいつもの三、四割ほど低下してしまう。もっと軽いのはないかと思ったが、残念だが望むものはなかった。いっその事、一式装備は諦めて、手甲と膝当ての軽鉄だけにしておいた。擦り傷防止にしかならないだろうが、これくらいでないと俺の求める速さには届かなかった。


 服装は、動きやすい奴で好きに選んでいいよ。とスノーに任せると、彼女は何の迷いもなく腹まで布のないノースリーブシャツと、黒いハイレグパンツを選んだ。たぶん、本気で動きやすいのを選んでくれたんだろうが、妹の部屋着並みの露出度だった。


「ちょ、ちょっとまって」

『なにかおかしい?』

「……いや、おかしいというか、悪くない。むしろ俺は好きなんだけど、ちょっと肌が出すぎです」

『この国は暑いから、これくらいで丁度いい』

「そりゃあ雪山と比べたらどこでも暑いだろうけどさ……」


 流石にそのままだと俺の趣味が疑われるので、引き続き羽織れる物を探した。



 その結果、なんとファンタジー風の着物もどきの上着を発見した。帯がなく、フックで前をとめるらしい。あと包帯を上から巻くことをオススメされた。でないと激しく動いた際にフックが取れるらしい。


 何でこんなのを?と聞くと、店主曰く、東の国の衣装を参考にした試験作とのことらしい。

 色々と失敗はしたが、布の模様だけは良かったので売りに出したとのことだった。


 着物の染めは白をベースに青や水色といった色が模様となっており、雪女が着ていそうなイメージがあった。確かに店長の言うとおり、とても綺麗な染め柄だった。スノーの印象ともピッタリなので、これを着てもらうことにした。一応、袖を切ったり裾を短くしてもらって、何とか形になった。




 買い物終了を宣言し、さっそく買った物を装備してもらう。



『お、なかなか面白い格好になってるね』

『軽剣士で和装? なんかニンジャっぽい?』



 袖のない白い着物に、手甲と膝当ての鉄。

 腰に小剣のバデレール、ナックルダガーの鞘は太ももの両側面の位置に装着してあり、すぐに両手共に抜けるようにしてある。



『似合ってる?』

「すごくいいぞ。見違えるほどだよ」

『よかった』


 まあ、初期装備でずっといたから見違えるのは当たり前なのだけれど。

 それと個人的には服装でも動きや速度が変わる事のほうが意識が向いたけれど。

 もちろん、スノーがゲームの主要キャラ並みに着飾って可愛くなったのはうれしい。でもそれ以上に戦闘能力が上がったことの方が、俺は嬉しいのだ。


『まあ、戦闘をするって見た目とはとても思えないけどね』

『いいんじゃないですか? ゲームですし』

『そういえばそうだったね』



 ちなみに全額で十万ゴールドしたらしい。未だに金銭感覚がわからないのだが、アリッサは大丈夫と言っていた。当然、これは出世払いとして将来返済する事は心の中で誓っておくことにする。



「さてと、ステータスはどうなってるのかな?」




 名前:スノー  クラス:バトルアサシン

 年齢:13   性別:女

 種族:闇エルフ 出身:ヒュードラ雪山

 身分:忌み人



武器:右:バデレール or ナックルダガー

   左:ナックルダガー

  

防具:ライトアーマー 一部(両腕・両足)


装備品:和の軽装(状態・上着)



レベル:9

HP:45   SP:83   MP:110

筋力:19   体力:20   体格: 6

魔力:55   知性:28   精神:27

敏速:46   器用:46   感知:37



肉体成長率:C

術技習得率:A

感覚最適化:B+


性格:内気 冷静 冷血



友好種族

 人間:△  エルフ:×  ドワーフ:×

 ビースト:△  オートマタ:×  半魔人:△



スキル

 軽剣術Lv1 《片手で扱える剣の習熟度合い》

 短剣術Lv2 《短剣を扱う習熟度》

 魔力剣Lv1 《魔力を乗せて斬撃を与える。属性は任意で可能。MPも消費する》

 残影 Lv2 《移動スキル。一定時間回避状態で移動できる》

 


魔法

 魔撃《属性:氷・魔》

 下級魔法《属性:魔》




・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・




「……軽剣士ちゃうやん」

シノビとは……隠密活動が得意なスーパースパイで、刀で斬り合いもこなせるサムラーイにもなれて、忍術と呼ばれる一族秘伝の魔法をも行使する、日本が誇るウルトラ万能戦士である……とか、なん、とか?



エルフニンジャ、準備中。

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