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クロステラ ― 俺のパソコンと異世界が繋がっている  作者: 白黒源氏
Episode:Μ(ミュー)
122/181

やはり検証するのが手っ取り早い

 スノーは自分の意志で、ハッキリと言ってしまった。……『捨てないで』と。


 困った。いや、困った以上に大問題だった。戦慄さえ覚えてしまった。問題を一つ解こうとしたら、また複雑になってしまった感じがする。でも、これは自分の失敗だ。




 俺は今回、質問をするタイミングを見誤ってしまったのだ。いや、安易だった。




 スノーは今、俺を頼っている。俺しか頼る相手がいない。そもそも、頼らなければ自分で何かを選択できない状況にある。

 でもそれは、質問をした後で知ってしまった。性急に出すべき話題ではなかったと後悔さえ覚えている。


 これではまるで、スノーが俺を頼るのをわかっていて、ワザと質問したみたいじゃあないか。思い出すだけでも自分が嫌いになる手法だ。……でも、もしかしたら自分でも知らない深層心理内で、そうなる事を願ってしまったのかもしれない。


 スノーには嫌われたくないっていう、未だにはっきりとしない自分の心内図式が言動に影響していたのかも、と。



 そういう可能性があるのだと考えてみると、俺も大概に子供だな。



 なんともダサい男だな。

 だが、もう決まってしまった話だ。決まった考えを今すぐには覆らないだろう。だからこの話は、ここまでだ。



 それに、エルタニアに帰還するための約束もあったのだ。……これ、本当にうっかり忘れてたんだよ。あまりにも目の前の問題が大きすぎて……なんて考えるのは言い訳臭いな。でももう一度聞くとしたら、それを終えたあとだな。



 それから、スノーがもっと自立できた状態になってからでなければダメだ。そうでなければ、あまりにも、スノーの人生を自分勝手に踏みにじっている。……知らない内にとはいえ、それをやってきたんだと思うと、我ながら何とも言えない痛みがあった。



 それに問題はそれだけではない。他にもある。


 続けて、スノーに現在の次の問題を提示した。



「スノーが向こうへ帰る方法がわからない」





 食事を済ませ、再び倉の二階へのぼった。例の紋章というか魔法陣というか……とにかくそれの前に戻ってくる。


 簡単に考えれば、これをもう一度発動させれば、向こう側へと帰れるとは思う。俺が踏んだだけでも、何かしらの効果が発動したのだから、簡単には動くのだろう。



 でも問題はその後だ。

 向こう側へは行けずに、ずっと白いどこかを漂っていた。しかも詳しい原因はわからないが、俺はこちら側に帰ってきてしまった。


 この謎がわからないと、異世界へ帰れるなんて、簡単には言えないだろう。




「スノー。昨日の夜、この紋章、あるいは魔法陣……もう面倒だから紋章陣って呼ぶけど……使った時の事、覚えているか?」


『えーと……どうでしょう? 途中で眠くなっていましたし……。そういえば今朝ですけど、触れた瞬間に魔力をごっそり持っていかれました。それでゼンタロウがこっちに出てきて……』


「それって、俺が床に叩きつけられた時の話だよな?」



 スノーが「はい」と素直に答えてくれる。まるで、今までと何も変わりない様子で……。いや、一々過敏すぎるか。一度、邪魔な思考を切り替えねば、思考効率がわるい。


 一度首を廻して、次に脱力、それで落ち着いてきたから自分に渇を入れて考える。……よし。



 とりあえず親指で左脳を刺激するつもりで頭皮を指圧してみる。



「……魔力がごっそりねえ」



 携帯でステータス画面を開く。確かにMPのゲージが減っている。


 現在、スノーのレベルは80。マジックポイントの上限は1,085という数値になっている。これが今、300ちょっと削れていた。あの時は気が動転してたから全く気にならなかった。


 それにしても、大魔法でも最大100の消費量なのに、一度で300ほど消費する魔法か。なんだか匂うって感覚だけはする。多くのゲームで数字インフレ慣れしていると「たった100か?」と思うかもしれないが、サモルドにとってMP消費100って言えば、戦略兵器と差し支えないほどの破壊力がある。


 ……そんな事考えたら、ミサイル十個分ちょっとの破壊エネルギーを保持しているスノーに、軽く不安を覚えてしまった。まあ、そんな考えなしの大虐殺なんて、スノーがする筈はないけれどさ。……そういう術も持っていると思うと、それもまた気にしなくてはならないなと思えてしまった。



 いや、今その問題は棚上げしておこう。それより今はどうやって向こう側へ行くかだ。

 試した方が早いんだろうけど、あの白い空間に閉じ込められるのはゴメンだからなぁ。




「今すぐ思いつく仮説は……実は一方通行だとか? あるいは多分魔力量の問題。……スノーはMPが大量にあるから通行できたって説が一番都合がいいんだけどなぁ……。それなら俺が踏んだ時どうして発動したのかがわからんし。うーん、これじゃあ憶測にしかなってない。偶々発動できたけど、通れませんでした……みたいな感じだろうか? 残量とかあるか? いや、しかしなぁ。これを確かめる方法ってのはうーん……」



 考えつつ、考えながらパソコンを見て……流れるようにサモルドを起動した。



「ああ、どうしてこんな簡単なことに気がつくのに悩んでたんだ。発想が硬くなってた」



 画面にスノーの背面が写る。携帯電話のゲームアプリを閉じて、次に古いヘッドセットを利用してスノーに話しかける。


「スノー、こっちでも聞こえるな?」

『ええ、そうですね……。大分前の音声に似てますね』

「ずばり昔使ってたマイクだからな」


 すぐに携帯電話で小田に連絡を取る。すると昨日の夜中とは打って変わって、すぐに呼び出しに応じてくれた。



『もっすー。またなんだぁ?』


「小田! 急で悪いんだけどアゲイルに、今すぐにヒュードラ山脈の教会まで来てくれ」


『うーん? マジで急だなぁ。ヤバいん?』


「やばいっていうか、まあ、緊急ではないけどできれば急いで欲しいかもしれん」


『オッケー。そんじゃ――ッ』



 すぐさま切られた。たぶん、来てくれるんだろうけど、通話はそのままでいて欲しかった。小田からすれば、ゲーム内でチャットすればいいだろうとか思ってるのかもしれないけどさ。

 まあいいか。



『……ゼンタロウ? どうするつもりなのですか?』

「いや、とりあえず実験をするべきだと思って。小物でも何でもいいから向こうに送ってみて検証する。向こう側へいけないのが単なる消費MPの問題ならあとは簡単だし、それが原因でないなら他を検証しなくちゃなって話」



 こんな知識も半端、理解力も微妙な俺が一人でどうにかなる状況かよ。とりあえず検証。実験。なんでも試す。


 そのためには向こう側の検証結果を知らせてくれるメッセンジャーが必要だ。まあ、困った時のいつものアゲイルなんだが……。


 ……そう思えば、スノーだけではなく、アゲイルにも同じように仮想人物としてではなく、実物の人物として接してこなければならないと今更ながらに気がついた。



 これは、中々にハードな状況だ……。


 そもそも、この実験をするに当たって、結果は当然小田にも伝わる。

 そうなってくると……いや、これは俺の問題ではなく、アゲイルと小田の問題になる。全くの他人ではないが、これは彼等で決めるべき問題となるだろう。


 とにかく、巻き込むのが良かったのか悪かったのかは、後でわかることだ。



 待っている間はヒマだったので、情報収集用に使っていたスペックの低い第二パソコンだけ、LANケーブルを繋いでネット環境を整えた。再三確認したから、サモルド起動中のパソコンとはどこからも繋がってもないだろう。

 ついでに過去の記録が残っていても怖いから、今度暇な時にでも初期化してやるか。……リカバリディスクとか持ってきてたかな……。いや、俺の机の引き出しの中だな……。やっちまったなぁ。いやいや、こんな所で使うとも思ってもみなかったし、持ってきてるワケないじゃん。



 サブのネット通話ソフトを起動して、小田にメールで通話待ってるとか言っておく。ただ「ジニーお願い」と言い掛けて、AIのナビに指示しようとしたが、意識改革のためにあえて使わずに、指で操作してメールを打った。




 しばらく待っていると、小田がネット通話にログインしてきてコールしてきた。



『おーい。こっちは着いてんだけど、スノーちゃんは?』

「あーそれな。ちょっとアゲイルに教会まで来るように頼んでくれ」

『んー? 何するつもりなんだ?』

「ちょっとした実験。あと、教会に入ったらもしかしたら紋章みたいな魔法陣があると思うから、それには一切触れるなよ」

『……なーんかわっかんねーけど、一応言う通りにしてみるわ』

「助かるよ」



 本当、頼りになるよ。さすが俺が気を許す数少ない親友だ。



 とりあえず何でもいいので送りつける品を探す。できればこっちの世界にあって、向こう側にはない物がいい。


 ふと、昨日買ってきた菓子の袋が見えた。これでいいだろうと、紋章陣の上にセットする。



「じゃ、スノー。これを送ってほしい。向こう側に到着するのかどうか、それがハッキリすれば何とかなるだろ」

『わかりました』




 スノーがしゃがんで紋章陣に手を触れた。すると、ゲーム内画面でも変化が起こり、MPが急激に減っていった。精確な数字で351の消費だ。何故半端な数字なのかはわからないが、とりあえず魔法は発動したようで、スノーも身を引き、白い光は菓子の袋だけを包み込んでこの世界から消えてしまった。


 さて、ここまではいい。問題は結果だ。


「小田、どうだ? なにか、変なものが来て無いか」


 菓子の袋が向こう側へ着いたかどうか。



『……ゼタっち……? これ、どこで手に入れたん?』


「なにが、来た?」


『……ポテトチップスの袋』




 どうやら、向こう側へと送られていった。




「原因はMPの量で決まりだな」



 これで一安心だ。MPの消費量次第で向こう側へはいけるらしい。一時はどうしようかと思ったが、何とかなりそうだ。


 すると、スノーが俺をジトっとした目で何か言いたげにしていた。なんだか、俺が悪い事したみたいな感じがした。



「不安を煽るつもりは無かった。嘘を言ったつもりじゃあない。帰れないって発言は、ただ間違ってただけなんだ」



 とりあえず言い訳しておいた。

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