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クロステラ ― 俺のパソコンと異世界が繋がっている  作者: 白黒源氏
Episode:Μ(ミュー)
137/181

敵か味方かわからん!

 やってきたのは学生の味方サイ○リヤ。


 とりあえず人目の少ない奥の席について(スノーが俺の横、目の前にダイス)、スノーから先にどんなのが食べたいのかを聞いて、ほうれん草のクリームパスタを注文する。次に自分のイカスミパスタを注文。あと大輔はというとミラノ風ドリアを注文して、最後に全員分のドリンクバーをつけて、料理を待つ間に会話を始めた。



「で、なんだっけ?」

『その人は誰ですか?』

「ティンの精霊のダイスって男だ。俺も初対面だけどな」

『やはりそうでしたか。声が少し似てるかとは思っていたので』


 なんだ。結局、ほとんどわかっていたのか。

 するとスノーが軽く目を伏せて会釈してから「よろしく、オネガイ、します。ダイス」と拙いながらも覚えたての簡単な言葉で挨拶した。



「お、おぉ。よろしく。え、なにその子? メッチャクチャにカワイイんですけど」

「お前二度とスノーに向かって口を開くな。ブチ転がすぞ」

「だからこえーよッ! なんだよ、その温度差! ……ん? いまその子の名前、“スノー”とか言ったか?」

「言ったよ。よくある名前だろ」

「え? ああ、うん、そう……だな?」



 やっぱり『プレイヤーのゼタ』が使っていたキャラの本当の名前が『ユキノ』ではなく『スノー』だという真実は、それとなく伝わっていたのだろう。だからこそ、ゲームキャラに知人の名前を付けるという明らかに不自然な行動に対し、疑問を持つならば当然の反応をしていた。


 ちなみに今のスノーの変装姿はパーカーにヘッドホンというラフな衣装だ。

 最初に着ていた清楚な服よりも、こっちの方が動きやすくて気に入ってるらしい。しかもブカブカな長袖の中に、隠し刀の籠手を装備しているのだから恐ろしい。……まあ、念のためにと装備させたのは俺なのだけど。



「で、スノー。ダイスに何が聞きたいんだ?」

『はい。エルタニア王都と、精霊騎士団の皆について少し聞きたいですね……』



 確かに、現在も精霊騎士団に在籍しているだろうダイスに詳しい話を聞くのも有りだとは思う。情報の中身を疑うのは後にするとして、聞き出して情報を得ると言うのは非常に無難だ。


 あと、強いて難点があると言えば……俺が目の前の茶髪男をあまり好かないというところだ。



「ダイス。ざっくり聞くけどエルタニア王都とか精霊騎士団とか、今はどうなってる?」


「いや、どうもこうも、大きくは変わってねえよ? ただ、チームリーダーがなぁ」


 リーダーっていうのはこの場合、ラックさんのことだ。まあ最近ずっと忙しくて(精神的にも)ログインできないみたいだし、チームメイトからすれば文句もあろう。


 しかし、ダイスの話を聞いていると、どうやらそれだけではなかった。



「ラックさんに文句があるのか?」


「いや、なんて言ったらいいか……。ほら、ゼタとかマダオとか、精霊騎士団の最大戦力が揃って抜けただろ? それでさ、収拾がつかなくって……」


「なにか問題でもあったか?」


「いや、大ありだって。二人の補填のためにってリーダーが勝手にメンバーを加えてよ? それで入ってきた連中が最悪でさぁ」


「……新規メンバー? それは初耳だな。何人だ?」


「一気に三人。しかも古参を差し置いて一席、二席に新人置いてさぁ。なんだかなぁって感じなんだよ」



 ラックさんを知る人間なら、この行動は絶対に変だとわかる。勝手にメンバーを増やしたというのが根本からおかしい。


 精霊騎士団――というよりも、ラックさんの昔からの指針で、新規加入に関しては全員に確認を取る事を確約していた。それでも何か問題があった場合は、ラックさんに相談するようにしていた。その辺、実力よりも人間関係に重きを置いてきた点がエンジョイ勢にカテゴライズされる要因なのだが、ラックさんの場合は後進の育成が上手いからなぁ。


 メンバー全員のプレイヤースキルが上昇して、結果的に結束のある実力派チームになっていく。



 そういう内輪の絆が出来上がったところに、勝手に新規加入者を三人も入れる。しかも古参よりも上位の位置に差し込むなんて考えは、有り得ない。



 ……犯人はアリッサだろうなぁ。そこだけは理屈抜きですぐに答えが出た。



「それで、他のメンバーはどう思ってるんだ?」


「え? ああ……ころぽんさんとリトさんは何も言わずに見なくなったな。嫌気でも差してどっか行ったんだと思う。コッコさんはダンケルクで倉庫屋を始めてそっちのが忙しいみたいだし、ダンテさん……というかアモンは相変わらず行方がわかんねえし。まともに王都に残ってんのってロン丼くらいじゃねえの?」


「……それって、今まさに空中分解の真っ最中じゃあないか」



 ああ、さらば我が古巣よ。特に思い入れのある名前じゃあなかったけど、チームが崩壊していると聞くと、なんだか物悲しいな。



「だからさぁゼタくん。いやゼタさん。頼むから早く帰ってきてくんねえか? マダオさんだって多分だけど、リアフレとか知り合いなんだろ? 仲良かったみたいだしさ。二人でなにしてるか知らねえけど、手伝うからさぁ? このままじゃあマジで精霊騎士団が落ち目になっちまう」


「……なるほど。お前の建て前は概ね理解した」


「建て前?」



 既に手遅れだとは思う程度に精霊騎士団というチームは落陽を迎えていた。というかそれ、間違いなく俺と小田が戻ったところで無事に元通りになんかならないだろう。



 それよりも、今の話で一番不憫なのはラックさんだ。


 仕事では上手くいかず、帰ってくるべきゲームでは自キャラが勝手し尽して本物の浦島太郎の如く時が過ぎ去った。俺はもう、ラックさんに向かって何も言えねえよ。……その上、もしかしたら俺と小田が居なくなった後、その件で皆から苦情があったのかもしれないと想像すると、余計に良心が痛い。



 いや、感傷的になっても仕方がない。それよりも、今の話を聞いてどう考えるべきかが重要だ。



 ひとまず、今聞いた話をスノーに解説しつつ伝え、運ばれてきたパスタもその時に食べた。


 どうでもいいけど、スノーがイカスミパスタに興味を持ったので一口あげようとしたのだが、グロテスクな見た目だからいらないと言われた。このクリーミ―な味わいが美味しいのに。あと肉類が苦手なのかベーコンが残り気味だったので勝手に食べる感覚で横からかっさらった。



「なんか、お前等ってアレだな。なんか妙に変な関係に見えるな。親戚っつーか、血が繋がってなくて、異常に仲のいい兄妹みたいだ」


『ゼタ、彼は何と言ったのでしょうか?』

「仲のいい兄妹みたいだなって言われたんだよ。あと今更だけど、こっちでは善太郎でいいよ」

『キョウダイ、ですか。わかりました、ゼンタロウ兄さん』

「いらん設定を生やすな」


「なあ、なんでオレの言葉は無視して、ゼタの言葉は通じてんだよ!? そっちの子も中身はゼタと同じか!? 腹黒なのか!?」



 というか、俺には既に必要でもなんでもない妹が一人いるんだよ。スノーが妹とか考えたくねぇよ。妹属性なんて妹がいる奴からすれば、邪悪でしかないんだよ。スノーはスノーのままでいてほしいもんだ。



 まあ茶番はその辺に置いといて、そろそろ踏み込んだ話をしていくか。



「なあ、ダイス。お前は今、ティンと一緒に何してるんだ?」

「どうもなにも、突然居なくなったお前ら二人を探してる最中だよ」

「それは自発的にか?」


「自発的っていうか、まあ捜索隊に参加してるってだけなんだけどな。『ハイエルフのユキノ』と『竜騎士のアゲイル』ってさ、NPCの連中から結構慕われてたんだぜ? だからさ、帰ってきてくれねえかなって探す連中もいるんだよ。で、その捜索隊にオレとティンも参加してるってワケだ」



 ……捜索隊、ねえ。


 また妙なのが作られてるな。スノーが主に活動してきたエリアはエルタニア王都、次点でシターニア大森林となるのだが、団体を作るとなると王都一択だな。と推考すれば、自然と捜索隊が結成されたのはエルタニア王国となるのだが……。


 俺がアリッサの立場なら、捜索隊の存在を知った瞬間にただでは放っておかない。どころか、逆手にとって利用した方が得策だと考える。



 どうしたもんか。厄介という他ないな。

 しかもうっかりで手順を間違えると、スノーの立場が余計に悪化しかねない。『無害な捜索隊』と言う名の刺客を殺して、さらに悪名が増した、とかさ。


 今更だけど、しばらく王子捜索の活動をしてなくてよかったと心の底から思った。何も知らなかったら刺客なんか返り討ちにして、勝手に解決したつもりでいたはずだ。今更になって、ダイスには感謝だな。



 無論、今の話がすべて真実だったなら、という前提が入るのだけど。

 まあダイスの能天気さに免じて、7割半くらいは信じてもいいだろう。



「おーい。なに黙ってんだよ?」

「……別に。良いこと聞けたと思っただけだ」

「そんな顔じゃなかったけどな。もっと難しい顔してたぞ」



 それくらいに冗談じゃないって話だっただけだ。仲良くなるつもりは毛頭ないが、謝礼に何かをしたいと思う程には恩を感じた。



「あんまり期待してなかった分、良い話がきけてよかったよ」

「いや、いいんだけどさ……。つーかお前、結局どこで活動してんの?」

「ついでに今回は俺の奢りでいいよ」

「マジでッ!? やったぜピザ頼んでいい?」

「勝手にしろよ。でも俺達、さきに帰るから。追加は自腹でしろよ」



 後ろから「そんな殺生な~」とか喚く声がした気もするが無視する。がめつさを隠さない奴は鬱陶しいだけだな。


 と、最後に一つだけ、重要な事を思い出した。



「なあ。お前のところに、世界をアップデートするとかいうメッセージ、来たか?」

「なんだそれ?」

「……だと思ったよ」



 何も知らないダイスを他所に、スノーと共に席を立った。


 未だに何がトリガーとなってメッセージが届くのかがわからないが、その辺も追々、心当たりを潰していく必要があるだろう。俺の後に小田にメッセージが行って、ダイスにはまだ来ていない。この条件で順番に当てはまる事を考えていくしかないだろう。


 会計を済ませて自転車を押しながら、スノーと一緒に歩いて先の話をしっかりと共有していた。



『……ゼンタロウ。どうするんですか?』


「詳しくはまだ何とも。ただ、このまま事態を放置し続けてると、徐々に首を絞められていくだけの気がするんだよなぁ」


『ティンとは、どうするんですか?』


「……アリッサと繋がってなければコチラ側に引き込みたい。でも逆だった場合はとんでもないリスクになる。スノーはティンと戦えるか?」


『……わかりません』



 だよな。そもそも不確定事項がまだ多いし、できれば穏便に確認していきたい。もちろん、戦闘無しで。


 それにこっちはまだ、スノーを操作する気にもなれない。もしスノーがティンと戦闘になったりしたら、負けはないとは思うが、勝つこともないだろうと予想する。



 それは単に、相性の問題だ。



 スノーの戦闘スタイルはスピード寄りの万能型だ。

 火力と耐久力を犠牲に素早さを意識しつつ、相手のタイプによって戦法を切り替え、近接にも中距離にも遠距離にも対応できる。物理攻撃、魔法攻撃にも長けており、理論上はどんな相手にも勝てる。……が、圧倒的に勝てる強みもない。何より火力が半端な分、相手よりも自分の方が早く動けるのかが重要となる。敵の攻撃を回避できなきゃあ本当に終わりだ。



 一方のティンといえば、超攻撃特化型で一度捕まると確実に葬られる凶悪な速攻アタッカータイプだ。

 瞬発力と攻撃力を重視し、ただひたすらに強みを尖らせた獣人族の(かがみ)のようなキャラだ。こういう速攻戦法は単純ゆえに安定するし、非常に強い。しかもスピードがスノーよりも上なのがわかっているから、戦うのは避けたい。無論、デメリットはその分存在するが、先にこちらの方がダウンしかねない。


 俺が操作するならともかく、スノーが自分で動くとなると、ティン相手には負け濃厚だな。



 なんにでも、相性の良い悪いは存在する。


 そもそも俺は勝てる戦いだけに挑む主義だ。負ける戦いに自ら挑むなんて御免だよ。得るモノのない負けは、ただのバカのすることだ。


 まあ勝負事とは一概にも戦法だけで決まる物ではない。そのために戦術や戦略を考えたり、戦場に工夫を凝らすのが策士という物らしいが……。俺には悪知恵くらいしか能書きがないからな。


 ……いや、悪知恵も工夫次第でそれなりに形にはなる、だろうか?



「……スノー。悪戯って好きか?」

『何か思いつきましたか?』

「まあ、上手くいくかわからんことを少々……」

『聞きましょう』




 後日、学校で適当に挨拶を交わしたダイスに、スノーがヒュードラ山脈の手前の山の中腹あたりにいることを伝えた。雪の濃さはそれほど変わらないが、次の土曜日にはティンが到着するらしい。



 ティンが敵なのか味方なのかは、その時にハッキリさせるさ。

ミラノ風ドリアは安い。それが、懐の寂しい学生の味方の所以である。

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