表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロステラ ― 俺のパソコンと異世界が繋がっている  作者: 白黒源氏
Episode:Μ(ミュー)
140/181

釣れた魚が残したモノ(後書きにてバレンタイン企画)

 約束した土曜日になるまでに、私達は先んじて仕掛けの準備に取り掛かっていた。


 今回は私だけで異世界側(ゼンタロウが毎回そう呼ぶので)を移動することになった。ゼンタロウは部屋でいつも通り、パソコンという機械から私を見守るつもりらしい。一緒に故郷の雪を踏み歩きたいとも考えたのだが、険しい雪山を動き回れるイメージが湧かないのだとか……。


 もっとも、様々な面でそちらの方が良いと思われた。



 あとからわかったのだけれど、私が異世界側にいてゼンタロウが地球側にいる間、異世界側の紋章陣の設置場所を変更することができたからだ。ちなみに再設置の場合の出現場所は自分の足元に出てくる。



 別段、教会でしか転移できないワケではなかったようだ。


 これからは異世界側のどこからでも転移して、地球のゼンタロウの家で休息を取ったりすることができる。お蔭で一人で野宿する危険性などを気にする必要がなくなってしまった。



 ただし、紋章陣の設置変更には問題点が二つほどある。


 一つは紋章陣を人目につかないところに設置しなければならないこと。

 これが見つかると転移してきたところを襲われるか、逆に転移してゼンタロウのいる部屋に押し入られる可能性があるからだ。もっとも、他の誰かがこの紋章陣に入って、こちら側にこれるのかという疑問が少しばかりあるけれど。


 それともう一つは、場所によって魔力消費量は増減することだった。

 理由はわからないが、教会の外で転移を試みると、MP消費量は変動する。多い場所では二倍ほどにも膨れ上がった。これも理由はわからない。けれど、教会という場所がそもそも特別なのかもしれないとゼンタロウは推測した。ただし、他の場所で試せる機会があまりないため、これを調べるのはずっと先になりそうだとか……。


 何でも上手く行くわけではないらしい。



「スノー。ほい、これ」



 異世界に転移する前に、ゼンタロウから毎回の如く色々と渡される。熱いお茶(または紅茶)が入った水筒に、懐炉と呼ばれる小さく暖かい物体。それから明らかに自分の体には不具合に大きなコートを着せられる。でも少しだけゼンタロウの匂いがして、ちょっぴり嬉しかった。


「向こうは寒いからな。あと、俺はしばらく操作するつもりはないから、しっかり注意して動くんだぞ」

「わかりました、ですがいつでも操作するのは構いませんよ」

「……まあ、いざとなったらって時だけだな」



 あまり乗り気で無さそうに言うけれど、きっとゼンタロウならここぞという時ならば、遠慮なく手を尽くすだろうという信頼があった。だから私はさほど自身の命の心配はしなかった。



 でも別のところで、最近は心配のようなものを感じていた。


 ゼンタロウが偶にする誤魔化しのことだ。「どうでもいいこと」とか「また今度」とかいって、彼がその話題を自らしたことはない。何か、ゼンタロウ自身の問題を棚上げにしているようにも思えて、それがまた、なんと言うか……。



 ……わからなかった。うまく言葉にすることができない。



 私には今のこの感情を上手く形にできなかった。寂しいような、もどかしいような、そんな歯がゆさがあった。


 そんな不確定な考えが心の中で巡りながら、雪の降り積もる白い世界を、踏みしめて進んだ。





 それからしばらく、ゼンタロウから今回の計画の細かい部分を一緒になって練った。


 今回ゼンタロウがやろうとしているのは、ズバリ“釣り”らしい。


 曰く『会うフリをして実際には会わない。雪山の天候が悪くて、会いたかったけど会えませんでした――を繰り返す。その過程で色々と仕掛けて本性を窺がう。道を迷わせたり、危険な目に合せたり、エサをチラつかせたり……やることはただの嫌がらせ』ということだった。


 それではティンがかわいそうだと思ったのだが、もしティンがアリッサからの命令で私を殺しにきた刺客だった場合、私は抵抗できない。ティンとは数は少ないものの、共に時間を過ごしてきた仲間だ。できれば争いたくはない。



 一応、ゼンタロウは殺すまでの過激な手段は決して使わないと約束してくれた。まあ、死にはしない程度に危険な目には遭うかもしれないけれど……。



 そうして、こんな工夫をすればいいのでは? という案を出し合って、木の棒に解けそうな赤い紐をくくり付けて目印にしてルートを指定したり、雪崩がおきやすいポイントを調べて陣取ったり……。




 土曜日の本番には、乾電池なるものと小さな豆電球を二つもらい、使い方を教わった。これを魔法で作る氷像の中に入れて、魔物モドキの目として見せて、相手に語りかけて色々と揺さぶるのだとか。でもこの手が使えるのは相手が精霊付きに限る。


『設定はこうだ。イタズラ好きの氷妖精で、色んなモノに化けて通行人を騙して迷わせる』

「そんな魔物、実在しましたか?」

『別にいいんだよ。いるって言っとけばさ。嘘は堂々と言った方がばれないんだぜ?』

「ゼンタロウ最低です」



 色々とあったが、ともかく計画は予定通りに進められた。


 事前情報ではティンともう一人、精霊付きではない人間と共に来ているらしかった。魔法で雪を降らせ、風を吹かせ、天候を吹雪にして二人を迷わせて、軽く最初のエサとして、マントを着せた影分身を用意し、それとなく接近させた。


 そして案の定というか、魚は凄まじい食いつきを見せて、さらにはティンが攻撃を受けて逃げ去り、あとはゼンタロウのアドリブでことが終わった。雪崩については私の氷魔法による発動だ。元からある雪を動かすだけでなので、わりと容易かった。



「ところで、この雪崩で先ほどの女性は大丈夫だったのでしょうか?」

『大丈夫だろ、炎属性が使えるみたいだし。かなり深くまで埋ったとしても、自力で抜け出すだろ。というかダイスの野郎、なにがNPC……精霊無しだよ。あの威力ならレベル50は絶対に超えてただろ』



 どうやらビルテという人物はただのオマケみたいなものだと聞かされていたらしい。でもその実力は相当だった、と。でもまあ、精霊が付いているのかいないか、それ自体は見た目では判断できないので、本人がそう言ったのならばわからなくはない。



 するとゼンタロウは自然と難しく考えている時の唸り声を出していた。



『……なんだか、あれだなぁ。俺にはどうにもイージーな演技に思えたなぁ』

「どういうことですか?」

『いや、ビルテっていうわかりやすい毒餌を用意して、ティンっていう本命の毒を横に添えておく。ビルテはただの擬餌だな』

「疑い過ぎでは? とりあえず、私は今の雪崩でティンが心配です」



 ゼンタロウは一度静かにしてから、重たい息を吐き出した。



『……わかったよ。今はティンの身を案じてやろう。それにダイスからコールがうるさいし』



 そうしてやっと指針が決まると、岩陰から出てティンのいる方角へ向かって歩き出した。何か話題でも無いかと歩きながら考えていると、ふとちょっと前の会話を思い出した。


「そういえばゼンタロウ。あの時、彼女にティンが仲間かどうかを聞いたのは何故ですか? あれって結局、何を言っても疑わしいですよね?」


 ゼンタロウの思考はなんとなくわかる。

 否定するとティンを庇っているようで疑わしい。逆に肯定すると庇っていないように見せかけて、実はやっぱり敵……ということもあり、結局疑わしい。どちらを選んでも疑う思考を持っていて、質問する意味がないと。


 するとゼンタロウは唐突に軽く笑い声をだした。


『ああ、そうだよ。肯定でも否定でも、その他でも何でもいいんだよ。あれは今後、アイツがどういう風に物事を考えるのかっていう思考パターンの調査だ。アイツは、未知の敵と遭遇して脅された時に、平気で仲間も巻き込むことを良しとする、ゲス女だってわかっただけさ』



 それを聞いて、ああ、なるほどと納得した。結局、ゼンタロウはどっちでも良かったのだと。それを思うと、いつもと変わらないゼンタロウの考え方がそこにはあった。



 そうやって安心しつつ、雑談しながらもティンがいるだろう杉林のある下方へ歩いていると……。



「おや?」

『お?』



 一本の枯れ木に、ビルテが使っていた長い得物の魔銃が引っ掛かっていた。狙撃銃ほどの大きさがあって、私では取り回すのが難しい大きさだった。


「……どうしますか?」

『珍しいものだし、折角だからもらっていこう』



 ゼンタロウが久しぶりにワクワクしたような声で語っていた。そういう反応をしてくれると、少しばかり自分も楽しくなった。最近はそういったことがなかったから、余計にそう思えたのだろう。


 そういう軽い気持ちで、ビルテが持っていた魔銃を地球へと送った。紋章陣を設置し、自分は飛ばずに魔銃だけを向こう側へと送り出す。とても簡単だ。


 そして向こう側のゼンタロウからの報告を聞いて、無事に魔銃が部屋に到着したと聞いて、それで一安心もした。



 そう、思っていた。



 この時はまだ、それがトラブルの火種になるとは、まったく想像もしていなかった。

・バレンタイン企画

※注意

 過度な期待はせぬように。基本的にプロット形式です。本文に載せるほどでもない文章ですので後書きという場で乗せました。脳内妄想で補完できる方だけどうぞ。

 ちなみに以下の世界線は本作と違って平和です。どっか別の次元とお考えください。このキャラだったらこう動くという確率事象の御話です。以上の事を踏まえて、どうぞお楽しみください。




《バレンタインという概念を異世界の住人に与えてみた》


・スノーの場合

①バレンタインの内容を、それとなく第三者かから聞く。

②曖昧な情報のまま、日頃の感謝を込めて手作りチョコを渡す日であると考え、チョコレート制作。

③それを発見した善太郎が途中からなぜか手伝い、チョコレートロールケーキ(ブッシュドノエル)が完成。なんだかよくわからないけど、一緒に食べて平和に終わる。


(サブタイ:共同作業)




・アリッサの場合

①バレンタインが何かを調べて、異性の者にチョコレートを渡して告白する恒例行事だと聞く。

②チョコレート職人を探してきて作らせる。自分は何もしない。

③高級チョコを用意したはいいが、別に渡す相手もいないので持て余して、結局捨ててしまう。

④なんだかなぁ、と一部始終を見て勘違いしたラックさんがそれを回収、アリッサに捨てるのはもったいないと説得する。

⑤咄嗟に受け取るものの、やっぱり持っていても仕方がないので、ラックさんに渡して去る。


(サブタイ:ラックさんがヒロインのラブコメ?)




・ティンの場合

①バレンタインなるイベントがあると聞く。

②手作りで一応作ってみるが、失敗して『スクラップよりも酷いチョコ』が完成する。

③結局、スーパーの市販チョコを用意するものの、大輔にこれを渡すのは……と、気が引けてやめてしまう。

④大輔、周りはチョコレートを貰っていたのに自分だけ何もなくて悲しみに暮れる。


(サブタイ:はよくっつけよ、誰か瞬間接着剤持ってこい)




・メロンソーダの場合

①バレンタインデーがチョコを渡すイベントだと知る。男女がどうとかはこの際知らない。

②ころぽんにそれとなく要求すると、一緒に作ろうとなってしまう。この時点で逃げたい(逃さない)。

③ころぽんのチョコレート制作技術が上手すぎて、ドン引きする。

④結果、ころぽんを嫁に出してはいけないと考え、ころぽんを独占して終わる。


(サブタイ:ころぽんはあたしの嫁)




・ルピアの場合

①チョコ売買のマーケティング調査をコッコさんより依頼される。

②調べた結果を伝えるのと一緒に、それとなくホットチョコレートを提供する。コッコさんに気を遣わせない配慮感。

③後日、ホテルの高級レストランに連れていかれて美味しいお返しをされてしまう。思っていたのと違う……。


(サブタイ:こんなはずでは……)





 以下場外編

・聖(妹ちゃん)の場合

①手作りチョコと友チョコを両方用意する。無論ラッピングも別モノ。

②朝の早い段階、小田くんを待ち伏せして、出会い頭にさっさとチョコを渡して走り去る。

③小田くん、しばらくボーっとする。


(サブタイ:ただのガチなヤツだコレ)




・アゲイルの場合(!?)

①バレンタインデーが日頃の感謝を伝える日であり、愛の告白をするイベントでもあり、商人たちの策略という話も知り、ついでに手作りチョコが一番良いのだと気がついたアゲイル。

②半端な物は作りたくないと、本場地球にまで乗り出して有名店に弟子入りをする。

③厳しい修行は5年間にもおよび、彼はチョコレート専門のパティシエのコンクールに3度挑戦し、7年目にして初めての受賞を授かることとなった。そしてやるべきことはやったと言い切り、引退を宣言する。

④幾人もの職人たちに呼び止められたが、彼は店を後にした。同時に、多くの試練を乗り越えねばならない未来のパティシエ達に、とある言葉を送った。「乗り越えるべき試練は簡単な程良い。そして、試練は多ければ多いほど良い。何事も簡単の積み重ねだ」。

⑤最終的に竜王と仲間と小田に普通のチョコレートを振る舞った。


(サブタイ:真面目過ぎるとおカシな頭になるらしい)




 以上でございます。ご拝読ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ